2025/09/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にセニアさんが現れました。
セニア > 【夕方:王都マグメール 貧民地区 道具屋「悪戯妖精とキャンディー亭」店内】
ふわあああと欠伸。
カウンターに頬杖ををつき、客が来るのを待つ。

昼過ぎに数人程客が来たが、それ以外はほとんど客もこず、平穏(退屈)な一日であった。
まあ店番しているだけなので、詳しい事などを聞かれてもポーションだとかの一般的な道具を、経験上の事でしか伝えれないのでそれでよかったが。
何故今ここで店番をしているか、と言うと知り合いに頼まれてのコトである。


どうしても数日空けないと行けない仕入れと用事がある、との事で相談されたのがちょっと前。
いい事でもあったのか、奢るなどと言われてほいほいと奢られれば切り出されたのがそういうことであった。
とにかく番号通り出してくれたらよし、客注品は名前と伝票で一致した荷物を渡すだけ。
補充も番号通りに整理しているから出せばよし。
外出中札もあるので、休憩やらも適当にとってよし。
値札通りに売ればよし、値引き交渉は基本突っぱねてよしの簡単なお仕事。
急遽のお雇いなので詳しい事はお伝え出来ません、との張り紙もしてある、という事で面倒ながらも奢られた弱みをチクチクと突かれて渋々承諾し。
そして今一日目が終わろうとしている、そんな時である。


ここ、「悪戯妖精とキャンディー亭」は所謂まあ普通と言えば普通の道具屋で。
貧民地区に位置しているだけあり、多少アングラっぽいものやら所謂大人の玩具コーナーもあるがその程度である。
商品自体はごっちゃごちゃしているものの……店主が几帳面なのか、とにかく番号管理がされている。
普通の道具屋では見ないようなものも見る者が見れば色々とあるものの、彼女にとっては言われた番号を金額通りに売るだけなので。
ありがたみを一切感じていなかった。

「ねっむ……」

とはいえヒマはヒマなのでどうしても欠伸と愚痴は出てしまう。
ぼーっと入り口を眺めたり、たまーに陳列されているお客が眺めて乱れた個所をテキトーに並べなおすぐらいしかする事が無い。

客が来て多少はやることがある方がいいのか、こうやって暇と戦うのはどちらが楽なのか。
経営者からしたら前者なのだが、ただの雇われで日当固定という事で彼女にとっては難しい問題であった。

セニア > しょうがないので店の中を並べ直すついでに物色する。
既に数回目ではあるものの―――何もしないよりかはマシであった。
よく見るポーションから……傷薬、包帯。
何に使うんだろうか全く分からない粉末。
瓶の中一杯の何らかの液体の中に浮く目玉。
一応、簡単な名前と効能等は書かれており、へえ、とは思うもののどう使うのかどうかなどピンとはこない。
店内奥、ちょっと陰に隠れた部分は所謂成年向けという事で少しばかり隔離されていて、妙に陰気なオーラが漂っているので一旦近づかないでおく。

見れば見る程雑多なアイテム群に店。
それら全てに几帳面にもラベルが張られ、番号・金額が明記されている。
それだけ知識があるのか―――単に吹っ掛けてるだけなのかはわからない。
知り合いとはいえそこまで仲がいいワケでもないのだ。
一応調合などはしているようだが。

小さな小瓶をなんとなし手に取りラベルを見る。
『A-33:35G:効能・瞬間的な興奮、発情:無味無臭』

「……媚薬じゃん」

成年向けではなく、普通のアイテム群の中にさらっと混じっている媚薬。
一応ラベルの番号を見る限り、通し番号なのでここにあるようだが明らかに向こうな気がする。
とはいえ勝手に並べ替える気も無いのでことり、と元の場所に戻す。
一通り店内を回るが、そもそも来客も少なかったので乱れた部分も余り無かったのですぐにカウンターへ戻ってきてしまう。

「……ここ、儲かってるのかなあ」

無論、店主不在という事で来ていない常連とかも居る気もするが、明らかに一日の来店が少なくちょっとだけ不安になる。
日当が出るのか、と。

セニア > と、ぼんやりしていると閉店してもいい、と言われた時間だ。
まだ後数日あるとはいえ……こんだけ暇なのはいい事やら悪い事やら。
今日はさっさと閉めてしまおう、とカウンターから立ち上がり。
言われた通り閉店業務をさっさっと行っていく。
売り上げを金庫に入れ、売れた番号をメモに記帳。
ラベルを使用済みラベル入れに入れて終わり。

