2026/03/17 のログ
■ナイト > 「……ええ、そうね。まったくもってその通りだわ」
全ては伝わり切らなかったようだが、ダンスの感想に同く楽しめたと取れる答えが返ってくれば、それだけで満足だった。
何とか無事、足を踏まずに済んだことをまずは祝っておこう。
徐々に大広間から去っていく者達の姿が見え始める中、話しかけてきた子爵の次男坊――シグルズ。
少女のことを借り受けようと、自分を飛ばして上官へ直接伺いに出られると軽んじられたと受け取って、ジロリとシグルズを睨みつける。
「ちょっと、私の意思をまず確認しなさいよ。
用って言ったって、どうせいつもの決闘でしょ? 毎度毎度負けてるくせに、懲りないわね。
生憎だけど今日は見ての通り丸腰よ。また合同訓練で受けて差し上げますから、おとなしく――」
『あのな、俺が王城の広間で剣を抜くような馬鹿だとでも思ってるのか?』
「あら違うの?」
『ったく。可愛くねぇ……』
先ほどのこともあり、ますます悪目立ちする男と少女に、自分から声を掛けに行く物好きな若い騎士。
周囲にはそう映っている。シグルズはあまり周りの目を気にするタイプでは無いようで、一応場に沿うよう声は抑え気味にして、無意識に煽ってくる生意気な狂犬少女を呆れた顔で見下ろした。
いつもであれば、ここから煽り合いに発展し、最終的にシグルズの方から決闘を申し込むのだが。
バチバチと火花を飛ばし合いそうな二人を置いておいて、黒髪の騎士の方が先に彼の言葉に応える。
『――こほんっ。失礼致します。お疲れのところに声をかけてしまったようで、申し訳ありません。
先ほどのお二人のダンスを拝見致しまして、シグルズ様がどうしても声を掛けたいとおっしゃり……』
申し訳なさそうに背を丸め、大きな体を小さくしながら連れが謝るのを見て、シグルズは慌てた様子で声を上げる。
『馬鹿もの! 別にそんなんじゃない、変な言い方をするな!
話の途中ですまない、聖騎士殿。わかった。今回は借りていくのは諦める。
その代わり、一杯だけ飲む時間をくれるだろうか? こちらも色々あって、付き合ってもらえると助かるんだが……』
黒髪の騎士の言葉を遮って、シグルズは話を聞いたうえで、下手に出て、一度頭を下げて頼み込む。
あの生意気な少女にではなく、あくまで上官である彼にだ。
言葉を濁しながらチラリと男が視線を向けた先には、二人よりも一回り年上の騎士達が数人群れて酒を飲んでいるようだった。
その中には、先ほどの騒動の折、周りを固めていた人間も二人ほど混じっているようで。
騎士団のしがらみか、貴族の方か。どちらにせよ逆らえない立場に彼らはいるらしい。
それを何となく察した少女は、仕方ない肩を竦め、パチリと片目を閉じて彼に言う。
「……私は酒の一杯くらいなら平気よ。ま、判断はヴァン……様に任せるわ」
■ナイト > 【次回継続】
ご案内:「王都マグメール 王城/大広間」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/大広間」からナイトさんが去りました。