2025/06/29 - 09:49~12:53 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 教練場・運動場」に影時さんが現れました。<補足:身長185cm/鴉羽色の髪/暗赤色の眼/濃茶色の羽織袴、暗色の着物、黒い襟巻/刀>
影時 > ――朝練。

そのキーワードを聞いて思うものは、色々居るだろう。監督する側にとっても切実なものがある。
一番多く効くのは朝が苦手、という言葉か。
無理もない。年齢を喰ってしまうと朝が辛いという意見は、理解できなくもない。
だが、熱意のある生徒達の声も無下にできない。
少しでも強くなりたい、鍛えたい、身体を動かしたい等々、様々な声はいつどんな時でも上がるもの。

「――……よーし、あと三週廻ってきていいぞ。
 それ以上は日が昇り過ぎてまずい。危ないと思ったら、遠慮なく日陰に入るようにな」
 
朝の王立コクマー・ラジエル学院。その広い運動場で何人もの生徒が走り込んだり、打ち込み稽古等に勤しむ光景がある。
様々な部活、クラス等による朝練だ。生徒達の自主性に任せきりにならないよう、朝から動員される教員や臨時講師も少なくない。
不定期ではあるが、武術全般を受け持つ男もまたその一人だ。
目を射るような陽ざしを受けつつ、涼しい貌で朝の清涼な気配を含む風に着衣の裾を揺らし、声を放つ。
背にした運動場の端に、日陰となる屋根付きの休憩場がある。ちらと目をやれば、救護役をかって出た生徒たちの姿が目に見える。
確か単位が出るのだったか。出番がないことも多いが、心得のある無しで万一の時の対処は大きく変わる。

走り込んでバテたのだろう。数人の生徒が日陰の中に逃げ込み、地面に置かれたタライに何本も突っ込まれた瓶の一本を取る。
氷水で冷やされた鉱水の瓶だ。走り込んだ後に呑むとさぞかしよくキマることであろう。
おつかれー、だいじょーぶ?と言わんばかりの調子で、タライの縁に留まって生徒の顔を覗き込む小さな毛玉は、まあ、考えないようにしよう。
一番涼しい場所だからということもあるが、毛玉の片割れは救護役にカウントできずとも治癒魔法も使える奇特な毛玉である。

取り敢えず、注意すべきことはバテている兆候が見える姿には遠慮なく声をかけ、休むように促すことだ。
日々の訓練は欠かさずにおくのが肝要だが、暑さで力尽きることほど恐ろしいことはない。

影時 > 早寝が出来ているかどうかはさておき、
早起きは現役の冒険者を続ける身にとっては、必修かつ必要技能とも言える。
日の出と共に起きる位でもなければ、早朝の冒険者ギルドでよく起こる依頼争奪戦にエントリー出来ない。
其れと同じ境地を教師、講師で出来るかどうか、というのは個々人の現状にもよるだろう。
片付けやら何やらを弁えた生徒たちの自主性に任せればいいにしても、何か起こってしまった場合の責任が取れない。
平民の出でなくとも、此れが青春――!とばかりに、気合を入れて朝練をしたがる貴族や王族等が居たら。

「……――あの取り巻きが多分そうなんだろうかねェ」

運動場の反対側、模擬武器やら防具を携えてえっさほいさ、と大地を揺らすような重々しい疾駆を繰り返す一団が見える。
早朝、炎天下を想定した行軍訓練――のつもり、と言ったところか。
実際そういう類の訓練をさせる、受け持つことも大いに在るけれども、希望を受けなければそうするつもりは余りない。
学費はどうにかできても、いざ防具一揃いを用意するのは……という者達も、この学院は少なくあるまい。
家伝の何やらを持ち込んで、うっかり破損させたとしても、当方は一切の責任を持たない。持てません。

だが、準備運動も兼ねた走り込みも程々にはしておきたくなる頃でもある。

自分が受け持つ武術教練で体力作り、体力の維持も重要だが、本来はやはり躰の動かし方を覚えてなんぼ、というものでもある。
所定の周回を終えた、と見える者たちを見れば、休んでいいぞ、と都度声をかけ、日陰に入るよう促そう。

影時 > 次第に何人も日陰で休む姿が増えてくる。この時期、休憩は考えるより多めに取っておくに越したことはない。
戦場でこんなに休めない? それは至極尤も。
だが己は兵士を鍛えるため、まして忍者を鍛えるためにこの仕事をしているわけではない。
今はこのように都度促すとはいえ、自分のペースで休む、適宜休息を挟むことはとても大事なことだ。
体力を取り戻し、気勢を整えて、初めてちゃんと稽古も出来る。

