2025/06/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にカリーナ・メリアさんが現れました。
カリーナ・メリア > とある喫茶店にて、優雅に紅茶を飲む女性が一人。
パラソルを近くに立てかけて、全身黒い服に身を包んでいる。
見た目は妙齢のように見えるが、その実かなりの高齢であるが。
周囲の人の目を引くが、同時にその人物が周囲の人間はわかっているようで気軽に話しかけてくる。

「ふぅ…」

自分が出資している冒険者の宿などの視察を終えて、こうして喫茶店で紅茶を呑む。
それが彼女のルーチンワークであり、たまに娘の様子を見に行くぐらいしか今はやることがない。
とはいえ暇というわけではない。冒険者用の依頼についての精査をするのも彼女の仕事であり。
それらについて書かれた羊皮紙を数枚テーブルの上に置いていた。

「魔物の被害が増加傾向ですわね…メグメール辺りに間引きようの依頼を出すべきかしら…」

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にシルド=レインさんが現れました。
シルド=レイン > 貴族からの依頼の手紙の数々を手にした男が、優雅に仕事と休息を両立させている彼女に歩み寄ってきていた。
顔には笑みを浮かべつつ、顔色を窺うようにしているのは相手違いが無いように念のため、といった風情。
深々と頭を下げつつ――

「すみません、恐れ入りますがカリーナ様でお間違いないでしょうか。
えぇと、俺、じゃない私はこういう者で――」

と。喪服を着ている彼女の方に頭を下げてから近寄ってきた。
手紙とは別に手にしているのは彼に渡されている期限付きの身分証。
主にギルドからの依頼を受けた時に臨時で発行される身分証であり、それは正式なものかつ本人の名前が記されていた。

「王都配送ギルドからの依頼と、貴族の方からの依頼でして。
こちらのお手紙をカリーナ様にお渡しいただき、可能なら返事を頂けるように受けております。」

カリーナ・メリア > 近づいてくる男性の姿に、ゆっくりと顔を上げる。
些か光の薄いサファイアの瞳をその青年へと向けて、柔和に微笑みを向ける。
ちらりと視線を動かして身分証を見た後、紅茶のカップをテーブルに置いて。

「お手紙ありがとうございます。お仕事お疲れ様ですわ」

そう柔らかく労いながら、手紙を受け取る。
軽く会釈もして魅せて、貴族としての礼儀を彼に返そう。
少々言葉遣いに怪しいところはあるが、本人なりに頑張っているのは見て取れる。
その場で手紙を開き、内容を目に通す。

「(配送用の人員の増員願いと、ダンジョンにある宝石の採掘依頼。
 両方とも冒険者向きと言えば向きだけど、うちのところでそれに回せる人材は…)」

しばし依頼内容を見て思案をする。
ロングハットを外して今一度見通した後、さらさらと羽ペンで依頼書の下部に書き込み。
手紙を畳んでぺろりとピンク色の舌で糊付けをして運んできた青年に渡す。

「はい、こちらでお願い致しますわ。いつもご苦労様です」

と、今一度微笑みを向ける。

シルド=レイン > 貴族の言葉遣いは鼻につくことが多いが、目の前の相手からはそういった物が無い。平民が相手だろうとも崩れることのない礼儀に、王族貴族でもこういう類の人物もいるのだというのは数少ない王国の希望でもあろう。
サファイア色の瞳に眩しそうに目を細めつつ、受け取る返書を丁重にベルトに付けられている返書を入れるための区画にしまい込むと――。

「ありがとうございます、これで配送ギルドからの依頼は終わったのですが――。
その、貴族からと、王族からの依頼がこちらでして。」

もう3通、そのバッグから出てくる。
何れも彼女の名前宛なのだが、仰々しい封蝋や家紋の押印がされている封書。
あまり彼女にとっての気分の良くないだろう相手からの手紙なのだが。仕事として受けた以上は渡さないと始まらない。

1通目は彼女が以前に夜会の誘いを上手く躱した貴族からのしつこいまでの誘いの書状。
2通目は宿屋にまで押し掛けてきたことのある王族の書状。脅し、透かしながらも自分に寄らせようとする狙いのある王城での夜会の書状。
3通目は貴族でも有能な冒険者を囲う事で有名な貴族の書状。有能な冒険者を派遣してほしいという内容の書状だ。

