2025/09/30 のログ
セニア > 何度目かの溜息。
久しぶりのそのやりたくもない仕事はどうしても断れない筋からの依頼であって。
乗り気はしないものの―――といった感じで。
実に後味の悪い仕事だったなあ、と思う。

受けた以上は完遂しなければならないし―――何より放棄するという事はそこまで築いた信用も失いかねない。
そうなればこの稼業というのはおしまいだ。
無論、時間をかければ失った信用は回復するかもしれないが……それより先に野垂れ死にがオチだろう。

というわけで二進も三進も行かなくなった末、しっかりと仕事を終わらせた。
報酬は勿論、今の彼女の普段の報酬からすれば破格という程は貰っているものの。
気分は晴れない。
痛飲しての散財も考えたものの結局一杯頼んでそれまで。
そしてそれは手元にあって軽く持ち上げて。
すっかりとぬるくなってしまったエールがちゃぽ、と盃の中で音を立てた。

娼館通りの方に目をやって。
客がついたり、つかなかったり。
あれやこれやと呼びかけたり、まだまだ新人なのか不安げに立ったまま辺りを伺っている娘もいたりと。
様々な様子が見て取れて。
いっそ誰かを買ってしまうのもアリかなあと考えたりもする。
特にそういう気でもないのだがただとにかく散財したいという気持ち。
余り持っていたくないお金、という奴で。
ちゃら、と麻袋に入る貨幣に目をやって。

「流石にかあ」

ん~~と背伸び。
気が滅入ると妙な思考になる。
頭を軽く振って少しばかり気を入れなおす。
とはいえ、だからといって動いて飲み直したりやら、するワケもなく、先ほどよりはまだマシな雰囲気でそこに座り続けて。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアキアスさんが現れました。
アキアス > 大通り、歓楽街とも言える夜が最も栄える時間帯の場所。
紅い髪が揺れる頭を掻きながら娼館から出てくる男は、どうにも娼婦と楽しんだというふうではなく。

男はその日、馴染みの店に頼まれて、時折現れる無作法な客相手の用心棒的な仕事を請け負っていた。
その交代の時間となって、さてそのまま……と。行けばよかったのだが、生憎空いている娼婦もおらず。
年を重ねた、かつてはやり手の娼婦だったのだろう店主の老婆が冗談めかして相手してやろうというのを断って逃げるように出てきたところ。

そこそこに懐潤い、大した面倒もなく仕事も終えたから体力も有り余っている。
そのまま別の店にと入っても良いが、まずは一杯飲むかと、手近な酒場に脚を向けようとして。

「っお? よう、やってるか、セニア」

飲んで(やって)いるか、と。腰掛けて、なにやらいつもよりもジト目が剣呑なふうな知己を見つけて声をかけた。
いつも一見近寄りがたい雰囲気を醸す彼女だが、今日はその気配が更に強い。

ちらりと、彼女の格好を見て、それのせいだろうかと邪推する。
巻かれた包帯、あちこちに残る傷の跡。

冒険者稼業では付き物だし、その前の仕事でも慣れたものだろうが、慣れているからといって気分は良くないだろう。

ただ、その怪我以上にどこか剣呑なふうにも見えたが、空気読まずか読んで、あえてか。
彼女の隣に近場の椅子を引き寄せて、どっかりと座り込む。

セニア > ふと、娼館から見慣れた巨漢が出てくるのを見て何気なしにそちらを注視する。
それはまあ好色で誰彼、とは言わないだろうが娼館から出てきた割に楽しんだという節でもない。
大方、仕事なんだろうなあ、とぼんやりと見つめて考える。
血相を変えて娼館から出てきた分、面倒ごとから尻尾を巻いた、のかもしれない。

特に視線を合わしたりもしていなかったが……ずんずんと大通りに近づく。
大方酒場にでも行くんだろう、と思っていたら。
こちらに気づいたのか、声をかけてきて。

「やってない、かなあ」

すっかりとぬるくなったエールを手に持って遊ばせながら何とも気のない返事で。
そしてとんでもなくつまらなさそうな顔。
彼が出てくるまではこれ以上に酷い有様だったのでこれでもマシ、になったがアキアスの予想通り、この喧噪の大通りにおいて、そこだけシンとしているような空気である。
故に彼女もちょっとばかり離れた位置にいたわけではあるのだが。

