2025/07/19 - 15:09~19:29 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/雑庫」にリュシアンさんが現れました。<補足:容姿は名簿参照/やや寄れた学院の制服/>
リュシアン > 小さな体が廊下を走り、何度も後ろを振り返る。
それから一度足を止めて周りに人の気配がないことを確認してから柱と柱の間の小さな壁──に見える隠し扉のようなそれを後ろ手に押し開けて体を中に滑り込ませる。
なるべく音をたてないように、けれど今の少年に可能な限り冷静に、雑然と物が置かれた小部屋の中の気配を確認する。
一歩ずつ奥へ、少しずつ確認しながら。
漸く奥まった壁に辿り着いたところで膝をついて、大きく息を吐き出し蹲る。
酷く気分が悪い、と有体に考えれば保健室にでも駆け込むべきだろう。
けれど、悲しいかな自分の今の体調不良の起因に対し、少年は心当たりがあった。
何か、良からぬものを口にした──それも、偶然ではなく、恐らく何らかの悪意を持ったものを。
「…っ」
口元にあてた掌の隙間から、半ばえづくような音で喉が鳴る。
けれど吐き出せるものがない。
そう考えると恐らくそれはもう既に固形物ではない。
水分か何かで、恐らくはもう体が吸収してしまったことで影響が出ている。
いつ飲み込んだのだろう。
こうならないように、なるべく学内では口にするものは気を付けていたはずだ。
昼食も家から持参したものだけを食べているし、飲み物だって──いや、恐らくそう、飲み物だ。
食事中に来週の授業のことで同級生に話しかけられて、お茶の入ったカップを自分の視界から外してしまった。
妙に的を得ない内容だったので、内容の割には話が長引いたし、後から考えれば少し目が泳いでいた、気がする。
あれは、誰かが、同級生に指図して作った時間だったと考えればこの体調の急激な変化にも辻褄が合う。
何を飲まされたのだろう。
理由が解れば思考は落ち着く。
だからと言って体調が落ち着くわけではないのだけど。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/雑庫」にプシュケさんが現れました。<補足:背中くらいまでのブロンドと碧色の瞳を持つ美少女>
プシュケ > 彼が走っていた時にすれ違っていた家の違う王族姫は、足を止め、暫しその背を見つめていた。
その後しばらく、その場にいて、周囲を見渡していた所、とある生徒の一団を発見し、声をかけて足を止めさせていた。
その後、彼の行った先を適当に告げて、別の場所へと向けさせて、更に暫しの後まで様子を見た上で、もう追ってくる相手はいなさそうだと確認した後で、もう少し準備を整えてから彼を追い始めた。
少女の瞳は、色々な者を見渡し見通す。
そして、家は違うとはいえ、奇矯な王族家同士。
まったく交流がないわけではない。
故に、逃げていく彼には少しの違和感を、そして、追ってくる連中もその瞳で捉えていたのだった。
何となくこのあたりか、とあたりを付けた後で、一つ一つ部屋を開けて中をのぞいては閉じて次。
そんな行動を取っているがゆえに、雑庫の中のリュシアンには気が気ではないかもしれない。
そして、ついに開く、彼が籠る雑庫の扉を開き中を覗けば
「……ここね。」
鈴のなるような声で呟いて室内へと。
扉を閉めて、鍵をかけ、奥へ足を進める前に声をかける。
「……リュシアン、ここにいるのでしょう?」
明らかに追っ手とは違う声であることを察するのはさほど難しくないだろうか。
リュシアン > 本人たちはちょっとした悪戯のつもりなのかもしれない。
悪戯でなければ、家門の呪いに起因する恩恵にあずかりたい下卑た目的なのかもしれず。
誰か来る、と思ったのは虫の知らせ。
口元にあてた掌が咄嗟に口を覆う。
吐きたいわけじゃないし、吐くようなものもない。
意味がないとわかっていながら息を潜めようとしているだけ。
近くの部屋で扉が開いては閉まる音がした。
それが、何度か繰り返されている。
──誰かが、明確な意図とともに、"なにか"を探している。
願わくば、扉が開きませんように。
けれど扉は開いてしまった。
そのあと、鍵のかかるような音も聞こえた。
ああ、お願いだから、開いてしまったとしてもとしても見つかりませんように。
どうか、────どうか。
「……!」
自分の名前を呼んできたのだから、相手は自分がここにいるのを理解している。
