2025/09/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 資料室」にベアトリスさんが現れました。
■ベアトリス > 王城、壮麗な建築ではあるが外廷部分は行政を担う場所でもある。
当然、伺候する貴族や官吏、武官が多く行き交い、そう言った場所は壮麗ではありながらも、装飾性よりは機能性を優先した幾分簡素な場所も多い。
そういった場所の一つ──、過去の議事録などが収められた資料室に女は足を向けていた。
ここしばらくまとめていた議事録がそれなりの量に達したこと、決裁を終えたことから手元に置いておく必要がなかったというのがその理由。
資料補完の観点から、照明は少なく、薄暗い。
林立した書架は、図書室のようにも見えるが実務的なそこに収められているのは各種議題の進行を公文書として体裁を整えまとめた物や、過去の会議によって定められた各部門の決裁書類。
その量が、この国の歴史を示してもいるが、実際は此処に残されない歴史もまた多々あるのだろうことは感じさせる。
「───……」
そのうちのまだ埋まり切っていない棚へと書類を修め、それに伴う事務所類をテーブルについて記載する。
手許を照らす、小さな卓上ランプの灯りがほのかに女の顔を照らし。
かり、と上質の紙をなぞるペンの奔る音だけが静かに響いた。
ご案内:「王都マグメール 王城 資料室」にファルスィークさんが現れました。
■ファルスィーク > 普段立ち入る事の少ない薄暗いこの空間に脚を向けた理由は、何か話のネタになるようなものは無いだろうかといったもの。
近隣諸国の情勢については逐一拾い上げてはいるものの、過去の物に関しては情報が薄い。
特に細々とした内容まで掘り下げるとなれば、この場所が最適であるだろう。
利用する者が少ないというのも、調べ物をするには最良の環境である。
取り出した水晶柱へ魔力を与えれば、青白い光を放ちつつふわりと浮き上がり、それを光源をしてゆるりと足を踏み出せば、静かな空間に靴音が響いた。
己が発する音の他には………ペンを走らせる音が微かに聞き取れ、そちらへ目線を向ければランプの明かりと共に女性の姿が目に入る。
それは見知った執務官であるのならば、相変わらず仕事熱心な事だ…と小さな呟きと共に近付いていった。
「職務中、少々邪魔をさせて頂く」
書架に収められた膨大な議事録を一瞥した後に、かける言葉。
■ベアトリス > 特に言葉を発する必要もない。
私語が厳禁というわけではないが、自身しかいない中で独り言ちながら仕事をするタイプではないというだけ。
手元の文言が問題ないかを見やり、ペンをペンレストに戻したところで感じる余人の気配に顔を上げた。
おりしも丁度かかる声音は聞き知ったそれ。
あまりこういった場所に立ち入る相手ではないと知っているせいか少々驚いたように双眸が瞠られた。
けれどそれをすぐに平素通りの表情に戻すと、軽く目を伏せて首肯する。
「───……こちらについては、問題ございません。何かご用向きでしょうか?」
仮にも王族籍を持つ相手なのだから、応対は自然丁寧なものになる。
場所柄、用の無いものが訪れるような場所でもないだろう。
何か必要な資料でもあるのだろうかと緩く首をかしげ問いを返した。
■ファルスィーク > 意図的に気配を消す事も無く、存在を知らせる様に立てる靴音は、来訪者を知らせるにも最適ではあろう。
合間に聞こえていたペンが滑る音は流暢であり、音としても心地よいものとして届いていた。
仄暗い場所での明暗……ランプの明かりに照らされている姿は、普段と違った魅力を引き出しており、挙げられた顔が浮かべる女性の表情は、至極当然の物とも言える。
場には不釣り合いとも言えるのは自覚があるからこそ。
「何か話題になりそうなものはないかと、20年程過去の議事録を拝見しようと思い伺ってみた。
特に王権に関する地方貴族、領主の動向について……というものがあれば、面白そうではあるが……」
人目はなくとも王城と言う場所である事から、公私の使い分けをしっかりと行う女性の言動は鏡と言うべきではあるが、悪戯心を刺激される部分でもあり、手を伸ばしてみると女性の頭を軽く撫でてみようとするか。
さて、用向きはと言えば20年ほど前の頃の件は、ある程度記憶にはあるのだが、細かい部分での漏れがある可能性を考えての事ではあった。
伝えた内容から、きな臭いものを調べようとしている事は十分に窺えはするだろう。
■ベアトリス > 「20年前……───ですか」
軽く己の記憶をさらってはみるものの、特筆すべき記憶が引っ掛かることはなかった。
まだ幼いころであることも理由として起因する。
しかし当然この場、その年代の資料はまだ浅い方といえた。
ただ、閲覧するには各部門の責任者の裁可が必要になるのは間違いはないのだが───そのあたりは彼の特権的立場がうやむやにしてしまうのだろう。
等と考えを巡らせていたのだが、するりと伸びる指先が、己の頭を撫でてゆくのには少し困ったように眉尻が下がる。
