2025/09/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイグナスさんが現れました。
■イグナス > 仕事を終えての帰り道…のはずだったんだが。
昼下がりの時刻に、一歩一歩と足を踏み出して視線をぐるりと回した。
貧民区の路地裏。昼間でもそこは、ちょっとばかし暗かった。
「えェと、こっちにつながってるから――……おう?」
かくりと首を傾けた。
先日このあたりで道に迷ったゆえに、散策でもして道を把握しておこうと思ったのだけれど。
…また迷い気味である。どうしたものか。
地図を買うという手もあったのだけれど、なにせ色々勝手に建築されている。
案内人を雇うのが一番良かったのかもしれない。十字路でのしりと立ち止まって見渡す。
はて、ほんとうに見覚えがあまりない。
「だいぶ長く、住んでンだと思ったんだがなァ……。」
あんまりこの辺りは立ち寄らないから仕方ない、そういう言い訳を己にしながら。
でもちと困ってしまって、はて、と立ち尽くしてしまったのだった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」に枢樹雨さんが現れました。
■枢樹雨 > ほぼ日課とも言える、街の散策。
じりじりと肌を焼くような陽光を避け、影の多い貧民地区を歩くことしばらく。
決して広くはない裏路地に、壁とも思える背中を見つける。
思わず数秒立ち止まり、長い前髪の下でぱちぱちと瞬き繰り返すこと数度。
改めて歩き出せば、カラ、コロ――と白木の下駄を鳴らし、貴方の背後より近づいていく。
別段危害を加える気もないのだから、足音顰めるでもなく、常の小さな歩幅でゆったりと。
「なに、してるの?」
距離にして2mほど。
随分と高い位置にある貴方の頭を見上げ、首を傾ぐ。
小さな鬼角を隠す白絹が僅かに揺れ、長い前髪がさらさらとこめかみの方へと流れれば、仄暗い蒼の双眸が覗き。
■イグナス > 貧民街の雑多なこの空気には似付かわしくない、音。
涼やかとすら感じるそれに、一瞬驚いたように瞠目した。
「お。」
ぱちくりと瞬きして振り返ると、やはり音に似付かわしく、この地区に似付かわしくないと感じるソレについ、注目してしまった。
ああ、と一瞬見惚れていたことに気づいたが、すぐに問いかけを思い出して、わらう。
ぐるり、と周りを見回して。
「いやァ、迷った。……お嬢ちゃんこのあたりの人?できりゃあ、助けてくれる助かるンだが。」
ぐいと胸を張って、まるで困ってなさそうに、ガハハと豪快に笑う。
粗野で粗暴で、いかにも冒険者といった風体の男だったが、どこか人懐っこく。
■枢樹雨 > 見上げれば交わる視線。
燃え盛る炎のような瞳を眩しがるかのように、少しだけ細めた双眸。
印象的な左目の傷に視線奪われた後、返る言葉に緩く首を横に振って。
「この辺りに居を構えてるわけじゃないけれど…、行先によっては案内できるよ。
どこに行きたいの?」
淡々と、抑揚のない声音。
それとは対照的な、貴方の笑い声。
大きな身体から発せられるそれに若干の圧を感じるも、纏う雰囲気がその圧を和らげている。
それ故に自然と対話を続ければ、先ほどまで貴方が向いていた方向をちらり見遣り、行先を尋ねて。
■イグナス > 「家に帰りてェ。―――あ、いや。その前にギルド寄ンねえとな。仕事の終わりだ。」
仕事が終わったことを明かしながら、行先の案内を乞う。
――その間にも少し気になるのは、どこか抑揚のない、淡い空気感だ。
言葉を重ねながら、ふむ、と頷いて、ついじっと見下ろした。
「……、ついでに美味い飯でも食える場所がありゃあ嬉しいけどな。
…お嬢ちゃん、あー……いや、おれはイグナスって云うんだが。」
彼女のどこか掴みにくい空気に興味を持つように言葉を続ける。
一歩歩めばその巨きさから影が落ちる。
先に名乗って、彼女の名前も併せて聞こうと試みて。
■枢樹雨 > 初手に家と言われてしまえば、前髪の下で思わず眉根が寄る。
しかしギルドと続くなら眉間の皺はすぐさま緩み、己が歩いてきた方向を軽く振り返って。
