2026/03/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城/執務室」にアマーリエさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城/執務室」にパルミラさんが現れました。
■アマーリエ > ここ最近も、過去も、そして未来も。何かある。何か起こる。
それが国防であり。隣国からの侵入であり、魔族の国からの侵攻でもある。国内の内紛でもある。
そんな事態に一々反応を見せなくてはならないのが、国の守りを司る一端として、常々悩ましい。
無限に湧いて出る兵と糧秣でもあるならば、それこそ喉から手が出るもの。何せ自分達、だ。
「……無駄飯喰らい、大飯喰らいの美食家気取り、か。
別に否定はしないけれど、かっちかちのパンをかっ喰らってやる気が出るなら、大したものだわ」
会議は躍り、紛糾する。依然として内憂外患と言う他無い情勢が続く。
積極的な外征を謳うものがあれば、戦線を縮小して力を蓄えることを提案する者等、色々居る。
詰り合いも飛び交うそれが師団長含め、各所の勢力者、実力者、軍関係者が集う会議の日常的な風景である。
大いに呆れの色濃い溜息を吐きつつ、王城内の会議室を辞する姿は、如何なる方向、在り方に属する者か。
一言で言ってしまうならどちらでもない。中立的、静観的な立場に立つ者には、色々な思いが差し向けられる。
陰口を叩かれるよりは、如何にも悪罵とは言え熱意を以て叩き付けられる方がまだ、気楽である。
はぁ、と。重い溜息をつく姿は黒い騎士服に身を包んだ女――に見えるもの。
長い金髪をポニーテールにして揺らし、否、豊かと呼ぶにははちきれん勢いで膨らんだ胸元も揺らす。
その姿に蔑みや下卑た劣情を投げ遣られるのも慣れたものだが、それも続けば毎度ながら鬱陶しくもなる。
そんな女が行きつく先は、王城内に設けられた師団長の執務室。その扉を鍵を開ければ開き、ばたむと閉じる。
広い室内をかつかつと通り過ぎれば、腰に佩いた剣をデスクの後ろの剣掛けに横たえ、椅子に座そう。
本日の大きな執務、仕事は――此れで終わり。
幾つかの雑務は、まぁ、明日でも良いかもしれない。真昼間とは言え、毎度ながら早々に一杯やりたくなるものだ。
■パルミラ > 参謀部にはあらゆる会議の議事録速報が回ってくる。
下級参謀の訓練がてら、速記官として常に一人参加させているからだ。
そして、終了後、20分以内に局長クラスには速報が提出され、ざっとその内容を確認し、必要に応じて行動を開始するわけだ。
今日の会議の議事は正直見るべきものも受け取るべきものも何もなかった。
会議は大体踊るもの。踊らない会議は、目的がはっきりしているものであり、
会議のための会議では踊る以外の結末はまずありえない。
そんなことを考えて議事録を閉じようとした矢先、参加者一覧にとある人物の名前を見つける。
いつ王都にいるかわからない相手の名前故に、ほんの少しだけ考えて立ち上がり、自室を辞す。
そのあと足が向かうのは、王城内の第十師団長の執務室。
その扉の前で足を止めれば扉をノックして。
「ごきげんよう、アマーリエ様。参謀部のパルミラ・コーンウォリスです。
ご在室でいらっしゃいますか?」
扉の向こうにかける声は入室伺い。
どちらかというと個人的な用件にはなるが、チャンスを逃すのももったいない。
口調は急いでいる様子もないので、火急の用事ではないことは伝わることだろう。
■アマーリエ > 最高幹部含む役職者の動向は、然るべき地位にあるものであれば、容易に把握しやすい。
なお、最高幹部も色々だ。師団の気質にもよるのだが、最高指揮官こそ積極的に前に出るのを誉れとすることがある。
竜騎師団たる第十師団もその例に漏れない。“一番強い者”が師団長=頭であり、最前線の先鋒足り得る、と。
こうした在り方を悪癖として、改善を求める声も上がっているが、改善については今少しかかるだろう。
今日も今日とて、例えば国境。はたまた例えばタナール砦に襲撃の火が上がれば、直ぐに飛び出す。
竜の翼は何よりも早い。その早さ、迅速果断たるこそが、総兵数が他の師団に劣るとも劣らぬ武力の強みであるが故。
さて、そんな師団長が今少し刃と翼を休める執務室は、広い。
遣ろうと思えば侍従がなくとも一人で茶を入れ、身体を洗って就寝できるような設備も整えている。
執務机に溜まっている案件は、多くない。副長、幕僚たちに処理を任せてもいい位である。