「よぉし。休めたかァ? 行けると思った奴らから、ぼちぼち支度するよーに。
 ……今日は俺を相手にした乱取りといこうか。
 ルールはいつものように。俺に一発でも当てられたら、点数をやろう。
 
 よくよく頭を使え。機を逃すな。だが、焦るな」

号令を出す。腰に差した黒鞘の刀はいったん鞘ごと引き抜き、羽織の下の雑嚢へと捻じ込んで仕舞う。
入れ替わりに掴むのは、休憩場に運び込まれた木箱の中身だ。
中に幾本も捻じ込まれている木剣、槍や槌などに見立てられる長短様々な棍、数本紛れているのは手製と見える素朴な木刀。
その木刀を掴み、刀の代わりに帯に差し込んで日差しの中に踏み込みつつ、休んでいる生徒たちの顔を見遣る。
やる気がある者も居れば、そうでないものも居る。当てられないと思っているのは恐らく後者であろう。

生徒一人一人と教師との実力差は、考えるまでもない。
けれども、生徒のモチベーションを保つためには、教師も大いに加減と配慮をしなければならない。
昨今、厳し過ぎるだけでは立ち行かない。希望する者が居たなら、加減抜きも出来なくもないが――。

影時 > やる気があるならどんと来い、だ。掠らせることが出来たなら配点を遣る。ただそれだけのこと。
それだけのことが難しいという者も勿論居るのは知っているが、彼らは工夫が足りない。
労せずして獲物を捕れるならば、世の中の誰しもが苦労はしない。
まず必要なのは面で制圧するチカラ、手段。次に必要なのは、動き回る教師を一時でも押さえ込める前衛。
それらに張り合う手管は心得ていても、ひよっこ相手にひけらかすのは愚かしい。それがつけ入るべき隙、条件となるだろう。

「――よォし。纏めて相手して差し上げようじゃあないか。
 矢弾やら魔法やら何やら使うなら、巻き込まねェように気をつけろぉ。誤射がこういう時は怖いからな……!」

声をかけつつ運動場に進み出ればれば、早速とばかりにワンドを構えた女子生徒が魔法を射かけてくる。
威力を押さえた凍結魔法。この時期であれば何かと需要が高まる術は、暑気払いでも遣りたい気持ちでも籠っているのだろう。
数秒前まで立っていた場所から飛び退き躱せば、白く凍てつかせる風景を見つつ、迫ってくる姿を見る。
凍てついた場所を迂回してくるのは、靴の準備もなく踏み込むと滑るという先入観より、冷たいからという気持ちが勝るか。

――忍者はそのような心理の隙をつく。

た、と履物の底を擦らせて着地し、氣息を鋭く吐きながら二の足で地を蹴る。
飛び行く先は凍った一角。その上を危なげない様子で踏み込み、再び飛ぶ。
行けるかと思って追い縋る生徒が、迂闊にも凍った地面で踏鞴を踏む姿を尻目に乱入する別の生徒の打ち込みを、

「……よ、ッ、と!」

抜き打つ木刀の一振りで打ち払い、再び飛ぶ。跳ねる。その場には留まらない。
どちらが先にばてるか。根負けするか。そんな予感をさせながら、朝の訓練のひと時を過ごす。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 教練場・運動場」から影時さんが去りました。<補足:身長185cm/鴉羽色の髪/暗赤色の眼/濃茶色の羽織袴、暗色の着物、黒い襟巻/刀>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院」にミラさんが現れました。<補足:学院女子制服>
ミラ > 学院の生徒として在籍していれば、生徒としての態度が求められる。
王族としての権威。並みの生徒を上回る優秀さも、生徒としての態度の悪さと教師に注意されれば然もあらん。
嘲り見下す内心が態度に出たかしらと。表面を取り繕う技術がまだ稚拙と自戒すべきか、くだらないと一蹴すべきか。
教師権限で懲罰室送りにされても、ふてぶてしい態度は崩れず。

「……暇ね」

どういう懲罰が、とむしろ懲罰の内容に思い巡らせる余裕まである始末。
懲罰的課題を命じられるのか。単純に体罰とくるのか。
あるいは、懲罰室に閉じ込めることをもって罰としているのか。
ただ、無為に流れる時間に気だるげに吐息をひつつ。