そんな空気を読まずになのか読んでなのか、近くに椅子で座るアキアスを見て。
じとりと目を向けた後ふいと視線を外して。

「居ても面白い話もなーんにもないけど?」

ともすれば非難するような口ぶりで近くに座ったアキアスへと。
さっさと酒場にでも行った方がよっぽどマシだぞ、と。

アキアス > 男としては、仕事に入る前の目論見自体は外れたが。
その後の事はまぁ、ご愛敬レベルの話。老店主も本気で男を相手にするつもりではない。
さっさと他で遊んで来いというご厚意ですらある。

娼婦相手も勿論否やはないが、気心ある程度知れた相手との時間とは比べるべくもない。
それが特に、最近はいろんな意味で『仲良く』していた女だったなら、猶更、ということで。
声をかけたのはそんな理由からだが、どうやら感じた気配以上に、彼女のご機嫌は宜しくなかったらしく。

「なんだ、国勤めンときよりツンツンじゃねぇか。仕事で酷い目にでも遭ったのか?」

顔を背けて、聞きようによっては他所に行けと言っているに等しい台詞を聞かせてくる女。

最近は彼女とは宜しくやっていると思っていたところの機嫌の悪さに、虫の居所は相当に悪そうだと口元をへの字にして見せて。

「別に面白い話聞かせろなんて言わねぇよ。見かけたから声かけるくらいいいだろ。
 うまいこと酒に酔えないなら、男でも掴まえるか、美味い飯でも食いにいくとかよ。
 それも無理なら寝ちまうとか……ちょいと気分良くなる薬とか、まぁ、いろいろあんだろ」

彼女が何かで気分が晴れないのだろうことは前提として。
酒、男、飯。睡眠に、薬品。最後はあまり、元兵士に薦めるようなものではないだろうけれど。

「良い女が不貞腐れてんのは損失ってもんだからな。なんならお薦めでも教えてやろうか」

このくらいで良くなる程度の不機嫌なら安いけれどと思いながら軽口を聞かせ。
薦めるというのも、どれについて薦めるつもりなのか。
彼女の物言いを聞いてもすぐその場を去らないのは、少なくとも良い女、という点について、男の認識はお世辞ではないことの証左になるだろうか。

セニア > 色々とこちらに気をかけてくれる男。
その体躯にしては……というと失礼か。
何だかんだと気遣いは細やかだ。
そこが成功するにあたってやはり要因なのだろう。

無論、八つ当たりに近いものなのは自覚している。
しかしどうにもこうにも感情の制御がイマイチ今日は上手く行っていなかった。

「……」

仕事でひどい目に遭った、と言われ更に目が細められる。
図星ではあるし、だからといって肯定したくもなく、ただただ無言で目を細めるだけだが……アキアスにとってはわかりやすい仕草だったかもしれない。

「元兵士に薦めるこっちゃないのが多いなぁ。まあ、元だから今となってはどれも別に抵抗ないっちゃないんだけどもさ」

ははと笑う。
その笑いもいつものにへら、という笑いではなく、苦笑というか他人行儀な笑い。
そこでふと、男の上げた一つに反応する。

「男なら掴まったかな。不機嫌そうなツラしてる辛気臭いのにいい女だとかいってわざわざ付き合ってるもの好きが」

少しばかり自嘲した後、くい、とエールを喉に流し込む。
ついには気も抜けてしまったただ苦いだけの液体。

「まっず……」

そういいながらも吐かずに飲み下すのは貧乏性故であって。
ことり、と盃を横に置く。
アキアスの言葉を受けて、気晴らし自体はしていないけれど、先ほどよりはもっとマシな顔にはなったようにアキアスからは見えるかもしれない。


「ま、無理に付き合うコトないよ」

軽く腕を上げてひらひらと振りながら。
包帯の巻かれた腕であったので、じわりとまだ血は滲んでいて。
おっと、と思ったのか、腕をさりげなく元の位置に戻す。
ヘンに気を使われないように、という所作で。

アキアス > 男が、どこにでもいそうないかにもな冒険者風でいて。
相応の年齢でも、中堅冒険者としてやっていけているのは、彼女が目星着けたとおりの理由。

勿論若かりし頃はもっと直情的だったし。運よく掴んだものも多いけれど。

けれど、余計なちょっかいを出して少々説教臭くもあったかと思ったところ。
苦笑いのあとには、少々皮肉りながらもこちらをからかってくるくらいには、いくらか気分を持ち直したとみて。
それならば甲斐もあったかと、エールを飲む姿を眺めながら。

