2025/07/19 - 07:50~10:14 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」にカグヤさんが現れました。<補足:画像参照願います。>
カグヤ > 早朝の誰も居ない図書館。
生徒の少ない休日に積み上げられた本。
「どうして普段から片付けるとかしないのかしら。」
同僚の怠慢に、憤るでもなく口を衝く感想は疑問。
陽が高く昇れば学習意欲の高い生徒や、教師が来る事もある。読書や調べものに使う国民もそうだ。
であるからこの積み上げた物は早々に処理しなければならず。蔵書のジャンル毎に分類してから戻していった。
「本当に──、一体どういう趣向なのかしらね。」
最後の蔵書、淫らな文学作品やHowto本の類。
どれも本のサイズが小さく、必然的に本棚の上層に位置するそれらを、脚立の一番上に乗りながら収めてゆく。
何度も上り下りを繰り返しながら──。
カグヤ > 「──ふぅ。」
台車の上にはまだまだ幾つも本が残っており、うら若き青春の一ページであること想起させる。
学費のために身売りする者が居る一方、健全に文学で、芸術で劣情を自らを満たす者も居ると知れればそれはそれで好ましい。
いくつか手に本を取り開いてみたけれど、どうやら人気なのは学生らしく、学生物。その対象が生徒であったり、教師であったり。
異性同性、果ては触手や獣姦等多岐に渡り、蔵書の多彩さを思い知らされる。
何度上の本をしまい込んだだろうか流石に脹脛が張ってきた。
脚立の天板に腰を下ろして足を伸ばし、前屈して太腿をマッサージする。
「流石に、一人でこの量は──。」
もう投げ出してしまおうか。それが許される身分でもないことは重々承知しているから、結局口には出なかった。
何度も丹念にストッキングの中の脹脛を揉めば前に垂れ揺れるテール。
カグヤ > 何度も足を伸ばしては曲げる屈伸を繰り返し、少し解れてきたところで
また脚立に登り収めていく蔵書類。
時折横着をして手を横に伸ばしてみたり、その都度バランスを崩しながらもなんとか事故なく仕事を終える。
既に開館時間は過ぎていたけれど、静かな図書館が賑やかになるのはもう少し先の話かもしいれない。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」からカグヤさんが去りました。<補足:画像参照願います。>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」にカグヤさんが現れました。<補足:画像参照願います。>
カグヤ > 遅めの昼食と休憩を終えて戻ってきた図書館。
既に数名の利用者が読書に励み勉強に勤しんでいる。
清く正しい図書館の使い方でありその風景に満足そうな笑みと頷きを。
「あら…? これは……。」
自身が席を外している間に、カウンターにはブックカバーの掛かった一冊の本が置かれていた。
それを手にして広げれば、うっすらと開いた唇から舌先が覗きその唇を湿らせる。
カウンターに入り椅子へと腰を下ろすとその本のページを捲る。丁寧に栞まで挟んであるそのシーンを、指先で一文一文なぞりながら読み進めてゆく…。
「また…なのね。けれど、ふふ─ 夏らしくていいわ。」
その本は比較的若年層をターゲットにしたもので、悪戯主の若さを想起させた。まだ司書を【利用】したことがなく噂を鵜呑みにしたのかもしれない。
栞の差し込まれていたシーンは、きっとその若者の願望に近しい、
そんな衝動を抑えながら普段の生活をしているのだろうと想像するだけで自然と表情が綻ぶ。
「女教師を包む水着からは、抑えきれないオンナの色香。布で抑えきれない乳房に、二粒小さな突起が─ だなんて……。」
音読する、ひょっとしたら聞こえてしまいそうな声。フィクションらしい、充て布を無視した情景。ゆっくり双眸を閉じて想像する。
夜中、この情景を期待してプールサイドに佇む男性にわざわざ充て布を外してその形を露骨に見せつけながら迫るカグヤ自身の姿を。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」にヴァンさんが現れました。<補足:ラフな格好>
ヴァン > 図書館同士の交流の一環として、学院図書館と神殿図書館は蔵書の一部を互いに置かせてもらっている。
幸い、学院図書館は安価な書物を除いて原則貸出を行っていないために紛失のリスクはない。
破汚損する者も――設置場所がカウンターのすぐそばだからか、いないようだ。
「こんにちは。――また悪戯か何かですか?」
男は定期的にやってきては、蔵書の一部を回収し、新しいものを置いていく。
学院の司書達との雑談で、噂の一部だけは耳にしているようだ。
男の目の前にある小型の書架とカウンターには少し距離があったからか、音読は聞こえてはいないようだった。
ただ、女が椅子に座る前に置かれていた本に対する様子から、違和感を感じ取ったらしい。
