2025/12/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/図書館」に李皇華さんが現れました。
■李皇華 > 富裕地区の一角にある施設の一つである図書館は公共の施設であるらしく、その利用は一般市民でも可能であるという事実には文化の違いが感じられ、半ば感心しつつも利用の為の金銭を支払い中に入ったのは数刻前の事。
施設内の案内板に目を通し、広さは言うに及ばず蔵書の数に圧倒もされ感嘆しながら書架を眺めながら、探しているジャンルの場所へと赴いていく。
「いやはや……これは大したものですね」
小さく呟く言葉は、施設内では静かに…と言う注意文を読んだ為。
案内図を思い出し乍ら、向かう先は魔術に関係するものが置かれている書架であり――辿り着くけば早速幾つかの書籍を見繕い、手に取ると閲覧席へ移動して文章に目を通し始めた。
夜の時間帯という事もあり人の数は少なく、静まり返っている空間と言うのは心地よくもあり。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/図書館」に枢樹雨さんが現れました。
■枢樹雨 > それは妖怪にとって日常であり、図書館を管理する者からすれば常習犯の行い。
視認できぬ霊体姿で窓から図書館内へと入り込んだ妖怪は、並ぶ何冊もの蔵書を眺めながらに書棚の影へと移動する。
気配に敏い者、特異な力を持つ者であればそれに気が付くこともあるだろう。
しかし今日まで妖怪を咎める者はおらず、人目につかぬ場所へと移動した妖怪はその場で実体となる。
書物に触れ、頁を捲ること叶う姿。
誰の目にも触れる、人とほぼ変わらぬ姿。
小さな鬼角隠す白絹を揺らし乍ら歩けば、しばらく後に立ち止まり、先日途中まで目を通した本へと手を伸ばす。
自然界に存在する数多の精霊。その存在を記した本。
分厚いその本は少々重く、両手で書棚より引き出せば、そのまま胸に抱えて閲覧席へと歩みを向ける。
そうして見つけた、馴染みある濡羽色。
それは己の頬を擽るものではなく、他者の肌を滑るもの。
ゆっくりと瞬き、見つめてしまう。
己がよく座る席にて書物を読む、先客を。
「………」
無言の数秒。それを経て、再び歩き出す妖怪。
上質な絨毯が下駄による足音を吸い、場合に寄っては己の存在に気が付かないか。
抱えていた分厚い本を置いたのは、貴方の正面にある机。
そのまま其処に在る椅子を引き、貴方の正面に腰掛けてしまおうと。
■李皇華 > 静かな空間で音を作り出すものと言えば、呼吸と頁を捲る音位なもの。
他にあるとすれば、それは何かしらの存在である。
自分自身の他に、幾つかその存在はあったが、それらの距離は遠く……。
―――ふと、文字を読む目の動きが止まったのは、まずは気配を感じたからであった。
相変わらず音は無い……人が多く住む都であれば、生物ではなく幽鬼の類も珍しくはない。
まして、今の時間帯は必然的に陰の気が強くなるのでそう言う事もあるだろう――と、再び文字を追い始めたが、微かな音を伴うと同時に気配の変化にも敏感に察し、それは自分の正面に座したのであれば、少々前傾姿勢気味であった姿勢を正しつつ顔を上げ……その存在へと目を向ける事になった。
「……こんばんは。美しいお嬢さん。
ふむ……姿形から、遥か遠くの島国から来られたんでしょうか」
自国と似て非なる衣服にそんな見当をつけつつ、声量は若干抑えめに穏やかな口調で言葉を発したのは、周囲への配慮の為である。
人ではない存在であるのは、気配からも十分に察してはいたが……さて、其の類の存在も、こんな場所へ訪れるのかという興味と感心が先に立ったのもあり。
■枢樹雨 > 見つめる先。
書物へと向かう伏せ気味の瞳が、此方を向く。
濡羽の髪よりも、より深い黒を湛えた双眸。
存外早く交わった視線に再びゆっくりと瞬くと、抑えめでありながらも澄んだ声音に少し頭を右へと傾け。
「こんばんは、綺麗な人。
…私が生まれた場所は、海も山も、多かった。もしかしたら島、だったのかもしれない。」
思わぬ問いかけに、数秒の間。
己のことでありながら、どこか他人事のように答える声音は、淡々と抑揚がない。
しかし仄暗い蒼の双眸は、長い前髪の隙間から真っ直ぐに貴方を見つめ、身に纏う衣服へと視線落とし。
「君は、…シェンヤンから?時折、君のような衣装を目にする。
着物にどこか近しくて、でも違う。そういう衣装は、シェンヤンのものと聞いた。」
仄暗い蒼に乗る、好奇の色。
置かれた分厚い書物に乗せていた左の手が、持ち上がって貴方の方へと近づいていく。
触れるわけではない距離。
華奢な指先で貴方の纏う衣を示すよう、肩の傍まで。
■李皇華 > 真っ直ぐに見据える目は、その存在を検分するような含みはあったが、それも初めの一瞬の事。
傾いだ頭に合わせる様に、首を左に傾がせて僅かに笑みを湛えた。
「お褒めの言葉は有難く。
……生まれは希薄でありますか。
気付けば個に我が生じていた……そのような自然の在り方は時折、存在はしますが希少だとも言えます」
