2025/12/12 のログ
李皇華 > 「在り方は、人の概念と捉え方で変化するものですからね。
そして名は個と我を結びつけ、存在をより固定化させる為の依り代でもあります。
呼んでいたとなると、人にはそのような存在であると認識されていたのでしょう。
ですが……貴女は名を持っている。
となれば、その青行燈から枢になったと言えます」

もっとも、この思想は北方の国における考え方であるので、この国ではまた別の認識をされる可能性はある。との言葉は付け加えてはおくが。
もっとも、北方の国では彼女の様に生まれ出る存在は、先程話した通り事実として存在するのは、神が去ったこの国との環境の違いも大きいだろう。
名に関する意味合いを語りつつ……好奇心を刺激したらしい反応は、可愛くも見えていた。

衣に触れる彼女の手は好きなようにさせており……間近に交差する目線はそのままに。

「さて……どのように説明した物でしょうか。
香も手段の一つではありますが、理を編み込んでいくという表現が合いそうですね。
貴女の言う通り、魔法や魔力の概念が存在しませんが、その代わりに陰陽の思想が存在します」

彼女の言葉には頷きを以て答えたのは、お互いに異文化であり根本的な部分で違うのだろうという事。
土地に恩恵を与え総ていた神の存在が違うのだから、それは当然ではある。
生地から自分へ目線が変わるのならば、どうかしましたか?と問う様な目線を向け。

枢樹雨 > 「…身に纏う服もそうだけれど、そう言った考え方も、似てる。
 私が生まれた場所と、シェンヤンと。――シェンヤンと言うよりも、君の自身の考え方?
 …君の、皇華という名前は、誰かがくれたの?」

生まれた国で培われた考え方。
そう思った次の瞬間には、貴方が生きた年月の中で出来上がった思考かもしれないと、そんな可能性も頭を過る。
己が好奇を擽る存在に対してだからこそ、留まらぬ想像力。
ついつい次から次へ問いを投げかけてしまえば、藍の布地の滑らかな感触には満足したのか、触れていた手を離し。

「理を、編み込む。……札に、文字を書いて呪いとするよう、な?
 文字ではないなにかを、糸のように編み込む?…なんだか難しそうだね。
 そんな器用なことが出来るのに、魔術も学ぶの?」

人ならざる力を持っていながら、――否、だからこそ、人の子が力扱う手法がピンとこない妖怪。
上肢の位置を少し戻せば、貴方の手元に在る書物が視界に入る。
魔術に関するものと気が付けば、次はその書物に触れて。

李皇華 > 「元となるのは北方の国の思想ですが、それも理の内であるのも確かですよ。
名というのは、それほど強い力を持ちます。
この世界で自分が自分であると証明するものですから、当然ではありますが。
私の名は、祖父が付けてくれました。
―――遥か遠い昔の話です」

自分が生まれ育った北方の国と隔たりはあろうが、近しい思考を持つのは文化の影響は少なからず受けている証拠なのだろう。
名という定義は、この国でもそれほど違わないようではあると認識したのは、特に契約を伴うものと召喚系の魔法に顕著にみられたからで、それは端的に説明してみる少々小難しい話となるか。

「符術ですか…ああ、確かに意味のある文字を書く事で、力を持たせるという意味では似ていますね。
…これには、特に水と金の理を込めていますが……そういうものであるくらいの認識で良いかと。
魔法、魔術と言うのは、私から見ればとても興味深い物ですので」

自然の存在であれば、存在自体が既に力の塊であり、力の行使は人が呼吸をおこなうのと同じくらい当たり前な事であるので、その不思議だと思う問いかけには知的好奇心の部分が大きいのだと告げた。
そして、時を告げる音が微かに耳に届けば、もうこんな時間であるのかと溜息を零したのは、時間が過ぎるのが早いせい。

広げていた書物は閲覧は出来るが貸し出しは許可されていないらしく、戻さなくてはと席より静かに立ち上がり。

「もう少し言葉を交わしたいところですが、生憎と戻らなければいけませんので失礼いたしますね」

ゆるりとした目礼をしつつ書籍を書架へ戻し、図書館を後にするのだった。

枢樹雨 > 「祖父…、そう…。じゃあ君は、血と肉を受け継いで生まれた、人の子なんだね。」

問いへの答え。それにひとつ頷くと、貴方へと向けていた視線が少し落ち着くか。
貴方ももしかしたら、己と同じく人とは違った存在なのではと、そんな勘繰り。
勘違いだったかと、勝手に納得しさらにもう一つ頷くと、少し浮いていたお尻が椅子の座面へと帰っていく。
それでも貴方が丁寧に魔法の説明を添えてくれるなら、勤勉な学生かのように真っ直ぐ耳を傾け。

「興味があるのは私も同じ。 何度か魔法を見せてもらったけれど、どれも不思議なものだった。
 文字の読み書きの様に、人の子達が勉学の一環として魔法を学んでいるということが一番不思議だけれど。」

同意示すようにこくこくと小刻みに数度頷いて見せれば、貴方の手元の書物から、己が抱えて持ってきた書物へと視線を移す。
分厚い其れは、多くの人の手に触れたのか、装丁が随分と擦れて劣化している。
学ぶもの、こうして読んで触れることの出来るもの。そういったものに"魔法"を落としこんだ。
その事実に何より驚いているのだと語れば、立ち上がる貴方。
気が付けば随分と時間が過ぎていたと知り。

「ん、わかった。また会えたら、シェンヤンのことを聞かせて。いつか行ってみたいと思ってる。」

別れの挨拶に答えれば、立ち去る姿が見えなくなるまで見送ろう。
そして更に人気のなくなった館内で、静かに読書を始める。
閉館だからと追い出される、その時まで――…。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/図書館」から李皇華さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/図書館」から枢樹雨さんが去りました。