2025/12/15 のログ
イグナス > さて。どれくらい待ったか、しばらくしてようやく雨もやみ――
大男の姿は街の中に消えていって、とか

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイグナスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」に影時さんが現れました。
影時 > 冬の仕事は大体が物憂い。
冒険者の仕事に楽を求めるものではないにしても、冬の煩わしさは格別だ。
夏よりマシという意見は、珍重したい。個性は大事だ。尊重したい。
一番煩わされるのは寒さで悴む、ということかもしれない。
雪で街道を閉ざされる、行動を制限されるのは――まあ仕方がないが、防寒を怠れば感覚が鈍る。
仕舞いには凍傷で身体を損なう、と云うのは目も当てられない。故に。

「……そりゃまぁ、遠くに出かけようとする者は慎重にもなるよなぁ」

――夜を迎える平民地区。その一角にある冒険者ギルド。
隣接する酒場の一席より、この時間でも人の動き、来訪が絶えない受付カウンターの方を見やりながらぼやく姿がある。
香辛料を入れて温めた葡萄酒(ホットワイン)をちびちびと舐める、白い羽織を纏った異邦人の男だ。
黒鞘の刀を立てかけた卓上に数枚の依頼書と、つまみ代わりの食事を置き、昨今の依頼の傾向と声を確かめる。

此れが存外馬鹿にならない。

何処其処の山に出る奴はやばい、同行したあいつがひどい、といった声。この時期何何が足りなくて、という声も大事だ。
足りないものがあるなら、それを当て込んだ依頼も時間経過次第で挙がろう。需要と供給という奴である。
……地下水道のネズミやスライム退治は寒くなくていいよー、でも臭いじゃん? そりゃ仕方がない。終わったら風呂屋に行くべし。

「流石にお前ら連れては行かねぇぞ。鼻が曲がるのは嫌だろう?」

内心でぼやく飼い主の声、でも聴いたのか。机の片隅で毛繕いやら、うたたねしている小さな齧歯類が顔を上げる。
襟に白いもこもこのボアがついた、腕利きっぽい緑色のコートを着たシマリスとモモンガである。
飼い主の声にこてんと首を傾げつつ、喉が渇いたとばかりに小皿に注がれた水を思い思いに舐めてゆく。
そのさまに肩を竦めつつ、手元の依頼書に視線を落とそう。行けなくもないが少々思うものがある。それが問題だ。

影時 > 冬と夏は違う。季節に応じて植生、動物の習性が変わるのに合わせ、冒険者もまた季節に対応を強いられる。
地味な採取とは真逆な、戦闘主体、狩猟主体、討伐主体のスタイルでも影響を受ける。
雨に濡れるにしても夏よりも強く体温を奪われ、その上で雪も降り、吹雪だすと視界も阻害される
吐く息も白くなる。息で露見されないようにと思うなら、雪や氷を含んで息の温度も下げなければならないだろう。

そんな煩わさに左右されない場、活躍先として、大迷宮に挑む者も分からなくもない。
死地となりがちだがタナール砦に出張る者も居よう。昨今の騒ぎ、動きを聞く限り、気になる要件も多い。

「どうせなら俺を囮にでもし易い場ならとは思うが、稼ぎには向かねェのがなあ」

実入りを求めるなら危険地帯であればあるほど良い。
魔物や罠を躱しつつ、一人(と二匹)で潜れる遺跡の深い処なら、捨て値でも程よく捌けるものが手に入る確率が高い。
タナール砦ならば、歯応えがある敵に遭えるかもしれない。稼ぎと直結し難いが己が鍛えに良い機会と遭えるかもしれない。
仮に、依頼遂行や探索にかこつけて、己を狙う刺客を呼び込むとするなら――どの程度まで落とすべきだろうか。
それが問題だ。考え過ぎであり、自惚れが過ぎている店は否めない。
だが、昨今の動きを踏まえるなら、その可能性も捨てきれない。そんな“考え過ぎ”を呼び込む、当て込む可能性もあり得る。
何らかの動向を捕まえられば、即応可能な手駒の技量を推し量れる。だが、弟子にも説教した点を考えるといい遣り口ではない。

「正直気乗りしないが……後詰も整えた上で、攻めにでも行かなきゃなんねぇかねえ。」

この点を踏まえると、もう少し情報は集めるべきだろう。
適宜聴取と調べを進め、同時に考えられる伝手も当たっておく必要もいよいよ否めなくなる。
くい、と。ホットワインがたっぷり残るカップを傾け、ぱさりと目を落としていた依頼書を卓に置く。