2025/09/14 - 19:29~21:39 のログ
ゼオン > 「いやぁ、噂通りってかほぼほぼ事実よ?
 ドラゴンだろうが弱けりゃ同じだしイキり散らかしてる魔族も理解らすし。
 食いたくなったら食うし。

 でも場の空気って握るものだけど壊すものじゃねーじゃん?
 何より本は大事よ。知らない場所に連れてってくれるし知らないことを教えてくれる。
 魔術書とかは、当たり前のこと書いてるだけでつまんねーけどね。」

返ってくる言葉は全てを肯定、その上で踏み越えるのだと。
そして、書物と言う存在に見せる敬意。
捉えようによってはこの世の大半は書物にならなければ価値がないとでも言うようなある種の傍若無人さを隠しもせず。

「正直俺はあんたが噂通りじゃないって思ってるからね。だから面白くねー。
 ……つかよ、噂通りに色々見てきたけど、……ここにある噂の本、本当にあんたが書いてんの?
 少なくとも本の中のあんたと今話してるあんた全然ちげーんだけど。」

素っ気ない。行為の一部始終を書に起こす、そこに心情も汲み取り書き記せるなら、
目の前の反英雄が素っ気ない、というより噂とかけ離れた印象なのは
噂に聞き及ぶ彼の判断基準、面白いか面白くないかでいえば、面白くないからだと。

「あんた噂通りにヤらせてくれる、ノリノリで体験談を書き起こすイカレた痴女ならクソほどおもしれーからヤるし胸も最初から鷲掴むよ。

 でもそういう感じが全然ねーもの。まあつーわけで紳士とも違うよ俺?
 そも気分次第で生きてんだしあんま油断するとマジでカグヤのこと食っちまうよ?
 ま、カグヤのことは興味あるし色々確認して回ったけどさ。」

嘆息一つ、それでも椅子を勧めてもらえれば悪いねと言葉を返して
案内されるままにテーブルへ、いかがわしいことをするにも困難な配置へ腰を据えて。

「恰好は気にしねーし似合ってるからいんじゃね? 普段の恰好もぐっとくるけど。
 そういやそれこそ飾ってるだけの奴等が大勢こっちから歩いてくのはだいぶ前に見たけど、
 なんでカグヤだけ一人でここにいたんだ?」

貴女に興味はある。だが、先に帰って行ったものには目もくれず、というより一切興味が湧くこともなく、
強いて言うなら、ムラついた時なら手を出す都合の良い穴ぐらいにしか、顔も見ないで扱うぐらいだろうかと内心思いながら。

カグヤ > 「豪放磊落でもあり傍若無人でもある、かしら?
そうね、想像の世界や他人の人生。知識の結晶に様々な視点の歴史もそう──。
きっと、貴方の人生も、書き記してみたら面白い物になるわ。」

英雄色を好む。冒険譚と色事は古来より好まれる要素の一つ。
彼の敬意に笑みを浮かべながらも、書物として形に残る、それ自体経緯はどうあれある種の証と考えれば彼の考えにも同調できよう。

「あら……、だって貴方は本を持って来て居ないでしょう?
──貴方は、どんな私に──惹かれたのかしら?どんな私だったら……嬉しかったの?」

彼にとっては、面白みの欠片も無いかもしれない。
その身体はあくまで、向けられた欲望を受け入れる器のようなものだから。
だから、どんな女で在って欲しいのか、そのための差し入れる『本』という媒介。
色狂いであることは否定はしない。勿論自ら書いている事も──。
そして、彼の調べがついているならば誰かの所有物である事も、その伝手で今此処にいる事すらも。

「ゼオン君──貴方の読んだ本は全部、在った事。 此処に在る私も、本の中の私も……。
ただ──そうね、貴方程強くないから、そこまで自由に生きられないわ。」

自ら、誰彼構わず誘惑するという事は無い、そういう意味ではノリノリとは程遠い。
けれど、その筆が乗っていなかったどうか、それは読めば自ずとわかる話で、彼の感想に任せる事となるのだろう。

