2025/06/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 寂れた孤児院」にフィオさんが現れました。
フィオ > 夜更けの孤児院。ポツリと篝火の揺れる小さな庭の片隅で、少女は一人駆け回っては細身の棍棒を振るっている。
ぽこん。音が鳴る度に動物の内臓と弾性のある魔物の素材を合わせて作った球体が弾んで、壁に当たって戻って来る。
こんな時間に何をしているのかと思われるかもしれないが、一応れっきとした学院の授業の復習である。
鈍器を用いた対魔物用の戦闘訓練。少女的には日銭を稼ぐ手段を増やすための受講だったが、これが中々に面白くて。
訓練と称して行われた球打ちを思いの外気に入った次第。案外ただの運動としても優秀なんじゃないかしら、とか。

「てやっ……!」

再び少女が棒を振るえば、すぱんと運良く球の真芯をジャストヒット。爽快な一撃が壁に向かって飛んでいく。
ばいん、ばいん。勢いよく飛んで、跳ねて、そのままに戻ってきた球は想定よりも速くて――。

「ひゃうんっ!?」

ぼよん。跳ね返ってきたよく弾む球は、少女の頭に運悪く的中。軌道を変えて明後日の方へと飛んでいった。
庭の敷地内に落ちればよいが、なにせひなびた小さな孤児院だ。小さな庭の外に転がり出てしまうかもしれない。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 寂れた孤児院」にクレイさんが現れました。
クレイ >  
 別に何か特別な用事があった訳ではない。貧民地区の知り合いに顔をだした帰り道。今日の宿どうするかなとか、そんな事を考えながら歩いているとポテポテと足元に転がって来た玉。ふと見ると孤児院。そして頭をぶつけたらしい少女。
 思わず笑ってしまうが。玉を拾い上げる。

「おいおい、大丈夫かよ」

 なんて言いながら柵をヒョイッと乗り越え、玉を返した。
 返しながらも少女の頭を見る。怪我や赤身等があるだろうか。
 ズボンにつるした袋を開いて何かを探している様子を見せている。塗り薬の類はいつも持ち歩いている。必要なら塗ってやるかとか思っている。

フィオ > 少女の通う学び舎から格安で払い下げてもらった柔らかな球は、直撃してもそれほど痛みを感じない代物だ。
そうでなければ小さな子供も居る孤児院の片隅で堂々と壁打ちに興じることも出来ない。安全性は確保済みだ。
とはいえ、結構な勢いで跳ね返ってきたからだろうか、べちんとぶつかった鼻の頭はほんのり赤く色づいていて。
痛みを感じたと言うよりも本能的な何かで顔を撫で付けると、どこかに飛んでいってしまった球を探そうと見回って。

「うぐ……これは、その、恥ずかしいところを見られてましたかー?」

ちょうど男が球を拾い上げる姿が見えた。大丈夫か、という問いこそが、少女のへっぽこシーンを目撃していた証拠である。
頬を少々赤くしながら、球を受け取って男を見上げる。自分よりも随分大きな彼は、山の様にも思えた。

「えぇと、球もありがとうございました。無くしたらまた買わなければいけませんでしたのでー。
 あぁ、怪我とかはないと思います。鼻の先っぽがちょっぴりヒリヒリしますが、そのくらいでございますよー?」

にへへ、と人懐っこく笑って見せながら一礼。警戒心を見せない様子は、貧民地区だと珍しいかもしれない。

クレイ >  
「直接見てはいねぇが、まぁ何があったかはわかる顔してるな」

 なんてニッと笑った。
 しかし少しだけ赤くなっているしヒリヒリしていると言われればなるほどなとうなずいて。

「また買うのは面倒だな。それに怒られちまう……ほら、少し動くな」

 と言えば吊るした袋の中から小さな包みを取り出す。
 それを開けば少しだけスッとした臭いがする事だろう。

「一応赤くなってるし、こいつ塗っとけ。そうすればヒリヒリも無くなると思うからよ」

 それを指に取って、もし彼女が拒否しないのならそのまま赤くなったところにやさしく塗り込む事だろう。
 貧民地区では珍しいと言えば珍しい。だからこそこちらも優しくできるのだろうが。

フィオ > 「ぐぬぬ、ちょっと私のイメージより球が弾んじゃっただけですよぅ」

笑顔の男につられて頬を緩めると、タレ目で童顔気味な少女はより幼く見えるかもしれない。
一応これでも孤児院の中では大人側であり、自分の稼ぎで細々ながらも子供達を養っては居るのだが、
それでもこの外見を見たら孤児の一人がちょっとばかし大人に憧れて振る舞ってると思われても仕方ない。
鼻先に塗られる薬は、仄かにすぅっと爽やかな匂いがする。そこに混ざる薬っぽさも嫌いではなかった。