「……――急いで裁可を下してあげる必要もない、か。じゃぁ、こっちはこうで、と。
あら、珍しい。…………ぁぁ、カザネが言ってた名前って、確か」
ともあれ、一先ず目は通す。卓上の未裁可の書類を取り、一読。もう一読。
重要度は低くはないが、どちらかと言えば部下達に一任で任せる方が最終的にうまく行きそうだ。
書類の空白に一筆書き添え、茶封筒に収めて師団本拠に送る、転送する分として処理した処に、響くものがある。
侍従等がやる抑揚、とはちょっと違う。続く声を聴けば、明らかに違うがその名に覚えがある。
はたと目を瞬かせ、小首を傾げる。久々に会った娘がきゃー☆わー☆とかしながら、伝言してきた内容は、成る程。
「居るわよ。鍵は……かけてなかったから、そのまま入ってきてちょうだいな」
柳眉を撓らせて思い出し、そっと朱唇を釣り上げながら入室許可を出す。
入ってきた後は指を鳴らし、小さく魔術を使って扉の鍵を改めて落しておこうか。
■パルミラ > 入室許可の言葉を得られれば、扉を開き室内へと。その後、扉を閉じてから振り返り、居室の主にカーテシーを向ける。
「ごきげんよう。お久しぶりです、アマーリエ師団長。」
改めて言葉でも挨拶を向けてから、執務机の前まで歩み寄る。
参謀部でも上位に当たる者ゆえに、師団長に知己が全くない相手は存在しない。
とはいえ、大抵は会議や必要に応じた業務での会談ばかりであり、こうしてそれ以外で会いに来るというのはお互いに珍しいこと。
「今日は特に仕事というわけではないのですが、ご息女よりお伺いでいらっしゃいますでしょうか?
先日、ご息女、カザネ様とラジエル学院でお会いした際に、ちょっとだけ……まぁ、ぶっちゃけた話、
あまり良くない遊びも含め、師事という名の遊興関係を結ぶ約束をいたしまして。
まずは、ご母堂でもあるアマーリエ様に一度ご挨拶を、と。」
パルミラの印象は、大抵は能面めいた表情で、必要最低限の会話のみをし、
時として、痛い所を追求し、時として、会議で味方になったりと、
是々非々をもって相対する氷人形のようなものかもしれない。
だが、少なくとも今日は、間違いなく血の通った人間であり、多少のジョークも楽しめそうだ、という印象を受けるだろう。
■アマーリエ > 「ええ、久しぶり。……こんーな風に話すなんて思ってなかったけど、健勝そうで何よりだわ」
一人でいる時は就寝、休憩時を除いて鍵はあまりかけない。かけても意味が無いという例を前に思い知ったからかもしれない。
そんな過去の体験はさておき、入ってくる姿はまるっきりの初見、と言うわけではない。
それは参謀部と言う組織の性質にもあり、同時にやって来た者が上位の役職者だから、という点にある。
第十師団は現状の運営として、強権的ではない。その性質的にも参謀部のような組織の意見もよく重視する。
とはいえ、だ。こんな風に。今のように“お仕事”というよりはその真逆、私的な会話での来訪は、大いに珍しいもの。
そう思いつつ遣ってくる姿を目礼で迎え、机の前を見ればゆるりと立ち上がろう。
そうして勧める先は机の前、来客用も兼ねたソファの方。数人掛け出来る方を勧めながら。
「聞いてるわ。このタイミングだとさっきの会議の記録を見てたわね。
目ざとくて大変結構。――ふふ、来てくれて嬉しいわ。
……師事、師事……ねぇ。
あの子、とってもきゃーっわーとかしてたから、どんな具合だろうって思ってたけど……」
会議室、ないし、自分から参謀部に出張って見遣る来訪者の印象は、感情少ない氷人形めいたもの。
その対応については汲める。彼ら彼女らが担う実務は、感情豊かに処理、応対すれば万々歳とは言えない。
自信たっぷり稚気たっぷりに仕様もない作戦を提案したならば、それはまさに一から十まで詰めずには居られまい。
それもお貴族様のボンボンが家柄だけで意見したならば、理詰め攻めとなる光景もまさにいつものこと。
そんな相手が、きょうは大変珍しい処か、思わぬ言葉を吐いてくる。良くない遊び――、と聞くと、少し首を傾け。
「だいぶノリノリだったから、逆にあなたの方が心配になるわ。
ええ、間違いなく教えてくれそうなのは疑いない。……だって、実年齢って言ったら、見た目の半分位よ?あの子」
お茶呑む?と問いつつも、呑ませるつもりで隣室の方に入りながら、声を放つ。
侍従はいない。呼ばせるよりも入れる方が早い。魔導機械式の給湯器に水を入れて起動し、その間に茶器も用意してしまおう。
■パルミラ > 「そうですね。私もこのように御意を得ることになるとは思いもよらず。」