「平民地区にある大きな冒険者ギルドなら連れて行ってあげられるよ。
…冒険者なのに、迷子?王都には、あまり来ないの?」
案内が可能である旨を伝えた後、ふと浮かんだ疑問。
それは、冒険者であれば王都の地理には明るいものという、勝手な先入観からくるもの。
不思議そうに首を傾げ、此方からも問いを投げかけると、近づく巨躯に更に視線は上向くこととなる。
正しく見上げる姿勢。長い前髪はさらにこめかみの方へと流れ、仄暗い蒼の双眸が露わとなって。
「美味しいごはん?……私の分もご馳走してくれるなら、それも案内してあげる。
…私は、枢(くるる)。イグナスは、大きいね。」
重なる要望に、ふと己の腹に掌を乗せる。
霊体から実体へと変化ししばらく。そろそろ空腹を感じ始めたと思えば、ちゃっかり貴方へと強請ってみる。
それが当たり前であるかのように、警戒心の薄い佇まい。
名乗られれば素直に己の名も返し、陽光届かずとも鮮やかな赤の髪を見上げ。
■イグナス > 冒険者なのに。その言葉には、うって詰まる。
ちょっと気まずそうに、ちらと明後日の方向眺めつつ。
「いやァ。…よく来てンだが。
………みち、あんま得意じゃねンだよ。」
迷宮とかなら問題なく覚えるんだけどなー、なんて嘯いて。
実際たぶん、集中力が足りてなくて。
気を取り直すように、ごほんと咳払い。
「おう、そりゃあ助かる。…くるる?
あンがとな、………しかしまァ、なんだ。おれがいうのもなンだがよ。
昼間ッから、こんな場所うろついてて危なくねェもんか。」
大男で冒険者で、こういう己ならばまあ問題もないが。
場所は路地裏、彼女のようなほのかな空気感にそんな疑問も。
促すように足を踏み出して、まずは食事処か。案内を頼みながらの雑談。
歩けば大きな影が、ふいと揺れる。
■枢樹雨 > 何やら言葉に詰まる様子を見せる貴方。
言い淀んだ末の返答を聞けば、しばし貴方をじぃ…と見つめる蒼の双眸。
わかり易く変化を見せる貴方と違い、此方は表情もまた碌な変化を見せなくて。
「大きいのに、迷子常習?」
無表情。平坦な声音。
それは変わらないはずなのに、見上げる蒼に確かな揶揄いの色が滲む。
それと同時に伸ばされる右手。
華奢な指先が貴方の左手の指を柔く握ること叶えば、そのまま手を引いて平民地区の方へと歩き出そう。
叶わなくとも、目的地へと向かう歩みは止まらず。
「危なくても、危なくなくても、行きたいと思った場所を歩くよ。
面倒事は好きじゃないけど、望みに反するのは嫌。」
歩き出せば、白木の履物が石造りの地面に当たり、カラコロと涼やかな音を鳴らす。
己の一歩は、貴方の一歩に比べればきっと半分にも満たないだろうか。
それでも焦ることなくマイペースに歩き、言葉交わそう。
■イグナス > ぐぬ、と言葉にまた詰まる。
おおきくても迷子になンだよ、って言い放って。
大きな子供みたいに、ちょっとだけ拗ねたように軽くそっぽを向く。
でも案内をしてくれるというならありがたく
歩き始めたところで――手に触れる、華奢な感覚にまた驚いて瞬きを。
「ん、…っお、う。
……ふゥん。まあ、それで問題ねェならいンだけどよ。」
マイペースな彼女の歩みに合わせるように、ちょぼちょぼと歩く。
なんとなくゆるい感覚、先ほどまでの困ってた気持ちはどっかへいって。
ふ、とつい笑みが零れる。
目を細めて、傍らに歩く彼女の手のひらを軽く、ゆるゆると触れたまま揺らして。
「俺ァあんまこのあたりはこねえンだが、…くるるはこのあたり、よくいるのか?」
あんまり彼女の存在が、浮世離れしていように感じるもんだから、そんな質問。
小さい子供のような…じっと見てみたら、つの?小さな突起に、つい視線が集中して。
■枢樹雨 > 「街の中で、良かったね。森や山なら、大変。」
感情が薄い所さえ除けば、己の言動を幼く感じる者は多いだろう。
しかし貴方もまた同様に、幼さを感じさせる言動を見せるから、ついついそっぽを向いた視線を追いかけたくなってしまう。
少し小走りに貴方の進行方向へと身体を滑り込ませれば、逃げて行った視線を探すようにして貴方の双眸を覗き込み。