カグヤ > 暫くは、栞のページを捲ったり戻したりと、その前後の展開を含めて読み込んでいたところ、掛けられた声に視線をその声の主へと向ける。
何度か顔を合わせているであろう相手へ、パタンと本を閉じてから少しだけ困ったように眉根を寄せてみた。
「えぇ、良くあるセクハラの類ですわ。」
そう、困ったような表情のまま微笑んで、その文庫本を差し出してみようか。
良くある男子生徒が女教師を、級友を、魔法や催眠等で好き放題していくという官能小説とも呼べるか怪しいい代物。
「異性との付き合い方も分からないと得てして取りがちな行動、といったところかしら。」
ヴァン > 書架の蔵書を交換する作業を続けながら、相手に伝わる程度の低い声で話す。
閲覧用の机はカウンターから離れた位置にあるが、静かな図書館ではちょっとした音も意外と遠くまで伝わることがある。
「カグヤさん達も大変だね、こんな――悪戯だか、嫌がらせだかに対処しないといけないとは」
ブックカバーがされた本の題名には興味があるものの、詮索しない。
司書という共通点があるものの、他所の図書館の問題に必要以上に嘴を突っ込むことは失礼になるだろう。
作業が一段落し、カウンターへと近づいたところ本を渡されたので、自然とページをめくる。
タイトルが書かれている所で男は本を閉じ、女へと返した。
「あぁ……この手のは結構売れてますね。なんであれ、本に興味をもってもらえるのはいいことだけど……。
普通に声をかけて食事にでも誘って、でいいと思うんだが。オトナのお姉さんには声をかけ辛いのかなぁ?
あぁ、そうそう。面白い本を持ってきたから、読むのをお勧めしますよ。棚の右端に入れておきましたので」
この本を置いた人物をからかうような口調が混じる。学生にとって二十半ばの女性は気軽には声をかけ辛かろうと。
女がこの図書館に勤務する前から、男はこうやって本を勧めている。
中には刺激的な場面のある冒険小説などもあったが、ジャンルに一貫性はなく、男が都度すすめたい物を選んでるようだった。
カグヤ > 蔵書の交換をする速さ静かさは、自身の比ではなく丁寧で。
どうしても力が必要になる作業だから仕方ないのは理解しているが、それでも羨ましくは思ってしまう。
そんな作業風景を眺めながら、あぁと相手の名を思い出したように声が零れる。
「今は特に実害が無いからいいけれど、
ヴァンさんだって神殿の子や若い子が放っておかないでしょう?」
特に妙齢の女の子ともなれば年上の落ち着いた男性に惹かれるもの。
カジュアルでラフなその恰好は親しみも得やすそうだから。
作業を終えて近づいたその手に渡した物が帰ってくる、タイトルだけ読んで察したのだろう様子に。
「あら、さすがヴァンさんは知見が広くてらっしゃる。
さぁ、どうでしょうか……若さゆえに、断られたら、誰かにバレたらと考えてしまうのかも?」
そんなタイトルだけで察した事にほんのちょっと戯れの皮肉を突いてから、
若いって良いわね。なんて大人の余裕を見せからかう様子の相手へ微笑掛ける。【私たちが無くしたものかしら?】なんて。
「あら、嬉しい。どんなジャンルかしら……?」
カウンターから立ち上がり、他の利用者の様子を伺ってからその場を離れる。
勧められた棚にならぶタイトルを胸の下で腕を組み指先を顎に添えながら流し見る。
「この中で、特にヴァンさんが良かったと思えるものはどれかしら?」
読む本に関しては雑食であった。冒険小説も、活劇も哲学書も歴史書も、それもこれも目移りしてりまうから……。
いっそ特段のお勧めをとその姿を振り返って問うてみた。
ヴァン > 本は重い。辞典のようなものは言うに及ばず、文庫サイズでも数が集まればそれなりの重さになる。
時折武器もその手に握るために鍛えているからか、静かに丁寧に書架に納めていった。筋力がない司書はどうしても速度を犠牲にせざるを得ない。
「神殿図書館に来るのは慎ましい子が多いからか、そういう機会はないかな。
慎ましくない、これくらいの子には確かに人気があるけど、あと十年以上待たにゃならん。
――人気がある作品を仕入れて集客し、その導線で神殿に寄ってもらう、ってのがうちの役割だからね。色々読むさ」
手で腰のあたりを示し、身長を伝える。文字が読めるようになったばかりの子供達には人気があるようだ。
タイトルだけで中身を察した様子がばれたことには苦笑を漏らし、言い訳めいた言葉を紡ぐ。
確かに行き来した文庫本を男が積極的に買い求め、読みふける姿は想像しづらい。
「相性みたいなものだからな。失敗して当然ぐらいのものだが……若いうちは失敗を過度に恐れるのかもしれない。
特に学院に来る子達は比較的、順風満帆な人生を過ごしてきた子が多いように思う。だからかも」
女性をナンパするのが礼儀みたいな地方もある一方で、異性との会話が中々日常にならない若者も一部にはいる。
「一番はこれかな。数年前に出た本で、『孤児院出身の少女が毎月手紙を書くことを条件に、匿名の人物から援助を受ける』って話。
後は……魔法も異種族も一切存在しない世界での殺人事件を扱ったもの。<転移>を使わずに密室を作る、って面白くないかい?
