2025/06/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 食事処」に枢樹雨さんが現れました。
枢樹雨 > 誰の目に止まることもない、気儘な霊体散歩。
富裕地区上空をゆらゆらと漂う最中。
偶然、其れが目に留まる。

見慣れた建築様式。木を主材とした、王都では珍しい建築物。
蝶が蜜に誘われるよう、ゆらゆらと高度を下げた妖怪は、その建築物の中心に更なる”懐かしさ”を見つける。
屋根のない、吹き抜けの空間。
青々とした植木に、重量感のある岩、そして踏めば鳴るだろう白い砂利。
それらが作り上げた庭園が、水を使うことなく山水の趣を表したものであることを妖怪は知っている。

何もない所にシミが広がるように、実体を露わにする妖怪。
庭園へと降り立ち砂利を踏めば、想像よりも高めの音が鳴る。
実体化による魔の揺らぎよりも、よほどわかりやすい音という他者の気配。
それを察した店の従業員に捕まるのはすぐのことだった。

『何処から入り込んだ!』

給仕なのだろう年若い男が、己の腕を掴んで声を荒げる。
中庭たる庭園に隣接した席…ないし個室には、その声が届いたはず。

ともすれば、店のコンセプトに誰よりも馴染む様相の侵入者。
片腕を掴まれながらも動じた様子なく、水仙のように真っ直ぐに立ち、長い前髪の隙間から給仕を見つめる。
何処からも何も空からだと、素直に答えて解決する気配はない。
華奢な腕を己の方へ引いたところでビクともせず、助けを探すよう視線が周囲へと。

メイラ・ダンタリオ >  
 メイラが肉を食む姿は、珍しくはない。
 しかし肉を楽しむのではなく酒精を楽しむ そういった機会は珍しい。
 酒が添え物ではなく酒が主
 肉が添え物であり、酒を進める為に舌を肥やしている。

 柄杓から注いだ細く細くなって注がれる、水壺深くいく気泡と音。
 飲むための杯一つが半量満ちれば、ぬるいのは好まない。
 冷たいままで喉を潤う程度に注いで、クッとあおっていた時だった。

 ―――喧噪?
 ―――富裕地区で?

 メイラは珍しいものを見るように
 それが酔いどれた客の始末に困る声色ではなく、敵対する声のそれ。
 万人受けする酒を楽しむ姿 まだまだ余裕はあるものの、普段の甘ったるい酒に比べれば酔いはある。
 嗚呼、体が熱い、とその夏の中で少し汗がにじむような心地で立ち上がる。
 腰に、白糸で編まれた柄の刀と、反りの薄い大脇差を腰に差し込んでパンッと腰際を叩く。


   「―――何事ですの。」


 スラリ、と開放的な庭の詫び寂び利いた景色が見えた障子を開けた先。
 黒鉄で覆われた指先、足は脱がれた異国のルール。
 黒髪黒の一張羅
 赤い瞳とギザ歯が連なる、トラハサミのような口元の言動

 ダンタリオからの一差しは頬に熱を帯びているのか、うっすらと朱が差す
 メイラを見たのは真面目そうな青年 先もいい対応をしていたそれがつかんだ姿。
 女中や仲居の類ではないらしい。


   「―――?」


 メイラとしては経験上
 ダンタリオとしては(さが)による、白を被せた頭と和装にピクリ、と。
 緑なすような髪色姿はどこか儚げながら、こちらに目を合わせると ああ、ここではよく見る
 助けを乞うような視線。
 しかし、メイラにとってはそんな視線は どうでもいい 。


   「人間ではありませんわね。」


 腰の刀に手を伸ばす。
 左手は愛刀の柄を撫でており、右腕は自由。
 傍までいくと、儚げな女と青年を見比べ、儚げな姿に近づくと鼻先をクンクンと鳴らした。
 青年が、場所を変えようと強く握って引こうとしているのに、微動にしていない。


