2025/08/17 - 22:10~01:29 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 平民クラス 教室」にオズワルドさんが現れました。<補足:ラジエル学院の制服>
オズワルド > そんな、行き来の途絶えた廊下に響く足音。
とた、とたとた。そんな小走りの足で教室の方へ近づいてくる。
「えーっと、この教室だっけ。」
廊下から聞こえてくるそんな声。
直後、がらりと扉が開いて。
「居残りの人、まだいるー? 先生に様子見てこいって送り込まれたんだけど。」
そんな声と一緒に、黒い肌と赤い瞳の男子生徒が、教室の中を覗き込んでいた。
そう、音を上げている姿を見てしまった。
「…うわぁ。」
感想:うわぁ。
サリス > ゆらあり。
緩慢な仕草で、幽鬼と化したような非常に縁起悪い顔つきをした女生徒が。
不意に開く扉と掛けられた声に死んだ魚の眼差しで振り返った。
「……………様子………?」
只今絶賛ギブアップ中。
そう報告しに行くしかない。
自分的な感想は『うわあ。』です。と付け加えてもいい。
「御覧の通りですよ……ふふ。さぞ滑稽でしょう。ドン引きですか?そのご面相は。
久し振りになかなか見ねえタイプの莫迦を見た感想は『うわあ。』ですかそうですか。
語彙は少ないご様子ですね……」
うわあ。しか言っていない彼に滔々と無表情にて。抑揚もない淡々とした声。
それはまるで本当にあの世の住人の如く生気のなさ。
オズワルド > 「うわぁ、幽霊の方がもっとましな顔してるな、っていう。うわぁ。」
言葉を少し付け足した。
付け足さない方がマシだったかもしれない。
ともあれ、まだ、との言葉には、教室の中にはいり、後ろ手に戸を閉めてからそちらの方へ歩み寄って。
「だからバカとは思ってないかな。
実際何でそんなに苦戦してんの?教えようか?」
近くまで来れば、前の席の椅子をがらっと引っ張り出して、逆向き――椅子の背の方を向く形で座って、其方の机の上を覗き込む。割と強引。
覗き込んだ先の問題文に、ふむふむ、と目を通して。
「こことここの数式の意味、分かる?」
指先が数式の一部を、切り取るように円で囲んで見せる仕草。
サリス > 「………でしょうね私もう死にたいですもん」
高々イノコリが長引いただけで死にかける――気合の入った莫迦。
声も幽鬼の様な生気の薄さ。
死人と思われてないだけ、彼は見る目があるのだろう。
ていうか諸共せずそのまま入って来て近づいて来る神経の太さに脱帽だ。
普通の神経だったら――逃げる。即回れ右の筈だ。
「これから莫迦と認識が深まっていくでしょう……。
理解した上で莫迦にされる……辛い、死にたい。
………教、え……正気ですか?」
普通に前の席に座った。こちらを向いて書き直した後はたっぷりある白紙の問題文を見つめる貌に。
最早……頭いい上級生か。
混迷する愚者の前に賢者が遣って来た。
そんな事あるんか。
「……………解ってたら、自力で解けてますよ……。
私は足せます、引けます、掛けれます、割れるかも知れません……という四則演算さえ微妙に妖しい17歳ですよ。
どうだ畏れ入ったか」
畏れ入らせてどうするのか。
つまり、解りませんすみませんとの返答を長ったらしく垂れた。
オズワルド > 「…しゃーないなー。」
この生気の薄さ、そして今年の夏の暑さを思えば、少し考えた後、ポケットからハンカチを取り出して。
小さく呟いたのは、水の魔法の発動音声。
とはいえ発揮される魔法は簡素なもの。ちょっとハンカチを、ぬれハンカチに変えるだけ。
「正気を疑われた人からひとまずこれプレゼントね。
顔拭いてすっきりしな? ひどい顔だもん。 暑かっただろ。」
ほい、と差し出したぬれハンカチ。ぺち、と相手の頬に当てる。ひんやりするよ。
「わからんかー。
しょうがないな。オレが言うとおりに解答欄を埋めるといい。自力で解けるようになるのは時間をかけるのだ。