最後は――」
少し言い澱む。別の司書に熱望されて持ってきたものなので、先にカグヤが読むのはまずいかもしれない。それ以上に内容が性的だ。
「ほぼエロ小説だな。堅い仕事についている女性が、身分の高い男に籠絡されていく感じの」
カグヤ > 「へぇ─。若い内から教育を、なんて言っても信じたかもしれないのに。
でも、ヴァンさんもヴァンさんで、神殿のために色々考えているのね。素敵だわ。それが官能小説だったとしても。」
ただ読まざるを得ない状況になった自身と異なり、役割のために読む。その姿勢は称賛できるもの。
それでも、【そういう年齢が趣味の人もいるでしょう?】だなんてさらに突くのは性格が悪い。
その皮肉に上げ足を取って揶揄を返す司書の表情は楽しそうに双眸が細く口元も緩んでいた。
「そうね……たまに、失敗する気の無い子なんかも見るけれど……。
無理やり迫ってきて、断ると、なんで?みたいな顔をするのよ──。
あの自信は本当にどこからくるのかしら……。」
常に蝶よ花よと育てられわがまま放題し放題であればそうも歪むか、思い出して少し同情的に。
「えぇ、聞いたことはあるわね、夢のある良い話。まだ読んではいないのだけれどいつか──。
転移無しの密室、ミステリーはあまり触れて無かったけれどいい機会だわ。」
もう一度相手に背を向けて、ミステリーの本を手に取ろうとしたところ、言い澱むように時間をおいてから、紡がれた言葉。
「ふぅん……。貴方も、あの子みたいな事をするのね?」
その手が伸ばされて、結局手にしたものは最後に言葉にされた物。
それを胸に抱えて振り返れば、じっとりとした、いかにも軽蔑してます。という視線を向け。ついには名前さえ呼ばなくなった。
「それで?健全で慎ましい図書館には置けないから、こちらにって事かしら?それとも、誰かと示し合わせ?」
その目の前で表紙を捲る。タイトルだけ見れば大したことがないのかもしれないが、
中程のページを捲ると、そこには文学表現というにはあまりに過激な性描写が並び──。
「──貴方はどういうシーンが良かったのかしら?」
まるで口調は詰問するかのよう。けれどしっとりと濡れた赤い舌先がその唇に這って濡らす。
開いたページをそのままに、つか、と手の届く距離まで足を進めると、本を差し向け、そのシーンを開かせようとする。
ヴァン > 「なかなか成果のみえない仕事でも、クビにはなりたくないからね。
それに、売れている本は古書店で買えるし、売れる。未読なら、一度読んでおくのも悪くはないぜ?」
本を読む時間はあまり短縮できないが、それ以外での工夫はできる。
例の本もシチュエーションを様々に変えている点は評価できた。今後伸びる作家かも、と付け加える。
「……まぁ、逆上して暴力に訴えなければいいんじゃないかな。
しばらくは置いておくから、そのうち読むといい」
相手の動きが止まった。伸びていた手の行き先が変わり、ミステリから官能小説へ。
口調の変化に選択を誤ったかという表情が浮かぶ。
「……あの子? いや、この本は頼まれてだ。若い女の子に人気があるってことでね。先月の会議でそちらから要望があった。
置かせてもらう書籍は受け入れ側が承認したものだけということは、カグヤさんも知っているだろう?」
会議には学院図書館から数名が参加している。男の一存でできることではないと伝えたが、女が組織の仕組みまで理解しているかはわからなかった。
カグヤが開いたページを見て一瞬天を仰ぐ。よりにもよって、高貴な男が主人公を調教しているシーンだ。
差し出された本を見て、どうしたものかと内心首を捻る。
どこが良かったのか、という質問は『貴方も読んでいるだろう』という前提がある――確かにそれは事実だが。
本を受け取って、ページをめくる。本、あるいは男の手元に視線が向けられているのを痛いくらいに感じる。
男の手元が止まったのは、小説の序盤といっていいページだった。
「ここかな。最初は仕事の関係だった二人が、主人公が転びそうになった所を相手が抱きとめるアクシデントがある。
ここで男の箍が外れるところかな」