「油断──、そうね。食べてくれるのなら魅力的な、貴方らしい牙を見せてくれるといいのだけれど。それとも、爪かしら?本だけでなく、私に刻むような──。」

ふふ、と笑いながら彼へと椅子を勧める。腕を伸ばせば触れる距離、しかし手中に収めるには聊か遠く邪魔がある。
彼が腰を下ろした後、自らも元の椅子に腰を下ろせば、彼からの問いかけに、あぁと散らばった資料をまとめて。

「下期の新刊をどうしよう。ってそんな話をしていたのよ。予算の按分もね。 で、あとは貴方の気遣いと同じ。
良からぬ噂をたてられたくないのよ、皆。 だから、片付けを押し付けられて私を残せば、ね?」

誰も角が立たないし、身内で疑い合う事も無い。整えた資料をテーブルの隅に置いた所で。
結局村八分である事を話しても尚、それは取るに足らない事というように小さく笑って。

「でも、お陰でこうやって、噂の君とお話する機会が得られたのだもの。悪い事ばかりじゃなかったわ。」

ゼオン > 「他からすれば俺の人生面白可笑しく思えるんだろうし楽しいと思えるんだろうってのは、
 分かるけどなぁ……。
カグヤって、ずっとエピローグばっかの物語って面白いと思うか?
 周りからすれば盛り上がってるかもしれねえけど、俺の中には事の起こりも、盛り上がりも、達成感もねえのよ。
 何でもできるからな。何でもできるから、何もねーの。この国に来る前まではな。

 だから俺は最初から全部出来るわけじゃないのに挑む奴は誰でもすげーと思うしおもしれ―と思う。
 本の英雄は、賢者と呼ばれた方達は、そういう人ばっかだしな。」

人は成し得て後の世に英雄と語られ、書物に記され、語り継がれる。
では最初から英雄として全て持ち合わせていれば? 疎まれるか蔑まれるか評価されないか。
人は同じ人だから偉人と呼ぶ。英雄と呼ぶ。
最初から人でない者は、人を越えた者は化け物としかみなさず、そして化け物は歩くだけで人が障害と呼ぶものを更地にしてしまうだけなのだと。

「今から惹かれるのかもしれないしどういうカグヤなら嬉しいのか考えるのはこれからじゃん?
 今日初めて話してお互い今は少なくとも悪い感じはしないっぽいしさ。
 俺がヤるとしたら、口説きたくなるとしたら、本を挟まないで話してるカグヤでしょ普通はよ」

本を介さなければ、思慮深く、己の噂に惑わされず、こうして相対し、言葉を交わす。
胡乱にならず静粛であれると言うことは本来才能として尊ばれるべきもので。

それだけでも魅力的だが、それ以上のものをまだ秘めているのだとさえ思う。
だからこそ、本を持ち込めばカグヤと行為に及べることを、カグヤをモノに出来たと履き違えている手合が多く、
その噂のせいで全容が見えないのが不快である。
ある種、男の中では貴方は後に物語に記されるにたりうるかもしれない一人で。
あるいは、どこか異国で王に一人語り部として挑み千夜を越え果たしたという才女と重ねているのだろうか。

「少なくともあんたは俺を読み取ろうとしてる。己の目で、耳で、言葉を交わして、触れて分かるなら、だろ?
 書物に大事なことは、都合の良いことや嘘を書かないことだ。
 クソみてえな雑魚が都合よく書き記したありがたい言葉が広がるだけ国は歪む。
 それが長く残れば猶更だ。

 でもあんたは、あんたの書いた本は、芯が通ってる。
 たとえ本を介しても、ありのままを書いてる。だから本を持ち込んだ相手の望むとおりにするって噂も本当なんだって整合性が取れるほどに。

 強くなくても、自由じゃなくても、あんたが書いた本は、後に残す本はそう言う本だった。
 それにあんた、多分どんな相手でも本持ってきたらヤるってわけでもなさそーだしな♪」