人と言うには薄っすらとした起伏、感情の少ないようように聞こえた声に幾度か頷きを示した。
向けられる目線の先を追うようにすれば、何処を見ているのかは気付き。
「ご明察。
北のシェンヤンから参りました李皇華と申します」
ゆるりとした黙礼と共に名を告げ、細い手が動くのを見やると何であろうかと、やはり目で追いかけはする。
それが纏っている藍の衣に興味があるらしいと察すると、避けるでもなく触れるのであればそれは許すのだろう。
もし触れたならば、若干冷えを感じさせる生地は絹のように滑らかであるのは感じ取れ、この国では感じ取った事のない力が含まれているのに気付くかもしれず。
■枢樹雨 > 首傾ぐと同時に、さらさらとこめかみの方へと流れる長い前髪。
そうして少し覗いた蒼の双眸。それが僅かに見開かれ。
「…わかる、の?」
"気が付けが個に我が生じて"
その言葉は己の存在を示すに近いもの。
数多が集まり個となり、そしてこの国で過ごす中で形成されつつある我は確かに在る。
それは赤子が自我を成していくと同じなようでいて、己が手にした成熟した肉体とは乖離する面もある。
だからこそ、貴方の言葉に驚いた様子を見せる妖怪。
シェンヤンという国への好奇が、貴方自身へと向きを変える瞬間。
触れる意図のなかった指先は、そのまま貴方の右肩へと触れ。
「り、…ふぁんふぁ。―――私は、枢(くるる)。皇華と、呼んで良い?」
丁重な名乗りに、少々舌っ足らずな声音が続く。
口馴染みのない、シェンヤンを生まれとする者の名。
どのように区切り、呼ぶことが、示された名に礼を欠かさないこととなるのか。
傾けていた頭の角度を戻し、問いを重ねると、指先で藍の布地をそっと撫でて。
「……これ、絹?私の着物も絹だけれど、…少し、違う。」
それは明確ではない、小さな違和感。
絹の襦袢、絹の着物を身に纏うこと多いが故。そして人ならざるが故に感じられただろう違和感。
少し前のめりとなり、机を挟んで向かいに在る貴方の肩に掌を乗せ、今度は肩の形をなぞるようにして撫でる。
そうすれば殊更に感じるひやりとした感触。
体温の低い己でも感じる其れをじぃ…と見つめ、不思議そうに。
■李皇華 > 感情があまり感じられない表情と瞳であるように見えていたので、それが変化すれば心の動きはとても分かり易く見て取れた。
「血と肉を受け継ぐのとは別に、陰陽の気を受け自然の内に生を受ける……そういったものは存在しますからね。
国や場所によっては、そこに住む人によって妖とも神とも呼ばれます」
この国ではどうかは知らないが…との前置きで語る言葉。
彼女の由来などは分からないが、言葉からであればそんな風に生まれる存在もあるのだとの。
人ではない力を持った存在の定義付けは人が行うものであり、害悪を齎すものであっても神と場所によっては扱う事もある。
見る限りまだ我は希薄なようではあるが、個として存在しているのは確かであると眺め。
「枢……可愛い響きの名ですね。
ええ…構いませんよ」
名に関しては頷いて了承との意を返し、触れてくる指先の感触は確かな実態を伴っているのは感じられる。
であれば先程の気配は、幽鬼化していたのだろうと推測しつつ…衣の生地の指触りを確かめている彼女へ目線を映した。
「…普通の物とは違いますからね。
こちらで言うところの、魔力が籠められた物であると言ったら分かり易いでしょうか」
とは言え、魔力を感じるわけでもない代物であれば、不思議であるのも当然であるだろう。
前のめりになるならば自然と近くなる距離ではあるが、興味津々で気を取られている姿は、自分とさして変わらないかと浮かべる笑み。
彼女に敵意や害意が無いので、本来の力は発動する事はない。
誰か見かけるものでも居れば、図書館で逢引きし女性の方から大胆な行動に出ていると見られてもおかしくはない構図となる。
■枢樹雨 > 「私は…、妖、怪異。形容する言葉もないと、言った者もいた。
最初の名は、青行燈(あおあんどん)。人の子がそう呼んで、妖怪だと、誰かが言った。」
貴方が紡ぐ言葉を遮ることなく、一心に耳傾ける妖怪。
まだ見ぬ国。其処に在る文化、考え方。
それを感じられる貴方の言葉に、懐かしさと新鮮さという相反するものを同時に感じる。
その事実に蒼に浮かぶ好奇は増すばかり。
己がことを思い出すように語り応えると、枢の名を可愛いと表現するのにひとつふたつと瞬きを。
「意味は、可愛いものでもないけれど、…気に入ってる。…枢と呼んでほしい。」
可愛いでもないと言い乍らも、満更でもない様子見せる妖怪。
撫でた肩。そこの布地を摘まみ、指先擦り合わせる様にして感触確かめると、その布地へと向いていた視線が貴方の黒の双眸を傍で捉え。
「シェンヤンも、布に魔力を込める手法があるんだね。香を焚きしめるようなもの?
私が生まれた場所は、魔法や魔力といった言葉はなかった。
でも、陰陽の考え方はあった。人ならざる者も、確かに居た。」
他者からどう見られたとて、気に留める妖怪ではない。
心赴くままに貴方との距離感保ち、藍の布地の次は貴方の漆黒をじぃ…と見つめ。