2025/11/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区の荒屋通り」にアルクスさんが現れました。
■アルクス > 酒場の誰かが言っていた、いや、冒険者仲間の誰かが語ったかもしれない。
街角で耳にする可能性もあれば、馴染みの鍛冶屋の主といった商売相手がぽろりと口走ったというのもあり得るだろう。
貧民地区の荒屋通りには、隠れた商店があると。
そのエリアの中ではあまりに建物がボロボロなのもあり、家無しの浮浪者が住み着いてるケースはあれど、賊がうろつくことも少ない。
何故なら、ここで仕事をしても金になるカモがあまりないから、だとか。
ともあれ、そうして人気のない場所にこの男の住まい兼店舗は隠れていた。
崩れかけの家が寄り掛かり合って小山めいてるのが目印でもあるが、それを利用して内側に居住空間を設けてある。
それらの家の中は荒れ果てているが、便所の落書きみたいな羅列に開扉のヒントが書かれている。
アナグラムであったり、数字を用いた暗号だったり、多少頭を使えば解けるだろう。
その奥は、この男が溜め込んだ戦利品と、腕利きの仕事人から仕入れた品々が並ぶ店内へと続いている。
「──この帳簿も代わり映えしねぇわな」
カウンターに向こうに座り、頬杖をついて白いところの多い帳簿をペラペラとめくる。
こうも入り組んだ場所に店を構えると、月に誰も来ないなんてことも多い。
否、大半だ。
それもあって、金に困ると店の品を知り合いに売りつけて生活を続けているのだ。
一つ一つがそれなりの値が張る品ばかりなのもあり、一つ二つ売ればその月の生活に困ることはない。
だが、退屈でもあり、嘆息にランタンの火がうっすらと揺れる。
とはいえ、何もしないのも手持ち無沙汰だ。
立ち上がるとローブのポケットに手を突っ込みながら、ゆらりと店内をうろつく。
うっすらホコリを被った武具が見えると、眉をひそめながら鼻で小さく笑って自嘲も溢れる。