   「―――。」


 こういう出会いもあるものなのか、とメイラは一人想う
 赤い瞳 我が強く出ていそうなメイラと相反する表情を眺め、青年に告げる。


   「連れですわ。」


 青年が え と言う。
 今さっき初めて会ったような素振りだったではないですか、と
 そんな貌だ。


   「わたくしの、連れですわ。お騒がせしましたわね。」


 チャリ、と上銀貨数枚。
 青年の手のひらへ。
 見逃せ わたくしがもらう
 このまま元の作業へ戻れ。

 述べた相手はメイラ・ダンタリオ。
 見合う上銀貨
 青年は、何かあればメイラが事を終わらせると踏んだ。

 戻る姿を見送り、女に顎で部屋へと示し戻るだろうか。
 戻った矢先で、さっそくその布を取り払い、メイラはギザ歯覗く、三日月口角で笑みを浮かべた。


   「鬼か 鬼に巡り合うだなんて、わたくしも思いもしませんでしたわ。」


 青行灯などという、鬼と談じた百の結末など、知る由もない。
 故に鬼と呼んだ相手と立ち姿のまま面白そうに眺め。


   「鬼、名は何と言いますの。」




 
 

枢樹雨 > 貴方を見つけたのは、真面目が過ぎた男よりも先。
彷徨う視線が黒を捉え、次いで黒に映える赤の双眸へと引き寄せられる。
あれは助けとなる存在か――。
そんな損得勘定よりも先、貴方が纏う雰囲気に、そして腰に在る二振りの得物へと好奇が滲む。

波立つ水面に、貴方の声というひと雫。
大きな波紋はともすれば波を退け、他の個室からも顔を出そうとする客や従業員の足を止めさせる。
君は誰と、問うことは叶わない。
ただ、濡羽色の前髪の隙間から、真っ直ぐに貴方の姿を見つめる。
その蒼の双眸が見開かれるのは、"人間ではない"と、貴方が言うから。

「………」

返す言葉はない。――否、あるはずだけれど、驚き故に喉の奥へ留まっている。
その最中、寄せられた鼻が上下にひくつくと、反射的に顎を引く。
妖怪が纏うは菊に似た清廉な香り。そして貴方ならば、魔の香りも見つけるか。

大切な客人へ侵入者を近づけさせまいとしてか、再び男が己の腕引けば、今度は己の方へ腕を引いてわかりやすく抵抗を。
しかし結果として抵抗は無意味。
再び落とされた貴方の言葉というひと雫に、妖怪はもちろん男の動きも止まる。
先とはまた別の驚き。数度繰り返される瞬き。
気が付けば細い手首から男の掌の体温は離れ、促されるままに貴方の背を追いかける。
砂利を鳴らした白木の下駄は、個室用の無垢材の床に馴染み。

「……枢(くるる)。……君の名前も、教えて。あと、その子のことも。」

鬼でもあり、鬼ではない。だからこそ否定もしない。
そして取り払われる白絹を、取り返そうとする気配も見せはしない。
隠す意味が、存在しないのだから。
代わりに妖怪もまた問いを投げかける。
淡々と抑揚のない声音。
それを補うよう、貴方の腰に在る黒と朱を指で示し。

メイラ・ダンタリオ >  
   「そう、よろしくクルル。」


 布を払い、鬼と見定め、鬼の名を問えば
 君呼ばわりな上で腰の二振り。
 刀がメイラからしてみれば異国で
 この鬼からしてみれば馴染みがあるのか、それの銘も知りたいと。

 周囲に知己がいれば君と言うこの鬼の無遠慮な行動
 きっとぎょっとしたはずで。
 しかしメイラは、おかし気にクスクスと。
 どこか新鮮そうに笑みを浮かべて黒鉄で覆われた指先で口元を隠す。
 鬼とはそういったものだ。この鬼は少し我が足りない。
 一歩違えば殺し合いすら起きそうなものが、鬼なのに。


   「ええ。
    わたくしはメイラ。
    メイラ・ガンタリオですわ。 以後お見知りおきを、クルル。」


 カーテシーは上位存在へ振る舞う仕草ながら
 開いている両の手で短パンスカートの布地を持ち上げ、頭は垂れずに挨拶を。
 次いで腰の二刀。
 美嚢型の雅な鍔 赤鬼紋の赤銅鍔を順に撫で。


   「この子たちは、“埿中真改”そして“窮奇”ですわ。」


 愛刀ですのよ。 
 腰に差したまま 互いは立ったまま。
 メイラがそうしているのは、殺し合いをするか否かになるのか鬼を見定めていたせい。
 しかし、後の行動から、鬼女のくせにそうも鬼らしくないと感じたのか。
 腰の刀を鞘ごと再度抜き、座る際に台の上
 腰は元の場所へ、するりと少しだけ足を崩した正座。
 クルルにもメイラは座れというだろう。
 

   「しかしクルル。
    楽しみにきたというよりも本当にその場にぽっと出たような空気ですわね?
    酒を奪うも喰らうもしようとする素振りもなし
    山から里へ下りた鬼よりわかりづらいとなれば、わたくしもどうこうする気はありませんわ。」