そして、自分もまたその声に聞き覚えがある。
「…プシュケ、さま?」
だから思わず部屋の片隅からごくわずかな小さな声を返してしまった。
先程すれ違った記憶はあるけれど、まさか追いかけてくるとは思っても見なかったから、どこか驚きが混じっていたことだろう。
布のかかった箱がいくつか積み上げられた陰からその声を投げたものだから、こちらの姿はすぐには見つけられなかったかもしれないけれど。
プシュケ > 声をかけた後、暫しそのままでいたものの、自分の声に返事が返ってくる。
ふぅ、と安堵の吐息を漏らしてから声が聞こえた方へ足を向ける。
「リュシアンの綺麗なサファイアが濁っていたのだもの。何かあったと気がつくわ。
あれだけ逃げるのだから、誰かに追われているのだろうと思えば案の定。
連中は、今は誰もいない時計塔を探していると思うわ。」
そんな言葉を口にしながら、暫し部屋の中を探していく。
相変わらず、色に伴う良く分からないことを口にしている少女もまた、奇矯めいた目で見られることが多いけれど、
生来の気の強さと環境をうまく使う器用さをもって世渡りをしている。
雑然とした庫の中ゆえに、すぐにその姿を見つけることが出来ないけれど、
どこかにいるのは先ほどの声で確信があったからこそ時間をかけても探すだけ。
多少時間をかけた後で、ようやくその姿を見つければ、すぐ近くに腰を下ろして手にしていた水筒を開いてリュシアンへと差し出す。
「ただの水よ。喉が渇いたにせよ、何かがあったにせよ、きっとこれが必要だろうと思って。」
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/雑庫」にメイメイさんが現れました。<補足:プラチナブロンドで前髪周辺に青のワンポイント付きの長髪・アンバーの瞳・薔薇色の唇>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/雑庫」にメイメイさんが現れました。<補足:プラチナブロンドで前髪周辺に青のワンポイント付きの長髪・アンバーの瞳・薔薇色の唇>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/雑庫」にメイメイさんが現れました。<補足:プラチナブロンドで前髪周辺に青のワンポイント付きの長髪・アンバーの瞳・薔薇色の唇>
リュシアン > 小さな体を更に小さく丸めているから、見つけにくいには違いない。
ましてや、自分とあまり体格が変わらない相手だから、猶更だろう。
「…すみません」
時計塔のほうに、ということは、恐らく彼女が意図的に撒いてくれたのだろう。
同じように王族の末子、それも同年齢ながらはっきりとした行動と意思を備えて行動が出来る彼女は、自分から
見ればあまりに眩しい。
そんな彼女に綺麗と評されるのは本当に気恥ずかしいのだけれど、今はそのことを恥ずかしがっている余裕がない。
差し出された水分に、一瞬躊躇する。
けれど、彼女の手元と、彼女の輝く様な碧眼とを一度視線を往復させて、口元に添えていた掌をゆるゆると伸ばして受け取った。
「ありがとう、ございます」
走ったことで水分が足りていないのは事実。
良からぬものを吸収しているのだから排出しなければならないのも確かだ。
確認するようにまずは少しだけ唇をつけ、それから渇きに任せて、けれど少しずつ。
不快さが消えたわけではないけれど、少しは鳴りを潜めてくれたようだ。
「…わざわざ、探してくれたんですか?」
ちらりと色違いの瞳を向けて問う。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/雑庫」にメイメイさんが現れました。<補足:プラチナブロンドで前髪周辺に青のワンポイント付きの長髪・アンバーの瞳・薔薇色の唇>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/雑庫」にメイメイさんが現れました。<補足:プラチナブロンドで前髪周辺に青のワンポイント付きの長髪・アンバーの瞳・薔薇色の唇>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/雑庫」にメイメイさんが現れました。<補足:プラチナブロンドで前髪周辺に青のワンポイント付きの長髪・アンバーの瞳・薔薇色の唇>
プシュケ > 「謝ることはないわ。リュシアンは、きっと被害を得たのでしょう?