勧められるがままにソファの方へと足を向け、目礼を向けてからソファに腰かけて。
「ええ。アマーリエ様を王都で捕まえようと思ったら、時とタイミングをうかがわなくてはなりませんし。
本日いらっしゃるのなら、よほどの要件以外なら遅らせてでもと。」
師団長によっては王都にいる方が多い者もいる。
だが、少なくとも目の前の彼女は王都で探す方が難しい。
いや、王都で会話できるタイミングを探す方が難しい、が正確か。
タイミングを見つけたら積極的に捕まえに来なければ、なかなか捕まらないだろうから。
「ええ、あの場では、一応師事、と伝えました。
学院では教えてもらえないこと、教えてもらえてもカザネにとってつまらないこと。
それらを教える、という約束です。
近々では、観劇か演奏会にでも連れて行こうかなどと。」
カザネ視点は伝わっているだろうから、パルミラ視点も伝えていく。
そして、良くない遊びの下りから、続いた言葉に小さく笑いをこぼしてから、
お茶の誘いには、頂きます、と応じて。
「やはり、ですか。見た目よりも幼い印象を受けていたのですが。
とはいえ、明らかに身体能力の高さ等を考えると……なるほど。」
流石に他家のことを根ほり葉ほり聞くつもりもないし聞く癖もない。
だが、得られた外部情報から推測を組み立てること自体は得意な方故に
小さく肩をすくめてから苦笑浮かべて
「知識や心のありようについては教示できましょうね。
ただ、抱きつぶされる覚悟は必要そう、でしょうか?」
8割がたストレートな言葉で向けた問い。
とて、その言葉の割には忌避した様子も見られずに、むしろどこか楽しそうにも響くかもしれない。
■アマーリエ > 「どうしたって、ね。城の執務室で会うなんて大体は仕事になっちゃうものだから。
ちょっとそれは心外だわ。何もなかったら、着替えて下町にも降りてるのよ?私。
ヘッドハンティングがてら冒険者の酒場にだって顔を出してるから。
……あぁでも、言い換えたら真っ先に出張る方が多いか、私の場合」
後方にどっしり構えている。不動を決め込むタイプではない。
理由を付けてでも最前線に出張るタイプの将が、まさに自分のような者だろう。
お陰でこんな風に無様を抱えることもある。胸元を見下ろせば、嫌でも分かる。足元、爪先が見えない隆起がその証。
逆に言えば、自分だったからこの程度で抑えられたともすると痛し痒し。
だが、いずれにしても機会を見出したら、直ぐに抑えなければ捕まらないタイプに間違いない、と改めて自覚しつつ。
「成る程ね。話してくれて助かるわ。こういう話はやっぱり、両者から聞かないと分からないわね。
……良いわ。学院の教えが世の中の全てじゃあないし、面白くなーい!って投げ出したくなる方が寧ろ多いもの。
家庭教師を雇って外れを引く位なら、パルミラ。あなたに任せてみる方が間違いないと思う。
じゃ、その辺りの資金とか“お小遣い”の名目でカザネにも渡しておくわね。
あ。師団の費用でもなく、私のポケットマネーだから安心してね」
娘視点の話は勿論聞いているが、何分子供の話だ。正確な認識と言う点ではまだまだ、という不安もある。
それを考えれば召喚せずとも先方から訪ねてくれて、話をしてくれる方が大変有り難い。誠意も感じる。
どうしたって手元に置けない、面倒を見切れない点もある以上、教えてくれる者は大変有り難い。
近々の予定も聞けば教育費をその分割く、差し向ける気にもなる。
その分はもう一人の子にも何か割く等も考えつつ、参謀らしく気になりそうな事項を片目を瞑ってみつつ笑って宣い。
「外面だけはまあまあしっかりしてるんだけど、中身が……ね。
私もびっくりよ。実例は無くもないの。
竜と人のあいの子とか、生まれ持つチカラの強さに身体が追い付かないから、自衛的に身体を耐えられるように作る、みたいな。
それが奇妙な因子の掛け合わせとは言え、一応は人同士でこうなるなんて」
一人で淹れるのも慣れたもの。程なく沸く湯を茶葉を入れたポットに注ぎ、待ちつつ茶菓子も用意する。
白磁のカップを二つ出して紅茶を注ぎ、ストックしていたクッキーも皿に並べ、全て盆に乗せて戻ろう。
そんな手慣れた軽いもてなしを用意しながらも、語る言葉は淀みない。
テーブルに品を置き、女参謀の右隣に着座しながら聞くのは――ストレートな物言い。思わずぱちくりして、吹き出そう。
「っっ、ぷはっ……――そうね。覚悟しておいた方が、いーかも。
感極まってなくても、あなたの胸に飛び込んでみる気満々って顔してたわよ?あの子」