 そういって空の杯を手に、冷えた酒壺
 注がれる冷えた澄まし酒。
 つい、と差し出して手に持たせ。
 自分は新たに杯に冷えた冷酒を注ぐだろうか。


   「ん。」


 無言で乾杯を示すように持ち上げて、クッと飲み干す。
 助けた分の酌を命じないのは、熱くした徳利とは違うことと、まだ触りも触りのところのせい。
 

枢樹雨 > 人の理に生きぬ、人ならざる存在。
位に左右されることもなければ、そもそもにおいて他者が持つ位に興味がない。
行動原理は欲と好奇心。
今宵、ひとつめの好奇心は懐かしさ感じさせるこの建造物に。
そしてふたつめの好奇心は貴方と貴方と共に在る二振りへ。

部屋の灯りが反射する、艶やかな青碧の鬼角。
その鬼角覗かせる濡羽色の長い髪。少し首を傾げばさらりと背を、頬を滑る。
前髪もこめかみの方へと寄れば、仄暗い蒼が笑う貴方を捉え。

「メイラ――。さっきは助けてくれてありがとう、メイラ。
 庭を見たかっただけなのに、面倒事に巻き込まれなくて助かった。」

問いへと返る名。記憶に刻むよう繰り返すと、素直に感謝を伝えよう。
自然と伸びた背筋。浅いながらも腰から上肢を倒しての礼。
言葉に足りぬ品がすべて所作に乗ったかのような身体の使い方。
図らずも淑女たる貴方の挨拶に、見合うものがそこに在る。

しかし腰の刀を紹介されれば、伏せられた目線がパッと持ち上がる。
ありありと好奇心を乗せた双眸。遠慮なく縮めた一歩は許されたか。
刀身を見るには至らぬが、包み込む鞘の在り様に鍔の細工、柄の誂えまでをじぃ…と見つめては、腰落ち着ける貴方を追いかけ、台へと戻された後もしばし視線を注ぎ。

「埿中真改。… 窮奇。……やっぱり、名があるんだね。
 それに、貴方が大事にしているからちゃんと”居る”。」

他者を傷つけ殺す道具。その事実は在るが、その用途で己に切っ先が向けられる可能性も、己が貴方へと向ける可能性も妖怪の思考には存在しない。
ただ好奇心の赴くまま、感情の乗らぬ声音で語っては、満足したところでやっと貴方の斜向かいに腰を落ち着ける。
それが当然であるように正座をすれば、貴方より少しだけ目線は上に。

「酒よりも貴方達に興味があったから。
 でも、お酒は好き。美味しい食べ物も好き。」

無色透明が揺れる杯。
差し出されたそれに、すぐさま伸びる両の手。
華奢なそれぞれの五指で大切に受け取れば、ちゃっかりとアテを強請る図々しさは存在する。
そうしてもちろん、持ち上げられた杯に己の杯を寄せる礼儀も。

「……美味しい。…冷が一番好き。」

ぶつけるには至らない杯。
次いで己の口元へと寄せたそれは、少しだけ傾けられ、妖怪の薄い唇の奥へと酒を運ぶ。
喉を通り抜けるひやりとした温度。
心地良さ気に双眸細めると、吐息零し。

メイラ・ダンタリオ >   
 妙に愛刀に意識を向けている。
 同じ郷の武具のせいか。
 銘を述べ、いると言われれば不思議でもない。
 間違いなく他一刀も含め、刀匠の魂が入ったものだ。
 なにかしら孕んでいてもおかしくはない。


 王都内での出入り
 おとなしい、品がある二刀を選んで差していたものの
 これが最も付き合いの長いあの愛刀だった場合はどういう反応だったのか
 それが少し好奇心をくすぐるものの、見たまま
 クルルは血と狂乱の場よりも、まるで香って来たかのようにふらりと
 この場所にいるだけで無害を気取る鬼でいい。
 何かあれば一息に抜き、斬りかかるつもりでいたメイラも、だんだんと肩の力がとれていく。

 メイラが選んだ酒の銘柄は好んだようで
 冷えた酒と共に、山の葵根を付けて食べていた肉焼き
 それに興味があるようにしているのなら、あーん、とつまんでメイラ自ら食べさせる素振り。
 貴族が、富裕地区で食べる肉だ。
 平民地区とは違い、筋っこくもなく脂身もない
 純粋な赤身肉の桃色に焼けた肉と山の葵と黒いソースのそれは
 実に酒と合い喉を喜ばせただろうか。