「さーて……どっか飲みにでもいこっかな」

うーん、と背伸びして道具屋を出る。
ドアを閉め、クローズドの看板を掛けて、

「えーと……」

ごにょごにょと魔法錠の合言葉を呟くと、カチャとドアに錠がかかる音がする。
場所が場所だけにセキュリティには力を入れている、らしい。
軽くドアを引いても動かないことを確認。

よし、と呟いてその場を後にした。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からセニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシトマさんが現れました。
シトマ > 「ふうっ、すっかり暗くなってしまいました…。」

日も沈み薄暗くなった貧民地区の路地裏をのんびりと歩きながら少女は空を見上げる。
平民地区での奉仕活動に貧しい庶民宅での宗教的儀礼などいろいろとこなしていたらすっかり遅くなってしまった。
教会にも仕事をいくつも残しているため帰り道を急がなればいけないのだろうがその足取りは暢気なもので、近道である裏道を使いながらも焦りの様子は微塵も感じられない。
それどころか時折すれ違うストリートチルドレンや、窓から顔を出しているならず者たちと挨拶や雑談を交わしたりと、むしろ道草を食っている始末だ。

シトマ > 「…あれ?なんだか思ったよりも時間が経っているような…。さすがに急がないといけませんね…。あっ、そうだ、今日はあの道を使いましょう。」

のんびり街の人たちと談笑しながら歩いていたせいで、思ったよりも帰りが遅れてしまっている。
さすがに帰路を急がないとと少女はさらに近道となる細い裏路地へと進んでいく。
貧民地区の中でも輪をかけて薄暗く細い裏道はさすがに人通りもほとんどなく、そんな道を慣れた足取りで少女はスタスタと進んでいった。

「…まあ私の帰りが遅れても、それはそれで他のシスターたちがこなしてくれていそうな気もしますが。皆さんとても優秀な方たちですからねぇ…」

独り言半分そうであったらいいなという願望半分、少女は足取りは緩めることなくも一人そんなことを呟きながら路地の角を曲がる。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にオズワルドさんが現れました。
オズワルド > 「おう、次からにいちゃんにちゃんとついてって、はぐれるんじゃねーぞ。」

 『わかったよにーちゃん。』『ありがとおにーちゃん。』

そんな会話を交えたのち、貧民地区でヤベー場所に迷い込んだ兄と妹の二人組を手を振って見送った夜も暗くなる頃合い。
今日の一日にタイトルを付けるとしたら、オズワルド迷子に出会うだな、とか考えるくらいにはちょっとした冒険だった。
ともあれ、そうやってひと騒動片付いたところだし。

「途中で酒でも飲んで帰るかな…つまみに野菜の酢漬けとか…。」

胃に優しい食べ合わせを考えながらに、路地裏を歩き、角を曲がって――

どんっ。

丁度角を曲がった、というタイミングで。何か、あるいは誰かにぶつかった感触。

「おお!?」

びっくりした様子で、ぶつかった何かに視線を向けて。

シトマ > 「あともう少しで教会です。…ふふっ、やはり急ぎの時は近道に限りますね…きゃっ!?」

まさかこんな裏路地で人と出会うことなど想定しておらず、少女は男とぶつかった。
咄嗟だったため身体こそ触れたものの持ち前の身体能力で培われた体幹でバランスを崩したりはしない。
また相手にけがを負わせないようにと反射的に後ろに下がったため、男からしてみれば先ほど見送った迷子たちと同年代くらいの子供とまた邂逅したのかと勘違いしてしまうかもしれない。

「すみません、急いでいたもので。お怪我はないですか?」

普段はのんびりとしている少女でもさすがに慌てて頭を下げる。
そしてきまり悪そうに顔を上げて男を見ると、申し訳なさそうに怪我の心配をし始める。

オズワルド > 此方はこちらで、学生兼業とはいえ冒険者。人一人がぶつかったところで倒れることもないのだが。

「いやいや、びっくりしたけど別に痛みはないし、それよりそっちこそ大丈――」

きらり。輝く赤いまなこ。
視線がとらえたのは、自分よりだいぶん身長が低いが愛らしい顔立ちの女の子!
声も涼やかで可愛らしい!
悪いが、迷子になってた子供らとはモノが違うな…。そんな素早い思考ののち。