「無理だったら最初から座ってねぇよ。
 目障りだ、ってんならはっきり言ってくれねぇと察しが悪いんでご容赦ください、ってなるが。
 ……しかし、そうだなぁ。今日のセニアには薬のほうが良さそうだな」

改めて、無理に付き合うことはないと言われて、望んでこの場に居ることを伝えつつ。
彼女の方が忌避するというなら、そう言えばすぐ消えるつもりがあることも、遠回しにだが言及して。

僅かに間をおいて、よりにもよって、というものを選んで口にするが、
男の碧眼が、彼女の血が滲む包帯にと向かっているのに気づけば、薬は薬でも、良薬のほうを言っていると悟れるだろうか。

あまりよろしくないほうの薬と勘違いして、その上で男の提案に乗るなら、それはそれで後から面白い様子には、なるかもしれないが。

「丁度、知り合いが試用品だって置いてったモンがウチにあったなぁ」

思い出すのは魔法薬を作るのに長けた錬金術師の知己の新作。
塗っても飲んでも良いという治療薬らしいが、使うほどの怪我を最近は負っておらず、持ち腐れになりかけている。
このまま使えなくなるくらいなら、彼女に使っても良いかと思い、ちらりと反応窺うように視線を向けて。

女からすれば、良くない誘いにも、真っ当な誘いにも、それこそお持ち帰りの口実にも。
いずれにでも聞こえるような話しぶりになってしまっているが、本人は気にせず、「来るか?」と、聞いて。

セニア > 軽口の中に説教というかこちらを慮るのは感じている。
とはいえ、それを真っ当に飲み込むのも気恥ずかしい。

「察しが悪いとこの世界じゃ長生き出来ないねえ。人の事は言えないけどさ」

と言った後に。

「……薬ぃ?」

露骨にえぇ……という顔をするが、男の視線が包帯に向かっているので傷薬の方か……?
とも思い直す。
とはいえ先ほどの会話からするには明らかにトぶ奴でもあったのだが。
どっちとも取れず。
あるいはどちらもか。
幾らか付き合った事のある男の誘いだが、どれも可能性があって決めかねた所で。

「家……ねぇ」

じと、とまた目を細めてアキアスを見る。
その薬は家にある、と。
つまりは何にせよ連れ込むという魂胆も見えない事もない。
さてどれだ、と少しばかり考え込むが、そんなこちらの思惑など気にした風もなく、あっさりと来るかと聞いてくる。
察しがいいのか悪いのか、あえてわるい風を装っているのか。
何とも今日の彼女にはそれを上手く判断出来なかったが。

「ま、いいや。いいよ。いこ」

どれに転んでも、今ここで腐ってるよりは何百倍もマシだしろうと。
男の誘いによ、っと立ち上がる。
座っていた分、目立っていなかったが立てば思ったより全身傷だらけなのが見えるかもしれない。
どれも恐らく単純に包帯を巻いているだけなのか包帯が巻かれている箇所は須らく大なり小なり血が滲んでいた。

アキアス > それなりに長く冒険者をしている男に、長生きできない、と。
そう返してくるのは、皮肉なのか、深い意味はない一般論か。

どちらも言いそうな女だけに、その思惑は掴み切れないが。
ひとまず、薬をと提案したのは、受けてくれたらしい。

随分と逡巡があったのは、家に誘うのが気に入らなかったのか、と、少し碧眼を瞬かせたが。
すぐに、連れ込むのが目的で薬など無いと思われているのだろうと思い当たる。

「信用ねぇなぁ」

ぼそりと呟くも、そこには苦笑いめいて、仕方がないと思っている風な色も乗る。
普段の行いもだし彼女との付き合い方から考えてもそうだろう。

ともあれ、了解も得られたのなら、彼女と同じように立ち上がって、家までの道行を案内していく。
そのあとに治療だけで済んだかどうかは――……。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアキアスさんが去りました。
セニア > 【場所移動】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からセニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  今日もつっかれたー。
 なんて考えながら首をぐりぐり回しつつ、一日中働いて棒になった脚を引きずって帰路を辿る一人のヒーラー。