隆々とした反英雄が、異国の褐色肌が屈託なく笑う。
その表情が、貴女は敬意を示すべき相手なのだと言外に傍若無人な男は示して。

「新刊ねえ。あいつ等もちゃんと仕事はしてんだな。
 ……けっ、噂よりも後ろめたい歩き方するからあいつ等の場合はまとわりつきやすくなるだけだろうに。
 あいつ等人の顔色ばっか窺いやがって何の色もありゃしねえ。

 ……ま、カグヤがそう言うなら俺も悪い気はしないけどな。
 俺もやっぱ、あんたは流されるだけじゃないイイ女だって感じられたしな」

料理も、宝石も、それそのものもだが、飾り立てる為の器も重要なのだと理解するものは少ない。
本を持ち込み受け入れられた男達は自分がカグヤの魅力を引き出してると思うのだろう。
その器が、内側が元から魅力で輝いてるからこそ人の欲望を駆り立てる内容が映えると言うのに。

「牙か爪ってより、筆じゃないか? カグヤに刻むなら、今のカグヤが歪まないようにどうしたためればいいかは悩むけどな。」

それとも、と、腕が伸びる。指が絡むなら絡めもしようか。

「本も持ち込まない、噂を当てにしないような奴に刻み込まれて歪みたいって言うなら
 カグヤがどう変わるのかは考えればすげえ面白そうだけどなぁ……♪」

本に従うのではない、器そのもの(カグヤ)を愛でるのだと。
しかし表情には嗜虐性。カグヤという器に物語を記して結末を楽しむ(を調教して本人の色めく様を味わいたい)のだと。
聡く人の心情を読み取り、書に記せる貴女なら豪放磊落な男の、なんら引け目も何もない嘘偽りない感情を読み取れるだろうか。

カグヤ > 「延々と、知っている物語を読むようなもの……かしら?
そう考えると、いくら名作であれ苦痛でしかないでしょうね……。

ふふ……、そうね、何かを成し遂げたからこそ記される人たち。
壱、でなく零から築き上げてきた者達……。
だから、羨望の的になり、数多の勇気や希望を与える存在に、自分もいつか、なんて。」

さて、最初からすべてを持ち合わせてしまえば、良くて神格化、ともすればバケモノ、いずれにせよ腫れもの扱いなのは避けられないだろう。
それが、今の彼という事になる。
そこまで悲観的でもないのだろうけれど、少しばかり彼の心情に触れることが出来たのだろうか、首を振ってみせたのは──。

「それでも、どんな存在にだって憧れを抱く者は必ず居るわ。例えそれが悪であっても、人智及ばぬ英雄であっても、ね?

ふふ、そうね──、私に話しかけるのは本を持った子が多いから。
ゼオン君みたいに『私』、と話してくれる子もあまりいないわね。
──けど、本を渡せば、その手で掴めば口説く必要もなく抱けるのに。でも……それじゃぁ面白くないのね、貴方は。」

それはとても好ましく想える。勿論、本を解して向けられる欲だって好ましい。けれど何よりも、白紙に記す新たな物語こそ、もっとも惹かれるものだから。
そこには、原作の存在しない。誰のものでもない女と男の記録であり物語に──。

「それは、ゼオン君が私に触れなかったから、私を尊重してくれたからよ? 無理やり抱かれていたのなら──噂通りに貴方の望むオンナ、になっていたわ?

……でも、こうやって──ねぇ」

彼の言葉には、頬が染まるほど、背中がかゆくなる程、とても言葉を尽くし選び、紡がれている事が伝わる。
それこそ記して残したい程に自らに向けられた評価へ双眸を閉じて聞き入った。両腕が胸の下で身体を抱くように組まれて、その一言一言に身震いをするような感覚。吐き出される息は幾許か熱を帯びた。

「本当に──、本の扱いが上手なんだから、そんな風に評されて喜ばない物書きなんていないわ。
貴方の、本に対する想いも、敬意も、とてもよく伝わってくるの──。
ふふ……えぇ、そのシーンだけ読んだ子、その瞬間だけを求める子には、悪いのだけれど。」

少しばかり悪戯めいた表情で、それはそれで噂に振られる不名誉を戴く事になった子達には気の毒だったが。

「そう言わないで?それでも私をちゃんと、こういう場から外さないで居てくれる人達なのよ。だから、ね?