彼女の知らないところでこの3人が手を組んでおり、この3通の書状を特定の順番で読むと発動する文字による催眠効果がある、のだが。
男はそんな事は知らない。
ちなみに特定の順番は王族の書状の次に冒険者を囲っている貴族の書状、最後にしつこい貴族の書状の順。

普通に上から読んでいけば回避できるだろう物だった。

カリーナ・メリア > 出てきた三通を見て、若干顔をしかめてしまう。
その書状の押印や家紋を見てすぐに誰からのものかピンと来てしまったからだった。
だが、こうして正式に出されている以上は読まざるを得ない。
仕方なしに、出された順番に読み始める。

「…………」

無言で読み進めていき、額を思わず抑えてしまう。
そんな様子を配達した彼はどう思うだろうか。
ただ憂鬱そうに額を抑える。そんな仕草すらも、どこか妖艶に感じさせる。

「…………」

何度も、何度も。順繰りに読み直しては非常に困った表情を浮かべている。
今のところ、そこに起因する催眠効果には引っかかっていないが。
単純にどうかわそうか、というのがなかなか難しい。
一部の相手は自分より格は上。今までは何とかなっていたが、相応に今回もその手段や書き方を考えなければならない。

「…………おっと、申し訳ございません」

いつまでも彼を待たせるわけにはいかない。
何度も読みなおすうちに順番がバラバラになったが、仕方ない。
先に王族の書類から書き、次に3通目、そして1通目の返信を書いていく、が。
その最後の書状を書いていく最中に、だんだんと眠気を感じていく。

「あら…つ、疲れてるのかしら…」

かくん、かくん、と。眠りそうになる自分の額を抑えて、一度手を止めて。

シルド=レイン > 見ている身としては第一印象が決して悪印象ではないだけに、顔をしかめてしまう表情に同情を寄せる。
若干ではあるが顔色を曇らせた。表情をしかめたと言う事は、自分に仕事の依頼を文字通り投げつけてきた王族や貴族の使いの者の印象通りの主人なのだろう。
だから無理に急かしたりはせず、さっさと読み終えた後で手紙は受け取てもらえた、という無難な応対で終わらせるつもりだったのだが。

「――いえいえ。心中お察しします。」

向けられた申し訳ない、という言葉に、こちらは穏やかそうな笑みを浮かべて首を左右に振る。
心中お察しする、という言葉は小さく付け加えつつ。
印象のいい相手だけに、憂鬱そうな表情からも、面倒な手紙なのだろうという一層の確信が持てていた。
だが。相手が妙な眠気にあてられたかのような表情と声を聴くと――男の方も不自然に自分の情欲が高められてしまうのは感じ取れる。

「お疲れでしたら、横になれる場所にお運びしますよ。
喫茶店で横になってはお店の人にも申し訳ないでしょうし。」

と。自然な声で彼女をこの喫茶店のすぐ近くにある連れ込み宿へ運ぶための言葉を向けていた。
富裕地区の連れ込み宿――それは貴族や王族の息のかかった場所だ。
運ばれてしまえばどうなるか等、普段の男と。普段の彼女であればすぐに理解も出来る筈。
強くなる催眠の作用、男の言葉にほんのわずかだが強制力はかかる。
受けるか、拒むかは彼女の最後の意思力次第だ。

カリーナ・メリア > 彼が気遣ってくれていることを感じて、申し訳なさそうに笑う。
男の言葉が、自分の頭にどこか強く語りかけてくるのを感じる。
しかし、彼の言葉は親切心なのは間違いない。
故に。少しばかり断りづらい。それはこの術のせいでもあった。

「……………お言葉に甘えたいけど。ごめんなさいね。
これからもまだやらなきゃいけないから、大丈夫よ」

と、今は意志力がその効力を上回った。
このまま、彼について行くのもはっきり言ってやぶさかでないが。
しかし、申し訳なさそうな顔をする。こちらにもまだ今日中にやらなければならないことがある、と。
そうはっきりと断って。

「シルド様、ですか。お心遣い、本当にありがとうございます。
よければ、お仕事に困ったら私の名前を出してください。
こちらのモノと一緒に私の息のかかった宿に出せば、一晩は無料で泊まれますよ」

と言いながら、一本。羽ペンを取り出して彼へと手渡し。
ぎゅ、と。彼の手を握り、開いた胸元に視線が向かうかもしれない。

シルド=レイン > その催眠の力を振り切った彼女の意思力の強さが伝播して、するりと男の頭にも掛かりかけていた靄も振り払われることになった。
仕事は仕事、だろうと自分を取り戻すには十分な時間をおいて、その後の言葉に自分の方も表情がはっとしたように。
元の笑みを浮かべつつ、大丈夫という言葉に頷きを見せた。