実に乗り気、と見るか。冗談と見るか。今この場に居ない娘は、冗談では済ませないこと請け合いであった。
息が吹きかからないように顔を背けながら、口元を手の甲で隠しつつ、そっと笑い声を奏でて相手を見る。
自分から見ても、良い女である。侍らせてみたくもなりつつ力あるオンナだ。繋がりたくもなるのは、娘も同じか。
■パルミラ > 「ええ。ですが、仕事であればまだ捕まえやすいほうでもいらっしゃいますが。
きちんとアポを取れば、予定通りに会談いただけますし。
あぁ、アマーリエ様も?冒険者には見込みがある者が多いですからね。
私も仕事柄、調査依頼を出しにギルドへ向かうことは多少はありますね。」
自己完結する様を楽し気に見やりつつ、それでも彼女はまだ捕まりやすいほう、と評する。
酷い相手になると、王都から動かないのに捕まらない、何て手合もそれなりにいる。
とはいえ、そもそもそういう相手の師団ははずれなので、よほどの要件がなければアポもとらない相手でもあるが。
そんな中で、視線をおろす彼女の様子。
その視線につられるように己も彼女の胸元へと視線をおろせば、暫し目を瞬かせる。
少し不思議そうに考える様子を見せてから
「つかぬことをお伺いしますが、子をなすとそのように乳房が大きく?」
まじまじと見つめたことがある訳ではないが、己が記憶の中よりもここまで大きく変化していれば流石に気が付いた。
可能性としてありそうなものが、カザネという子供であり、思っているより小さいを含めると、
出産が原因でこんなになったのか?という問いかけになっていた。
「ええ。どのような話でも、当事者全てに聞いてみた方が話は早いですね。
……ありがとうございます。そう仰っていただけてうれしいです。
はい、ではそのように……ふふっ、アマーリエ様が私的流用をするだなんて思っておりませんよ。」
最後少し軽口めかして付け加える。
清廉潔白とまではいわないが、少なくとも金回りでは綺麗な人だという認識故に向けて返した軽口だった。
それに何より、他家の子を預かることになるのだから、親にきちんと挨拶をしておくのは必須という、
ある種当たり前の大人の反応、のはずなのだが、王都では得てしてそれが普通ではないことも少なくはない。
カマをかけたつもりもないが、彼女から娘の出自について軽く触れられれば流石に目を丸くして
「そのようなことが……先祖返り、とでもいうのでしょうか。
とはいえ、アマーリエ様も等にご存じの事かと承知の上で、ですが、カザネはとてもいい子ですよ。
私も面倒見が悪いほうではないとは思いますが、初見でそのようにしようと思う相手など、初めてです。」
少なくとも暇人ではないのだ。故に、自分の短い貴重な私用時間を使おうという、
そう思える相手だと考えれば、本当に上手に心に入り込まれたな、とも思うのだが、
その実、それが不快ではなく、むしろ快いとも思うからこそ、というのもあった。
そして、そういう感覚を持って言えるからこそ
「……ええ。先ほどのお話をお伺いして、覚悟することにいたしました。
竜の素養を持つ子と体力勝負で勝てる気がしませんもの。
私は体よりも頭を使うことが本業ですから。
あら……まぁ、それも良いでしょう。
想像して、嫌だと思わない、むしろそうあっても良いと思った相手ならば。」
当人がいない所で、その母に、まんざらではない、などという話をしているのもどうだろうと思わなくもないのだが、
それが事実なのだから仕方がないし、彼女ならば、このような話をしてなお、引かれることもないだろうという目算もあってのこと。
■アマーリエ > 「その辺り、お互いに色々ある身だものね。
言伝でも手紙でも何か寄こしたり残しておいてくれたら、同じように可能な限り都合は合わせるわ。
“も”ってことは、……そっちもまるっきり私と同じクチ、でもないか。
参謀部も依頼の成果、所要時間、能力次第で拾い上げてたりするするのかしら」
あれやこれやと理由を付けて人と関わらない、寄せ付けない、という類ではない。
スクランブルという名前の急用が生じない限りは、コンタクトを取り付けることは容易な方だろう。
敵は常々自分たちの都合を考慮していない。その点、今話す相手も重々承知の上で筈。
しかし、冒険者に目を付けるという目線は、常々有能な人材を希求するとなると、やはりそうなるか。
自分が元冒険者だから、という点もあるにしても、向こうからすればまた違う観点かも知れない。
「おっぱい? 違う違う。私のこれはね、呪いのせい。
少し前、第十師団のイキってる女将軍が胸腫らして帰ってきたとか、聞いてない?