それは──買いかぶり過ぎよ。流された時だってあったもの──。
だから、今の私があるのよ。」

色々な出会いを経て、関係を経て今の自分が居る。
それは一夜の逢瀬でもあり数多の本に登場する者でもあり。或いは、名も知らぬ買った主でも、そして目の前の彼でもある。

「あら、私の身体に記してくれるのかしら?」

冗談めかして彼の比喩を真に受けた物言いで返してみよう。
彼の伸ばした手が触れた瞬間、ピク、と少しだけ驚いたのか、怖気づいた引っ込んだ指が、おずおずと伸ばされて改めて此方から触れる。
そして、触れてしまえば彼の思惑の通り互いの指の股を擦る様にして絡み合っていった。

「ふふ……、ねぇゼオン君。」

その絡めた指、彼の言葉にそっと、双眸を閉じたまま、その絡めた指を解き、その手首を掴んで引き寄せる。
ズ─、ズ─、と椅子がわずかに引きずられる音と共に、前のめりになった身体。彼の手にニット生地に覆われた柔らかな質感が押し当てられる。
テーブルの端、身を乗り出した距離はもう、何かを阻む程のそれではないはずで……。

「私に──、ゼオン君を、教えて? 私が、貴方の物語を書けるように。しっかり──私の身体に、記して?」

そう、閉じた双眸を薄っすらと開き茶色のそれが彼の金色を覗き込む。
その茶色には薄い水の膜に覆われたような揺らぎが見て取れるだろうか。
唇も薄く開き、喉を鳴らすのは一体何を期待してか──。

ゼオン > 「ほんとそれ。ドラゴンとか魔族とか秘奥って言いながらすげえダブるし。
 もう5回以上同じの見たら相手が何故って言う前に黙らせるし。
 本ってさ、ワクワクするとか知識を得て頭がさえていくとか、読了感も大事じゃね?
 なかったんだわ。ま、この国に来てからアニキにボコボコにされて面白くなったけどな。」

 傍若無人の塊が敗北したことを口にする。それも嬉しそうに、楽しそうに。
 自分を化け物から、神に等しい位置から引きずり降ろして叩きのめした存在がこの国にいるのだと。

「ああ、分かってるよ。でも、俺にそう言う感情を抱く奴でも、俺に全然叶わないと分かっても
 それでも俺とつるむ奴等は俺に媚びねえ。今負けてるだけだって奴等ばっかだ。
 この国はカスも多いけど、人智が及ばぬならじゃあどうするって先を考えられる奴もいる。
 だからま、あれよ? そういうイイ女が言えること言っちゃうカグヤは現在進行形の俺の物語を楽しめてるってわーけ♪」

 その物語を読むのに必要なのは正しく見定める五感を持つ者。彼の行動の根底を理解する者。
 全てそうあれかしとする選民思想故に、この国の腐敗を見限った故に反英雄の側にいるのだと。
 悲観的ではないと思えたのは、今物語が進んでいるのだと読み取れたからだろうか。

「いやぁ、カグヤも多分乗り気なところはあるんじゃないかなって思うけど、
 こうさ、そういうスタンスもあるんだろうけど、おかしくね?
 カグヤ相手だとまず口説くだろ普通。男なら。

 立ち位置は俺にとっちゃどうでもいいのもあるんだろうけどさ、
 見た目も性格も作法も視野の広さも魅力の塊相手にさ。順序逆じゃん。」

 本を介することに忌避感は、この図書館に収められた物語からは強く感じなかった。
 そう言う本もなかったわけではないが、それ以上に、本そのものに嫌悪はない。
 なら、本そのものとするのはどうだろうかというアプローチは正解、というより、
 言い方を変えるだけでそれは本来人が紡ぐ物語としてごく普通なことで。

