2025/10/03 のログ
■ナイト > 「予備って良い方はあんまりだと思うけど、跡取り一人じゃお家が取り潰しになるかもだものね。
そして、出来上がったアレは失敗作と。中にはちゃんと育った、立派な騎士もいるのに風評被害が酷そう。
修道院、冒険者……ぶーん、なるほどねぇ……」
風評被害の影響で偏見を持っていた身としては、呑気に言ってもいられない。
『あながち間違いでもないが、知識の浅さがそう言う目を生む』と、主に知られればネチネチと静かに叱られそうだ。
例に挙げられた三男以下の処遇については、目の前にいる実例をマジマジと眺めて首肯した。
「護衛礼儀作法って、散歩下がって影を踏むな、みたいな?
感情の制御……。む、ぐ……主の為に怒るのも、守るのも、騎士なら当然のことじゃないっ!?」
主が目の前で貶され、傷を負わされる。そんな現場を想像でもしたか、少女は声を上げ身を乗り出す。
だが、続けて紅茶の飲み方にまで釘を刺されては、ぐぬぬと唸り引っ込んで。
ぐぐぐっと堪えて深く座り直した。
「――……は? なっ、何よ急に? 言えるか言えないかで言うなら、い、言えなくは……ない、けど。
えー? なんか、今更……変な感じって言うか。
ちょっ!? ばっ! バカッ! 何、旦那様に告げ口してんのよっ!
大丈夫とか、そう言う問題じゃないでしょ!?」
パキッ、サクッ、サクッ。小気味良い音を立てて砕けて行くクッキーを味わい、飲み込んで、言われたことに思わず真顔になった。
いや、わかる。相手の言いたいことはわかるけど、立場とか、TPOとか、色々あるのはわかる……けど。
ほんのり頬を染めて、もごもご言い訳を募らせ眼を逸らす。
も、ギャンッ!と、また大きく声を裏返させて椅子の上で跳ねて飛び上がり、大慌てで彼の胸倉掴もうと手を伸ばす。
掴んだなら、グラグラ揺すって訴えかけて、終いには頭を抱えてしまうか。
「あぁ~~っ、もうっ!
わかったわよ、確認してくるわよ……っ! ったく、もうっ。
――っ、え、ぁ……こ、今後の相談、かしら?
ま、まぁ、仕事を片付けた後なら良いわよ。 じゃあねっ!」
紅茶の礼には気にするなとヒラリ手を振り、諦めて手紙片手に主の下へ一っ走り――駈け出そうとして、呼び出しに足を止める。
振り返った少女は何を思い出したか、戸惑い頬の色をまた濃くして、くるりと背を向け庭園を後にする。
少女の選んだ相手を知って、主がどんな反応をしたかは……また、夜にでも話すとしよう。
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