留め立てできるような立場ではない、とはいえ公私の立場を分けたい女としてはあまり歓迎できる所作ではないのは事実だ。
甘んじつつも、立ち上がることでその指から静かに逃れ。
卓上のランプから光源だけをすくいあげる。
火気ではない、書類等を痛めない柔らかな光は魔導、魔術のそれ。
初歩的な魔術を修めている女にも扱える程度の簡単な術式ではあったが、それ自体は便利であった。
すい、と光源だけを奔らせると、ほのかな光が誘導するように移動してゆく。
それを追うように女が歩き始める。
「おそらくはこちらの棚になるかと思います」
事変次第で書類の過多は変わってくるが。おおよそ年代ごとにまとまっている棚の間を行きながら、誘導する。
相手がついてくるだろうことを半ば予測しながらではあったが。
「私はそちらに触れ、開示する権限を持っておりませんので──
魔導錠への接触はファルス様に行っていただくことにはなりますが……問題はありませんね?」
機密事項も当然多い。
機密保持のため魔術的封印が成されている資料の区分になるため、あらかじめそう言葉をかけるものの、その血筋や立場から、そう言ったものへの対処は十分可能だろうことは予測できた。
半ば確信を帯びた言葉と共に問いかけ、明かりを保持したまま佇む。
■ファルスィーク > 「その辺りから、王都……王権を含む王族や諸侯の動向が怪しくなり始めていたように記憶している。
改めて記録を遡ってみれば、何か面白そうなものでも発見できるかもしれないとな」
関われば面倒ごとになる可能性は大いに匂わせる己の言葉は、拾うか捨てるかは女性の判断に任せる事にし、この場所を管理する立場である彼女が居るのならば、探し物をするのは楽になると言うもの。
閲覧に関しては特権を行使すれば問題なく、事後報告であっても責任者から咎められる事は無いだろう。
責任者が咎められたとしても、己の強行として責を己に押し付ければ良いと告げる事になる。
艶のある髪の感触を愛でるように撫でる指先の動きに対して、困ったような表情になるのを見て浮かぶ笑みは悪戯めいていたが、逃げる様に席を立たれてしまうと、宙に浮いたまま手は指を握ったり開いたりして残念そうに竦ませる肩。
次いで女性の後を追うように移動していく事になる。
女性が新たに作り出した光源と、宙を踊るように舞う水晶柱の光で、辺りを見回すのに苦労する事はない。
案内された先にある書架へと目を向け、そこに施されている魔術的な封印も理解したように頷いた。
王権に関わる事は特に厳重な機密扱いであるのは当然の事。
しっかり管理されている事には満足気ではあり。
「ありがたい。
自分で探すとなると、余計に時間がかかっていたであろうし。
ああ、そこは勿論。
誰が開いたのかという証明でもあるだろうから。
あと、出来ればもう少し付き合って欲しいのだが…」
これだけ厳重に管理されているのであれば、持ち出しは無論厳禁だろう。
書架の奥の方……区分が区分だけに長年使用された形跡が見受けられない閲覧席が垣間見え、そこを利用する事にしようか。
まずは…と、書架が並ぶスペースの前、己の名を宙に綴り、身分証として紋章を刻んだメダルを手に持ち軽く掲げてみる。
と、錠が外れる様な音がしたのは、このスペースに入る事を許された証拠か。
ゆるりと足を進めて、その書架が並ぶ区画へと入っていく事になる。
■ベアトリス > 「成程…?」
業務上知りえた機密を、みだりに口外するつもりも、何かの交渉の手札とするつもりはあまりない。
己にかかる不都合が過大であれば考えなくもないが──今のところはそういった状況に差し迫ってはいないため、相手の匂わせるような言葉にはあいまいに頷くにとどめた。
自身の親族間の問題だけでも手に負いかねているというのに、王族同士の権謀術数に好んで身を投じたいわけではなく──。
また、たまさか資料室で行き合っただけの身としては、相手の信頼は過分に感じてくすぐったくもある。
そういった性分を理解してはくれない相手の態度にはやはり困った表情を浮かべてしまうのだろうが。
こちらの説明に対して理解を示す頷きに、これ以上の手出しは職責上、身分上できない。
ただ、相手の求める資料が見つかったのならそれでよい、と目を伏せて首を垂れた。
癖のない緑髪が肩を滑り落ち、揺れて。
問題なく資料を手にすることができたらしいのには少し肩の荷が下りた気分ではあったが、そのまましばしの随行を強請られると少々考える。
とはいえ、状況が状況であれば上司に対しても言い訳は立つと考え頷きを返した。
「お手伝いできることは限られているとは思いますが、それでもよろしければ」
彼が歩を進める先へ、灯りを伴いながら今度は従うように歩いてゆくことだろう───。
ご案内:「王都マグメール 王城 資料室」からベアトリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 資料室」からファルスィークさんが去りました。