2025/09/29 - 22:13~00:17 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/準備室」に影時さんが現れました。<補足:身長185cm/黒髪/暗赤色の眼/不精髭/白羽織+暗色の着物と濃茶色の袴、黒い襟巻/刀>
影時 > ――夕刻近くの王立コクマー・ラジエル学院。

時間の経過に伴い、次第に秋めいた斜陽に染まり行く白色基調の校舎には様々な部屋、施設が存在する。
しかし、その殆どの使用状況を把握できている者は、どれだけ居ることだろうか。
教師、講師によっては、永らく占有状態にし続け、私用のために独占している――とか何とか聞く。噂に聞く。
誰の間に流布する噂だろうか。少なくとも学生の間ではない。一部の教師や講師の間、である。
例えばそれは、面倒な仕事の押し付け合い、ないし、止むを得ない助力の見返り的に伝わるものである。

そのうちのひとつが、これだろう。

校舎の奥まったところ。学生たちが集まる教室とは異なり、異様に出入りの頻度が少ないエリアがある。
例えば「準備室」と表札が掲げられたところがそうだ。奇妙に闇が深い其処は何の準備室だろうか?
教材の準備ための部屋である。次の講義のために講師が休んで準備するための部屋である。或いは――。

「……――微妙に臭うのは、あー、つまり、そういうコトなんだろうかねェおい」

学生の準備を“させる”ための部屋、なのかもしれない。
その謎めいた扉を開いた際、薄っすらと滲む異臭に顔を顰める姿が、そそくさと開いた中に踏み込む。
先日、異国の歴史書の一節を訳するという面倒を請け負った際、或る鍵とメモ書きを頼まれた男性教師から受け取った。
やたら人の悪い、ないしいやらしくも怪しい笑い方をしていたが、――考えるだけ無駄であり、野暮の極みか。

壁際を探し、押し込めば天井に仕込まれた魔導仕掛けの光が灯る。
幾つもの書架が並んだ向こうは、大きな机と。壁際に埋め込まれるように置かれた寝台。
小さなキッチン等が見える有様は、遣ろうと思えばここで一日を過ごす、ということも出来るかもしれない。
だが、兎に角生臭い異臭が残るのは、そうした痕跡やら何やらが何処かに残ってるということか。

(――勘弁してくれ)

思わず、内心でそう思いつつ、奥の窓を開こう。何は兎も角換気せねばやっていられない。

影時 > 「後で散歩させるつもりじゃァいたが、ヒテンとスクナを出してなくて正解だったな……。
 一応本は……まともか。言語と、訳書と……ぁ、これ図書館の本かね……。」
 
仕方がない。先ずは一通り見なければ、現状を把握できない。
白い羽織の裾を揺らしつつ、意外に奥行きのある室内を探索してゆく。
廊下よりのスペースに目隠し代わりも兼ねて、図書館のそれによく似た書架が並ぶ。
前の使用者が私的に持ち込んだり、学院の図書館から借り出したものを、突っ込んでいたと見える。
目についた書の奥付を見れば、認められた時の年月は今と比べて随分経っている。
知識の源泉として用いるには古さがありそうだが、裏表紙に貼られたラベルは元々の在り処を示しているものではないか。
思わず、げ、と眉を潜め、書架に突っ込み直す。見なかったことにしたいが、近日に纏めて元の在り処に戻しに行く方が良さそうだ。

「……風が抜けねェなあ。廊下側閉めてるから仕方ないが。
 臭い消し焚くか? いや、煙出るのはまじぃか……あー、あれだ。あれ使うか……」
 
しかし、目下の問題がある。最奥にある外に面する窓を開いても、臭いが抜けないということだ。
風通しの良さを確保した処で、此れは抜けなさそうな気がしてならない。
一部の冒険者御用達の臭い消しを“焚く”か? 特に悪臭を振りまく魔物相手で、必須と云えるものは己もストックしている。
此れが想像以上に馬鹿にならない。忍び歩きの際、匂い消しは何よりも重要である。
風上風下を把握し、標的に匂いを伝えないようにする努力はしているが、そもそもの匂いを消せるならば、どれだけ負担が減るか。
問題は手持ちのひとつが焚いて生じる煙を浴びる形式、であること。建物内でそれはまずい。火事と誤認する事態は危険だ。

「……高かったんだぞ、これ」

だから、ではないが、もうひとつの備えを持つ。備えは大事だ。火を使わない錬金術的に調合された薬だ。
羽織の下、腰裏に付けた雑嚢から取り出す切子細工の硝子瓶を一瞥し、ちゃぷりと揺れるその量を確かめる。
数滴垂らせば、永らく腐乱死体が放置された部屋であろうとも、匂い/臭いを消し去れるという謳い文句の代物。
煙を焚けぬ状況に備え、秘蔵していた高価なものをここで使う羽目になるとは。
嘆息と共に栓を抜き、銀色に光る液体をひとつ、ふたつ垂らせば――床で弾けた瞬間、ごっ!と風が吹いたような心地を得る。
爆発的な勢いで急速に揮発するものが、臭いという臭い、匂いという匂いの悉くを飲み干し、相殺して、消えてゆく。

影時 > 「……ンンンンンンンンンン-、ぷはぁ。あぁクソ。
 高い買い物だった分だけ、スカっとして清々したぞぅ。あと何回使えるかね此れ……」
 
魔法のアイテム、錬金術の産物の効果が値段に比例する――かどうかは分からないが、効果は覿面。
内装や安置されていた品々等、こびりついていた匂いがこそげ取るよろしく、消えて失せる。
己が着衣や髪に付着していたとも思える悪臭もまた然り。
万事魔法任せというのも安直にしても、手間を金銭でどうにかできるなら、寧ろ安いものという見方も出来なくもない。
とは言え、残量、回数制限がある虎の子、とっておきを使ってしまったのは事実。瓶を雑嚢に仕舞い、息を吐こう。

「ナニは兎も角、ラウンジやら空き教室やら使わずに打ち込める場が出来た――と思えるだけマシかね」

多岐にわたる“準備”で使われていたようだが、わざわざこうするメリットも理由もある。
作業場が欲しいのだ。手続きに関する書類、話し合いは職員室で事足りるが、集中して作業をするための環境が欲しい。
そう考えていた時に、交換条件よろしく受け取ったものは渡りに船であった。
鍵は複製ではなく恐らく正規のもの。添えられたメモ書きはこの準備室の所在地と関連する手続き、作業の但し書き。

見違えるようにすっきりした空気は、外気のそれと全く変わりなく。遜色なく。

奥の机の方に歩み、椅子と机に薄く積もった埃は……払うとくしゃみを催しかける。これはまた、改めて掃き掃除でもしよう。
椅子の埃を払い、腰に差した刀を外してそこらに立てかけ、座る。悪くない心地だ。

影時 > 「……おっといかん。早々に手続き済ませに行っとこう……」

椅子の座り心地が良すぎるのは、一長一短である。どっと寄せたような疲れにぼんやりしてもいられない。
裏の手を尽くしてどうこうよりも、真っ当に手続きを済ませておく方が色々な意味で後腐れがない。
前の使用者が何か善からぬもの、胡乱なものを残している可能性もある。
返却忘れの書籍を確かめるついでに、確かめておこう。そう思い、椅子を立つ。

さて、何処から探り当てたものか――。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院/準備室」から影時さんが去りました。<補足:身長185cm/黒髪/暗赤色の眼/不精髭/白羽織+暗色の着物と濃茶色の袴、黒い襟巻/刀>