下手を打ってこうなっちゃったワケ。……淫魔の類の魔将は色んな意味で大変よ。気をつけなさい」
気にもなる、か。
服を仕立て直して対応しても、下着で拘束しても、ともすればボタンが弾けてまろび出かねないバストが目下にある。
子を孕ませた愛人を迎えた時期とも重なる頃合いではあるが、自分の此れはそうではない。
茶器を運ぶときの声となれば、わざとらしく弾ませるわけにもいかないが、盆を持つ腕の間に挟まる質量は確かに。
思いっきり吐き出す息は重々しく、往時の陰口もまだまだ記憶に新しい。
師団長レベルの武術、魔術の域であれば、様々な耐性もあるにもかかわらず、それを抜くのは魔族の恐ろしさに他ならない。
「子供の話を信用しないワケじゃないけど、大事なことだもの。話をしに来てくれて私も嬉しいわ。
何か気になるとか、物入りなら手紙でも良いから寄越してくれると有難いわね。
……ふふふ、それもそう、か。私のような立場だと、変に根堀り葉掘りしてくる類が居るから笑えないのよ此れが」
純粋に清廉潔白、とは言い難い。色々ある。戦場でも味方と思っている側から狙われる、ということもある。
とは言え、可能な限り公明正大でありたいと思うし、筋を通してこそ通る通りもまたある。
だから、このように挨拶しに来てくれる者とは有り難いし、その意に報いたいという気にだってなる。
子の位置、立場としては師団の金を使っても良いにしても教育はあくまで私事。
その拠出元は己がポケットマネーに留めるべき。……今しばらく、変な趣味に費やすのは控えておきたいが、それはさておき。
「先祖返り、とは違うかも。
……暫く面倒見てた私のお母様によれば、兎に角覚えは早かった。直ぐに読み書きも覚えたそうよ。
そんな読みかじりの知識ばかりが先立たないように、王都に呼んで学院に通わせるようにしたの。
全く、私の心を震わせてくれること言ってくれて有り難い限りだわ」
そう、お互いに純粋に暇人ではない。仕事がある。自由にならない時間の方がむしろ多い。
貴重な余暇となりうる時間を我が子のために割いてくれる以上、念頭に置いておいた方が良い情報は明かしておく。
ヒトの皮を被った一種の超人めいた何か、には違いない。心を寄せるにしても信頼出来る者に任せたい。
「竜の素養、ばかりじゃないわよ。きっと、ヒト以外の良きも悪しきも言えるのも交じってる。
こっちは私じゃなくて、直接の母親の側の出元ね。
私だって純粋な頭の方では、参謀部に負けるわよ。そのかわり、決断と武力を引き受けるのが私の仕事だけどね。
……そっ、か。あ、多分知っているかもしれないけど、その時が来ちゃったら引かないであげてね?」
物凄いわよ、と。顔を傾けながら、少しばかり悪い貌をしつつ改めてカップを相手の前に運ぼう。
ほわりと漂う芳香は王家御用達の銘柄のそれ。
茶請けもまた同様、とはいかなくとも、王都でのお気に入りの喫茶店でわざわざ買い求めたもの。
■パルミラ > 「ええ、そうですね。だからこそ、大事な用件には私も都合をつけなくてはいけないと思いますし、
そうでなければ今日の様にチャンスを探すようになりますよね。
多少、違いがあるかもしれません。参謀職であり、魔術職でもありませんので、
冒険者から直接参謀に、というケースは少ないですね。
素養持ちであれば考えなくもないですが。
どちらかというと、今の部局の都合上、情報収集や調査の手として使いたい、ですね。私の場合。」
流石に参謀部ともなれば、冒険者からすぐに拾い上げる、という事例は極端に少なくなる。
とはいえ、ちょっとした調査で騎士団を動かすわけにもいかないし、王直属の情報部を使ったりするのは手続きが面倒くさい。
そうなると、自分たちが動かなくてはならないような事例でなければ冒険者を使うのはよくある話なのだ。
「あら……それはそれは。
聞いたような、聞いていないような……という感じです。
とはいえ、アマーリエ様に下手を打たせるとは。魔族には注意しなくてはなりませんね。
ええ、腕に覚えがないとは言いませんが、普通の騎士程度でしかありませんので、十分に注意いたします。」