「返事の手紙は――受け取る前に他の仕事があったことにしますよ。
途中で眠気を覚えるほど疲れているんなら、今書くよりも後でゆっくり書く方が良いでしょうし。」

元より喫茶店で仕事の様な事をしている相手だ。
余計な仕事をこれ以上持ち込まない方が良いだろう。
だからバッグのカバーを掛ける事で手紙の返事は受け取らない意思を示していた。

「そんな顔しないでください、それに――そうですね、どうしても宿に困る事があれば頼らせてもらうかもしれません。」

何時もの喋り方をする相手ではなく、気品を感じるだけに丁寧な言葉をできるだけ選ぼうとしているのだろう。
言葉遣いが所々妖しくなっているが、掌の質感に笑みを浮かべ――視線が胸の谷間に向かうと、いくら手紙の催眠の魔力が自分の方に向かっていたとはいえ魅力あるその谷間から緩く視線をそらし、彼女の顔へ。
胸の谷間はご褒美みたいなものだ。なるほど、貴族や王族が手紙を届けたくなる気分も分かろうという魅力ある女性だと認識できる。

――だからこそ、貴族の息がかかっていない時に、今度は自分の手で篭絡やナンパの誘いをしてみようと思わせるのだが。

「極力、そうならないように頑張りますよ。
高価なものは受け取れないですし。――甘えたくなる気持ちはあるんですがね。気持ちだけ受け取ります。
お互い色々苦労すると思いますが。」

その苦労も相手と自分では違うだろうけれど。
彼女は美貌を持つものとして、魅力を持つものとして大変なのだろう。
その苦労や心労が減る事を願ってますよ、と最後に続けた。

「それじゃぁ俺――じゃない、私はこれで。
お仕事頑張ってください。」

カリーナ・メリア > 彼の心の視線に気づくか気づかないか。
光の薄いサファイアの瞳が、改めて。眠気を振り払って彼を見上げる。

「ふふ、ありがとうございますわシルド様。
 今度は、ゆっくりとした時間で一緒にお茶をいたしましょう。
 どうやら、あなたは礼節があるお方のようですからね」

手紙へと少し厳しい視線を向けた後、彼のほうがずっと上だと教える様な態度で。
黒い手袋越しでも、その体温と感触は彼に強く意識させるだろう。

「えぇ、あなたも頑張ってね。それではまた」

ロングハットを被り、パラソルを開いて日を遮りながら立ち上がって。
その大きな尻を左右に揺らしながら、お互いの道に戻るとしよう。
…いつかその道がまた、交わる日は。おそらくあるのだと。
そう不思議な予感をしながら――――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からカリーナ・メリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からシルド=レインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 レストラン」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 しとしとと、小雨の静かな雨が降る夜帯の雰囲気。
 音を消せるほどでもなく、足を速めるほど急かす空でもない。
 ハットやマントなどの外套
 傘を差す婦人などが静々と馬車の中から現れては消えていく。
 行く先の道を黒く塗りつぶす程度にしか注がれない空の水気だった。


   「―――。」


 富裕地区の端の席
 窓際にて一人 今夜はいつもより圧や雰囲気は形を潜めているといっていいメイラの在り方。
 白桃ワインを片手に積みあがる綺麗に空になった皿がいくつか重なるテーブルは都度下げられている。
 相変わらず肉料理ばかりだったのか 香辛料の欠片やソースを肉が拭った後が残るそれら。

 最後には白桃ワインがよく冷やされた状態で浸かる姿
 注がれる中身は杯の表面に水気がうっすらと帯びているほどで、クッと喉に流し込む度に
 その内側からこぼれる甘い溜息は、唇にひやりと感じるほどに温度が低くなっている。
 
 アスピダやタナールから戻る度 家でも街でも、こうして舌が飢えて乾いたものを欲するように
 血肉が体の内側をよみがえらせているかのようにその顔立ちは、疲労の残り香すら見せていない。
 むしろ、霞仕上げのような赤い瞳は白いギザ歯と相まって、まだ物足りなさげだ。


   「―――止みませんわね。」


 一人、ギシリと背もたれに身を預けるようにしながら窓辺を眺め、黒く濡れ続けるその王都の足元を眺める。