「照れているの?」
視線捉えること叶えば、そんな問いかけ。
しかしそれ以上は深追いせず、貴方の左隣へと戻っていこう。
そうすれば前後に揺すられる繋がった手。
無理矢理に離そうとする気配もなければ、手を引くのを止めることはなく。
「よく…と言うほどではないけれど、週に数度、散歩をしに来るよ。
見たことのないものがないか、目を惹く何かはないか、探しに。」
いつだって己の興味を惹くものを探している妖怪。
その頭にある小さな鬼角は白絹を被って隠しているものの、ほぼ真上から見下ろせる貴方には白絹の特徴的な膨らみを見て取れてしまうか。
ふと視線に気が付き貴方を見上げれば、蒼の双眸は数度瞬いて。
「なに?」
■イグナス > 「そりゃあほんとにそうだ。
…このクソ暑い中で迷うなんざ考えたくもない。
………――。」
照れているかって問いかけは完全に無視…あんまりしきれてないけど。
ふいっと視線を明後日にそっぽ向かせて。
結局それも捉えられて、ぐぬ、ってまた言葉に詰まる。
少なくともどうやら、迷いまくってたのは恥ずかしいと思ってるようだった。
「つまりアレか、暇つぶしか。…ひまつぶしに来るとこかァわかンねェけどな、ンなとこは。
……んあ、いや。…きのせいか。――くるる、くるるだったな。
お前はアレか、にんげん?」
大変失礼な問いかけかもしれないが。
実際――自分も普通の人間かと問われればそうでもない。
その不思議な仄かな空気感と、場所の違和感と。
色々と重なり合ったもので、つい、問いかけて。
■枢樹雨 > 返る言葉がないのであれば、それこそ深追いはしない。
満足した様子で歩みを再開し、裏路地から少し広めの通りへと抜ける。
そこは陽光が入り込む、比較的明るい通り。
同時に陽光の熱に晒される通りでもあり、妖怪は出来る限り影を通ろうと端へと寄って。
「まぁ…、そうかな。たまにギルドの依頼を受けたりもするけれど、決まった仕事をしているわけでもないし。」
暇つぶし。どころか生きる主題でもあったりするが、人の子からすれば暇つぶしがちょうど良い表現なのだろう。
説明をすれば人ならざる者だと語るに同じと、適当に同意を返しておくのだが、最終的に向けられた問いを聞けば歩みが止まる。
カッ―――と、下駄が地面にぶつかるような音。
見上げる蒼がしばし貴方を見つめると、ゆっくりと瞬きを繰り返し。
「人間じゃなかったら、何かする?」
■イグナス > 満足した様子の少女に比べて、こっちはちょっとだけバツが悪い。
いい年の大人がからかわれているような感覚だ。
――あんまり気にしすぎるほうが恥ずかしいかと、なんとかいは取り直すが。
端っこのほうによる姿にも、かくりと首をかしげる。
どうしたのかと思考するタイミングで、彼女が足を止めて、見つめて、問いかけた。
「………、何。なにがいいかな。」
なんて、問いかけに答えたのは酷く間抜けな言葉だった。
ううん、と腕を組んで空を仰ぐ。
くるくると思考を巡らせたあとに、くつりと喉を鳴らして笑って
彼女のほうをまた見下ろして、わらいかける。
「そうさなァ、人間じゃあなかったら、そのちんまい身体でもよく飯食うかもしれねェだろ。
おれは見ての通り良く食うからな、食い比べでもするか。」
そもそも、人間じゃあないのすらも珍しくないこんな場所だ。
利用してどうこうしようってほどに、考えがあるわけでもなかった。
ほら行こうぜ、なんて改めて手を引っ張って、陽の道を歩こうとして。
■枢樹雨 > 見つめる視線に返る、無言の間。
妖怪からしてみれば、それにどういった意図があるのかはかりかねるもの。
握っていた貴方の手をそっと緩めようとした矢先、再び貴方が口を開けば、紡がれた答えにきょとんと目を丸くして。
「…食い比べ?」
勿論言葉の意味は解っているが、心持としては"なにそれ"。
離れそうになった手を改めて引かれれば、軽い身体はあっさりと陽の光の下へと連れ出される。
若干前のめりに傾く身体。
貴方の左の二の腕にもう一方の手を置いて身体を支えれば、妖怪もまた改めて手を握り、影の方へと引こうとして。
