2025/11/15 のログ
ヴァン > 「…………あぁ、なるほどな」

考えを読んで先手をとるのは、やりそうなことだ。同時に、男にはできそうにもない。
身体が動こうとするのは止められるだろう。だが、言葉は難しそうだ。

「他の船との連携で使うこともあれば、同じ船上で声が届かない時にも役立つ。
陸では伝令があったり距離が近かったりで使う必要がなかったりするな。
うーん、どうなんだろう。スカーフのような首への装飾品は昔から所属を示すのに使われてきた。
言われてみれば収音器はマスクのような形でも作れそうだし、隠したり目立たなくさせるために喉につけたのかも」

故郷での用途を口にしつつ、少女が急に頭に手をあてたので首を傾げる。まだ耳を隠す、という発想には至らない。
単純な船団の連携だけでなく、魔術師ほどの魔力があれば遥か遠くの国であっても通信ができる、と例を挙げて。


イヤリングを慌てて外す姿に、やはり慣れるまでは時間がかかりそうだな、と苦笑しながら呟いた。

「俺の従士として同行する際は装飾品と連絡手段は身に着けておいてくれ。
それ以外の時は特に強制はしない。一日一回ぐらいはイヤリングの色を確認してほしい、くらいかな」

屋敷では口さがないメイド達がまた何か言ったりしかねない。
メイド服の下に隠せはするものの、普段は身に着けない方が無難といえるだろう。

少女が手に持っているイヤリングを見て、思いついたことがあるのか身体を曲げて顔を近づけた。

「そうそう、イヤリングなんだが――」

少女の耳元で何事が囁く。その後、男がどうなったか――数メートルふっとんだかもしれない。

ナイト > 「海上じゃ、旗を振って伝令したりするって聞いたことがあるわ。
 それよりもこっちの方が手っ取り早いし、機密性も守れる。そう言う面でも有用ね。
 ふーん、これ見よがしな形は避けて、一応隠しやすくするためって意味はあるわけね。……趣味かどうかはアレとして」

軽く何度か頷きながら、落ち着けば変化の術も解けず、抑えておく手も不要になる。
さりげなく誤魔化す様に髪を撫でて梳きつつ。


外したイヤリングを手の中に握り込んで隠し、そっとテーブルの上の箱に戻して片付けて。
苦笑する彼から逸らしてそっぽを向いた視線が、ちらっと手元の箱に向けられ、またすぐに俯き逸れて。

「わ、わかったわ。同行する時だけね。……一応、慣れておくために練習もしとく。
 っ、え……。ま、まったく、しょうがないわねっ! 夜、眠る前には必ずチェックしてあげるわ」

箱を両手で握りながら、指示にはコクリと頷き。また、願いごとをされると耳の赤い色は更に増してしまう。
逃げていた視線は再び其方を向き、ふふんっ、と鼻を鳴らすと偉そうに薄い胸を張り、二ッと笑みを深めて言った。
少女の機嫌もこれで一先ず直ったかと思われたが――

顔を近づけた男の言葉を聞いた瞬間、少女は耳だけでなく顔、首まで真っ赤に染め上げて。

「――ヴァンの……バカーーッ!!」

男を力いっぱい突き飛ばすのだった。
怪力娘の遠慮なしの一撃は、軽々とパーテーションごと男を吹っ飛ばしてしまったことだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/宿屋兼酒場」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/宿屋兼酒場」からナイトさんが去りました。