「そういうのは一回口説いて、ヤッて、また会って、お互い面白そうっていう共有感?
 それで本持ってくるならカグヤもそっちのほうが筆乗るんじゃね? とかは思ったりするしねー。
 そもそもじっくりカグヤのことを知らねえとカグヤがどういう本が好きかも分かんねえでしょ」

 持ち込む本はあくまで自分の願望を押し付けるのではなく、男と女お互いが楽しめるものなのだと。
 一方で、誰かを凌辱する時も男は変わらない。お互いが楽しめるところに”堕とし込む”のだから。

「カグヤは今は本、つっても、立ち位置が違えば物書きとか記し手になればクソほど手紙が来るだろうよ。
 俺がたまたま真正面から切り込んだだけよ。ま、一番乗りの役得は逃がさねーけどな♪」

読書愛好家(ビブリオマニア)の中には読み解くことで、本に没入することで恍惚と快楽を得るものもいるという。
カグヤはまして本そのもの、そして記し手。お気に召したと言うより深く浸透したのだろう。
だが、全て正当に過不足なく評価しただけだと、この世の中が正しく回ればきっと同じことを言うのだと言いながらも
艶を帯び始めていくカグヤが、それまでの静謐さから熱を帯びていく様に唇が歪む。

蕩けた雌に高揚する雄の仕草。
逃がすことなど男にとって恥以外の何物でもなく。

「カグヤも俺に似て存外自己肯定感低いところあるんじゃね?
 経緯は聞かねえけどさ。

 でもま、今の自分は、それもそうか」

自分もアニキと呼ぶ男に出会うまではずっと勝手に色褪せたエピローグを読むだけだった。
この国に来て初めて世界に色があることを知ったような感銘を得てから、尚のこと反英雄は己を得た。
紡がれ続ける喜びをお互い噛みしめられる者同士なのだと。

「記すけど、火がついたらどうなるか分かんねえよ……?
 あぶり出しとかしこんじゃうかもね? でも淫紋とかそういう”落書き”はしねえマナーある利用者だからさ……♪」

お互いの物語を読み耽る、記す、そこに性的な欲求が伴ってくれば指を改めて絡ませ合えば男もいよいよ獰猛な笑みを隠さない。

「いいけど、俺の物語記すなら、俺だって分からないように、カグヤだけが知ってることだけ書くのってどうよ……♪
 他の奴が俺に抱いてる印象だけじゃ絶対重ならねえの……♪」

重たく、柔らかい感触が己の手に押し当てられるほどに、物音ひとつない図書館で、
あろうことか司書が椅子を引きずる音を立ててまで求めてこられる。
男の理性を削ぐような”求愛行動”に顔を近づけて

「俺の物語が俺のものだって知って良いのは、読み解けたカグヤだけってぐらいになぁ……♪」

自ら近づいてきてしまった”雌”の頭を抱え込んで唇を奪う。
舐るように唾液を貪り、啜り上げる音が誰もいない図書館に響いてしばし粘膜を啜ったのちに

「……ふはぁ……♪ そういやこの図書館、貸出禁止だったよなぁ……?
 奥でしっかり”執筆”させてもらうからな?」

カグヤ > 彼が嬉々として語る敗北。それは彼に新たな物語を与えてくれたのだろうことは想像に難く無く。
だからこそ、頷きながらその話を聞いていた。
退屈だった日々に光が差したとあればそ昂揚ぶりは如何ばかりか、と。

「ふふ、ご馳走様。 やっぱり、噂よりも素敵じゃない、ゼオン君は……、しっかりお友達も居て。
あら──、私もその中に入れてくれるのかしら? 光栄だわ。」

彼の言葉の中にしっかりと、認めた仲間が居る事に心から安堵する。
そうであれば道を誤る事も、誤ったとて正しく導く光がある事を意味するだろうから。
彼が楽しそうに語る素振りが、先ほどまでの何もかもに飽いたような雰囲気からは想像もできなかったから、一学生のようなその屈託の無さに自然と笑みが浮かぶ。

