2025/12/16 のログ
ワンダ > なお…
メイベリーンはワンダさんまだ売れない、と先輩として思っている。
地道な営業を、やってないから。

(てれんてくだちょうにがてですわー…)

(あざとさとか、ないですわー)

いいものはいいものというだけで売れるといいますし!おすし!

「ふっ」

腕を組み、すごくマスタープランがありそうに、笑う。
だがそういうポーズだけで売れるにはハッタリが足らず、手練手管が足らず、人を選ばず客を取るということも、あまりにしていない。

絵の前に後方プロデューサーヅラして立ってる。表情は窺いにくい。
さっきからこの子ずっと絵の前にいるな???と、フリー客がだいぶ怪訝な顔で見ている。

「はいそれでは待合室にお入りくださいー」
カウンターからのアナウンスでは、誰ぞ、客が待合室に入ったが、多分私ではありませんわね…ほらーぜんぜんちがいますわーーー
「ノーナさんの準備ができましたー」
やはり順当に私では無い模様。

アレほどお太り遊ばされている方にお客様がつくの不思議すぎますわー!と、口には出さないが思っている。顔にはめちゃくちゃ出ている。

絵に描いたような容姿だけで売れるほど、風俗稼業は甘く無い。
ブロンド、ブルーアイ、バスト90、ヒップもそのくらい。なるほど。
だがそれは、そういうからだである、ということだけ。

この姿に性欲を覚えてもらわなければならない。

ワンダ > ”中から溢れ出るような明るさと妙な気迫が、エロさになってない”
”風俗は恋愛じゃねーんだ、擬似なんだ。お客様は過程をすっ飛ばしたいわけだ。”

ぐぬぬ!

わたくしの中に残るロマンティックラブというイデオロギーが根強い…!


ですが!
今回に限り!
なんと!


(割り切るしか無いと、思います…わ…ね!)


ふん!傲然と、頭を上げて、とりあえずエントランスに出て!
お客様の前で瀬いっぱい微笑んでみる!

目が、笑ってない。

処女では無いが場数少なく、プロとして働き始めてほとんどまだ一般人のワンダさんであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2/娼館「プリプリ」」からワンダさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にさんが現れました。
> 貧民地区の中でも荒れた雰囲気の漂う一角がある。
真っ当な生活を送る者ならまず立ち寄らない、脛に傷を持つ者が住処とするような、そんな場所だ。
廃屋と相違ない長屋がいくつも並び、小汚い宿もあるが品質は最低を常に更新するレベル。
カビと埃の臭いが染みついた路地には物乞いもいない。
憐れんで小銭を投げる者が居ないから。と言うのもあるが、こんな場所で一夜明かすなんて命がいくらあっても足りない。
それならドブネズミのように下水道で眠る方がマシだろう。

そう言う場所故に、身を潜めるも、後ろ暗い作業をするのも気兼ねなく出来る。

「……」

まだまだ娼館の明かりが眩しく輝く真夜中のこと。人目を避けて長屋のボロ宿へと小柄な人影が足を運ぶ。
借りたままの鍵をポケットの中で握りしめながら薄暗い路地を足音を殺し進んで行く。

> 一本、二本と路地を変え、ぐるりと遠回りをしてから宿の前へ辿り着く。
振り返った夜道に人影はない。道中、誰かに付けられている気配も無かった。
当然か。以前はどうであれ、今はただのしがない冒険者の身。豪華な装備で身を包んでいるわけでもないなら、尾行されるいわれはない。

「……先生の心配性が移った」

嘆息と独り言を零しながら、とある一室の扉へと歩み寄り、ポケットの中から取り出した鍵を穴に差し込み回す。
かちゃり、と軽い音を立てて鍵は開いた。気休め程度の形ばかりの鍵である。鍵が無くても入ることは容易だろうに。
ここは部屋を貸すと言う意味で宿と称しているが、実際の所は空いている長屋を貸しているだけ。
部屋の掃除もろくにされていなければ、受付なんてものもない。何か厄介なことでも起きない限り、管理者が来るのは稀だ。

ギシギシと軋む扉を開けば、もう見慣れた一室が広がり。
差し込む月明かりの中で見えた小さな鼠の影は、小柄を迎え入れてくれるわけもなく、トタトタと慌てて暗がりへと逃げてしまうのだった。

……別に、良いけど。

> 一月ほど前から作業部屋として借りている部屋だ。荷は常に持ち出し、置かれているのは元々あった寝台や机、椅子などの家具のみ。
手探りで闇の中に手を伸ばし、テーブルの上に置いたままの燭台を探り当てると、指輪を擦って火花を起こす。
慣れた手つきで火を灯し、薄ぼんやりと明るくなった部屋を見渡して手近にあった椅子に腰かける。

今日の作業を始める前に、ほんの一時の休憩を。
寒さでかじかむ手に息を吹きかけ、現状の把握と情報整理を行う……。



師から与えられていた課題二つの内、一つは形になってきた。問題はもう一つの方。
赤でも青でもなく、白い火を使えるようになること。これはまだ目途は立っていない。
物理的、化学的な面では理解したが、それを忍の術に落とし込む方法がまだ見つからない。

――師と言えば。
遺跡探索で駄目にしてしまった黒装束の代わりに、師から忍装束の古着を譲ってもらった。
本当にお下がりで良いのか?と確認した師の顔を思い出す。
何故そんなに不思議そう……否、複雑そうな顔をするのか。よくわからない。
師の使っていた物が良いのに。新品では意味が無い。そう思っていたことを口にしたなら、どんな顔をされただろう……。想像は難しい。

如何せん体格が違い過ぎるのでそのまま使うわけにもいかず、サイズの直しだけは自分である程度出来たが、これも術式を組み込んで頑丈にしてもらう方が良いのだろうか? ……金額次第か。
依頼するなら、出来る限り早くするべきだ。何せ、まだ心は諦めきれず、“挑戦”する方に傾いているのだから。

とは言え、()の納得も許しも得られていないのに挑むつもりは無い。
あくまで、この身、この命は拾い上げた師のものだ。我儘は言葉にしても、行動に移してはならない。
暗殺者ギルドの詳細。少なくとも名前と拠点の一つくらいは掴まねば、口を開けて待つだけの雛鳥では挑む資格もないと言われてしまうに違いない。

優先順位が決まれば、灯火を見据えていた視線が上がる。

「修行は少し停滞するけど、仕方ない。
 まずは情報収集を優先。
 それと並行して、準備を急ぐ。服と、道具……。傀儡が出来上がったら……行動開始――」

ポツポツと雨音の如き呟きを紡ぎ、さぁ今宵も作業に取り掛かろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からさんが去りました。