2025/06/24 のログ
■セオドラ > 参加していた夜会の喧騒から離れ、テラスに足を延ばす。
ちょっとお高くも、凝られた魔導具を買いあさるのも、最近の趣味の一つ。
特にアクセサリーのようにして身に着けるものが扱いやすいから、つい散財してしまう。
まぁ散財と言っても夫の愛人たちと比べれば可愛らしいものだ。
魔導具である体温保護のブレスレットは、冬にも同じ種類のものを作っていた工房の新作。
夜でもまだ昼の暑さの余韻を残すような季節に、程よい体感温度を保証してくれる。
軽く撫でて効果をやや弱める。夜も更け、流石に日中の暑さの気配も潜まっているから。
「ほんとうに、あの工房の魔道具は優秀だね」
眼鏡の奥の蒼眼は嬉し気に細まる。推し工房の技術力の高止まりにファンの一人として満足している、というところ。
……
公爵家当主の代理として夜会に参加するのも何度目だろうか。
代理を務められるだけの者だと重用されていると見るか。夫人としては使われていないと陰口囁くか。
どちらも聞こえ来るから、両耳が変に疲れている気がする。
そこで、先ほどから咥えただけだった細い紙巻きの香草煙草を思い出し、パチン、と指を鳴らして初歩の灯魔法で火を灯す。
ゆっくり吸い、それから指に煙草を持ち、ふぅぅ、と、細く吐く。紫煙がそれに従い細く伸びては、空に交じり溶けて。
口内の煙を噴き出しきっては、艶やかな唇で、は、と、ため息を誤魔化すようなふう息をして。
己のような貴族婦人も別段珍しくはない。貴族は子を成すのは役目の一つであるのは確かだ。
それができないなら、できることを…それもないならどのように扱われるか。
その後の無聊はどう埋めようか。ひとまず、それが埋まるから……煙草、というものは、優秀なものだと。
取り留めない思考を巡らせながら、一雨きそうな曇天を仰ぎ見て。
■セオドラ > 煙を吸い、吐く。
その繰り返しだけで時間を潰せる。もちろん、色々浮かぶ思いもあるが、没頭せずに済む。
そうやって暫く思考を休ませてから、また、勤めに戻ろうか。
まだできることはあるのだから、それをやらなければ。
ご案内:「王都マグメール 王城テラス」からセオドラさんが去りました。