「いや!これはもしかしたらだめかもしれないなー。このタイミングを逃したら胸の内が痛み続けるかもしれないなー。
 でも急いでたってことは迷惑かもしれないが――」

すとん、少女の前で片膝ついて。

「お嬢さん、オレにナンパされません?」

頭の高さを同じくらいに下げながら、青い瞳を覗き込んでド直球のナンパセリフ。
なんなら、逃げられないなら両手で貴方の手を取って頼み込むくらいのストレートだ。

シトマ > 「えっ!?肋骨でも逝ったのでしょうか?でもそんな手ごたえはなかったような気が…」

痛みはない、という言葉をすぐに撤回し胸の内が痛むと茶番のように振舞う男の言葉を少女は本気で信じたらしい。
片膝をついた彼に回復魔法をかけなければとあたふたと祈りを捧げはじめようとする。
しかし彼が少女の頭の高さに合わせ瞳をまっすぐ覗き込みながら唐突にドストレートな言葉を投げ込むと、少女は一瞬硬直して思考停止。
男の両手で手を握られも抵抗すらできないほどショートした頭でしばらく考え込んだ。
そしてようやく考えがまとまったらしく、天使のような、まるで運命の相手を見るような、そんな満面の笑顔で答えて見せる。

「…いいえ、お断りいたしますね?それより治療しますから横になってください。」

どうやら彼は脳震盪を起こしてしまったらしい。だから支離滅裂な発言をしているのだろう。少女はそう結論付けてそして手を包み込んだ男の両手を素早く握り返すと小手返しの要領で地面に汲み伏そうとする。

オズワルド > 「ぐえー!」

見事に組み伏せられた。そしてフラれた。

「くっ、そんな修道女から横になって治療をしますとか言われたらただの魔法治療かもしれないけれど期待してしまう。
 とはいえ別に痛いところはないんですよ。マジで!ただちょっと可愛い娘とお酒を呑みたいだけなのに!」

ああ、天におわす神よ。我を見捨てたというのでしょうか!ただちょっと修道女さんと一緒にお酒を呑んでいい雰囲気を作ってムフフしたかっただけなのに――!
救いを求めて天に手を伸ばそうとしても、組み伏せられているから無理である。ぐえー。

「あ、ちょっとまって手首がイイ感じに決まっててちょっと痛い、いたたたた。」

じたばた。
聖堂格闘術のタツジンからは逃げられない!

シトマ > 「…?骨折と脳震盪、治ったのですか?それは良かったです!…これも我らが主の御業のおかげ…。」

組み伏せた男がじたばたと暴れながら騒ぎ立てると、どうやら本気で彼の言葉を信じていたらしい少女は痛いところがないと宣う男をどうやら神の奇跡により回復したとでも思ったのであろう。
天に祈りを捧げると、あなたもともに祈りを捧げましょうと組み伏せたばかりの彼の腕をグイっと引き上げて、今度は跪かせようとする。

「まったくもう。私は主に身を捧げ清貧に生きる修道女なのですよ?…お酒なんてもっての他…お酒…お酒、ですか…。ん~…。」

彼のナンパに対しては毅然に断りつつも、お酒という単語には何度か反芻して惹かれてしまっていた。
どうやら聖女に在るまじく、酒はちゃっかり嗜むらしい。
清々しいほどにきっぱりと断りを入れた先ほどまでとは比べ物にならないくらいの葛藤を見せると、しばらく悩んだ末にボソッと返事する。

「そう…。主に身を捧げ、毎日しっかりと清貧に生きる修道女ですもの。たまのひと時くらいお酒を嗜んだって…お許しになるでしょう。何せ主は寛容なのですから。良いですよ。一緒にお酒を酌み交わすくらいなら。」

オズワルド > 「んんんん!?」

この女の子、思ってたより天然だな!?そしてパワフルだ!
天然修道女になされるがままに跪き――おお!見るが良い!引き上げられたその腕は、祈りの形に組まれている…!
この女の子、やはりタツジンでは? オズワルドはいぶかしんだ。

しかして。

「…。そうそう、お酒ですよ。ほら、神の血がワインって説もあるじゃないですか。」

ひそひそ。悩む様子にそっとそそのかしにかかる。その甲斐があったか、はたまたこの天然達人修道女(仮名)がお酒に弱かったせいか…

「やったぜ。
 そうですね、主は寛容、優しい。たまには許してくれる。流石神様です。」

おお、神よ。貴方の導きの元こうしてナンパができましたありがとう、今度寄進します!
祈りは、ここに――!

