2025/10/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にセニアさんが現れました。
■セニア > 【王都マグメール 富裕地区 とある貴族の屋敷】
「……」
思わず欠伸が出そうになるのを噛み潰す。
大広間には豪華な食事ときらびやかな装飾で彩られ、幾人もの貴族達が豪勢な食事に舌鼓を打ちつつ、思い思いの会話を繰り広げていて。
彼女の依頼主たるこの屋敷の主は、中央の方で数名のメイドを侍らせながら、呼び寄せたゲストに一人ひとり挨拶をしている。
まあ所謂権力誇示という奴で。
とはいえこういうのは必要なんだろう、という事も過去の経験から知っている。
そして彼女は今、入り口扉の近くの壁の辺りにぴたりと立ち、その様子を眠気と戦いながら眺めている。
服装も何時ものぴったりとした普段着ではなく、フォーマルなメイド服といった出で立ちで。
清潔感の漂うロングドレスにしっかりとフリルのついた上品なもの。
髪もヘッドドレス等で纏めてある。
正直暑いし、動きにくすぎるのだが背に腹は代えられず。
そんな服装ではあるので、腿にさしてある数本のナイフが今回の獲物、という事になる。
事の発端はとある依頼。
当方晩餐会における安全確保と警邏、異常がある場合の迅速な対応・鎮圧。
という大仰な依頼名。
要は「デカイ食事会をするのでその際の警備」というワケで。
無論、そんな場に軽装鎧やら、普段着などでは入れるわけもなく。
制服を支給され、メイドとして紛れて何かあったら対応しろという事らしい。
幸い、兵士時代のあれそれで多少の知識と心得があったので、面接というかなんというかは穏便にクリア出来たので。
実入りもそこそこいいな、と請け負ったものの。
冒険者やらに回ってくるのは精々小間使いをしつつ、臨時の抑えというだけなので。
何もなければ規定報酬の幾分かを引いたものを……というコトで。
起きなくても一日小間使いをしていれば、報酬は手に入るのでまあいいか、と思いつつ。
ちなみに依頼主に侍っているメイドはやっぱり暗殺者とかそういうのらしい。
他にも警備として何人かは居るらしいけれど連携等は取らせてもらえず、後何人いるのか、とかもわからない。
その辺は貴族特有の傲慢さというかそっちで勝手にどうにかしろ、とのお達しらしい。
一応メイド長らしき人が組織して動いているようなので彼女に任されたのが、そういう小間使いに近い役割であった。
たまに酒を注いだり、食事を片したりと、雑用メインで指示やお声がけが無ければ壁際で待機してればいいのである。
とはいえ目下眠気以外に彼女を悩ませているのは。
「……生殺しだなぁ」
目の前にすんごい美味しそうな酒と食べ物があっても食べれない。
勧められればいいらしいのだが、そもそもこんな場で色々混ざっているとはいえ、十把一からげのメイドに声を掛けるもの好きもいないだろうし。
はああ、とメイド長やら他のメイド、参加者などに見えないようにこっそりとため息を吐いて。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にセニアさんが現れました。
■セニア > 相変わらず、幾人かの貴族が増えたり、退席したりとしており目まぐるしく人数が変化する。
入り口に立っているので他のメイドと共に会釈をし、迎え入れる。
たまにどのメイドにも目をくれて、その容姿を確かめているような貴族もいたりはしたものの。
それ以外はまあおおむね問題なさそうには見えた。
一応賓客のリストもあるのでそこの人数や名前などを逐次合わせているようである。
「畏まりました」
などと入り口の様子を伺っていれば、給仕として呼ばれ、空いたグラスにワインを注ぎ、空になった皿などを片していく。
冒険者として雇う中で、出来る者がいて有難いとはメイド長の談であった。
凡そ、給仕しているのは本当のメイドが大半なのだろう。
その分色を付けてくれればいいのだが、多分そういう事もなさそうである。
妙な所でケチだからなぁ……。
と思っても口には出さない。
そして口調は流石にある程度丁寧には喋れるものの……軍人寄りになってしまいそうでボロを出してしまいそうだからでもあった。
そもそも最低限の会話、受け答えのみ許されている状況でもあるのである。
粛々とその場を片付け、厨房へと持っていき、各種皿を担当へ受け渡す。
厨房も目まぐるしく動き回っており、さながらまたこれも戦場であった。
一応待機場所があるため、余り空けるわけにはいかない。
つまみ食いの一つでもしたかったがものすごい形相で睨まれそうで、そういう訳にもいかなさそうである。
さっさと先ほどの定位置に戻りまたしばらくは待機の時間だろう。
■セニア > 更にしばしの時間がたち、宴もたけなわ、となりはじめ。
ほぼほぼ全ての賓客も来訪し終わり、問題等も起きず仕事は終了となった。
メイド服を返却し、日当を受け取る。
やっと何時もの服装に戻れて、解放された気持ちで。
当然、何もなかったのでその分の日当。
まあ事もなく、日当を貰えているので文句はあんましない。
「……とりあえずお腹空いたからご飯たべよ……」
ぐううう、と空腹に負けてお腹が鳴る。
目の前を素通りしていく御馳走にお酒。
散々お預けを喰らっている状態なのだ。
うん、と一つ頷いて、平民地区の方へと脚を運んでいく。
―――流石にこの辺りの酒場やらで食べる勇気は無かったのであった。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からセニアさんが去りました。
ご案内:「王都 富裕地区 劇場」にルーベルさんが現れました。
■ルーベル > 富裕地区にいくつも存在する劇場のひとつ。
表通りから意図的に離れた場所に構えられたそこは、ホールに入ると照明が落とされて薄暗く。
個別に区切られた席ごとに、その場所の音が近くの席に聞こえないように魔導具で細工されている。
外からの音は聞こえるようにしてあって、観劇には影響を及ぼさない仕様。
余人のことを気にせず、静かにでも、連れ合いと会話を交えながらでも、自分らの好き好きに楽しめる。
本来はそのような意図なのかもしれないが、その劇場ではその魔導具の造りを逆手にとっていた。
舞台上で繰り広げられる演劇はひどく卑猥で淫靡な内容のもの。
ホール内を煽情的な格好をしたスタッフが歩き、飲食物と共に、自分自身を供している。
観劇席では客たちが連れ合いと、あるいはスタッフと、淫らな劇を眺めながらに『自分らの好き好きに』愉しんでいた。
魔導具で抑え込みきれないのか、故意にか、席外でのものか。時折淫らな声色も漏れ聞こえていて。
その日、知己に誘われてそこへ訪れていた魔導師貴族は劇を眺めながら上等なソファ席に深く腰掛ける。
自分も知己の者もそれぞれ傍に観劇の供を連れて。
「艶劇の場合は、役者同士は割り切って絡んでおるのか、愉しんで絡んでおるのか」
どちらかのぅ、と、男は供にと声をかける。
魔導師貴族の供は外から連れてきた男自身の連れか、それとも劇場内で宛がわれたスタッフか…。
前者であれば、どのような心境で男の傍に侍るものか。
後者であれば、どのような背景で劇場で己を供しているものか。
■ルーベル > 劇が進むにつれて、それぞれの観劇席での行為も熱の籠ったものとなっていく。
其処彼処から淫靡な気配を漂わせ、通常の演劇とは違う形での盛り上がりはまだしばらく落ち着くことはなさそうで…。
ご案内:「王都 富裕地区 劇場」からルーベルさんが去りました。