 ―――なぜこの女はわたくしではなく
 ―――わたくしよりやや上を見つめるのか
 ―――不思議に思いながらもわたくしは、互いに魔と鬼の混ざり物
 ―――憑かれもしよう 祟られもしよう そして見つめられもしよう きっと何かいるのだろう。


   「同じ国造りに誘われたはずが、今はわたくし達に興味があると?」


 メイラ自身も、確かに興味を以て接しているものの、ふわふわとつかみどころのない鬼だと
 赤い瞳は瞳を細めるものの、斜め向かいのクルルを呼ぶ。


   「全く、鬼の気も雌の気も薄いふわふわとした子ですこと。
    すっかり気も抜けましたわ。
    ―――ほら、クルル。 わたくしの酌をなさい。」


 そういって、冷えた酒壺の中身を差して、傍に寄れと
 酒を注いで相手をしろと、そう距離は縮まりだす。


   「最初は鬼の女かと 殺し合いになってしまうのかと思えば
    けれど、鬼の血かと 孕ませてわたくしの子を産んでもらおうかと
    そう頭と血は思っているのに、また酒と肉の時間に戻ってしまいましたわ。」


 注がせてくびりと傾け、返杯に注いで返してやり。


   「まぁ貴女のような鬼と酒を飲むのも悪くはありませんわ。
    どうせ会ったばかりの初めましてですもの。」

枢樹雨 > まるで幼子のように、あらゆるものへと好奇心を寄せる妖怪。
しかし此度のそれは、常とは少々違ったもの。
人が手をかけた道具には、良くも悪くも何かかが"憑く"。
それは人が語った物語。人が創造した物語。
そんな物語を数多集めた存在だからこそ、どうしても惹かれてやまなかった。
同類と呼ぶには遠い、しかし繋ぐ糸はあるような。
形容しがたい感覚を好奇心とし、見つめることで欲を満たす。
触れようとしないのは、触れてはいけないと無意識に感じたから。

「そう。知りたいと、思った。理由は…、君がこの子達と一緒にいるから。
 …あと、なんだかよくわからなかったから。…君は、人の子?…女?いろんな香りがする。」

不躾ともとられかねない好奇心。隠すことなく肯定すれば、少しだけ落とした視線が貴方の赤を捉える。
確と交わる視線。対照的な色の交差。
さりとてそこに争いが起こることはなく、差し出された美し色合いの肉へ無防備に顔を寄せる妖怪。
指先を床に置き、軽い前傾姿勢で控えめに開いた唇。
其処に収まったソース絡む肉。その奥にあ山葵の痺れ。
咀嚼の後に追いかけるように杯が寄せられるは必然か。
鼻を抜ける山葵の香りと酒精に、僅かながら口角が持ち上がって。

「…ん、良いよ。」

警戒心とは無縁の素振り。
呼ばれるままに貴方との距離を縮めたなら、正座をするものの此度は貴方に倣って軽く膝を崩す。
そうして酒壺よりのお酌は若干危なっかしい。
徳利片口酒瓶であれば慣れたものだが、柄杓を使ってのそれは初めてのことだったから。

「私は鬼じゃないよ。鬼もいるけど、それだけじゃない。
 だから特段争いを好むわけでもないし、種で孕むかもよくわからない。
 気持ち良いことは好きだけど、今はメイラのことを教えてほしい。」

返杯を察すれば、杯に残っていた酒を空にしてしまおう。
そうして返杯を受け取り乍ら、貴方の思惑にゆっくりと瞬き数度。
なるほど鬼となれば雄々しく荒々しい印象が強いか。
己の中に在るかもしれないが、少なくとも今この時は持ち合わせていないその気質。
代わりに己の好奇を満たしたい強欲っぷりだけ淡々とした声音に乗せて。

「メイラは鬼との子が欲しいの?それとも人でないものと争いたい?」

メイラ・ダンタリオ >  
   「ふぅん 九十九、というよりも
    魔剣や妖刀のように武器に意思を感じる素振りが怪異的で興味を惹かれるのか。」


 チラリと愛刀を見るものの、それだけだ。
 何ら不思議と思わない。
 魔の傍にいれば魔を帯びるものだ。
 愛でていれば意思も芽生えよう。

 ツンツンと愛刀の鞘に触れつつも、しばし酒を楽しんでいると
 コトリと杯を置いては、体の火照りと酔いも十分なのか
 項を覆うようなロングヘアをばさりと広げなおして。
 そこで聞こえた厳密には鬼ではない。
 メイラの事が知りたいと。