少し歩き、本をカウンターの上に。文鎮を置いてそのページが見える状態にする。
人はそうそう転ばないし、抱きとめる時に唇が重なるなんてこともない。
穏当なページを開いて、この場を納めようと考えていた。
カグヤ > 「……厭ね。そんな大真面目に返されてしまったら、皮肉を言ってる私が莫迦みたいじゃない? 後でじっくり読んでみるわ。」
ふふ、と笑ってから少し肩を竦めて見せて。
年上の男性を相手にとても子供じみた事をしたと反省の弁。
「えぇ、誰かに読まれて結末を知る前には読もうと思うわ。
ん……それはそう、だけど……。」
これ以上口を開いては、冗談交じりの皮肉がただのヒステリックになり果てそうで口を噤んだ。実際にその通りだしそんな風にも思っていないのだから。語気は徐々に弱くなっていく。
そして押し付けた本、それを捲る指先を眺める。それが止まったページの内容を口頭で説明する様子に、
そのページを覗き込もうとしたけれど、その手が離れ身体が離れテーブルへと置かれてしまう本。
「そんなことで、箍が外れるのかしら? ──もちろん、自然な導入のためというのはわかるけれ──!!」
結局内容にケチをつけたいのか、その本を取りに足を進めた所でバランスを崩した。
ご都合主義と批判した言葉の通り、本の通り。自身は前のめりに倒れ込んだ。少し先に居る存在に手を伸ばしたけれど。バランスを取ろうと宙を掻くそれが触れる事はなくて──。
柔らかな膨らみが、豊満な肉体が触れるのは腕の中か、冷たい床か──。
ヴァン > 皮肉には皮肉と気付かない愚か者のふりをして振る舞うと、相手は勝手に自滅する。
男自身皮肉は相棒のようなものなので、その扱いはそれなりに心得ていた。
「わかってくれたならいい。誰からの要望とは言えないが。
この本のタイトルで話題を振ったら食いついてくる人がいるから、まぁ……」
誰かを悪者にして自分は無実だと言う気はない。そんな事をしても女は信じないだろう。
会議の出席者は周知の事実だ。熱望した人物が自分の好みを隠さない性格と男は知っていた。
とはいえ――ブックカバーの本の後で男からも官能小説に言及され、過敏にしてしまったかもと反省する。
「前々から目をつけていたけど切欠がなか――!?」
小説は多かれ少なかれご都合主義だ。どれだけ違和感を無くすかで読みやすさが変わる。
そんな考えは一瞬で吹っ飛んだ。タイル張りの床に欠けでもあったのか。女が前のめりに倒れかかる。
棒立ちして、手を差し伸べながら安否の声をかけることもできただろう。少し考えればそれが良さそうに思える。
しかし――男は考えるより先に身体が動いていた。
「……っと。大丈夫かい?」
身体を沈ませ、倒れ込む彼女と床の間に己を滑りこませる。司書という仕事に見合わない瞬発力。
抱きとめた男の身体はジャケットとシャツを除くと少し硬い。双丘が男の胸板に触れる。
女の耳元で囁いた声は普段よりも低い。背中に腕を回しながら、ゆっくり膝を動かして相手がしっかりと立てるのを確認した。
カグヤ > 「そんな事、出来るわけないでしょう?流石にそのくらいのデリカシーはあるわよ。」
心外だとでも言うように。仮にその人物が居たとしても口にしてしまえば折角の物語が台無しになる可能性だってあるのだから。
その場に居なければ知らぬこと、故にそれ以上この話が広まる事も無いのだろう。
とても、下らない言い合い。切っ掛けが些細な物であったり突拍子の無い事でも成りうることは知っている。
しかし、肯定し過ぎてはまるで自らもそれを好んでいると知られてしまいそうだから最後まで突っぱねていたけれど──。
「きゃ、ぅ──。」
スローモーションに映る景色が止まった。単純にその中身を確かめようと気が焦った結果であり……その物語を体験せよという命令の結果でもある。
男の腕の中でなんとか倒れるのを回避出来た自身は、その腕に体重がかかっているのも忘れ安堵からか目の前のジャケットを両手で掴んだ。
ドクンと触れ合った膨らみの奥が大きく高鳴るのは転びそうになった衝撃から。
けれど、耳元で安否を尋ねられれば応えないわけにはいかなくて、自ら身体を支え立とうという焦りからかそのまま声の方向を向いてしまう……。
