2025/10/31 のログ
■ジナイーダ > 夜の帳が降りた王城の内のとある邸宅の庭に、フィレンコヴァ商会の垂れ幕をつけた荷馬車の車列が乗り入れる。
荷馬車からは鉄枠で補強された厳重な箱を私兵たちが慎重に運び、それを王家の邸宅の関係者が受け取り地下まで搬入する作業はまだ始まったばかり。
多くの人間が行き交う喧噪を、邸宅のテラスの上から髪をたなびかせながらじっと眺めていた。
己を陥れた王家の住まうこの忌まわしき場所にわざわざ足を運んだのも、これだけ多くの品を運びこむ大事な取引であるからだった。
「───…それで?応対の者はまだ?」
表向きは王城の邸宅に招かれている立場であるが、最初に付き人の私兵1名とテラスへ通されて以降は出されたワインを傾けるだけの時間を過ごしていた。
商談はとうにまとまっていて今更話すようなこともないが、ここで寒空の下で必死に働く下々の人間を眺めるのも飽きがき始めていた。
私兵として連れてきた男もそれなりに見た目は気に入ってはいたが、ここでは縮退したように受け答えするだけで暇を潰すには不足だった。
「これほどの量の魔導機械の部品が必要なんて、戦争でも始める気なのかしらね」
今も王城の中を走る車列に積み込まれているのは、商会で扱うには少し珍しい魔導機械の完成品ではなく部品だった。
既に組み上げた魔導銃を欲しがる王家は珍しくないものの、それでもこれだけの規模になることは珍しい。
故に重要な取引と見定めて商会の代表自らやってきたのだが、王族に謁見は叶うかはまた別の問題である。
噂によれば王城で魔導機械の研究に多くの金が流れているそうで、くすくすと笑みを零しながらワインを傾ける。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にグスタフさんが現れました。
■グスタフ > 「これはこれは、わざわざご足労申し訳ない。
まさかフィレンコヴァのご息女が直々に来るとは思わず。出迎えが遅れました」
壮観壮観と王城に運び込まれる荷物を見ながら、男が現れる。
何人か彼に付き従う部下に命じながら、男はまっすぐジナイーダの元へ。
「グスタフと申します。今回の件での責任者……と名乗ればよろしいかな?」
手を差し出し、そのまま促すように手を取る。
いやらしい目つきで最初の丁寧な口調から、かなり見下すような声音が含まれた口調に。
「いや、しかし……こちらに出向いて頂けるとは、本当に光栄ですよ。
見たくもないものばかりじゃありませんでしたか?」
嘲るような響きを伴いながら、誘うように奥の部屋を示し。
「この機械、何に使うかご興味ありそうですね。
その辺お話してもよろしいですが……少し場所を変えましょうか?」
■ジナイーダ > 「……いいえお構いなく、此方も来たくて来ただけですもの」
連れ立った私兵にワインを注がせていたところで、通されていた部屋にやってきた男に視線を移す。
お付きの部下とその身なりから王族ではなく、仇に繋がる情報は期待できないと判断する。
その時は張り付いたような笑みを浮かべて、愛想よく振舞う。
「こうして独りで楽しんで申し訳ないくらいね、ジナイーダ・フィレンコヴァですわ」
商談の責任者との会話は、それこそ纏まり切った今となっては本当に無為な時間でしかない。
身体を舐めるように動く目線と敬意にかけた声色にも眉一つ動かさず、自身もまた手に持ったワイングラスを置こうともしない。
そんな応酬も刺激には程遠く、そのまま辞そうかと思ったところで、男が品の用途に言及すると初めて表情を動かした。
「ふぅん?そういえば責任者とおっしゃってたわね。別にどう使おうと私の関知しないことだけれど、お誘いを断るのも心苦しいですわ」
色よい返事をする女の目線は既に男ではなく、その指差した部屋の扉へと注がれる。
大量の商品の注文は、単なる外から見た観察材料でしかないため、そのはらわたの中身を見られるのは勝機として見逃せない。
私兵の一人をワインの瓶を持たせたまま連れ立ち、その背中を追っていった。
■グスタフ > 【移動します】
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からグスタフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からジナイーダさんが去りました。