 だから、面白い話というわけでもない、と踏まえたうえで
 今の自身は魔を孕ませ魔に孕ませ生んだ代々の混ざり合った血からなる存在だと
 強くなることが第一で生まれた子の一人だと。
 種族種別でいえば混血児だ それは間違いない。
 しかし混ざりすぎて、どう言葉に表すかもできない者の末だと。


   「王様の為に強くなるためにそういう手段すらもとった
    そういうものですわね。

    だから貴女の言う言葉は両方当てはまる。
    クルルと子を造れば強い子が生まれる。
    争いで役に立つことこそが本懐だからこそ、戦場も子も欲しい。」


 パタパタと手で自身を仰ぎ、あけすけに。


   「貴女はそこらの人よりも強い。
    本当の鬼よりも弱いかもしれない。
    けれど今のわたくしと交われば強い子が生まれる。

    孕みづらいというのなら、それこそ手元で囲って
    十回でも、二十回でも、セックスしたら孕むでしょう?」


 敵対者ならともかく、人外とただ争いたいかと言えばNO
 手元で何人も仕えさせ、娶り孕ませ、増強し、役に立ちたい。
 そう述べ終えて。


   「ただヤる程度で済む相手より、わたくしのような者の傍には
    自然と強い者が近しく寄ってくる。
    だから誘うことも多いですわね。
    生んでと 婚げと 傍にいろ、と。」


 そういってクルルをじろじろと。


   「鬼というより鬼人といったところですわね。
    角の生えた子、さぞ活躍してくれることと思いますわ。」


 生む?
 そう聞く程度なのは、先も言ったようにまだ初めましてだから
 これが知り合って長かったら? もう押し倒してるだろう。
 そんな風に二人の夜は過ぎて

 魔混ざり者と鬼女の妙なつながりができたとか。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 食事処」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
枢樹雨 > 「九十九を知っているの?…ああでも、この子達の主なら、それも不思議なことじゃないね。
 私は付喪の神と呼ばれるには足らないけれど、この子達はそう成ることもありそうだ。」

この国において、あまり聞くことのない単語。
しかし己と同じくこの場に興味を寄せ、二振りの刀を衒いなく愛刀と語るのならば、異国の文化に触れる機会も多いだろう。
黒と朱の漆鞘。並ぶそれらを改めて見遣っては、愛されるその様を羨むかのように目を細める。
しかしその視線も、つかの間浮かんで背へと広がる貴方の黒髪にすぐさま攫われる。
そうして語られる貴方の事。
気が付けば杯傾ける手は仕事を忘れ、真っ直ぐが過ぎる視線がどこまでも貴方へと向けられるひと時となり。

「わからないが正解だったね。数多が混ざり重なり合って、君が出来てる。
 であるならそれがメイラで、そのことを知ればもう困らない。
 美味しいお酒が欲しくなった時、すぐ君を見つけられる。」

今宵の酒の美味しさに味を占めたか。
改めて口元で杯を傾け、少しぬるくなってしまった酒を飲み干せば、ちゃっかりと次の酒への布石を打っておく。
己よりも量を飲んだ貴方は程よくアルコールが回った様子で、妖怪の小さな手も貴方へ風を送るお手伝い。
酩酊とまではいかずとも、熱帯びた顔つきは愛らしさ帯びていると言うのに、その顔でもって向けられる台詞はなんとも豪胆なもの。
聞けばぱちぱちと瞬き、遠慮のない視線に遠慮のない視線を返し。

「この身体、1年くらい前に急に手に入れた。人の子によく似てるけど、人の子と違う。
 …でも、孕めるものなら1度くらい孕んでみたい。子を授かる女の顔は色々で、その意味を知りたい。」

どうしたって好奇心の延長線上。得た肉体での出来得る限りを知りたい欲。
"生む?"と聞かれるなら、表情薄いままにこくりと頷こう。
人の子でありながら己と同じく数多を内包する貴方なら、存外成しえてくれるのではと、それは安易な期待。
とは言えそれはいずれの話。
今はまだ、聞いてみたいことが山ほどある。
貴方の強さ、貴方に集った強さ、その強さに果たして己は含まれるのか。
そんな、言ってしまえば他愛のない話。
それは酒壺の中身がなくなるまで、続いたのだろう―――…。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 食事処」から枢樹雨さんが去りました。