「ん、まぁ、怒られはしないですが、チビっ子達のおやつ代が減ってしまうのは避けたいですからねぇ」

自分のものを賄うのであればその分働くだけで、実際に子供達のおやつを減らすことはありえない。
とはいえ、世間話で自分の苦労をわざわざ語るのも行儀が悪い。故に、冗談めかして返すのみ。
男の手も素直に受け入れるし、何なら触れやすいように自ら寄っていく辺りに、男性への慣れが垣間見えるかもしれない。

「ふふ、ありがとうございます。すぅすぅした匂いですねぇ。
 ――とと、申し遅れました。私はこの教会兼孤児院のシスターで、フィオと申します。
 迷える大きな大きな羊様は、こんな夜分にどうして貧民地区にお越しでしょうか?」

まさかこの教会にお布施なんてそんな事があるわけなし。とはいえこの辺りに立ち寄る目ぼしい店もあるまい。
ともすると道に迷ってしまったか、あるいは宿を探しているとかそんな感じで何かお困りかもしれない。
孤児院のちびっこたちよりは大きくとも、それでもちんまりとした小娘は、おせっかいに尋ねてみる。

クレイ >  
「それは怒られるよりも避けたいな。チビのおやつは死活問題だ」

 なんて冗談っぽく笑って返した。
 そしてクスリをしっかりと塗り込む。男の薬は文字通り戦場で生死にかかわるような薬だ。塗り込めばスッとすぐに痛みは消えていくだろう。

「特性の薬だからな。ん、俺はクレイ。傭兵だ」

 相手の挨拶に対して挨拶を返す。
 しっかりと塗り終われば薬を袋に戻す。

「宿探しだ、知り合いがいてな。そいつのいる店を宿にする予定だったが、満室だって断られちまった」

 人気の店だからしゃあねぇさと肩を竦めた。
 本来は娼館だが流石にそれを言うのははばかられ。

フィオ > 「ふふ、あの子達のおやつは死守しなければいけませんからねぇ。お姉さんの義務ってやつです」

それ以外に日頃の食事もしっかり食べさせなければ、とやる気満々な少女である。
薬はすこぶる効いた様子で、鼻先のひりひりはすぐに消えていく。子供達のために常備したくなる逸品だ。
こちらからの挨拶にも丁寧に返してもらえたならば、いよいよ少女のもともとぽんこつな警戒スイッチは完全にOFFに。
夜をさまよい歩く彼は、どうやら宿を探しているのだという。ふむ、と少しだけ頭の中で思考を転がしてから。

「んー、クレイ様はおっきいので、居間の机をどかしてしまうか、納屋の空いた場所でよろしければ、ですかねぇ。
 立派な寝具はありませんが、干したての布を藁束の上に被せたベッドは案外寝心地良いものですし、いかがでしょう?」

粗末な場所でも良いならば、雨風くらいはしのげる場所を提供すると申し出る。
子供達も同じ様な藁の塊に干したての清潔な布をかけて、ふかふかとした寝床として使っている。
そのあまりが少女の寝床であったり、或いは彼の寝床になるかもしれなかったりしている。清貧暮らしだ。

「ちなみに、お宿ほどの居心地は保証できないので、お代はお断りしております。
 それでもご厚意を賜われるのであれば、お布施や肉体労働のお手伝い、或いは子供達の遊び相手でしょうか」

自らすすんで貰う気はないが、くれるならば断りはしない。そんなスタンスを暗に示してみる。
彼が応じるならば、部屋への案内と簡単な夜食位は提供することになるだろう。
野菜くずのスープにパンをふたつほど、それから小さなチーズとりんごをひとかけ、そんな感じで。

クレイ >  
「良いお姉さんだな」

 自分の幼少期に色々と助けてくれた娼婦の姉さんたちを少しだけ思い返す。
 さて、厚意を見せてくれたのなら少しだけ考えた後に。

「それじゃ、折角だし甘えさせてもらうかな。ガキの遊び相手や肉体労働ならまかせておけ。体力だけには自信があるからな」

 なんてニッと笑って返事をする。
 たぶん男からするとかなり少ない量の食事だろうが、それでも男は文句も言わずに食事をするだろう。男の環境的に暖かい飯というだけでかなり満足だった。
 しかし同時に不安に思う事が。部屋へ案内される最中の会話だった。