先生に何か言われたら、超絶頭のいいオズワルドに教わったから何とかなりましたで押し通せ。」
顔拭いて落ち着いたら口頭で言うからなー、って。教師役どころかカンニングペーパーになりにかかる。
四則演算から教えるのって、面倒だし…。
サリス > 「しゃあない言われた……鬱だ死のう」
大変しょうもない事でうっかり死にたがる。
どこまで死にたがりなのか。
厭世的の塊のようなツラした女生徒に……
ひやっとした濡れハンカチが押し付けられ。
「……ひゃっこい。
なんですか、その運動部の女子マネも顔負けなコミュ力……怖い。
コミュ強陽キャ出た……怖い。陰キャは融解させられる……」
自他ともに認められる陰キャは。
急な陽キャの出現にコンフュ状態を極めた。
顔が冷たい。でも行動が急なので引く。陽キャ怖い。
「解ってたらまず、そこは何かしら其れらしい式でとっくに埋めてますよ……
えぇ……それ絶対バレる奴ですよね……
オズワルド……先輩? じゃあちょっとその脳細胞に期待して……こう、微妙に考え方間違ってるな……でもギリで可とするか……的な小細工も希望します」
ズルしてでも私はこのイノコリから逃れたい。
だから先輩のインチキには全力で頼っておく。
頼みごとをする様な誠実さは欠片も見えない、終始無表情の鉄面皮だがそこは仕様である。
オズワルド > 「だってしゃーないでしょ。学力が低いのは。
うりうり、ちゃんと自力で拭かないとオレが拭くぞ。」
陰キャが混乱したのをいいことに、陽キャ(他称)攻める。引いた子の顔を濡れハンカチで拭ってくれる。
ぐいぐい、すりすり。頬から鼻筋からおでこまでひんやりさせてやるぞ、おらっ。
「バレても良いんだよ。少なくとも、正解は教わったって教師にもわかるだろ。
中途半端に間違ってる方が、追加で課題だされて面倒なことになるんだ。お前これで正しいと思ってるなら間違ってるぞ、ちゃんとやれ、って。ソースはオレな。
だから教えるのは正解だ。かわりに、解くのに試行錯誤したって言う練習っぽい数式の書き方は教えてやるからそれも書け。」
苦労して正解したっていうそぶりを狙わせていく。
狙わせていくけど、顔はひんやりさせにいく。ぐいぐい、ふきふき。
「オレ18だけどそっち何歳? 後名前教えて。」
サリス > 「っふ、っく、む゛……っ
陽キャ…の、進、行……怖、い……
なんですか、この強引な生き物……どこの世界の住人……陽キャ国怖い……融ける……」
問答無用でついにぐいぐい拭かれてる。
うむぐむ言いながらきゅっきゅされた。
お顔がさっぱりひんやり綺麗にはなった……でもお肌荒れそうな拭い方だ。
肌荒れなんて意に介さない低層民ではあるが、それにしても男子は……力強い。
「正直言ってることがよう解らんものの。
愚者は賢者に従っておこう……鵜呑みにして全部そのまま書こう。
何かあったらこの人を呪おう。デバフだけは得意な私」
教師にこれ、お前微塵も考えてないだろ、と叱られたら全部オズワルド先輩の差し金です。と即親切な先輩を売るつもりだ。
その上で呪詛もかける。
数学はさっぱりだが呪術は陰キャに適性過ぎてそこそこ扱える。
言われた通りに書き出そうと筆記具を握りながら……拭かれているので顔がまあまあ歪んで時折変な顔になりながら。
「17……サリスです。なんか上級クラスで見た様な気がしますから先輩でしょ?」
オズワルド > 「オレくらいで怖がってたら世の中渡っていけないと思う。」
思わず真顔にもなる。この国で押しの弱い男とか、生きて行けるのだろうか。オレにはわからない。
つまるところ、この融けている女子も大丈夫だろうかと心配げになる。
ぐいぐい。肌荒れより熱中症の類の心配が強いから、まずは顔を冷やすのが優先だった。
ある程度拭い終えたら、ハンカチを持つ手が引くから、まあプリントに数式を書くくらいは問題なかろう。
「簡単に言うと、不正解書いて出したら追加で宿題出されるぞ、以上。」