「陽の下は、暑い。……あと、人間では、ないよ。
でも沢山は食べられない。食べることは好きだけれど、君と比べたらきっと少ない。」
妖怪なりに害はないと判断したのだろう。
向かう先へ視線向けつつ、先の問いへと答えを返す。
そしてついでに食い比べとならぬよう、釘も指しておく。
食べ過ぎて気持ち悪くなるのは嫌だとばかりに。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイグナスさんが現れました。
■イグナス > やっぱり、そんなじゃ意味はわかんないか。
思いつかなかったとはいえ、己でも突拍子のないこと言っていたなあ、って。
気にしないでくれとでもいうように肩を竦めて――、その後の彼女の言葉、と行動に。
「お、……っと、そりゃ、悪い。」
陽の光、暑いだけなくて苦手であろうか。
疑問符と同時に謝罪――でもそのあとに告げられた言葉に、へらり、と嬉しそうに笑った。
「あー、なんだそりゃ、残念だ。
いっぱい食わないとでかくなれねェぞう。――いやまァ、食えばでかくなるタイプの怪は知らねえけどよ。」
反対の手で、ぽふぽふと頭を撫でる。
応えてもらったのに満足そうにして、向かう先に足を踏み出した。
先ほどの言葉を反芻するように、ふうん、と頷きながら。
「だからちいと、雰囲気違ったか。
……雰囲気というか。どういうモンなんだ、お前は。」
差支えがなければ、という程度だが。道端で出会った、ひとでないもの。
こちらもたいがいと言えば大概だが。気になり、問いかけて。
■枢樹雨 > 影を、闇を、夜を住処とする存在であることは間違いない。
しかし今は、ただただ暑さが嫌と、影落ちる場所を歩くことを望む。
貴方が応じてくれるなら、建物の影がある通りの端へ端へと移りながらに、向かうべき方向へと歩みを進め。
「別段大きくなりたいとは思っていないけれど、…恐らく、食べたところで変化はないと思う。
この肉体を得て1年と少し。髪が伸びたことは一度だってないよ。」
頭へと乗る貴方の手は、きっと体躯に見合った大きさなのだろう。
その重みを受け止めるように少し首を竦めるも、嫌がって跳ねのけるような仕草は欠片もない。
白絹の下にある角に指が触れるなら、その硬質な感触が伝わるか。
語る言葉は、どこか曖昧。己のことでありながらも断定できない様子で。
「どういう…。人の子は、青行燈(あおあんどん)と私を呼んで、妖怪として扱っていたよ。
それがきっと、最も近い。ただ、そうじゃないものも、たくさん中に在る。」
問いかけへの答えに、少々迷う間が数秒。
最終的に己の胸元へ左の掌を置いて答えれば、横目に貴方を見遣り。
「君は、にんげん?」
■イグナス > 「1年と――少し? へえ。
それじゃまだまだその体は生まれたてみてェなもんか。
見た目は立派に大人なのにな。」
便利な身体――なんだろうか?彼女自身、他に知る由もないが。
身体に触れる手は嫌がられない。少しだけ意外な心持だった。
それならばそれでよいかと、頭の上を撫ぜれば、最初の違和感にも触れる。
へえ、と思わず、その硬質を撫ぜてみる。幼子にするようなその動作は、あんまり褒められたものじゃないかもしれないが。
「…あおあんどん?あァ、いや、妖怪か。聞いたことがあるぞ、どっか。
と、それ以外のも混ざってンのか。…はー、いろいろ、複雑なもんなんだな。」
われながら単純すぎるというか、ばかみたいな感想になったとおもう。
実際、頭の中身は酷く単純で、妖怪だからといって、扱いが良くなるでも悪くなるでもない。
問いかけにはまた、へらと笑って。どう見える?と。
「――ま、謎かけにするほどのモンでもねェか。はんぶんだよ、はんぶんにんげん。
半分は巨人族だからな、…亜人と人間のハーフになンのか?これ。」
そも巨人族にしても、ほとんどモンスターみたいな輩もいる。
細かく分類されたものを調べたでもなし、答えたはいいが、己で疑問の様子。間抜けにも首をかしげて。
■枢樹雨 > 「うん、恐らく。貰った時からこの大きさで、この見目だった。
前の持ち主がいたのかどうかも、よく知らない。」