 いつしか大分爽やかになった秋風に目を細め。
 晴れやかな夜空に浮かぶ月の明かりに照らされて十字路を曲がると。

「うっわ……」

 まずは鼻についた血の匂い。
 そして次に目に映ったのは血みどろで路傍に転がる毛むくじゃらの塊。
 開いた口からひゅー、ひゅー、と息が微かに抜けて、僅かに上下する身体がまだ生のあることを示していたが……。
 時間の問題だろう、と思われるような瀕死の――

「犬……」

 一見するに野良犬だろうと思われる赤茶けてぱさぱさした毛並みの大型犬。
 思わずあからさまに顔を顰めて、別の道を行こうとする犬恐怖症。
 助けたりなんてできない。犬苦手だし嫌いだし怖いし。見るのもいやだ。
 引き返して他の道を行こうとしたけれど……。

「……、………。~~~っ………っくぅ」

 ちらっと見えた数か所に及ぶ傷口は……刃物で切られたもののように鋭利で。
 ぼろぼろに汚れて痩せた野良犬はどうも人間に虐待を加えられた末の惨状と一目で察せて。

「うぅ……近づくの怖い~……誰かぁ、他に……いなぁい…?」

 見棄ててとっとと帰るには余りにも惨い。良心が咎める。ともかく辺りをきょろきょろと見回して自分以外でなんとかしてくれそうな人とかいないだろうか…と他力本願全開で窺って悲壮な声で訴えた。

「だれかぁ~たすけてぇ~……」

ティアフェル >  ……そう都合よくはいかない。通りかかる者は足早に去って行き全然目も合わないし声をかけるどころじゃない。
 くそう、と頭を抱え。

「~~~~っ、もう! 誰だか知んないけど動物虐待すんなー!」

 悪態をつきながらもあちこち無残に切り裂かれて腹から腸まで覗いてしまっている有様に、相当苦しい思いをしたんだろうと眉を顰め。

「い、云っとくけど……イヌ…嫌いなんだからね……あんたのことだって怖いんだから……だから頼むから……治す…けど……こっち来ないでよ~……」

 恐々と道端に血溜まりを作ってその中に沈む死にかけた野良犬にぷるぷるしながら手を一杯に伸ばしてスタッフをかざして詠唱した。

「ひ……ヒール……」

 震える声で唱えると、スタッフの先から生まれた淡い暖色の光が傷ついた野良犬の身体を包み、みるみる傷を塞ぎ癒していく。
 ひくひく……と僅かに痙攣するばかりだった虫の息だった犬の目がぱちっと開き。何事が起ったのかと幾度か瞬きしてはっはっはと息を吐きながら倒れていた体勢からしゅたと起き上がり。

「……はあ……蘇生した……?」

 何とか戻って来たらしい、と安堵しては。これ以上の長居は無用とさっさと裾を払って立ち上がり去ろうとしたのだが。

「っえ…?! う、あ、きゃああぁぁぁあぁ!!」

 生死の縁から復活した野良犬が一目散にこちらへ向かってきてわんわんと賑やかしく吠えながらじゃれついてきたので堪らない。
 真っ青になって恐怖に引き攣った顔で悲鳴を上げじたばたと暴れ。

「いやいやいやああぁぁあ!! 来ないでってば…!! 離れて放してえぇぇぇ!!」

 強姦現場もかくやというような切羽詰まった犬恐怖症の泣き叫ぶ声。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にスヴィチューナさんが現れました。
スヴィチューナ > 月に二度の貴重なお酒堪能散財タイムを十二分に堪能して、後は寝るだけの
幸せが待っているぼろな長屋に帰るだけの保険医。
ほろ酔い通り越して、結構いい気分でふらふら歩いていたが、
不意に聞こえてきた悲鳴に折角の酔いもさめたようで、
びくぅとか大きく身震わせながらその方向に顔向け。

「え・・・ええっと・・・」

なお、保険医自身も貧民地区に住んで長く、
ある程度はここでそのような声上がる理由に迂闊に関わる事が
どういう事か判っていない訳ではないが、だからといって見捨てる事も出来ず
最悪付近の少し息り散らしたお兄さん探して、多少の路銀でどうにかしてもらうのも
視野に入れつつ近づいていったが。

「あ・・・っ!だ、ダメですよおっ!
これ以上近づいたらただじゃ置きませんからねえっ!?」

覗き見た状況は猛犬に女性が襲われているようにしか見えなくて、
思わず飛び出してよたよたと犬と女性の間に割って入り、女性に背向けて両手を広げ、
庇うように立ちふさがってしまい。