2025/06/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 テラス」にテミスさんが現れました。
テミス > 今日も王城では、華やかな社交パーティーが催されている。
王侯貴族たちの密談、取引、情報交換、噂などがひそやかに取り交わされているなか、美食に美酒を味わうもの、ダンスをするもの、
そうしてひっそりと、あるいは大胆に二人きりなどになってこの場を離れていくものなど。
様々な人間模様がかわされるなか、テミスはパーティーの熱気を避けるようにテラスへ避難していた。

本来内向的な自分はこのような華やかな場所には向いていないし出ることも稀なのだが、
今日ばかりは少し事情が違った。
有名な魔術師がこの場を訪れると噂が流れ、その人と魔術や魔法のことを少しでも語りたいと勇気を振り絞って訪れたのだが、
件の魔術師はどうやら今夜はあらわれないようであてが外れてしまったのだ。

すぐに帰っても良かったのだが、珍しい客人にすぐ様々な貴族に話しかけられ、取り囲まれて、
今ようやく休憩している最中である。

「はぁ……やっぱり、苦手だなぁ……」

人との付き合いは自分はあまりうまくない。
魔術や魔法の勉強をしている方がずっと楽だし、楽しい。
でもきっとそれだけではいけないのだろう。テラスの柵へともたれかかり、初夏の涼しい風を浴びる。

ご案内:「王都マグメール 王城 テラス」にルーベルさんが現れました。
ルーベル > 煌びやかな明かり、華やかな参加者の装い、それに絡みつく権益の示し合い、探り合い。
王侯貴族の社交は深くあるいは浅く様々な思惑が絡むもの。

魔導師貴族は他人との関わりを殊更厭うわけでもないが、実益優先でこういった場に参加するかどうかを決めることが多い。
その日、少々遅れながらに会場へと参加したのは、単なる気まぐれ。
参加する者の中に少々の縁があるものが居て、そこへの義理立てを行ったに近しい。

過去のものとはいえ栄光は栄光、かつての対魔族の英雄である男に声をかける者も少なくは無く。
けれどもやはり、今の社交界の噂に上る華々しい者には話題性では劣る。

一頻りの交流を終えては、休憩がてらにとテラスのほうにと足を進めていく。
そこには先客がいて、少しだけ歩む速度を弛めるも…誰かが、そこで逢瀬をしていたり、面倒な手合いであるようでもなく。

「良き夜をお過ごしですかな」

当たり障りのない社交用の挨拶を掛けて、無用な警戒をさせないようにと心がけるのは自然と身についた振る舞い。
相手の反応次第では、それ以上にお互いが言葉を紡がずとも済ませられるように、と、
僅かに距離を置いておくのも、無為に先客の暇を奪わぬようにするもの。

ただ、常日頃、癖のように探ってしまう相対した者の魔力。年若い先客は、優れた魔力を持つのを感じ、
少しだけ暗金の瞳を相手にと向けてしまい…礼を失さないうちに、と、ゆるりと剥がして。

テミス > 華やかなパーティーの席を背に、一人風にあたっていたテミスは不意にかけられた声に驚いて振り向く。
見れば、一人の壮年貴族がゆっくりとこちらへ歩み、当たり障りのない挨拶を投げかけている。
どなたであったか、ぱっと思い出せずにいるテミスは、少し間を置いて身体の向きを変えて
挨拶に応じるように一礼をした。

「こんばんは……えぇと、その……」

こういう時はどう返せばいいのだろうか。まだ社交場での礼儀作法に疎い自分ではいい返事をかえせない。
代わりに、ふと、その人がどういう相手であったか脳裏にひらめくものがあった。
確か、古い本で見たかつて魔族の一人を討った英雄の一人が、このような容姿であったような気がする。
名前は確か……。

「アルカヌム伯爵……ですか?」

恐る恐るといった調子で失礼が無いようにと気を付けてはいるものの、相手の名前を問うのはそもそも礼を失しているかもしれず。

ルーベル > 装いに出自が現れるといっても過言ではないだろう、貴族の装束。
パーティーのためのものとなれば、余計にそれは顕著になる。本人の意図だけでなく、家の思惑も絡むようになるのだから。

視界の先に居た先客はまだ幼さも残す年の頃ながら、装いはそこらの貴族で纏える物には見えず。
ゆえに、参加者の一人として礼を保ち、社交の相手と見做して声を掛けた。

どうやら、無理矢理参加させられた儀礼も知らない貴族子弟というわけでもないらしい。
ぎこちなくも、きちんとこちらに身体を向け、礼を送ってくる。それに、男もまたゆるりと腰を折って応じ。

「おや…この老骨をご存知とは。学院かどこかで見えたことがありましたかのぅ」

己のことを知るのは同年代か、そこから遠くない年の頃であることが多い。
目立つ戦働きとはいえ、若い世代が知るのはやはり現役の騎士、戦士、魔導士、傭兵、冒険者たち。
魔族に限らず今の王国はそちらの方面でも乱れがちで、英雄譚にも事欠かない。