「この孤児院ちゃんと経営出来てるのか?」

 実際、ベッドも藁束の上に布だし、食事もかなり質素。
 正直、まともに経営出来ているのか不安にも思う状態だった。

フィオ > 「ふふふ、みんなが可愛いので、年長さんな私も元気が出るというものです」

子供好きな少女にとって、孤児院は働きがいのある素敵な職場だ。お姉ちゃんと慕ってもらえるのがなんとも快い。
頼られると良いところを見せたくなるのが世の常ということで、出稼ぎのお仕事にも気合が入るものである。

「ふふ、ではではこちらへ。お金はご飯や衣服に消えてしまうので、それ以外はみっともないかもですけども」

少女が稼いでくる金は日々の食事や日用品、それから院長先生が常飲している薬等へと消えていく。
あとは有事の際の備えと、教会として時折収める税やら上納金やらの為の蓄えがいくらか、こっそり隠されている。
それらを一人で賄うと、わりと生活がカツカツになるのもやむなしと言ったところか。特に不満もなかったりして。

「今のはお夜食なので少なめでしたが、朝夕のご飯はしっかり量がありますので、明日の朝をお楽しみに、ですよ。
 寝具はもう少し良いのだと綿や鳥の羽を詰めたふかふかなのがあるらしいですが、藁でも十二分ですよぅ?
 ほら、たまに冒険者講習でギルドにもお邪魔しますけれど、彼らは懐が心もとないと馬小屋で寝たりもしているようですし」

ですから、屋根があって壁があって同じ藁の寝床があれば馬小屋よりは上なのです。等と無駄に自慢げだった。

クレイ >  
「ご飯や衣類に消えてくなら正常だ。ヤバい所なら酒に消えるだろうし」

 そんなところだらけだろうむしろ。
 実際そういう場所を幾つも知っているので男としては何とも言えないわけだが。
 そうして歩きながら周りを見ている。

「まぁ、俺は藁でも十分なんだがな……ま、飯がちゃんと食えてるなら良いさ。それが心配になっただけだ」

 なんて言いながら歩いている。
 とはいえ彼女もかなり細身だ。ホントに食べれているのかなんて思ったりもしたが、あまり深入りはそれこそ迷惑だろう。

「それで、みんなのお姉さんはこれから子供達の寝かしつけって所か? 孤児院だと中々寝ない奴とかも多いだろ」

フィオ > 「お酒は飲める人がいないので、助かりましたねぇ、きっと」

院長先生がお酒好きだったら大変だったろうなぁ、としみじみ。我慢するにしろ、飲んでしまうにしろそれぞれの苦労がある。
ここは老齢な院長先生がよぼよぼで病気がちなことを除けば、慎ましやかに健全運営だ。子供達も健やかに育っているはず、多分。

「ん、今のままでも大丈夫ですが、気にして頂ける様であれば、時々遊びに来てくださいな。
 お布施なんかも、頂けるなら絶賛募集中ですからね。お金もご飯もあればあるだけ良いものですから」

少女の場合は食べてもあまり育たないのが最近の悩みである。縦にも横にも。ちんまりミニマムでマニアックな殿方に好まれる肢体だ。
お陰でそういうお仕事の折には素敵な金額を頂けるのだが、ともあれご飯は十分に食べている。こっそりちょっとだけ買い食いもしている。

「んー、そうですねぇ。まぁ、寝かしつけは私よりちょっとだけ小さな子達のお仕事でもあるのですけども。
 私はこれから学院の宿題をちょっぴり頑張って、その後お休みなさいですねぇ。クレイさんも何かあったらお声掛けくださいな」

おトイレとかお水とか、わからなければご案内しますのでー。等とふんにゃり笑みを浮かべて、再び一礼して見せる。
あとは、彼を客に迎えていつもと少しだけ違う夜をのんびりと、夜更け過ぎの頃合いまで過ごすことになる。
そして翌朝、いつしか現れていた大きな客人に子供達は大層驚いて、興味津々で、きっと色々おねだりもするはずで。
程々に付き合ってもらいつつ、貧民地区にしては随分と穏やかで平和な一時を過ごすことになるだろう――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 寂れた孤児院」からフィオさんが去りました。
クレイ >  
「遊びに来るくらいならかまわねぇよ。もし良い土産があったら持ってきてやる」

 なんて答えるだろう。遊びに来る事は別に苦じゃない。
 そうして雑談を交わしながらも歩いて行って。別れる事だろう。お前こそ何かあったら呼べよなんて言って。
 翌朝、宣言通り子供を相手どってガッツリ遊ぶクレイの姿があったはずだ。商売柄子供の相手は慣れているのだから。
 そうして彼も翌日に遊んだ後に帰路につく。それから時々遊びに来ては色々とお土産やらを持ってくる事だろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 寂れた孤児院」からクレイさんが去りました。