簡潔にまとめた。
「今日から呪われたらお前の仕業としてつけまわすからな、サリス。お前覚悟しておけよ。
まあ17なら1個下の後輩かね。 んじゃサリス。 オレが口頭で言ったことをそのまま書くように。」
とばっちりが飛んでいく可能性が生えて来たが、それはそれとして。
ここに書け、と回答用紙の一点を指さしてから、口頭でかいていく数式と、回答の数字を告げていく。
問題は、口頭での数式の説明に対して、どのように数式を書くか理解できるか、なのだけど…。
手が止まるようなら、ここはこう、と回答用紙の上に指で書くそぶりをして見せることもあったかもしれない。
まあ、そんな時間が20分くらいも過ぎ去れば、問題なく回答用紙は数式できちんと埋まるはずだ。
サリス > 「なんで生まれてきてしまったのか。私は生けるバグ……」
世の中渡っていけてないから、今とんでもなくイノコリして……死にぞこなっているのである。
瀬戸際でなんか、賢者が使わされたので。
そういう世界のシステムのお陰でどうやら今日は生き永らえそうではある。
明日は明日で死にかけるだろうが。
ふいー…。
ひゃっこくなった貌。熱せられていた頬から赤みが消えて落ち着いて。
一瞬解脱した様な面相が浮かんだ。
「ギリ正解なラインで一つどうにかって企んだんですけども」
国語の文章問題ならともかく数学では無理だったくさい。
ふう、と息を吐き出しては。
「ええ望むところですよ、どっからでもかかって来なさい。壮絶に死んでやる。
イエス先輩、………ぇ、ちょっともうちょっとゆっくり……スロウスロウ……
……どう書けばいいんですかそれ? 書き方判りません」
人を呪わば穴二つ。業くらい背負えないで人を呪えるか。
但し、返り討ちにすると思いきや、トラウマレベルで死んでやるからなぁ、と逆脅し。
しかし、それはそれ。先輩の指示には忠実に従う……つもりではあるけれど、書き間違っているし言ってる事は良く分からないし。
書き方が解らないと莫迦をとことんフルに発揮して先輩の堪忍袋を刺激しかねなかった。
指の動きを真似たらちょっとは筆記に耐え。
残念だが。20分で収まる訳がない。30分は超過して先輩の貴重なお時間を食いつぶすのだ。
オズワルド > 「目と鼻と口と耳と手足が2本ずつついてるから人間だろ。
現実逃避しないで手を動かせ、手を。」
ここ間違ってる、とか指摘しながら進む口頭での数式の教授。
顔色は多少マシになったようで、その点については、ほ、と一息挟む間があったり、
「面倒だからヤダ。
後、お前が後で見返して勉強する気があるなら、普通に正解した方がわかりやすいだろ。
なので、疑われたらお前がちゃんと説得力出して教師を説得しとけ。」
数式を教える合間に挟まる会話は、此方の口の休憩時間。相手の手に休憩を与えるような優しさはなかった。
「いや、殺したりするわけないじゃん…それよりもっとヤることあるって。」
ナニとは露骨には言わない優しさがあった。
スロウを願われれば多少スロウにするくらいの優しさもあった。
問題はスロウにした結果、30分を大幅にオーバーする時間がかかったことだ。
「お前…ちゃんと勉強してないタイプのバカなんだな…。」
しみじみとバカにする。17まで学院に通ってこのレベルは、ちょっと…うん。
いろんな意味で、優しい物言いができない…。
「まあ、いいか。で、とりあえず出された課題はこれで終わりだよな? もう一枚ありますとか言われたら、流石に見放すけど。」
サリス > 「人類かどうかというのを論じている訳ではないんですよ。
現実を見据えた上で明日が見えないという……ちゃんと書いてるでしょ、スパルタ」
懇切丁寧に答えを教えてくれるスパルタなんて存在しない。
ちょいちょい間違っていはいる。どう間違っているのかが分からないので「?」と疑問符を浮かべて顔色を窺った。
「今教えてるのは面倒じゃない訳ですか?
