2025/10/27 のログ
ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」にアルカさんが現れました。
■アルカ > 湯に浸かるのが好きだ。静かに、夜空の浮かぶ月を見上げながらの入浴が。広い露天風呂にひとり、月夜に映える蒼髪の持ち主。湯を借りる為だけに頻繁に宿を利用する客だ。
身を清めた後に浸かり、程良く温まってきた頃に湯船の縁に腰を下ろして、血色が良くなっても白が目立つ肌を夜風に晒す。それを繰り返せば自然と心地も良くなり。
「ーー ん 、 ーー〜〜 ♪」
無意識に溢れる鼻歌、静かな場所に透き通る高い声は響き渡る。申し訳程度に腰元を隠したタオル一枚姿で、濡れ髪を白肌に張り付かせ。男湯ーーだった浴場に暫し即興の旋律を。
数分前に男湯と女湯が入れ替わった事を、彼は知らない。
ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」にセニアさんが現れました。
■セニア > バスタオルを身体に巻き付け、髪の毛を束ね温泉へと脚を運ぶ。
あれだこれだと仕事も終わらせ。
全身擦り傷だのでぼろぼろ。
とかく疲れてもいたのでゆっくりと湯船に漬かりたい、そう思っての事で。
そう思い来たのは久々の贅沢、温泉である。
折角だから楽しもうと思い、ふと露天風呂があることを思い出した。
「おー……」
滅多に来なかったがしっかりと月も見えていて風情がある。
そこでふと、声が聞こえる。
高く綺麗な声。
先に入っている者は、相当にご機嫌らしい、と。
湯気でよくは見えないが、線の細く綺麗な顔立ちをしているように見える。
まさかそれが男性とは思いもよらず。
「お邪魔するね?」
少し離れた位置からそう軽く声を掛ければ会釈して。
離れた位置にちゃぽん、と脚だけを付ける。
じわぁと湯の温かさと傷が染みるのを少しばかり感じながら。
■アルカ > のぼせないように風に当たり。
湯冷めしないように湯に浸かり。
頻繁な体温の変化、心地良く。
場内にて微かに響く、歌詞のない二度と紡げない唄。
湯船の淵に座りながらの観客一人としていない舞台は、自身が放つものとは違う音で終わった。
湯煙の中で聞こえたのは異性の声。
一度は耳を疑ったけれど、湯煙の奥の見えた微かな人影は男性の体格には見えず。
何故此処に異性が?男湯と見間違えたのか?
困惑して暫く硬直し、返事はかなり遅れてから紡ぐ。
「 ーー こんばんはぁ。
すみません、入れ違いになるかもです。 」
やや遠くに腰を下ろした女性、向けるは僅かに震えた声。
寛いでいた縁から立ち上がり、湯をかき分けて向かうは唯一の出入り口。
凹凸なく平たい胸元を片腕で隠し、不自然な膨らみがある腰下のタオルを掌で押さえ。
急げば余計怪しいから、とゆっくりとした足取りで来訪者のすぐ近くを抜けようとーー。
■セニア > 声をかければ、まあ当然ながら唄は止む。
綺麗な歌だっただけに勿体ないな、などと思うものの。
まあ人が来れば流石に恥ずかしいものであるし、と少しばかり残念ではあるが。
とはいえ向こうからの反応もなく、というかどちらかといえば固まっている、という方が正確かもしれない。
「……?」
はて、と思うものの、思わず声をかけたがゆっくりと入りたかったのかもしれないと思い直す。
悪い事をしたかな、と感じて。
そんな思考をしているうち、向こうからの声を聞けば、僅かながら動揺したような声で。
ざぷざぷと向こうからゆっくりと湯をかき分けながら前を通り過ぎようとするのを。
結果、ゆっくりとした足取りだったのがまずかったのかも、しれない。
「あ、ごめんね?声かけちゃって、いいよいいよ。私が出ていくから」
普段なら恐らく声や手を出さずに素通りさせていただろう。
ただ、鼻歌を歌う程に楽しんでいたのを邪魔してしまった、という妙な罪悪感が彼女の中に生まれてしまい。
ゆるやかに前を通って行こうとする先人の腕を掴んで、軽くこちらへ引き戻すように引っ張ってしまう。
ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」にセニアさんが現れました。
■アルカ > 居座っていた位置から扉まで、途方もない距離に感じる。
牛歩で向かう道のりは険しく、胸に当てた手にも伝わる心臓の鼓動。
出来る限り平静を保とうと、表情だけは笑顔のまま。
掛けられた優しさの言葉には若干引き攣りを見せる事になったが。
「 い え、大丈夫です。
そろそろのぼせちゃいそうだか、っ…ーーわっ、…!? 」
気を遣わせてしまった事への罪悪感、眉間に皺を寄せて弱々しく言葉を送る。
騒ぎになる前にと足取りを早めようとした際に、不意に掴まれて引かれた腕。
滑りやすい足場もあって容易く崩れた体幹は力に逆らう事も出来ず。
姿勢制御の為に暴れる両腕。
なんとか転倒こそ避けたものの、
はらり。彼女の眼前で外れたタオル。
今この場所を利用する者にあるまじき男の象徴を堂々と晒す形となった。
■セニア > 思わず掴んでしまった腕。
向こうからしても突然の事だったのと丁度先人が脚を早めようとした瞬間が重なり。
滑りやすいという事もあって体勢を崩させてしまって。
先人がそれに慌てて体勢を立て直そうと腕を振り始めようとしたのを感じ、マズいと思い慌てて細い腕から手を離す。
そうして。
はらりと外れたタオル。
最初に目に入ったのは綺麗な蒼い髪と蒼い目。
耳は尖っており、人ではなくエルフの種族なのかもしれない。
身体は細く白く透き通るようで。
「―――ぇ?」
そして視線が下に行けば。
まぎれもなくそれは男のモノであって。
一瞬両性具有という事も考えたが。
この慌てようならそれもなさそうかな、と少しばかり思考して打ち消した。
つまり先人―――彼は慌ててここから出ようとしたという事で。
故意なのかまでは計りかねるものの。
つい、とアルカへ視線を向ける。
そのジトりとした目は初対面からすれば、ともすれば軽蔑、呆れたように感じられるかもしれない。
彼女にとっては普通に視線を向けただけなのではあるが。
「……とりあえず今出るのはオススメしないかな。湯船浸かったら?」
軽くちゃぱ、と湯船の水を叩くようにして。
それは彼にとってここに留まれと強制されているように聞こえたかもしれない。
彼女にとっては、ここはもう女湯で、今外に出ても騒ぎになるぞ、と伝えたいだけだったのだが。
■アルカ > 見苦しくも支えきった身体、先ずは安堵の息を長く吐いた。
次の危機に気付いたのは深呼吸を一つしてから。
彼女を見下ろす位置関係。
此方を見上げる眼差しと一度目が合い、降りていく目線を見届けて、留まった位置を自身も見下ろす。
少ない体毛に隠された、成人男性と比べれば劣る、体格に似合う男性器が彼女の眼前。
茹だりが近かった顔は赤ではなく、一瞬だけ蒼ざめる。
「 ち、違うんです…っ。
男湯だと思って……知らなくって……っ。 」
冷たさ覚える眼差しが顔へと向けられる。
背筋に震える寒さは恥辱よりも恐怖の影響。
縮こませた身、彼女が続けた言葉にも小さく震える。
「 …… は い。 」
拒む事は出来ない。急いで湯に脚を入れてから胸元まで沈み。
両膝畳んで姿勢良く座って、これから下されるであろう罰に怯えて俯いた。