「じゃ、飲み行きましょうか。お酒の好みある?ワインか、黒ビールか、リキュールとかもあるかな。
 貧民地区でも酒の品ぞろえだけは良い店があるんですよ。
 紅の樽って店なんですけど。」

知ってます?って首を傾げつつ…そろそろ、跪く姿勢解除しても大丈夫そうっすかね…。ぷるぷる震えながらお伺い。果たしてタツジンの技は解かれているかどうか…。

なお、解かれたならば店までの案内は迅速である。

シトマ > 「ええそうですとも。我らが主は寛容であり、そして慈愛に満ちているのです。」

男が訝しんでいる横で少女は勝手な自己解釈で清貧の教えを破ることすらも寛大に許してくれたであろう神に感謝の祈りを捧げると、無理やり祈りを捧げさせられた男がナンパ成功のお礼をするように神に祈りを捧げた姿を見て満足そうにうなずいた。
ただし、彼が何に対して感謝しているのかには気づいていないようだ。

「お酒の好みだなんて、もう。私は主に身を捧げ、清貧に生きる修道女なのですよ?信者の方に出していただいて勿体ないので多少嗜むこともありますが…今日だって特別お付き合いするだけで…その…出されたものなら何でも戴きます。」

慣れない祈りの姿勢でプルプルし始めた男の横で祈りを終えて立ち上がった少女。
さすがにもう姿勢を正しても大丈夫だろう。
店へと案内する彼に対して早口気味に言い訳をしながらも、言わんとすることはアルコールさえ入っていれば大体何でも美味しくいただきますということで、そのまま案内されるままに彼の薦めた店へと連れ行かれるだろう。

オズワルド > 「あ、じゃあオレからおすすめの酒を紹介する感じで行きましょうか。」

立ち上がること、許されたり…!神様ありがとう、修道女様が許して下さったのはたぶんあなたのお陰です。
立ち上がりつつ祈りをもう一つ。

ともあれ、無事立ち上がれたことだしと、そのまま向かう酒場"紅の樽"
外観はまさに貧民地区!と言った風情ではあるが、内装はしっかり整えられている。
逆に言うと、それだけ酒飲みが集まる場でもあるというわけで、夜の近い時間帯であっても客の入りはそこそこ多いのだけど――

「あ、カウンター空いてる。カウンター座りましょうか。」

こっちこっち、と手招いて、カウンター席の方に落ち着こう。きっとお隣に座ることになるはずで。

「それじゃ、出されたら何でもとの事なので、一杯目オレが選んじゃいますね?
 あ、でももしこれ興味あるとかあったら、このメニュー表から選べるんで。」

良ければどうぞ、とメニュー表は用意しつつ、自分はマスターに声をかけてカクテルを二つ用意してもらおう。すいませーん。

シトマ > 「そうですね、何せ私は清貧に生きる…そもそもお酒の種類も良く知りませんので、その方が助かります。」

いちいち言い訳をするあたり、後ろめたさはあるのだろう。
とはいえ彼女自身本当に酒の知識は少ないようで、彼の提案はありがたい。
そうして連れられてやってきた"紅の樽"の内装はしっかりしていて、少女は店内を見渡しながらほうと感心していた。

「お?場に不釣り合いな姿を見かけたからてっきりシスターからのお叱りでもあるのかと思ったけどよ、なんだよシトマちゃんかよ。」

「へ~、いつもはおさわりしたら腕がもげるくらいねじってくるクセに、今日は男連れかい?」

「えへへ、こんばんは。…も~、あんまりおいたな事言ってたら口をねじ切っちゃいますよ?」

酒場の中には少女を知る者もいるようで、挨拶を交わしたり軽口を言い合ったりと貧民地区の住人たちとは仲良さげだ。
そして彼に招かれてカウンターに座ると、男の選んだ一杯目にじゃあそれでとわからないまま相槌うってカクテルができるのを楽しみに眺めている。

「…おい、兄ちゃん。そのシスターちゃん…あんま飲ませすぎんなよ?滅茶苦茶弱えから…。持ち帰りてえなら特に、な。」

カウンターで彼の横に座っていたならず者風の男が、少女に聞こえないような小声で耳打ちした。
どうやら彼女の酒乱と酒の弱さはそこそこ知られているらしい。そして彼の真意にも気づいているようで頑張れよ。今度感想聞かせてくれよなどと親指を立てて見せた。