そういうもんですか。もう今見ても後で見ても自力で解る気がしない。
先生が女性じゃなかったらなぁぁ……」
裏取引が成立しない女教師であった事が此度の敗因であった。
はあ、と溜息をつきながら。かりかりと手を動かして。
「殺されたりする訳ないでしょ、見た奴の後々の人生に影響するような自決してやる」
露骨に他人を抉る積極性に関しては自信しかなかった。
ゆっくりじゃないとどうにも進まないので強制的に時間を食わせた。
「した上でこれですよ……授業が私を置いていく……
いつの間にかこんなに遠い世界まで来てしまった」
出来てるかどうかは措いといて授業にはきちんと出席して一番前でしっかり聞いた――上で何一つ理解できないという。
奇跡的にいかれた知能の持ち主だ。
但し、ここまで壊滅的なのは数学に限る。が、数学は必須単位である……出来なかったら落第だ。
「……もう一枚あります。ちょっと待っててください。然程時間はかかりません……」
と、課題が終了した後に取り出したもう一枚の用紙は教師からのものではなく。
白紙のメモカード。
クラスと名前と日付が書いてあり『借証書:貸し一つ』そう書いた小さな借用書を差し出して。
「この度は大変お世話になりました」
律儀に折り目正しくきちんと頭を下げて礼をする……最低限の常識くらいは弁えてはいたらしい。
オズワルド > 「サリス、お前が見るべきは明日じゃなくて、今日出された問題を出せるようになるための、過去だよ。
後これはスパルタではなく、たいへん情に厚く素晴らしい教導と言います。」
間違っている部分に対して、ここはこう、ここまでの一連の数式をこれこれこう言う、とか。細々教えたりもした。
ちゃんと教えているのだ。君が覚えているかは別問題だが。
「思ってたより面倒ではあったな。
裏取引で成績ごまかしてたら、そりゃ詰まるよ。
…とりあえず面倒な奴なのは理解したな。ちゃんと生きないとオレの苦労が水の泡だから、しっかりせい。」
呆れたように肩をすくめながらも、告げる言葉の勢いは緩かった。本気だとは思ってない。
とはいえ、面倒だったのは事実である。
「そうか…完全に勉強できないタイプのバカか…。生きるの辛そうだな。
しかし、こう。」
うーん? と首を傾げ。
「不器用だね、お前。」
そんな結論に落ち着いた。裏取引がアリなら、それこそそこらの男子に持ち掛けりゃよかったものを。
自分一人になって、オレみたいなやつに声をかけるまで向き合ってたのだというのだから。
不器用以外の言葉がさっぱり浮かばなかった。
「ん? もう一枚?」
終わったにしても終わらなかったにしても、帰ろうかな、と椅子から腰を上げたタイミングだった。
もう一枚を差し出されたのに、ぱちりと一つ瞬いてから、受け取った。
「…はい、どういたしまして。 貸し1ね。
――まあ、サリスに何が出来るかわからないからどう返してもらうかも不明瞭だけど。
ちょうどいいから、先生に提出しに行くまでの間に何かできることあるのか教えてよ。」
言いながら立ち上がり、椅子を元の位置に戻してから。
行こうぜ、って手招いた。
サリス > 「過去は振り返らない主義なんですよ……取り敢えずお前と言うのはやめてください。名乗ったんですから。
自分で言ってれば世話ないですね」
教えてもらってる分際で偉そうなやつもあったものだが。
一応は神妙な貌をして頷き、真面目には聞いている。良く分からないけど努力はしてる。
実を結ばないので無駄な努力が多々だが。
「あなたも良く絡む気になりましたよね……よっぽど暇なんですか?