「ごめんなさい、ヴァン……。ありが────ッん」
そうして……小説とは異なるが、触れる唇。バランスを欠いた自身はその場から動くことが出来なくて……男性の少し硬い唇の感覚に、思わず瞼がそっと伏せられた。
ヴァン > 抱きとめたまま、視線は床へと向いていた。書架の近くのタイルが僅かに欠けている。
普段は書架からカウンターに向かう人が少ないし、男は足のサイズでその欠けで躓くことはなさそうだった。
柔らかい感覚を堪能しておきたいという気分もあったが、場所が場所だ。
立てるかと首を巡らせて――何故か唇が重なる。
「んっ…………」
役得とばかり、触れた唇を押し付ける。ちろり、女の赤い唇を舐めた。偶然と言い張れる程度の悪戯。
もし女も同じように舌先が出れば、躊躇いなく絡めていくだろう。
小説ではただ唇が重なるだけで、すぐ離される。その分急激に互いを意識しだすという筋書きだった。
「……カグヤさん、立てるか?」
転倒時と想定外の口づけに気が動転しているだろうと思ったか、僅かに顔を離して問いかける。
右手をカグヤの後頭部へとやって、落ち着くようにと頭を撫でる。
あまり長い時間こうしていては誰かに見らえれてしまうだろう。
カグヤ > 「ん、は……んっ♡」
躓いた事よりも、意識はしっとりと濡れた唇の感触に向いていた。
人の目に触れやすいその場所──そんな事、お構いなしにその舌先を擽る様に自身からも舌が伸びた。
図書館の入り口で人目を遮る物等殆ど無い。
粘膜同士が触れ合う小さな音が、いやに大きく聞こえる。
しかし、そんな甘い時間は長く続かず、後頭部に触れる掌、紡がれる心配そうな声に、
はっとしたよう自分から掴んでいたジャケットの手を押して離す。
「ご、ごめんなさい……ヴァンさん。」
受け止めてもらった衝撃で、ただでさえ窮屈そうだったスーツのボタンが弾けて転がっていた。
ブラウス越しの膨らみがスーツの袂を押し広げて主張し、その胸を潰す様に両手を胸の前で組みながら慌ててカウンターの中へと駆け出した。
その奥は司書のみが入る事務所、その扉の前で、走ったから、だけではない荒い息が、赤い顔が振り返る。
「本当に、ごめんなさい。」
その先を知るのは彼だけ。自身はもう、羞恥やら心地よさに昂ったやら、そういう感情は隠せそうになかったから。
あとはその本が閉ざされるのか、新たに書き加えられるのか──。ずるい自身はそれを相手に委ねた。
ヴァン > カグヤが伸ばした舌は、扉の隙間のようだった。許可を得た吸血鬼が家に押し入るように、舌先は女の唇を割り入り、口内へと忍び入る。
舌先で口蓋や舌を擽り、絡め、唾液が混ざり合う。僅かな、だが濃密な時間。
「いや……気にするな。ちょっとした事故だろ?」
スーツのボタンが転がっていく先を見ていくうちに、女はカウンターの向こうへと行ってしまった。
ふと、向けられるいくつかの視線に気付く。そちらに目を向けると、何事が起こったのかと顔を向ける学生達がいた。
口づけは男の頭が遮っていたし、時間にすれば十秒もなかったはずで、異変を感じた者はいないだろう。
穏やかに笑いながら頭を下げ手を振ると、何事もなかったかのように視線は散っていった。
カグヤの赤い顔に気付いた者は幸いにもいないようだった。
「……立ちくらみか? ちょっと体調が悪そうだ。事務所で休むといい。
――看病もいるよな? もし受付が必要になったら俺が応対に出るよ」
転がったボタンを手に取って、蔵書が入った鞄を手にカウンター横の押し扉を抜けていく。
男もずるいと言えるだろう。押し扉を抜け、女の傍らに立ち、事務所へと一緒に入る。
拒否の声があげられる機会を作りつつも、動きは止めないのだから。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」からヴァンさんが去りました。<補足:ラフな格好>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」からカグヤさんが去りました。<補足:画像参照願います。>