オズワルド > 「お、結構お知り合い多いんだね。」

お客さんとおしゃべりする様子に、おや、と意外そうにぱちくり瞬き。
お酒を良く知らぬと言っていたが、はて…と首をかしげるも。ああ、と一つうなずいた。

「なるほど、シスターとして知られているのか。」

そして暴力シスターとしても知られているのか。ひどく なっとく した。
そんなところに小声でささやかれる耳打ち。すっ――赤い瞳が一瞬、横目で男を見やり。
フッ…。
わかったよ…とばかりにふてきに笑って、それ以上の反応は見せない。また今度、店に来るよ…!

と、そんな会話をしている間に、届けられたのはグラスに注がれたオレンジ色のカクテルが2杯。

 『こちら、ご注文の品です。』

ことり、ことり。 二人の前にグラスが置かれる。…ガラス製品があるあたり、この店はだいぶ繁盛しているのが判るかもしれない。

「これはファジーネーブルってカクテルですね。甘いけど爽やか系なんで、最初の一杯向けです。
 桃のリキュールとオレンジ果汁のカクテルなんで、飲めないってこともないかなと。」

なお、度数は店舗に寄るが、3~5度ほど。強すぎることはない一杯だ。
まあ、流石にこの一杯で落ちるほどじゃなかろうなんて思いつつ、グラスを手に取って。

「では、神様のちょっとしたお目こぼしと慈愛に。」

乾杯、と小さくグラスを掲げて見せた。

シトマ > 「ふふっ、私を舐めてもらっては困ります。これでもこの辺りでは聖女として有名なんですよ。私。」

少女の言葉に酒場のあちこちから聖女?という疑問符が付いた復唱が起こるあたり、どちらかというと暴力シスターとしての印象が強いのだろう。
そして少女はこの一帯では弄られキャラとしての地位を確立しているのだろう。
復唱した男たちにもうっ、黙ってくださいと頬を膨らましながら威嚇して見せるも、その姿には迫力はない。
そんなやり取りの合間に彼とアイコンタクトを取ったならず者は酒の入ったグラスを乾杯するように上げて、君に幸運を。とでも言うように不敵に笑い返す。

「わっ、まるで果物のジュースみたい…。とっても美味しそうですねっ」

目の前に置かれたグラス。
そもそも硝子で作られた器で出される飲み物自体が貧民地区では珍しい。
そして鮮やかなオレンジ色は少女の目を奪い、まるで子供がきれいな宝石を見て目を輝かせるかのように目の前のお酒に見惚れていた。
彼の乾杯に合わせて少女もグラスを手に取ると、神への祈りを捧げて乾杯する。

「ええ。寛大なる我が主のお目こぼしに感謝します。」

そしてグラスに唇を触れ、一口目をこくっと飲み込んだ。

オズワルド > 「ははぁ。御見それしました。」

両手を上げて、参ったの構え。
しかしちらり、周囲の様子をうかがうに。
聖女、という部分には首を傾げざるを得ない。
んんー…少しばかり考える間が挟まり。

まあ、ファジーネーブル見てる様子が可愛らしいから聖女でいいか!
この男、女に弱い。

「ふふ、せっかくのカクテルなので、眼で見ても美味しそうなものが良いかと思いまして。
 聖女様も喜ぶとなれば、これは女子ウケ度急上昇。明日からこの店に来店する男女二人組はこのカクテルを頼み始めますね。」

わかってますよ、とばかりにうなずいてから。
かんぱい!
グラスに口を付け、くいーっと一口。下の上で軽く転がして味を楽しんだ後、こくりとのど越しを楽しんで。
はふ。
程よいアルコールと果汁の甘酸っぱさに、眼を細めた。良いオレンジ使ってるな。

「どうです、聖女サマ。気に入ってもらえました?」

最初の一杯目。気に入ってもらえたなら、さてツマミに何かも頼もうかな、と思いつつ。顔色をお伺い。

シトマ > 「ふふっ、苦しゅうない。」

これまでのやり取りからだいぶん気を許してきたのだろう。
少女はエッヘンと胸を張りながら得意げに振舞って見せる。
とはいえ、やはり疑問符を付けた店内の男たちに対しては釈然としないのだろう。
いま疑問符を浮かべた皆さん、明日の夜道は気を付けることです…。
なんて物騒なことも呟いたりして。