「誰かに言われたけれど、年上の豊満な肉体の女性には無条件で甘えたくなるものらしいわ?
口説いて逃げられるくらいなら──ということらしいけれど。

それに──、噂の私は、誰にでも喜んで股を開く女よ? 口説こうなんて思うかしら?
それに──出会う時は、私……あられもない恰好が殆どでしょう?」

そんな噂の自分も嫌いではないから始末に負えない。そして、手順をまどろっこしいと感じるのも一定は理解出来るから、尚の事。
彼も目を通しただろう本の中には、身体の凹凸も露わな水着姿や、夜の教室での裸体、或いは用意されたランジェリー等。
用意された本、その時点で最早、そういう対象ではないと知れて。

彼の言葉は、物語の中の自分ではなく、自分で物語を紡ぐ、それ故にそもそも見え方が異なるのだと。
女体と肉欲を前にそれに抗える者はそう多くない、それ自体悪い事でもないが故に、だからこそ、女としては自らを紡げる事に喜びを感じもして。

「ふふ、ゼオン君は、そうやって──他の子には味わえない楽しみ方をして頂戴。 本当に、それは特別な事だから。
でも、本の中の理想を体現したい。本の様に好きにしたい、滅茶苦茶にしたい。そんな子も、そんな楽しみかたもあるのよ。わかってあげてね。」

そうやって、あくまでどちらも貴い事、そう諭す様に紡ぎながら。
それでは楽しめない楽しみ方を彼にはして欲しいと。

「ふふ、さて、本当に一番乗りかしらね? どうするの?もっと、私を熱くさせる人が居て、その人に滅茶苦茶にされていたとしたら──。」

まるで彼を煽るように、少し控えめに抑えた声音で囁く。
勿論彼が街に辿り着く前からの行為であるから居たとしてもおかしくはなく。
それを言葉にすれば彼はもっと、その熱を向けてくれるのではないか、そんな予感に駆られた。睦合う本が、物語をなぞった物でなかったら──、そんな疑念を持てばきりがないが。

「そう、ね──もし、どうしても聞きたくなったら膝枕でもしながら教えてあげるわ。」

自己肯定感が低い、その経緯を語って聞かせるのも面白いかもしれないと、もう過去の話でありその一団がどうなったか、今となっては知る由もないのだから。

「火傷、しないようにね? 子供はよく、火を使って喜ぶけれど── 大体、大火傷をして、しまうから。」

その跡が残らないようにね?なんて冗談めかして囁くようにその音を届けては、先ほどまでの真摯な彼の顔つきは、徐々に雌によって熱を帯びた獣の顔へと変貌を遂げてゆく。

自らの指で、声で、そして身体で夢中になる男の顔、吐息、其の全てが愛おしい。だから、絡め合う指先を軽く摘まみ、擦り上げてみせた。まるで彼のモノを扱いて見せるように。

「あら──、貴方だけの、物語にするつもりかしら? 意外とずるいのね。 でも──そうね、仕上がりを貴方の目でしっかり、確かめて頂戴。」

そう、彼の提案に楽しそうに笑みを浮かべてはその答えは諒とした。
そうして、彼の腕に誘い込まれるがままに獣の牙をその身に受ける。

「ん──、ッ…… ふ、んぅ……、」

彼の唇と、引き寄せた手を押し付ける胸の膨らみ。柔らかな唇と双丘を彼に預けながら、その唇が解放されると、とろんとその表情が、瞳が蕩けて彼を見つめた。

握り、押し付けた手を胸の谷間へと引き寄せながらその柔らかな生地に任せてその手を挟み。
そのまま彼を誘うように立ち上がる。

「本、汚したくないでしょう? だから──。」

そうして、彼を伴い誘うのは司書室。其の奥の仮眠室であるが──そこに辿り着くまで彼の獣が抑えきれたか否かは──。

ゼオン > 「つってもアホみたいな奴ばっかだけどねー。
 カグヤは貧民地区の奥のバーとか近づいちゃ駄目だぜ? 本とか抜きにヤられっから♪」

そう言う時点で気が合う友達なのだろうということは想像に難くなく、そう言う関係だからこそ彼の噂の中にある薬物売買の組織形態も組織らしい系統は存在せず。
流動的の一言。上も下もなく、ただゼオンにまとめられているのだからそれは当然で。