己に対しての情報が曖昧なのは、お互い様か。
疑問符交えながらのやり取りではあるが、それを苦に思うことは特にない。
ただ、白絹越しに鬼角撫でる指があれば、再び首を竦め、撫でる手に己の右手を重ねて。
「あまり、触っちゃだめ。むずむず、する。」
貴方が魔力を持ち、それを常にその身に纏うような人であれば、殊更大きく身体を震わせたことだろう。
しかしそうではなかったからか、仄かなむず痒さのようなものを受け、貴方の手をやんわり制する。
同時に見上げる視線がへらりと笑う貴方を見つければ、問いかけに少し首を傾げ。
「…半分、巨人?…やたらと発育の良い、人の子と思っていた。あまり違和感も、感じなかったから。」
回答を伝えるより先、貴方から告げられた答え。
それに驚いた様子で目を瞠ると、歩きながらにまじまじと貴方の顔を、腕を、身体つきを眺める。
当人は理解していないが、人ならざる者の魔力を感じて違和感としている妖怪。
貴方からはそれを強く感じなかったが故に、意外だとばかりに視線を送る。
そうして前方を見ぬままに歩くものだから、貧民地区の舗装されていない道に足取られ、転びそうになり。
■イグナス > 「ふゥ、ん。……お、っと、悪い。
ついつい、触り心地が面白くて。」
ぱっと手を離す。その硬めの感覚、ちょっと面白かったから残念ではあるけど。
魔力についてはむしろ、まるでない体質であったので影響は少なかろうが。
首をかしげての言葉に、からから、と喉を震わせて笑い。
「にしちゃァ、でかすぎだろう、おれ。
半分巨人だ、……つってもそう、人間と大きく変わりゃあしねェが。
ほとんどはでかい人間…って認識で間違ってない。」
主にはサイズと、その肉体の頑強さが一番である。
太く強い、腕。種族による影響はあろうが、しっかりと鍛えられ――戦いに晒されてきたことが見て取れる。
そういう腕を軽く回すようにして。
「お―――、っと。……おいおい、大丈夫か、気ぃつけろ。」
転びそうになる、この男からすれば小さな体躯をしっかりと支える。
このままひょいと持ち上げてすらしまえそうだ。
■枢樹雨 > 「ん、良いよ。痛いわけではないから。」
嫌な感覚があるわけではない。
それ故に眉根寄せるでもなく、変わらぬ調子で白絹の位置だけ簡単に直す。
そろそろ平民地区が近くなり、人の通りもちらほらと見えてきたが故に。
「まぁ、大きいね。少し首が疲れてきてはいるよ。
巨人…じゃいあんと、とも言うのだっけ。君は人の子を食べたりはしない?」
濡羽色の長い髪の下に掌を滑り込ませ、軽くさすったのは項の少し下辺り。
実際言うほど疲れてはいないが、見上げる双眸に再び悪戯気な色が乗っている。
そうして重ねた問いは、素朴な疑問。
この国の図書館で学んだ"巨人"というものは、人間を捕食することもあると書いてあっがた故に。
…と、次の瞬間、傾く視界。
これは倒れると、どこか他人事のように感じたのはほんの一瞬のことだろう。
しかし硬い地面に身体が当たる感触はなく、ぱちぱちと双眸瞬かせ。
「……ごめん、なさい。…ありがとう。」
支えられた拍子に頭からひらひらと落ちた白絹。
青碧色の艶めく鬼角を晒してしまうが、もう貴方に対してそれを隠す必要はない。
数秒の間の後に状況を把握すれば、繋いだままの貴方の手をぎゅっと握り、改めて自分の両脚で確と立ち乍らに謝罪と礼を。
■イグナス > ならよかったと。でも頭を撫ぜるのはほどほどにしておこう。
つい、楽しんではしまったのだけど。
「はは、そりゃあ悪いな。なにせこのサイズだ。
別に頼んだワケじゃあねンだが。でかくなっちまってなあ。」
でかい自分にも慣れたもの。からからと笑って
でも次の問いかけには、ぱちくりと瞬く。人間を食べる――
巨人というより人間寄りの感性ゆえに、つい、美味いのか?なんて問いかけて。
――その直後に傾く身体。
小さな体に手を伸ばして、しっかりと抱え止めた。
やれ、やれ、間一髪だ。
「気ぃつけろ。――………あぁ、これ。
………、へえ。きれいなもんだな。」
転倒しかけたことよりも、興味はもうそちらへ。
青碧色の、きれいなちいさな角。