参謀と言えど騎士だ。腕に覚えがないとは言わない。
それでも、直接的な戦闘力では騎士団幹部クラスにかなうべきもないのだ。
ならば注意しなくてはならないのはその通りだろうと。
「そうですね。何かあるようならば、すぐにでも。
費用系はある程度まとめてからご連絡いたしましょう。
もちろん、常識の範囲内で。」
観劇等の費用は常識の範囲に入ると分かっているが、
同時に、ちょっと屋台でつまみ食いをしたようなもので、
ちょっと奢ったようなものは計算に入れるつもりもなく。
そのあたりのさじ加減はお互いにお互い様、という所だろう。
「なるほど……そう考えると、生命の神秘とは興味深いものですね。
確かに。頭でっかちになってしまってはもったいないです。
真綿が水を含むように、直ぐに吸収していきますもの。
学院に通わせる洗濯をしたのは正解です。
いえいえ、心からの想いのまま、ですよ。とても良き子を授かって、うらやましい限りですね。」
そんな言葉を向けるものの、自分はまだ子をなすつもりもない。
いや、正しくは、子をなしてもいいと思えるような相手と巡り会っていない、が正しいか。
もちろん、そんな出会いがどこに転がっているかわかったものではないし、
いつだれがそういう孫座に変わるかもわからない。
故に、この辺りは自然の流れに任せるつもりだった。
「まぁ、悪しきものが混じっているからと言って、今のカザネを見ている限りは
自身の理性で留めおける程度のものでしょう。
ならば、その理性の幅を広げることが私の仕事と心得ておきましょう。
机からの申し出にもかかわらず、乗っていただいていつも助かっております。
できる限り、ご納得いただけるものを作ることにいたしましょう。
ええ、引きませんよ。今日うかがえましたので、どのようなことが起きようと、どのようなモノが現れようと。
私にしては珍しい話なのです。抱かれても良い、とあんなに短い時間で思えたのは。
……なるほど。私が手籠めにされて、お母様、とご挨拶に上がった際は、笑ってやってくださいませ。」
涼しげな顔でしれっとそんな冗談交じりの言葉を口にする。
差し出された茶に礼を告げ、カップを持ち上げて香りを感じれば、心地よさげに目を細め、一口口にすれば、
ほわ、と穏やかな笑みを浮かべた。
■アマーリエ > 「全くだわ。私が今のそちらと同じ立場だと考えたら、ん。……同じようにしてたかも。
或いに兵は拙速とばかりに、動いてたかもしれないわねえ。
――ふむふむ。それもそう、か。
そんな切れ者が在野に居たら兎も角、人を動かす側としてはそういう認識から始まるのは道理だわ」
そもそもとして、斯様な切れ者、怜悧な頭脳の持ち主が居るとしたなら、冒険者の身では収まるまい。
今回の場合における自分の子、シェンヤンの語で言う伏龍鳳雛の類の如き、素質持ちの扱いだろう。
育てる価値もある者も含め、つくづく得難いものだ。
己を含め、役職持ちが冒険者を使う意味、理由として、得心も良く。出来てしまう。
「捕虜交換の材料に使われ、虜囚の汚名を蒙りつつおめおめと帰るよりは、にしても大きい代償よ。――胸だけに。
ここ、笑いどころだから笑ってくれていーわよ。我が身至らなさがよく身に沁みたわ。
よくよく気をつけてね。私もだけど、仕損じてカザネを泣かせたら嫌よ」
自分のような身で最悪と思える想定なら、交換材料とされる扱いだろう。捕虜交換と言う奴だ。
人間同士の戦争でも色々と厄介なのに、魔族との戦いでそうなるというのは、屈辱を飛び越えて余りある程がある。
辛くもとはいえ、生きて帰れただけ儲けものだ。お陰でこの派手に膨らんだ胸元も、冗談の材料として使える。
軽く身を揺らすだけで、弾むように服の中で揺れる中身は、否応なく躰を慣らすまではデッドウェイトにしかならなかった。
凝んな自分と同じか、それ以上の悲劇は、師団長としても娘の親としても、望むものではない。
「ええ、よろしくお願いするわ。