「誰にでも股開くのが駄目なら金もらって生活の為に股開く娼婦はアウトか?
 あいつ等の中にも目が死んでない奴はいくらでもいるもんだよ。

 んでもまぁ、あられもない恰好のカグヤは、初手それは確かに悩みそうだけどねぇ♪」

口説くのは清いからではなく、在り方故になのだと。
当たり前のように気に入った女は手籠めにするからこそ、当たり前のようにイイ女は貴賤なく丁重に扱うべきなのだと言う英傑の嗜好。

そも、多くの女を貪った男に記し刻まれるということは、なまなかな本も多く刻まれる大全めいた女にされる可能性さえあって。
何より女は抱いて当然。それは己の欲と正しく受け止めて何の引け目もないからこそ女体を前に肉欲を制御する、否、己の本質として味わう余裕さえ生まれる。

「あ、でも俺もシチュエーション決めて二人で楽しむのはわりと楽しむよ?
 てかカグヤがこれもう一度やってみたいって本とかあったりしないの?」

貴賤はないからこそ否定はしない。その上で、カグヤの嗜好を知る一環でもあるように問いかけて来る。
何なら二人で再現してみるのもいいんじゃないかと。

「……へぇ♪ カグヤもやっぱキメてくんねぇ……♪
 思うんだけどさぁ、滅茶苦茶って、上限なくない……?」

一番乗りでなくとも構わない。その代わりどこまで行けるのか追求するのも悪くないと舌なめずりをして、
しかしその挑発にはあえて乗ると言うより、それまでの涼やかなカグヤの声が
脳髄に響くような声で囁きかけて来るのだから鼓動が跳ねもする。

「ピロートークはもっと面白い話の方がいいと思うけどねぇ?」

言外に気乗りしないならいいと気遣いもする。流石に、全員が全員、自分が認めた相手でも強い者ばかりではないのだとも心得ていて。

「男と女なら火傷して刺されてぐれえが面白い時もあるけど、カグヤがメンタルやられんのはなしの方向でなぁ?」

傷が残るぐらいが面白いと言うのだから始末に負えない反英雄は己の指を扱いて更に煽ってくるカグヤと顔を近づけて、鼻先が触れるほどに至って。

「本の知識ってさ、かじった程度で知ったつもりになるのが一番危険じゃね?
 俺の本読んでさ、俺のこと知ったつもりになってさ、俺はお前の理解者だぜって言われたら躊躇なく蹴り飛ばせるまであるわ♪
 ……人が何考えてるかなんて、真っ直ぐ見てる奴が知ってる程度で丁度いーんだよ。
 ……カグヤがどうエロいのかも、こうやってじっくり確かめてからの方が面白そうだしな♪」

貪るような口づけ。象牙の塔同然の知識の宝庫で雌雄が粘膜を絡ませ合う。
その最中も手に押し付けられる胸の豊かな膨らみを手で転がしながらしばし堪能し、
ゆで上がっていく貴女が腕を引き寄せれば立ち上がって。

「汚したくないって、カグヤ結構潮噴いちゃう感じ?」

そんなことを言いながら腕に絡みついて双丘で挟み込んでくるカグヤを連れて仮眠室へと消えていく。
その最中は堪えると言うより、会話は淫蕩なものへとシフトしてカグヤの嗜好を味わう余韻を楽しみながら辿り着いて。

そこから先は、獣が解き放たれようか。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」からカグヤさんが去りました。<補足:黒いロングポニー/白のマキシマム丈ニットワンピース/>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 図書館」からゼオンさんが去りました。<補足:金髪に褐色肌。ニヤニヤしてる筋肉質のチャラ男。>