2025/12/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」にバーバ・ヤーガさんが現れました。
バーバ・ヤーガ >  
 本当のその日は冷える夜だった。
 息は白く、身は震え、歯は打ち鳴らされる。
 分厚い上着一つだけでは足りない。
 もう一つ身を厚くした外套を身に着けてようやくと言ったところだ。
 肥えた体ならまだしも、特に身の瘦せた体や美意識の高い者らは屋内に身を潜めてしまうだろう。
 今夜は、そんな冷えた夜だ。

 ―――中庭、耳を澄ませば聞こえるのは剣戟 いや、それにしては軽い音だ。
 硬質的で刃を擦り合わせる、武と武のぶつかり合いではなく明確な殺意と実行のみを目的とした音がする。
 見えるのは剣花 小さく小さく咲いた、金属と金属のぶつかり合い。
 月明りでははっきり見えない其処を一瞬だけ映し出す火花は、パッと撮れた姿は数体の影。

 その中でも、赤い粒が軌跡を造る。
 ゆらりと曲線的な軌道を超えて無秩序にすら見える。
 月明りが全体像を映せば、嗚呼それは、煙草を咥えたまま動き続けていたと思われる黒髪黒衣
 煽情的な姿であり気温を感じさせないような姿のまま、一つの大振りな剣鉈型の匕首(ドス)を持っている。
 剣を擦り合わせて打ち払い、無秩序な軌道で動き回っていたのは目の前の女かと第三者がいたら思う答え。


   「―――ほ、ほ、ほ。
    こんな夜更けに寒うおすのに、ほんまえらいおなりやすなぁ。
    うちにバレて、それぶっぱなしてから、はやどんだけ経ちます?
    こそこそ逃げ回るような暇、もうとうに過ぎてはりますえ
    ―――なぁ、お客はん♡」


 潜める必要もない、こそこそ入って来た王城の毒虫を追い払うのに声を抑えることもなく、むしろ剣戟は派手のほうがいい。
 こうして剣で剣を舐めるように打ち合っているのは、最小で逸らし打ち込んでいる結果か。
 嘲笑い、両切りの甘い香りがする煙草をつまんで ふぅぅ♡ と煙を吐く。
 傷をこさえるのは相手方のみ。
 数人は伏した。 首が曲がる者 背が拉げた者 腹を抉り上げられた者
 あと数人手負いにしたいものながら、引き時は向こうのはず。