天井知らず、とかになる心配はあんまりしてないけど、あ。宿が入用になるなら、予めカザネに色々渡しておくわね。
……良きも悪きも含めて、学校は人が集まるから、下手に自由をさせるよりは通わせておきたかったのよ。
その上であなたに会ったのだから、間違いなく正解だったわ。
ふふふ、色々運がよかっただけよ。
あ、そうそう。あの子には双子の姉も居るのよ。もし会うことがあったら、よろしくしてあげてね?」
親の裁量として思えば、観劇や演奏の会の後は、余韻冷め遣らず泊まり込むかもしれない。
その宿の補助もしっかりしておこう。安全も加味し、高い部屋を使う等の準備だ。勿論これは別の意味があるが、それは今はさておき。
子も師もお互いに変な金の使い方はすまいと感じつつ、続く言葉に瞼を閉じる。
何せ、自分の子だ。読んだ絵巻、騎士物語等に感化されて、冒険者になる!と言い出しかねなかったこともある。
だから、其れよりも前に学院に通わせた。片手間で冒険者に足を踏み込んでいるのも、まあ、許容範囲だろう。
可能な限り伸び伸びさせたいが、締めるべき処はちゃんと締めておきたい。後は念のため、もう一人の子と関わることもあれば一応頼んでおこうか。
「ええ。そうそう容易くは墜ちるようなことはない、と思ってる。
少なくともパルミラ、あなたと合間とは言え私が見ている限りであれば、そうはならないと信ずる。
こっちだって無理無茶の相談に乗って貰って、裏付けも頼んでるのだから、お互いさまよ。
――全く、この国を取り囲む状況は相変わらず面倒極まりない。
ことが起きれば、第十師団が真っ先に出張るとしても、予めの色々な想定はやっぱり参謀部のチカラを借りたいわ。
っわぁ…………すっごーく入れ込んでくれるのは嬉しいけど、本当、ヒかないでね?引かないであげてね。
もしそんな日が来ても笑わないわよ。とても良いひと捕まえたわねって褒めてあげたい位だわ」
魔力気力にも似るチカラ――破邪の力とも呼ぶべきチカラを放つ娘だ。易く落ちる、身を堕とすとは思わない。
可能な限り親と指導者が見ていたりすれば。寧ろ自分達もまた、その引き金を引かないように気を引き締めるばかりだ。
切っ掛けは常に足元に潜んでいる。
この国を守る情勢は相変わらず怪奇で、王城内にも獅子身中の虫が潜み、宗教的な側にもどうにも嫌な臭いも交じる。
それでも、この国を守る仕事を父祖から受け継いだのだ。であれば、外敵を退ける仕事を全うせねばならない。
その為の知恵を彼女たちから借りつつ、同時に子を任せる不可思議さは、思う程に悪くない。
ただ、少しだけ意地悪になった一方で、不安もある。あの小ささで自分にも勝るとも劣らないものを、抱えている。
冗談交じりの句は有り難い反面、親バカ丸出してこそこそと声を潜めつつ、つい囁いてしまう。
――仮にもし、手籠めにされたという時があれば、その時はその時。祝杯でも挙げてみせようではないか。
心でそう決めながら、カップを取り上げる。味は、うん。良く出ている。満足げに頷きつつ、茶請けのクッキーも一枚齧ろう。
■パルミラ > 冒険者の扱いにしても、多少の程度の差はあれそれぞれに、お互いの利用方法のイメージが取れるものゆえに、
そういうものだろうとお互いに納得に至ることも当然の事。
そして、続いた言葉には、流石に小さく笑いこぼして
「ええ、ええ。そこまで大きな代償は、なかなかに、ですね。
特に、アマーリエ様のように前線指揮を成される方ならなおの事。
体の動かし方も変わって、ご苦労為されていらっしゃいましょうか。
はい。私はあまり前線に出る方ではありませんが、出た時は十分に。
それに、私は臆病に引くことが仕事と心得ておりますので、無理は致しません。
可愛い弟子を泣かせては、ですからね。」
今の部局は大掛かりな戦闘になることはなく、自らの潜入もそうそうあるものではない。
ならば危険性は低くはあるも、王都内だから安全ということがないのがこの魔境。
故に、十分注意するとはここに約定する。
「王都ならば、宿は場合によっては我が邸を使えば……これは、若い燕を囲ったことになるのでしょうか、ね?