物珍しく、それよりも見た目のきれいさに。
もう一度手を伸ばして、ふれる。やわらかく、貴重品をなぞるみたいに。
■枢樹雨 > 「っ―――、」
再び触れる、貴方の手。
此度は白絹越しではなく、直接。貴方の皮膚が、つるりとした鬼角の表面をなぞる。
その感触に小さく震える肩。支える貴方の腕に、その小さな震えが伝わるか。
丁寧すぎるくらいに、優しい触れ方。
長い前髪の下、眉がハの字の形を描くと、目線は伏せられたまま。
「ぞわぞわ、するから。…あまり触ると、気持ちの良い事、したくなってしまう。」
紡ぐ言葉に交じる、熱帯びた吐息。
貴方の手を放してしゃがみ込むと、地面に落ちた白絹を拾い。
「書物に、巨人は人間を食べる個体も居ると、書いてあったから。
美味しいかどうかは、私も知らない。舐めたことはあっても、食べたことはないよ。」
■イグナス > すこし、こうして触れるのはおもしろい。
硬質な感触、きれいで大事に扱わないといけないだろうに、つい触れてしまいたくなる。
…もともと、そう嫌がっているワケでもなさそうだから、欲のままに触れて、撫ぜて、楽しんで。
「へ。……あー………なンだ、それでか。」
どうして触れられるのが、と。疑問あったけれど。
ついにまりと笑み。へえと面白いものでも見つけたように、ふにふに。
さっきまでとは逆にむしろ遠慮を無くして触ってく。根元から先端に向けて、つつーと動かしてく。
しゃがむのに合わせて屈みこんで、へえ、と。
「そらァ、そうか。……まァ、半分人間だしな。
実際食いたいワケじゃあねえ。美味い飯とか…うまい女とかのがいい。」
下世話な冗句も混ぜる。
ごはん食べるのも良いし――ほかのを食べるのも、いい。
彼女の手のひらを、今度はこっちが拾い上げて、ほらと立ちあがらせようとして。
■枢樹雨 > 貴方が傍らに屈みこめば、陽の位置の関係か己へとその影が落ちる。
建物が作る影に重なり、より色濃い影となるも、涼しさを感じるにはまだ足りない。
それどころか尚も触れる指に遠慮がなくなれば、白絹へと伸びた指先が震え。
「んっ…、っ―――、イグナス…、」
立って歩いていた時はしゃんと伸びていた背が、小さく震える度に丸まっていく。
その場にうずくまるように首を竦め、指先に触れた白絹をぎゅっと握れば、長い前髪の隙間から覗く瞳が貴方を見遣る。
仄かに熱を帯び、じわりと水分を含ませた仄暗い蒼が、影の中で貴方の赤眼を見つめ、名を呼んで。
「…君に食べられたら、気持ち良い?」
引き上げる手に、よたよたと立ち上がる妖怪。
しかし貴方を先導するように歩き出しはせず、繋がった手を緩く引いて首を傾げ。
■イグナス > 「さァ、どうだろうな。口に合うかは――…まァ、たべての、お楽しみだ。」
大きな大きな男の手が更に伸びて、触れて、彼女の身体を覆っていく。
引き寄せて、今度はこちらが彼女を先導するように――。
…したがそういえば、道がわからないのを思い出した。
「……、まあ、美味い飯屋の場所までは任せるか。」
ちょっと間抜けな心持ちだった。
それでも彼女の身体、ふるえて小さくなってく身体に触れる幅は大きく。
時々、その青い角に触れていじめるのも変わらずに。
さて、案内されて、あるいは要求されて向かう先はどこになるやら――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」から枢樹雨さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」に怪異譚・墓地の少女さんが現れました。
■怪異譚・墓地の少女 > ちりん、ちりん
明るい夜に鈴が鳴る
それは、一部で語られているおとぎ話、あるいは恐怖話
満月の夜に鈴の音に誘われると異世界に連れていかれる、なんて与太話
そんな鈴の音が、貧民地区の路地から聞こえる
ちりん、ちりん
怪異は、貧民地区に現れた
今日も誰かと寂しさを紛らわせるために
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」から怪異譚・墓地の少女さんが去りました。