2025/09/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にイヴリールさんが現れました。
イヴリール >  
マグメール王城・渡り廊下にて。

「………」

廊下の大窓の前に立ち、外の景気を眺める。白いドレスの少女。
吹き込む秋風に薄いブロンドの髪を攫われながら、深い蒼の瞳は王城から覗く城下の町を映す。

羨望、好奇心。しかし何よりもその瞳に映す色は、諦観。
王城の外に出ることを許されていない自分は、こうして外の世界を眺めることしか出来ない。
──外に出ること。どころか。

『姫。外出は程々になさって下さい。
 大臣様方が訪れた時に部屋にいていただかなければ。
 小言を言われるのは私達なのですから』

ぴしゃりとした言葉が背後からかけられる。
侍従である筈の女は圧を強めた声色と語気を少女へと向ける。

「ご、ごめんなさい…もう少ししたら、戻ります……」

消え入りそうな声で、自らの侍従へと言葉を返す。
そうすれば、侍従の女性は一瞥もくれずに背を向け歩き去ってゆく。

「……」

なぜ自分がこんな穢れた少女の面倒を見なければならないのか。
せめて大人しく部屋に引きこもっていてくれればいいものを。
……そんな言葉が、言外にその表情からは伝えられた。

「……ふぅ」

深く溜息を吐き、両手を伸ばして廊下の大窓を閉め…、廊下を自室に向けて歩き出す。
もうじき日が暮れる。部屋に戻れば…また。
それでもあの時間は…自分の唯一の存在価値を感じられる時間でもある。
昏い蒼の瞳には希望の光は宿っていない。このマグメールという王都で悪徳の犠牲となる姫、そのものの姿だった。

イヴリール >  
王位の継承権をもたない──故に、奪い合いになるということがない。
しかしその小さな身体には確かにカルネテル王家の血が流れている。
そんな少女は、勢力争いにおいて強い力を持たない没落した貴族や、中流以下の王国貴族にとって格好の的となった。
実に都合よく従順な性格の王女──手籠めにし、子飼いにするには都合も良かったに違いない。

部屋に帰れば、また──。

そう考えてしまえば、自然と遠回りの道を選んでしまう。
また侍女に大きな声で叱責される。……それは、厭だけれど。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からイヴリールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城・夜会」にイヴリールさんが現れました。
イヴリール >  
王城・地下のダンスホールで夜毎行われる夜会。
その夜会の隅にいるのは、その場に些か粗ぐわぬ、幼気な姿。
白のドレスに身をつつみ、薄いブロンドをふわりと流した、この国の王女の一人。

こうした場にはずっと慣れない。
とある貴族に連れられ訪れたものの、最初に紹介をされて以降は言葉もかけられず、ホールの隅に佇んでいた。
王女の一人を連れてきた、という貴族としての"箔"を付与するためだけの人形。
──こんな扱いも、もう慣れたものではあったけれど。

「(……お部屋、帰りたいな)」

壁の際、薄く伏せられた睫毛の奥の青い瞳は暗く、落ち着かないように揺れていた。