今だから申し上げますが、多少学院の一部授業に飽きが来ていたのかもしれません。
特に若い子ならば、なぜ、の答えのない学問を無理にやると、そこを嫌いになってしまうこともありますし。
そういうこともあって、つい、という事情もありました。
正解、と言っていただけると面映ゆいですが、嬉しい話です。
おや、姉君が?……ええ、もちろん。出会うことがありましたら、私の方こそよろしくしていただきたく。
あぁ、そうそう。近々連れて行こうと思っているのは……」
貴族の邸は秘密が漏れることが少ないものでもある。
ましてや、己が邸はなおの事。いつだれと会っていたのかがたやすく漏れるようでは今の地位にいることも叶わない。
だが、招き入ったところを見られてそんな噂にならないとは限らないかも?と苦笑交じりに冗句を口に。
そして、連れて行こうと思っている演目は彼女に共有しておく。
彼女もまた事前に知っておくことで、カザネと楽しく会話をすることも叶おうから。
もちろん、一方的に楽しかったことを聞くのも楽しかろうけれど。
「はい、無論のこと。私もそれを信じております。
何を持っていようと、あの子はうまく乗りこなしてくれましょう。
そういっていただけると。
ええ、全く持って面倒くさいこと。
さりとて、お互いに連携して事に当たってこそ、お互いの力を数倍にも、数十倍にもできましょうから。
あら、そんな風に言っていただけるのなら、安心してカザネと交際させていただけますね。
……ええ、いえ、師事でしたね、師事。」
いい人捕まえたと褒めると言われれば、頬を染めて軽口を飛ばそうとして、少しうまくないいい口だったかもしれない。
とはいえ、そういう未来も想定するのは参謀の性にして、癖なれど、
それを悪いとも思っていないその様相は、その未来の可能性をパルミラもまたよきものの一つと見ているからだろう。
■アマーリエ > 元冒険者としての立場、あり方も十分にある。
前師団長であった実父の訃報がなければ、今もきっと、まだ在野で冒険者として名を上げていたかもしれない。
……かもしれない、だ。その夢を双子たちが継いでくれたら、とかまでは思わない。今はただ、思うがままに生きてみてほしい。
「と……思うでしょ? 同じ轍を踏まないように調べてみたら、酷かったわよ色々。
人でさえ同族同種に色々やるのに、偏見を抜きにしても下手にチカラがあるだけに輪をかけて酷かったわ。
私のこれが生易しい位に。……鎧が着れなくなってなんて、人の形を失うより安いものだったのね。
前置きが長くなっちゃったけど、分かってるならこれ以上はいわないでおくわね。
カザネが私と同じ位に強くなったら、またちょっとは違うかしら。うん、それも見てみたいからお互いに無理はしないようにね」
記録を紐解くのは、前任者、犠牲者の轍を踏まない意味で重要。それが悪趣味の産物であってもだ。
猟奇趣味の貴族がそうした魔族との戦い、バケモノとの戦いとの犠牲者の変形、異常ぶりばかりとスケッチしたものがある。
……見るも無残とはまさにそのことであった。我が身もそうだが見眼麗しい乙女の末路は、見たくはないもの。
弟子/子の成長を見届ける意味でも、兵の無駄な損耗を防ぐ意味でも、お互いに無理はしない。そうお互いに約定しよう。
「……あ、そうするの? そうしても構わないけど、ツバメと呼ぶには可愛くない?我が子なだけに。
飽きが出るのは特にいまの頃だと、仕方がないかもね。
あの子から聞いてたけど、うっかり寝過ごした時に会ったんでしょう? 理由は兎も角、気が入らないものが出るのは仕方がないわ。
そういう時にあなたと会えたのだから、正解にして幸運と思わずにはいられないわよ。
ふふ、ありがと。少しでも事情を知っている人が居てくれたら、安心出来るわ。……ふむ、ふむ、……良いんじゃない?面白そう」
あ、その手もあったか。向こうの邸宅にお泊りというのも、確かに間違いはない。ヒミツを保ちやすい。
自分のような地位は兎も角、己に娘が二人も居ると知っているのは……学院の名簿含めて色々と網羅しようと思わねば知るまい。
取り敢えず、深くは考え過ぎないようにしよう。寧ろ男装させて外出させてみるか?と思う程度には楽しむ。
そうした遊びも出来ることを得難い機会として楽しみながら、問題の演題を聞く。悪くない、と笑って頷きつつ。
「――そう、ね。そう信じてる。
私を含む第十師団の竜騎士は、どこにでも飛んでいけるけど……当てもなく飛ばす程非効率的なものはないわ。
国境巡回で飛ばすなら、時期時節を踏まえて飛ばす方が、矢張りいいに決まっている。
まーだ産まれて間もないって感じが抜けないうちに、交際なんて聞いちゃうなんて色々と感慨が後から押し寄せてくる感じが凄いわー……。
人前は師事、二人と私の間なら、交際かしら。によによしながら眺めてあげるわ――!」
歳の差は兎も角、運命なんてどう舞い込んでくるか分かったものではない。でも、此れは良い運命だろう。
どう転ぶかまでは見通せずとも、きっといい未来を思い描けることはこの様を見れば得心できる。
この時間から酒でも呑みたくなる気分も、久方振りだ。
向こうの肩でも組んで、ジョッキでも掲げたい気分を押さえつつ、色々と話し、伝えつつ茶を呑もう。
私的、師団的等、色々と話すことが日が落ちるまでまだまだ尽きなさそうだ――。
ご案内:「王都マグメール 王城/執務室」からパルミラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/執務室」からアマーリエさんが去りました。