だから、今己を知る若い世代の者との接点といえば浮かぶのは学院であった。
あるいは貴族としての教育を念入りに施されている子弟なら伯爵位までもきちんと把握しているものだろうかと。

相手が格別に、テラスへの来訪者を厭う様子がないようであれば、不要に避けることをせずに幾分か距離を近づける。
少年か少女かと惑うような神秘的にも見える、年若い者特有の中性的な容姿。
美しい金色の髪に、品の好い顔立ち。纏う装いは近くでみるほどに上等で上質なもの。

なにより強い内包魔力に、つい、暗金の瞳を相手を観察するように脚から頭の先まで向けてしまい。

テミス > 相手の返答にどうやら間違いではなかったと、ホッとしたような表情を見せ、
それから学院のことが話題に上がれば、

「そうでしたか……。
 ええと、僕はその、古い英雄譚の本か何かで似たようなお姿の挿絵を拝見して……。
 学院の教場にも立たれるのですか?
 その、学院生ではあるのですが何分教職員の方に疎くて……」

そこまで言って、自分の話ばかりしてしまっていること、
そして名前を名乗っていなかったことに対してしまった、というように表情を変える。

「申し遅れました。
 僕はテミス・イフレーア・カルネテルと申します。
 ……どうぞ、お見知りおきを」

そう言って、胸に手を当てぎこちなく会釈した。
距離を縮めてきたアルカヌム伯爵には、特に厭うこともなく、視線には不思議そうに小首を傾げて。
今着ている自身の衣装もイフレーアとして恥ずかしくないものだろうから、その紋様や仕立てから家柄のことなども窺うことができるやも知れず。

ルーベル > 男が、先客の出自を装いで探っていたのと同じく、相手も装いにて、探っていた。
奇妙な一致に、面白そうに好々爺というような笑みを浮かべれば、一つ頷いて。

「なるほど、確かにこの格好は現役のころの装いを意図的に社交の用にと流用したものですからな。
 そのような挿絵の参考にと求められたこともあるし、見覚えがあっても不思議ではありませんのぅ」

体のいい対魔族のプロバガンダとしての絵物語、英雄譚に使われた記憶。
そういったことは自身よりも家のものが得手である故に任せきりではあったが。
アルカヌム伯爵家としても箔付けには十分役立つゆえに、ほとんど現物のままの描かれ方だったのだろう。

「講師としても、学院に籍は置いておりますな。
 おお、ご丁寧に。ルーベル・アルカヌム、伯爵位を賜っております。
 …なるほど、かのイフレーア・カルネテルのご一門で…あまり、こういう場には出られないのですかな?」

慣れない様子で会釈を向けてくる相手に、同じように礼を返す。
近くで見える衣装、そこにある紋様。なにより王族に連なる家の者と、騙る必要があるとも思えず。
むしろ相手の身体に内包される魔力を思えば、一芸に秀でると言われるかの王族家の者と言われて納得する。
その力を暴きたい、というような、悪い虫が疼くのも感じながら。

此方の視線を不思議そうに受ける相手に、笑みと共に社交の場に慣れぬ様子からの問いを向ける。

テミス > 挿絵が描かれた当時はアルカヌム伯爵の若かりし頃であり、当然今と容姿は変わっているだろう。
けれど偶然の一致か、挿絵の衣装と、今の伯爵が着ている衣装が似ていたことからテミスがなんとなく気づくことができたようだ。

講師としても籍を置いている、との言葉に少しバツが悪い様子を見せ、

「高名な方が籍を置いているのに、存じ上げず申し訳ありません……。
 では、伯爵のご専門などは……?」

そう言って、相手の専門科目を尋ねて。
家のことを知っている様子の相手に少しずつ気を許している様子で、
社交場に出ないのかと尋ねられれば、苦笑しつつ小さく頷いた。

「はい、このような華やかな場には母や兄が出ることが多く、僕はあまり……。
 なので今日も少し出席しただけで、疲れてしまって休んでいたところでした」

伯爵の内心など知ることもなく、素直にそう告げる。

ルーベル > 名を売ることもできない貴族家もあることを考えれば、
年若い目の前の相手でも、その装いで気づくことができるなら、英雄譚への出演の対価としては十分だろう。
あるいはこの年になってもその恰好を用意する家の者の気配りのおかげか。

魔導師貴族が講師をしていることを知らなかったらしい相手には軽く首を左右に振り、気にしないようにと示し。

「なんの、かの学院にはほかにいくらでも名の知れた者が教鞭を取っておりますからな。
 私は魔術の授業などを受け持っております。分野は広く、特に術式関連に拘って」

問われれば、自身の得手とする構築魔術式のことなども絡めながら講義の内容を伝えていく。
交える話の中で、社交に不慣れなことを素直に吐露するのに、ふむ、と自身の顎を撫でながら。

