2025/10/28 のログ
セニア > 最初は恥ずかしさか、その次はさぁっと青ざめた顔で。
タオルがはだけ、前を露出したままの姿で言い訳を始めようとする彼。
そのままだと誰か来てはマズいとも思い伝えた提案に。

大人しく、というかまるで断罪されるような面持ちで隣に温泉につかる彼を見て。

―――もしかして怖がらせた?
節々を端折りすぎたせいで、完全に誤解をさせたようだ。
こちらも少しばかり気が動転していたかもしれない。

「……ふー」

一度アルカから視線を外して湯船に少しばかり身体を深く沈めて落ち着くように息を吐く。
これも見る方からすれば威圧的なものに見えかねないのだが、残念ながらそこには気付かない。

「……で、なんでこうなったの?」

少しばかりの沈黙の後、アルカの方に近づくように身を寄せ、密着するかしないかの所で尖った耳元に囁くように聞く。
幸い、今はまだ誰も居ないが、人が入って来た時に聞かせる内容ではない、との判断であるのだが。

アルカ > あれだけ一人で寛いでいた天国とは打って変わり、
恐怖と緊張だけが己の心を支配する。
繰り返す呼吸もやや不規則に、いくら酸素を取り込んでも落ち着かない。

彼女の一挙手一投足が怯える原因になってしまっている。
湯に浸かって目線の高さが合うのも、長く息を吐くのも、
僅かな時間の沈黙でさえもーー。

けれど耳元にて届けられる小声は優しさを感じた。

「 っ、ーー。
  僕が、見間違ったかも…しれないです。
  男湯と、女湯が……入れ替わった可能性も、……。 」

近い距離。今にも触れそうな肌と肌。
不意に届いた耳元の囁きに、混じった僅かな吐息に息を飲む。

始まった尋問では嘘を付かず、俯いたまま自分に非がある可能性を先に白状し。
女子のように細く白い身体を丸めて、両手は水面から覗ける下腹部を覆い隠した。

セニア > こちらの問いに誠実に正直に答えるのを見てふむ、と少しだけ目を細めて頷く。

「男湯と女湯が……ああ」

アルカの答えに合点がいく。
つまり丁度ここが男湯と女湯が入れ替わるタイミングにここにいたのだろう。
しかもここは突然入れ替わる場合もあるし、混浴になったりもする。
見落とせば最後―――可哀そうな被害者の出来上がりという訳だ。

「それは……運が悪かったかな。ここ、知ってるかもだけど。いきなり男女の湯変わることがあるから」

どういう原理なのかは、彼女にもさっぱりなのだがそうアルカへと説明し。
未だ怯え小さく丸まる姿のアルカの頭を大丈夫、と落ち着かせるように目を細めて、軽く頭を撫でる。

「大丈夫、別に私は怒ったりはしないから」

ゆるゆるとアルカの様子が落ち着くまで頭を撫で続ける。
彼の眼前にタオル越しとはいえ胸を見せつけるような姿で。

アルカ > 聞く人によっては言い訳にしか聞こえないかもしれない。
真実を述べても信じてもらえないかもしれない。
最悪のケースを考えてどうにか切り抜ける方法はないかーー

そんな悩みは彼女の言葉で吹き飛んだ。

「 変わる……あ、じゃあ本当に僕が入った後に……? 」

下向いていた顔は真相を聞いて徐々に上を向き、
濡れ髪を撫でる手に反射的に目を閉じる。

怒っていない、それどころか慰めようとしてくれる声色と手付き。
身体の緊張は解けていき、瞼を上げれば。
ーー其処に広がっている女性特有の膨らみに、絶句して頬を赤らめる。

「 あ、の゛っ 。
  ーー ……女湯に入って、逃げようとして……ごめんなさい。 」

声を上擦らせて、胸元から彼女の顔へと視線を移し。
事故とはいえ自らが犯した罪を改めて謝罪し、深く頭を下げたーー胸に当たらないように。

セニア > 「そ。私が入る時は確かに女湯だったし」

思い出すように少し視線を上げながらそう伝える。
撫で続ければ、少しは落ち着いたのか。

「えっ、あうん。いいよ、びっくりするよねぇ。男湯だと思ってたのにいきなり女が入ってきたら」

若干上擦った声に少し気を取られるが、慰めるように同意しながら頷いて。

この状況、事故とはいえほぼ裸に近い男女が近くに居る、という事実に彼女は余りピンと来ておらず。
元々男所帯で育ってきた処もあり、その辺は割とあけすけではあった。
無論、局部は出ないよう隠してはいるのではあるが。
故に、距離も近くなりがちなのだった。

「……とはいえ、問題はどうやって見つからずに―――」

と言いかけた所でぴくん、耳を澄ます。
誰かが、露天風呂へと近づいてくる音と声。
アルカにも聞こえたかもしれないが恐らく動くのは彼女の方が早かっただろう。
入り口近くにいるので、下手をすれば女湯に居てしまった彼の存在がバレてしまう。

まずい、と咄嗟に再度アルカの手を取る。

「こっち」

アルカが抵抗をしなければ、ざぷざぷと湯をかき分けて浴場の奥。
岩場が多く、死角になる場所へと手を引き誘っていき。
丁度一人ぐらいが収まりそうな所へと近づけば、アルカをそこに連れたあと、自分も密着するようにその場に収まろうとする。

よくよく考えれば別に自身は隠れる必要も無かったのだが焦って自らも隠れてしまったのである。

アルカ > 「 ……その時に、変な歌聞かせちゃったのも、ごめんなさい。 」

もう一つの恥ずかしさ、人に聞かせられない適当な歌。
完全に気を抜いていた歌唱についても謝罪して、気恥ずかしそうに微笑みを。

ともあれ、後はどうにかしてこの場から脱出する事。
幸い彼女が協力してくれるのならば、人が来てないのを確認して貰えばいいだけ。
けれど行動に移すより早く、次の利用者が現れようとしていた。
ーーその事に気付くよりも先に、手は触れ合う。

「 え、えっ!? 」

奥へと移動する彼女に手を引かれて後を付いていく。
都合良く用意されている狭い隙間、其処に押しやられる形に。
彼女越しに見えたのは開く扉と二人の利用者の女性。
それも直ぐに、女体に遮られて視認出来なくなるが。

「 …… せ、ま…っ……。 」

己の居る場所には光も全然届かず、目を開けても見えるのは肌色のみ。
手も、脚も、彼女の何処かに触れているだろうが部位までは理解らず。
吐き出す生温い吐息も、血行が良くなって膨らむ下腹部も、
届いているはず。

アルカ > ーー その後。

人の気配が無くなった頃、彼女に先導してもらい、騒ぎが起こる事なく無事に女湯からの脱出に成功した。

それからふたりが向かった場所は、 ーーー。

ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」からセニアさんが去りました。
ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」からアルカさんが去りました。