2025/10/05 のログ
ご案内:「富裕地区 魔道具店」にベアトリスさんが現れました。
ベアトリス > 王都富裕地区。商業区域に並ぶ店舗の一つに足を運ぶ。

飴色に艶めく扉を潜れば、同じように濡れた艶を帯びる調度類、曲線を描くランプ等の光量は極力絞られている。

敷かれた絨毯が足音を殺し、店内はいたって静かな雰囲気を湛えていた。

歩みを進めることもほぼなく、店員が先に声をかけてくれる。
かんたんな用向きと共に、手持ちの鞄からケースに収められた愛用のペンを取り出す。

「少し軸が歪んでしまったようなので……少し見ていただけますか?」

以前ここで購入したものだ。
さほど高級というわけではないが──自身の眼で見て、手に持って決めたものだったので、直せるようなら直したい。

他にも使用期間や素材。気づいたことなどを二、三伝える。
恭しい所作で書記道具を引き取った相手に案内されるまま、待合めいた応接の場へと足を運ぶ。

ソファへと腰を下ろし、ひとまず現物の確認が終わるまでの間を気兼ねせずに過ごせる配慮。
己だけの特別待遇ということはなく、この店舗は客分に対してはみなそのような応対となっている。

だから特に疑問もなく、ソファへと身を預け。
テーブルに置かれた魔道具のカタログを見るともなしに眺めていた。

ベアトリス > 一口に魔道具とは言えど、分類は様々だ。
己はさほど魔術の素養があるほうではない。
基礎的な魔術理論と魔力の有無を認識できる程度。魔力量もそれなり、というのが幼いころの診断の結果。

だから大きな魔力量を必要とする魔道具はそもそも使えないし、複雑な構造のものも手に余る。

精々ここで購入したのも、インクの補充が自動でされる筆記用のペン。
この程度の道具であれば己の普段使いにちょうどいいし、また、他の魔道具に干渉することもない。

女が職場にしている王城という場所は機密保持のために様々な術がかけられているものが多いため、不用意な魔道具の仕様はそれらの調和を乱すこともあるからその点においては注意が必要なのでそのあたりの確認はしておかないとならない。

様々に記載されている魔道具はそういった日常用品から、やはり魔術師、錬金術師などの研究用、実戦用など多岐にわたる。

自分で使えそうなものはその3割にも満たない気がする、と微苦笑を一つ。
素養がないのは致し方ないことだし、ただ世の中にはこういったものがたくさんあるのだと、物珍しさ半分でページを静かに手繰った。

ベアトリス > そうして過ごしていると、状況の確認を終えた店員が戻ってくる。
材料の在庫や、魔道具本体がダメになっているわけではないことを確認ののち、見積もりと、必要日数の確認の書類。

それらに目を通し納得ができたのなら、契約書へと署名し。

「──ええ、直せる様ならそれが一番ですから。出来上がったらこちらに連絡を。」

既に一度交わした契約であれば手続きは簡単なもので済む。
使いの送り先の再確認をしてから、手形で代金を支払う。

一通りの手続きが終われば、長居する理由もなく。
立ち上がると見送る店員によって開かれた扉の向こうへと足を踏み出すのだった。

ご案内:「富裕地区 魔道具店」からベアトリスさんが去りました。