2025/07/07 のログ
■影時 > 「はははそりゃまた失敬。
……も少し崩してもイイのかねぇ。おいーす、とかやったら逆にヴァール殿にすっ飛ばされそうだが」
イヤーとやってグワーとなる、かもしれないが。其れは其れで間違いなく袋の鼠となるだろう。
酒瓶の首を手刀で切るのと同じ位、優れた忍者なら敵の首を手刀で叩き切れる。
この女も遣ろうと思うなら、それで文字通り首を取れる――かもしれない。屠龍の太刀を使うまでもなく。
同時にその考えが如何に愚かしいかも理解できる。何よりも無意味が過ぎる。酔狂でもなく、狂気の産物が過ぎる。
装身具にその手の不意の暗殺への備えがある、までは知らない。
仮にそんな具を犯したら、次の瞬間どうなるのだろう。確信できるのは、骨も魂魄すら残さない消滅が待ち受けていても可笑しくないことのみ。
斯様な愚にもつかない思考を喉を湿らす茶で洗い流し、羊羹を一口。材料が揃っていてもこの味は不思議と出せない。
「念話は急ぎには便利だが、利便性に任せると喋ることが疎かになりかねねぇのがなぁ。
……あー。二人が何かやらかした、って程じゃあないから安心して頂きたい。
とはいえ、野性については……つくづく一筋縄じゃいかねぇなあとは思うがね」
粗相と云うのは、自分が教える教え子のうち二人、雇い主の妹と子女の一人に対して、である。
この家系らしいあれこれをと思えば、問題にもならない、かもしれないが。
ただ、どうしようもないという点はある。溢れる野性ばかりは長い目で見ないと無理だろう。
此ればかりは忍者とて匙ならぬ手裏剣を放り出しかねない。一番弟子の性質は、半ばあきらめがついている。
淫魔的な方については、うっかりやらかさない限りは恐らく大丈夫だろう。
「――然様で。
そうでなくとも、だ。今の住処のお代の八割以上を持ってくれている状態だ。
それも合わせりゃ、望外な位に良くして貰っていると云わずにはおれねぇ位だよ」
あの宿暮らしも気付けば、長い。長いが、宿代は長期契約的な扱いで雇用主が持ってくれている。
増えた居候分は自分で払うにしても、経済的な負担はまともに払うよりかなり軽減されている。
此れが地味にありがたい。備蓄を増やせる。備蓄は不測の事態やちょっと贅沢にも回せる余力にもなる。
「じゃぁ早速。
現状の結論を端的に述べるなら、弟子を一人拵えて手元に置き、同居させることになった。
俺を昔囲っていた貴族の依頼で邸宅を守っていたら、
侵入者が他の貴族の子飼いと思われるミレー族の暗殺者で、忍術の使い手でね。
――殺すには惜しいと思えば、弟子として引き込む他に術が無かった」
シュレーゲル卿ってご存じかね?と。かつて世話になっていた貴族の名を出す。
商会の取引先の中にも恐らくあるだろう。無くとも、格付け的な名鑑の一つや二つくらいは持っていてもおかしくない。
貴族同士の暗闘は富裕地区でも爆発事件を起こしたりするが、しばらく前に起きたそれもまたその件によるもの。
その後が、どうだろうか。頭を抱えるのか。面倒そうにされるのか。
ミレー族というのが少々引っ掛かるかもしれない。その上で忍術使いというのは、より特異性に拍車をかける。
忍者という技能者はものにもよるが、武術指南役を仰せ付かった男は極力、昔の生業を伏せている。
この国で忍術使いというのは、それだけ奇異であり、珍しい部類であろう、と。
■リス > 「そんなことはありませんよ?
だって、ヴァールもドラゴン、ですもの。」
確かに、人の常識などには精通しているが、知っているだけ。
実際にその挨拶をしたからどうという感情はない、つまるところ、リスの許可があれば、それでもいいのだ。
常識として知っていて、あえてと言うならば、と言う程度でしかないのだろう。
そして、リスと言う人竜は、竜にして驚くほどに弱い。
竜としてのステータスがあろうとも、一般的な人間の戦士に負けるし、一流であれば一思いに害せる。
目の前の御仁であれば、言うまでもないほどに。
ただ、其れをするなら、この国が焦土になるだろう。
1000を超える竜が、暴れる。長の娘を殺されたのだ、それくらいは、人間だってするだろう。
そうなるからこそ、守られている、と言うのもある。
「そうねぇ、便利は便利、だけど。
確かにそういう側面あるのよね……伝わるから。
と、野生に関しては……ずいぶんましになってるから。」
そう、ちゃんと進歩してる。
服を着る事を学んでるし、そこかしこで裸にならない。
歩みは一歩一歩で、良いのだ。そこまでリスは時間にこだわらない。
彼の寿命と言うのはあるが……まあ、それはそれ、と考えて。
気質や性質は、そう簡単に直せる物じゃぁないよね、と。
「ええ。
福利厚生は、従業員には必要ですわ。
それに、沢山あるのですから、それを開放するのも。」
住居と言うのは大事だ、通勤時間と言うのも、時間を取るものだ。
それらを改善するために、住み込みとかがある、住み込みが嫌なら、近くに住まう。
そうやって、時間を効率的に使うべきだと、リスは思うから。
問題ないのよ、と微笑み零す。
「ああ、ラファルが僕が一番なんだーと叫んでいたのはそういう事ですか。
……で、私に、何を求めますか?
