2025/08/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にバティスタさんが現れました。
■バティスタ >
ノーシス主教の派閥が一つ、聖バティスタ派騎士修道会による配給の日。
いつものように広場には修道会の紋様が幌にあしらわれた馬車が何台も停まり、
修道会のブラザーやシスター達が忙しなくその準備を整えていた。
「───はい。これでもう大丈夫ですよ」
そんな広場からは少し離れた位置。
聖女様然とした立ち振舞でバティスタは少年の怪我を治癒していた。
少々、走り回って転び、擦りむいた程度の傷ではあったが…貧民地区の衛生状態では熱病の原因とも成りかねない。
「治療費などは結構ですから、気を付けて遊ぶのですよ」
痛みもなくなり、元気に手を振ってかけていく少年へ向け、にこやかな笑みを浮かべながら手をひらりと振り返す。しかし。
「(純粋、純朴。あの屈託のない笑顔はこの先、どう穢れていくのかしらね)」
薄く細められた異色の瞳は、決して少年の前途を祝福するような光を讃えてはいない──。
■バティスタ >
「…さて──」
踵を返し、広場の方へ。
順調に奉仕活動が始まっている…と思えば。
『聖女様、近寄るのはお止め下さい』
『我々をペテン師だ、などと貶める輩が…』
数人のシスターがこちらへと駆けてくる。
口々に伝える言葉は…当騎士修道会を糾弾する者の存在を報せる。
それを伝え聞けば、聖女は瞳を深く閉じ…浅く息を吐く。そして──
■バティスタ >
「──気にせず奉仕を続けてください。
護衛の騎士達にも、手出しは厳禁であると伝えておきます」
ふわりと笑みを浮かべ、不安そうな表情のシスター達を安堵させるように言葉を返す。
「大丈夫です。我々は何も間違ったことをしているわけではありません。
少しばかり捻じれ、曲がって見えてしまうのもまた人でしょう」
少しだけ、その歩みを早める。
──聖堂騎士達の中には狂信者に近い者…あるいはそれそのものも存在する。
過激な行動を起こす前に、己の言葉を届かせる必要がある、と。
騎士修道会への罵倒、暴言。
それらは聖女への罵倒、暴言として捉えられてもおかしくはない。
狂信に至る者であれば…異端者としてその場で斬り捨てることすら在り得てしまう。
「(…まぁ別に斬っちゃっててもいいんだけど)」
せっかく遠出をして配給や奉仕の活動に来ているのだ。
それに水を差すことになるのは、聖女を騙り演じるバティスタにとって少々不快である。
■バティスタ >
…幸い、ことは大事には至っておらず。
少々の睨み合い程度、緊迫感の中、聖女が歩み寄り…憤る聖騎士達を宥める形で事態は収束する。
「我々の行いが気に入らないのでしたら、申し訳ありませんがもうしばしだけ辛抱を。
食料と水…衣類等の配給が終わり次第、出ていきますので」
配給、奉仕も当然平等に行うことを約束し、その場を諌める。
元よりこの場での布教活動などを行うつもりもなく、奉仕活動を終えれば王城に向けて出立の予定であった。
騎士達の中には不満を顕にする者もいたが、聖女の言葉一つで彼らは押し黙る。
その一つ一つがこの修道会において、この少女の言葉、存在が絶対であることを示していた。
「──では、滞りのないよう…お願いいたしますね。皆様」
そうして一度中段されていた配給が再開され…、貧しい暮らしを送る貧民地区の住人には様々な物資や食料が奉仕される。
それと並列し、病気や怪我などで苦しんでいる者は聖女の下へ。
聖痕に宿る奇跡の力は知るものぞ知る…であったが、それでも縋る者は多く…バティスタは一人一人に温かな声をかけると共に、治癒の奇跡を与えてゆく。
──貧民地区での奉仕活動は毎回、概ねこういった内容を半日程の時間をかけ、行われている。
そしてそれが済めば聖女と護衛の騎士のみが王城へと登城し、多額の寄与・献金を賜っている王族・貴族へと面会するのが一連の流れであった。
■バティスタ >
やがて物資も配り終え、広場に集っていた貧民地区の人間達も少しずつその姿を消してゆく。
布教活動自体はしていないが、騎士修道会の存在感を民間で強めるためにはこれも重要な宗教活動の一つである。
「さて…それでは私達は王城へと向かいますのでここで…」
奉仕活動のために同行したシスター達とは此処で別れる。
護衛の聖騎士数名と共に王城に向かうため、聖女とは行動を別にすべく、馬車は正反対の方向へと。
こういった活動の資金源ともなっている寄与・献金。
それに名を連ねてくれる貴族や王族との親睦を深めるため…という目的は勿論。
裏の事情としては禁薬の密売、そして──聖女の裏の顔が覗く、特別なことも。
今回の配給も概ね滞りなく、騎士修道会の一団は貧民地区を後にする──。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からバティスタさんが去りました。