なら、謝ることなんてないわ。」
被害を得たリュシアンには問題はないとはっきりと言い切って。
そして、差し出した水を受け取って、水を飲んだのを見れば、穏やかな笑みへと変わる。
「私もよくは分からないのだけれど、調子が良くない時はたっぷりと水を飲むといいらしいの。
だから、水を汲んできたのよ。
……そうよ。あの濁り方はあまりよくないと思ったから。
行き先が保健室だったらそのままでいいかと思ったのだけれど、保健室にはいなかったし。
それに、気を紛らわすにも相手が必要でしょう?」
こともなげに告げる言葉。
だが、その様子から、結構あちこち探していたことは察せられるかもしれない。
それでも、そこを告げる様子はなく、当たり前のことを下までというように涼し気に微笑んでいた。
リュシアン > 水分は多くとったほうがいいとは聞くが、薬効が顕著に出すぎる体質故に意識を手放していることも多い。
もしかしたら意識のないうちに沢山飲まされている可能性があるのかもしれないと頭の端で理解する。
「そう、なんだ…」
手の中の水分を見下ろして揺らすと自分の顔色はやはりよくなかった。
たくらみに使われたものは左程の効果がないものなのかもしれない。
だからと言って油断するつもりはないから、水をもう一口。
保健室という単語が出てきたのが、水を飲み込んだ後でよかったと本当に思う。
飲んでいる最中に聞いてしまったら、きっと驚きのあまり吹き出してしまったに違いない。
それでもやっぱり驚いたのは事実で、何度か咳き込みはしたのだけれど。
「ありがとうございます、優しいんですね」
言葉の端々から、自分を折った後の少女の足取りが理解できる。
事も無げに言ってのけているけれど、決して簡単なことではなかったに違いない。
けれど、涼し気な顔をしていうものだからそこは藪をつついてわざわざ野暮なことは言うまい。
シンプルに感謝を告げるのが一番いいだろうと推測したから。
プシュケ > 「この辺りは、双子の姉の受け売り。少し過保護かもと思うけれど、こういう時に役に立つから助かっているの。」
自分由来の知識ではないことも普通に口にしていくのは、自分の手柄ではないことを自分の手柄にしてしまうのはちょっと違うと思うから。
そういう意味では根っこはお人よしなのかもしれない。
水を飲み、手を見てつぶやく言葉から、どこか心当たりがあるのだろうと察するものの、そのあたりは彼自身でしかわからない事でもあって。
咳込んだようすに大丈夫?と問いかけながら少し背中をさすってあげたりしつつ
「そうでもないわ。ただ、振り回されている人を放っておきたくないだけ。
ウチもだけど、リュシアンの家も、色々不思議な家じゃない?
そういう所は色々と面倒をかけられるものだもの。
だったら、何かあったら放っておきたくないだけ、よ。」
末っ子だから家族に対しては甘えん坊だが、同時に誰かに悪意を向けられたら、
最低でも倍にして返すつもりがある気の強さ。
そうして自分は対抗してきたが、みんながみんなそうでもないとは知っている。
そして、リュシアンと自分をどこか似たものとして投影しているのもあるのだろう。
良く分からないことを口走る奇人と、体を重ねることで大きな幸運を得られると噂の人間。
結局は、他人にしてみれば好悪の差はあれ奇妙と見られているのだから。
リュシアン > 「アステリア様の」
彼女の陰に隠れるように過ごしていることが多い印象の姉姫の名前を挙げる。
高名な薬師として既に名高い彼女の受け売りだというのならば自信をもって口にするのも頷けるし、姉妹の中の良さも伺えた。
決して自分が家族と仲が悪いわけではないけれど、仲が良いのは素直にいいことだと思う。
背中に感じる小さく柔らかな手から伝わるほんのりとした温かさに目を少しだけ細めながら頷いた。
「…うちは、まあ確かにものすごく特殊だと思いますけど。
イフレーアのお家はそんなに不思議かなぁ…」
外から見ているだけではわからないことが多いのはやはりどこの家も同じなのだろう。
横傍らの彼女をもう一度色違いの瞳で見やる。
それから、少し落ち着いてきた体調につられる様に表情も落ち着くか。
「でも、やっぱりプシュケさまはすごいと思います。
ぼくは、そんな風には動いていけない」
彼女に比べれは、やはり自分は気が弱い自覚がある。
どうしても、強く出るのは難しい。
勉強や興味があることについてはそんなこともないのに、どうしてなのだろう。
もう一口の水と一緒に呑み込むのは、口にしない自己嫌悪。