卿に対する補填でしょうか?
その、ミレーの子の身元引受、でしょうか?」
いきさつは理解した。
ただ、彼が何を求めるのか、彼が弟子にしたというのだから面倒を見るという事も分かる。
その上での相談として。
なにがしか、してほしい事があるのだろう。
頭を抱えることも、面倒だと思う事もない。
事実を理解し、状況を消化するほうが、悩んだりして、動かないよりはよっぽどいい。
確かに、悩んだりとかは必要だが……思考停止するには、まだ早いのだと考えているから。
■影時 > 「だと良いんだが。
そうでなくとも、毎回そっちからすればおっかねェ代物預けてるんだ。
酒の一つや二つ、差し入れさせてもらうとするか……」
人の常識に精通、通暁していても、他所の暗殺者とも悪党とも云える者どもの作法迄は、ということもある。
何せ、忍者の古来の習いとも習慣とも云える作法である。
此れが通じる者同士がいざ出会ったなら、いつ戦いが始まってもおかしくない。殺伐となってもおかしくない。
とはいえ、そんな流儀を振りかざしたりは流石に出来ないし、そのつもりもない。
いざここで何かトチ狂って、首を取るようなこと在らば。破滅めいたものすら起こり得る。
故に自制もするし敬意も払う。腰の物を預けることだって異存もない。預けられる側は毎回冷や冷やものだろうが。
「便利というのは、何かを代価にすることでもある……――ンー。格言にしちゃぁ仕様も無ぇなあ。
せめてもう少しというか。いつもの格好の上に着込ませるつもりで仕入れたのに」
進歩はしている。そう、してはいる筈なのである。
いつもの恰好をアンダーウェア、下着的に踏まえた上で、丈が短くとも着込めれば。
今でもまだ、まだまだ色々引き換えな着込み方であるのは変わらない。牙城を崩すには至らない。
寿命については、考えない。少なくともただで死ぬ、死ねる身ではないなら、生き足掻くことも肝心であろう。
真の意味で仙人に等しく転化できるか。それとも、他の何かでも行きつくかどうか。
教えた身としての責任はそれだけ重く、重要なものと捉えている。
「全く御尤も。
屋敷なんて大仰なものは要らなくとも、十分過ぎる部屋を宛がってもらえてるだけで、な。」
助かっている、と。子女の教育の関係上、お目付け役的に学院の臨時講師、後々に教師籍を取ることになった。
先見の明、もしくは慧眼とも云うのだろうか。今の住処は家庭教師としても学院の講師/教師としても、活動しやすい位置にある。
お陰で行き来がしやすい。その上でさらに、魔法の雑嚢という代物迄用立てて貰っている。
諸々合算したうえで、これ以上を望むというのは毎度ながら贅沢が過ぎる。
どんぶり勘定じみていても、文句をつけようを見出すのがむつかしい。
竜の子女に何かを教えられる人材の希少さをそれだけのものと、見出し、価値を付けたらこうなった、というべきだろうか。
「……――いやァ全く然り、然り。
ラファルの奴には真っ先に伝えなきゃならなかったしなぁ。俺の一番弟子である以上は。
あぁ、卿については気兼ねなく。あの爺については、別途俺が働くということで埋め合わせる。
身元引受は可能なら、といううえで、今後を見越しておきたい。
生まれと育ちのせいか、自己が暗殺者である認識が抜けない以上、冒険者以外の表向きは今一つ考えてられないか、ということと。
あと、ひとつ。将来的に商会の伝手で、何か良い住処を買えないかと思ってる。
俺の酔狂が過ぎて、捨てがたい、得難いものを拾うなら、宿に住まわせてもいられん。事情有りならば尚の事、な。
万一なんぞ考えても仕方がないが、手頃な物件を探せないかと思っている」
一番弟子には、いい機会かもしれない。情操教育ともいうのか。誰かを気に掛けるということを学んでも良い年頃だ。
こういうことは下手に隠すと、嫌なタイミングで必ずばれる。
であれば、隠さずに最初から開けっ広げにするに限る。嘘をつくなと求めるなら、自分とてまた然りだ。
こんなこともできるのか、と。身元引受という句に興味深そうに眉を動かし、出来ればと答えつつ、依頼を口にする。
宿暮らしは有り難いが、訳アリの子を住まわせるには、いずれ手狭になる恐れがある。自分の酔狂がまた働かないとも限らない。
なら、例えば、クランハウスとか、ギルドハウス、みたいな。数人で暮らせるような住処があるに越したことがない。
それなら、商会を頼る方が一番正しい。万一があった場合の後を任せる意味でも、だ。
■リス > 「ふふ、其れなら……強めのお酒で、お願いしますわ。」
竜と言うのは酒が好物なものが多い。
そのうえで、それなりに強めの酒を好むのが多いから。
竜に、竜殺しの武器を預けるのだから、それくらいは良いのだろう、彼の言葉に対しては、にこやかに。
ちなみに、リスにその武器を見せると恐怖で泣いて動かなくなります。
「我が妹ながら、犬猫レベルで、一寸如何かと思うんですよね。