「不慣れだと、華やかに見えてもそれだけでないと…知るほどに気疲れする場ではありますからな」

そういったところは見せぬようにと教育されることも多いだろうに、かの王族家はこういった点でも他に類しないものだろうか。
あるいは、放任主義的なところもあるのだろうか、とも思いながら…それはある種、絡め取るに易いかもしれないということで。

その魔力も、あるいは王族としての立場も己の研究に役立つものだろうか、と、暗金の瞳が細まる。
目の前の相手が知識面でも才覚に溢れる者であるとは、今はまだ気づかないまま。

テミス > こちらの無知を気にしないように、と示す寛大さに助けられたこと。
そして何より魔術の授業を受け持っている、と伯爵が述べたところできらりと少年の碧眼が大きく見開き輝いた。

「魔術の授業を……!
 学院での講義、特に魔法や魔術関連の講義は取り逃がさないようにしているのですが、
 僕の知らない講義がまだあったなんて……!
 術式関連に拘っていらっしゃるんですか?
 僕も最近は王国内の術式だけでなく他国、特にシェンヤンなどの術式も研究し始めていまして、
 様々な形の術式によって起こる現象や結果も微妙な異なりがあるんです。
 ぜひ、伯爵の講義も今度受講させていただきたいです……!」

魔術の話となれば自分の領分と言わんばかりに、先程までぎこちなさを見せていた口は滑らかに喋り始める。
表情は明るくなり、その知識欲の輝く瞳は、本当に魔術や魔法が好きであることを相手に伝えるだろう。
と、そこまで闊達に話してから、ふと自分が一方的に話しすぎたとして慌てて口元を手で押さえる。

「し、失礼しました……。つい、自分が得意なものや興味のある分野だと、喋りすぎてしまいますね……。
 無礼をお詫びいたします」

恥ずかしそうに頬を赤らめながら、小さく縮こまる。
社交に不慣れであることを打ち明けて、納得されたように顎を撫でる相手に、これまた恥ずかしそうに

「ええ、こういった社交の場よりもずっと魔術や魔法の研究をしている方が楽しいです……。
 人とのやり取りは、難しすぎて僕にはよくわからないことがたくさんあります。
 魔術や魔法のほうが、ずっとわかりやすくて……」

少し俯いてそう述べる。
しかしそこまで言って、顔を上げ、慌てて付け加えるように

「あ、いえ、伯爵とのお話が難しいというわけではなく……!」

と取り繕う。

ルーベル > それまでのおとなしい印象を覆す、唐突な饒舌さ。
探っていた目の前の相手の魔力もどこか弾むかのように気配を強める。

そこに至って、ある意味での己と同種の人間だ、と、そのように一つ、評する。
年若く内包魔力も強く、そしてその才を生かすように志向も魔術へと。

「なるほど、イフレーア・カルネテルの一門…」

捲し立ててから、一応はまだ分別がつくのだから、研究狂いのような者たちと比べても若さが先に立つ。
けれどそれは将来有望ということでもあり。

そこからも、一度舌が滑りはじめれば留めるものがないゆえか。
それとも同好の士を見つけたというような親近感でも覚えたゆえか、先ほどまでよりもよく言葉を放つようになった相手の言葉を静かに聞きながら。

「いや、何も謝るようなことではありませんとも。良く分かりますからな、そういう気分と言うものは」

相手の言葉に理解を示すことで、同じような経験があるものだと匂わせる。

自身と同じく魔術探求に傾倒しているらしい年若い王族。
特に尖った才覚を持つことが多いと評されるその一門の若き才能、内包する魔力。
興を引かれて、口が滑りそうであるのは―…そう、良く分かる。

だから、脚をゆっくりと進めて距離を詰め、相手の背にそっと手を添えようとしながら。

「よろしければ、場を移してもっと"わかりやすい"話でもしますかな?」

そうやって、パーティーを抜け出し別の場所で話の続き…魔術の話を、と、言外に伝えながら誘う。

テミス > 同好の士を見つけた。まさにその言葉がふさわしいだろう。
そうして距離を詰められ、背に手を当てられるまま、魔術の話をしようと言外に誘われたなら
疑うことを知らぬ少年はすぐに首を縦に振っただろう。

「はい、ぜひ伯爵の知見と知識をお聞かせください」

自分の得意分野でならいくらでも話ができる。
そう思ってテミスはキラキラとした眼差しで伯爵を仰ぎ見る。
そうして二人は華やかな社交場を後にし、別の場所へとそっと去っていくだろう。

ご案内:「王都マグメール 王城 テラス」からルーベルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 テラス」からテミスさんが去りました。