ある種の処世術ですよ……知能だけで世の中を渡る訳ではありません。
なんであなたの苦労に報いるためにちゃんと生きないといけないんですか。
私は私の為に全力で自堕落しますよ」
何を堂々と宣言するのかだが。
質の悪い事に真顔だし真面目だ。
後ここまで関わるのは……根気があるというよりも……そっちはそっちで変な人であると思った。
「ほらやっぱり莫迦ってなる……あぁ、なんでまだ息の根あるんだろう。生き地獄」
大仰に嘆くも欠片もダメージを追っていなさそうな始終淡々とした調子。
基本…言ってるだけなフシはある。本気も交えているのがさらに厄介だが。
「お前じゃない、上級生でも許しませんから」
不器用かどうかって点よりもそっちらしい。
眉根を寄せて改めるように苦言した。
けれどそれとは別に義理は通しておく。人として。
「お疲れさまでした」
と頭を下げて、実際助かったのだから借りだ、と借用書を進呈して。
これでまあ、取り敢えず今回の件は終了だ。
借用書については出来れば使わずに忘れておいてくれたら儲けものではあるが。
「…出来る事……デバフは得意ですよ。気に入らない奴がいたら代わりに陥れましょうか。
呪いについては適性がありますので……」
そんな縁起でもない事を語りながら筆記用具など机に並んでいたものを片付けて鞄に収め。
不正解答書をしっかり持って立ち上がり。
それで誰を呪います?と呪術師みたいな事を聞きながら職員室へ向かうのである。
その頃にはいつしかとっぷりと日も暮れていたとか。
オズワルド > 「はいはい、サリスね。サリス。
正直言って、自堕落するだけならわざわざ残る意味ないじゃんね。」
自分のためにと語る様子にこそ、自分以外の誰かの影を感じるのは、オレの気のせいだろうか。
何で構うか、その言葉には答えなかった。なんでだろうねと、意味ありげに笑うだけ。
そうして、肩をすくめながら、のんびりと歩き出す。
「そりゃ呼吸してるからじゃないかなあ。
学校の中で息継ぎできてる?だいじょぶそ?」
淡々とした調子に聞こえるから、こちらも深く考えることなく。心配の言葉も軽いもの。
欠片も本気に受け取ってないあたり、心の本音は通じてないだろう。
ともあれ、受け取った請求書は胸ポケットにしまい込み。
「なんだろう、自分で陰キャって言う気性に合った得意技能に逆に驚くんだけど。
デバフ、デバフなあ…。まあ今のトコ考えつかないから、浮かんだら言うわ…あ、対魔法レジスト低下させれるならやってみたいことはあるな。」
なんて、呪いについてどこまでやれるか聞いてみたりする一幕もあったりしたが。
ひとまず、今日という一日は終わる。
なお、本日様子見に来たのは、女教師相手にセクハラ発言したからその罰則であったという現実も職員室で判明するのだが。それはただ余談であった。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 平民クラス 教室」からオズワルドさんが去りました。<補足:ラジエル学院の制服>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 平民クラス 教室」からサリスさんが去りました。<補足:癖のあるミディアムの灰青髪、ライトオークルの肌、紫藍の双眸,制服>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」に影時さんが現れました。<補足:身長185cm/鴉羽色の髪/暗赤色の眼/白い羽織+暗色の着物と濃茶色の袴/刀/~長くて2時位まで>
影時 > ――本を読もう。本を探そう。あるいは読ませろ。
学院の生徒だろうと教師だろうと。読むという行為と無縁ではいられない。読み書きは学びという行為の双輪故に。
夏の季節に出された課題を兎に角急いで片そうと、朝からあくせくする生徒たちの姿が在れば。
一気に返却された書物の山を、元の書架に戻そうと目まぐるしく動く司書の動きもよく見える。
もちろん、そうでない者も多いことだろう。涼を求めてきた生徒も教師も居れば、学びとは関係ない不埒に耽るのも。
さて、自分達はどうだろう。
学んでも学んでも無駄になることはない。些細なことでも頭に入っていれば、思わぬことで役に立つことも多い世の中だ。
だが、己よりももっと、学びを得たいものが二人、否、二匹居た。
夏場の王立コクマー・ラジエル学院の図書館。
昼下がりを過ぎた後の片隅のテーブルに、幾つかの書を置き、書見台を据えた男の姿がある。
卓に鞘に納めた刀を立てかけ、ぺらり、ぺらり。書見台に置いた魔法の教本を捲るのは、魔法を覚えたいから、ではない。
「……次のページに捲れ、とか言ったのはお前さんらと思うが、なに、戻せって?」
一枚捲ったページを戻せ、とばかりに尻尾を振る者達こそが、妙に欲するからである。
卓の上に寝かせたノートの上に、ちまっとお座りする毛玉めいた二匹のシマリスとモモンガだ。
飼い主らしい男の着衣によく似た、白い法被を着た上で頭に黒いとんがり帽子を被り、魔法使いに扮した彼らは勉強熱心である。
教本とは言え、魔法書を読めるのか? 読める――のだろう。二度左右に振られたシマリスの尻尾が示すのは、ページを戻してほしいということか。
指図どおりにページを戻し、改めてその記述を読み込み直す。
男は魔術師、あるいは魔法使いではないが、魔法の何たるかを知ることは、決して無駄ではない。
修羅の巷を駆け抜けるには、ただ武技に長けるだけでは立ち行かない。魔法もまた、時に相対するものの一つなのだから。