ええ、本当に。」
服を着たがらない妹。更に、下着か、服か。どちらか一つ。
本当に、なぜでしょうね、とため息を零しつつも、まあ、上着を着るようになったシンポを喜ぼう。
悲しい進歩だけども、前に進んでは、居るのだ、と。
「とりあえず、ラファルは、その子の事を、それこそ、ネコのようにフシャーフシャー言って警戒してますので。
早めに声をかけるなりなんなり、落ち着かせてあげてくださいましね。
そうですわね。
カバーと言うのであれば、トゥルネソルに預けるのはいかがでしょう。
奴隷用と言えば聞こえが悪いですが、私の所は、トゥルネソルで従業員として仕事を覚えるための、教室はありますから。
彼らが望むなら、家で働かずに戦士になるしろ、メイドをするにしろ、そういう教室も作ってます。
そこで、仕事を覚えるというのはありかと。
物件に関しても。
トゥルネソルが管理してる土地と、家はいくつかあります。
ただ、影時様の手ごろ、と、そのお弟子さんの望む場所の乖離などもありましょう。
今度、紹介していただいても?」
彼の希望は、叶えることは可能だろう。
しかし、その、二番弟子が、どうとらえてどう考えるか、だ。
自分の所に来るのを良しとしないかもしれない。
それも踏まえて、紹介を求める。
あと、土地と家に関しては。
流石に準備していないので、少し時間を貰わないといけない。
と言っても一刻程度の、書類を持ってくる時間という感じだ。
「取りに行きますが、ほかに、何かありますか?」
にこやかに問いかける。
何もなければ、そのまま書類を取りに行き、戻ってきて、相談は、商談は、続くのだろう―――。
■影時 > 「承った。……やっぱ“どわぁふ”仕込みの火酒かねぇ」
鉄板だがとは言うものの、強ければ強いわけでもない。味わいは何にしても欠かせない。
火がつくような酒を造りたいと思えば、原酒を選び、錬金術師に蒸留を任せれば実現は出来る。
問題はその先。強い癖に旨い、癖になる酒というのは、学識任せではならない訳で。
故にこそ、それが得意と出来る職人、種族に任せるのが一番である。美味い酒はナンボでも在って良い。
女主人、雇い主も見せれば泣く程程のキワモノを毎回毎回預けているのだから。
「妹君なのに犬猫ってェのはこれまた如何に。……――気長に経過を待つしかないかなぁ」
これもまた野性、という奴なのだろう。人間と竜と。その間を取ったり人間によるのではなく、その逆。
迷宮で遇う竜を見るがいい。彼らは服を着ているか?服を着ているなら、おかしいと思いませんか。
世の中多様性であるというのなら、そういう者も居るのだろうが、それなら人化した方が諸々無駄がないであろう。
ともあれ、竜ではなく人の姿で野生児が服を着ているのである。大きな変化である、とした方が良い。
「畏まり、だ。近いうちに、とは言わずとも喫緊、出来たら早急にだな……。
成る程。確かに在ったな……覚えてるとも。本人にも聞いておく。
どうも育ちと血と生業のせいか、な。暗殺者志望の気持ちが強いのは、あれだ。
抜き身の名刀をほっぽいとくのも等しい位に危なっかくてかなわん。
それに、元の雇い主から引っぺがしたのも同然なら、この先にうっかり見つかってややこしくなる、ということもあり得る。
であれば、易く踏みいられない場所でシゴトを覚えるのも、手段として考えたい。
嗚呼、候補があるなら其れだけでもありがたい。出来たら、こんなのはどうかね?」
そうと聞けば、家庭教師の仕事の仕事、日程を幾つか入れ替える等、配慮が必要だろうと。そう判断する。
現状として、冒険者の仕事、依頼の消化に手を染めると思われるが、言い方次第でメイド的な研修も命じられよう。
身に付ける技は、どれだけあっても困らない。手に職付けることは非常に大きい。
この家の強みとして、他所の干渉を退けやすい、目を光らせやすいという印象もある。利用できる要素だ。
新たな弟子のキレッキレのナイフめいた性質は、時間を取って対峙し続けることになるだろうとも確信できる。
そして、続く言葉にもちろん問題ないと頷く。幾つか候補がありそう、と思える時点で、願ったり叶ったりである、と。
「ああ、あとは……」
家について希望する用件と、侘びよろしく話しておくべきことと。
新しい弟子の面倒も見るが、既存の仕事を疎かにするつもりもない。
故、長く出かける際は機会など見計らって行う等々。そうした話と共に歓談を続ける。
茶菓子の羊羹にまつわる話も聞き出したり、材料を見立ててて商機を囁きながら――時間が流れてゆく。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 トゥルネソル家」からリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 トゥルネソル家」から影時さんが去りました。