「はい…どんなものかと思いましたけどこれは…とても鮮やかで見ているだけでも飽きませんねぇ…」

男の言葉にこれまで以上の、男を振ったときに比するほどの満面の笑みで頷き、酒精がそこまで強くない分舌先で味をしっかり楽しみ、こくっと喉を鳴らして飲み込んだ。
顔色を伺う男が少女を覗き込むと、たったこの一口だけでしっかり顔を赤くし酔いが回っている残念な下戸っぷりがわかるだろう。

「えへへ~聖女サマ気に入っちゃいまひた~!さっぱりしてて~おいしくて~…色も黄色っぽいから私の髪の色そっくりで可愛さ満点っ!ですっ!」

そこまで強くない酒をたった一口で完全に酔いつぶれた聖女様(恥)の出来上がりだ。

オズワルド > 「まあまあ、今日は楽しい席ですし許してあげましょうよ。」

どうどう。
グラスを一旦テーブルに置いてから、なだめるように両手を動かす。

「でしょう?
 お酒は味や香りだけじゃなく、見た目でも楽しむことができる。それを知ってもらえれば、お酒に誘った身として嬉しい限りですよ。」

なので、これ以外にも美味しいカクテルを味わってもらえれば。そう願って、満面の笑みを浮かべていた聖女サマを見つめていたのだが――
おおっと、酔っ払い聖女サマ生誕。

「………。
 ですね!聖女サマの髪の色によく合うと思ってたんですよ。
 でも、甘いだけじゃ物足りないでしょうし、ちょっとしょっぱいものも頼みましょうか。
 すいませーん、グリッシーニ一皿お願いしますー。」

説明しよう、グリッシーニとは! 細いスティック状のパンに生ハムを巻き付けたおつまみである!
生ハムスライスして巻き付けて出すだけなので、割と手軽に出て来た。カウンターテーブルの上に、『お待たせしました。』と置かれ。

「さ、つまみも来たし大いに楽しみましょう、聖女サマ。今日はお目こぼしいただけますから、多少ハメを外しても大丈夫ですよ。」

なんて――オツマミも挟みながら、この酔いつぶれ聖女様にしっかり、1杯分のお酒は召し上がっていただく。
その方が、お持ち帰りしやすそうだし――!

そんなわけで――楽々酒に酔わせてしまった聖女サマを、連れ込み宿に連れ込む計画は順調に推移。
後は一杯目を呑み切ったタイミングで連れ込めるかを見計らうのみ――!

なお、可能と判断した時点で、さくっと酔っ払いを連れ込む気は満々のため、併設されている連れ込み宿への受け入れ態勢をささっとウェイターにハンドサインでお願いしたりもしていた。

果たして、連れ込み成るか――!

シトマ > 「ええ、もちろん楽しい今日の席では許しましょう。今日の席、では。」

なだめる男に明日はわからないけどとでも言いたげに強調するが、悪戯っぽく微笑むその表情は本気で言っているわけではないことを物語っている。

「わ~パンですね~!私パン好きなんれすよ~よくわかりましたねぇ私の好物。聖女サマ褒めて差し上げます。ヨシヨシ」

お酒を楽しむ少女に誘ってよかったとばかりに喜ぶ男だが、残念ながらすでに仕上がった少女はきっとこの一杯が限界だろう。
男が頼んだおつまみを少女は知らなかったが、目の前に出されたそれが生ハムの巻き付いたパンであり、そして少女はパンが好物であったためとても喜んだ。
立ち上がり、背伸びをしてよしよしと頭を撫でると美味しそうにグリッシーニを頬張った。
本人に酔った自覚がないのか、勧められる間もなくファジーネーブルをごくごくと飲んでいく。何なら隙を見てまだ自分の者が残っているのにもかかわらず男のグラスにまで口を付ける始末だ。
互いに談笑しながらそして空気を読んだ酒場の客たちも酔っ払い聖女をヨイショヨイショして機嫌を取り、アシストしながら甘え上戸に仕上げていった。

「ぷはっ!えへへ~、聖女サマはぁ…とっても満足ひましたっ!大満足れすっ。また褒めて差し上げましょう。」

すっかり出来上がった少女は前後不覚で男の肩にぐでんともたれ掛かりながらしきりに頭を撫で続けていた。
酒場の皆が男を祝福するように親指を立て、グラスを掲げてしっかり据え膳食らって来いよと無言のエールを送る。