2025/10/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 冒険者ギルド」にココさんが現れました。
ココ > 「あぁ、これはバランスがあってないですね。
剣自体のバランスは正しいのですけど、あなたのボディバランスを考えると……」

冒険者ギルドで、月一回から3カ月に一回程度のサイクルで開かれる、装備類のギアフィット。
本来、ココのギアフィットを個人的に依頼すると、駆け出し冒険者には目が飛び出るほどの料金を請求される。

だが、ギアフィットは本来駆け出しの未熟な冒険者にこそ必要だと考えるギルド長が時折ギルドが金を払って一定時間在駐してもらい、代わりに支払う金額を格安にしてもらう契約をしていて、
故に、時折こうして開かれるギアフィット会。

今は駆け出し戦士の剣を見ていて、二三度剣を振らせただけで、冒頭の言葉を口にした。
その後は、剣の握りの部分だけを一度解体して、戦士の手を見せてもらったり触ったりしながら組み直していく。

「……こんなものでしょうか。もう一度振ってみてください。
……うん、これで良いでしょう。先ほどよりだいぶまっすぐ振れていますから。」

頷いて、戦士から一日分の食費程度の料金を受け取る。
ココの本来の腕から要求される料金にすればはるかに格安。
ただ、彼女自身から営業はかけない。
必要性を感じていたり、悩みを持っていてギルド職員から紹介を受けたりして自分から来る相手だけに対応する。
そういう契約なのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 冒険者ギルド」にレグルス・ダンタリオさんが現れました。
レグルス・ダンタリオ > 時折開かれると言われているギアフィット。
いままの今まで、冒険者ギルドにはよく入り浸っているのだが。
イマイチなかなか依頼や家の都合で行く時間がなく、立ち会えなかった。
だがようやくこの日を見ることが出来た。

「……ほう」

剣を振る戦士の動きを見る。その戦士とは以前に依頼を共にしていた。
そのころから筋がいいと感じていたが、彼女が調整すればより分かりやすくなった。
バランスと重心がその武器に強く馴染んだおかげなのだろう。
感嘆とした声を上げて、青年がその組みなおすのを興味深そうに見つめて。

「素晴らしいですね……」

思わず、そう声が出てしまうほどだった。
彼女の手一つで、駆け出しの冒険者が一人またレベルアップ出来る土壌が出来た。
……同じように、自分から近づいて。

「すみません。……俺も、見てもらってもいいでしょうか?」

ココ > ギアフィットは重要性を感じたり理解したりする駆け出しが少ないのと、
一定以上になればそもそもオーダーメイドをしていたり、重要性を理解して個人的にやってくるため、ギアフィット会はそこそこ暇な時間になりがちだった。
それでも最低保証はギルドから出ているので気にしていなかったのだが、今日は珍しく一人目を終わった後ですぐに声がかかる。

「はい、大丈夫ですよ。まずは、お座りになってください。」

声をかけてきた青年をしばし見やった後で、にこやかに穏やかな表情で向けた言葉。
自分の対面になる椅子を勧めて、青年が座るのを待ってから小さく首をかしげて

「今日のお悩みは何ですか?武具、防具、アクセサリー、衣服や靴など、何でもフィッティングさせていただきますよ。」

何かやっているのを見てやってきた様子だったため、武具だけと認識しているかもしれないと、
あらゆるものが対象であることを告げて、青年が何をオーダーしてくるのかと返事を待つ。

レグルス・ダンタリオ > 彼女に促されるままに、椅子へと腰掛ける。
少し整った装いに左右の色違いの、緑と赤のオッドアイ。
耳に少しかかる程度の緑がかった黒の長い髪。
青年はかけられた声と、その持ち主である彼女に頷き

「基本的には武器を……武器以外もできるなら、靴をお願いしたいです」

まっすぐに彼女のブラウンの瞳を青年は見つめて。
自分の装備を取り出しながら、さらに口を開いて話していく。

「ちょっと特殊な事情があって、昔から扱う武器をよく壊してしまうことが多くて。
壊れないように扱う方法とか、そういう練習もしたんですが。
どうにも上手くいかなくて……ですから、出来るだけ頑丈な武器が欲しいんです。
戦ってる中でも壊れないように扱わなければいけないというのは精神的にも負担なので……」

戦闘中に、武器が壊れないように扱う。
その分だけ振るう相手への意識が落ちてしまうのが青年の悩みだった。

「靴のほうも、体幹のズレとかそういうのが原因でも壊れやすいのかもと、今思って。
どうせ気になるならそっちも……あ、しまった。
すみません、名乗るのを忘れてました。俺はレグルスです」

取ってつけたようにそう名前を言いながら。
市販の装備と、土に汚れた靴を見せる。いくつかは自力で修繕もしているようだが……。
素人よりは慣れている。という程度でしかなかった。

ココ > 自分の問いかけに青年が返してきた返事。武具と、出来れば靴、という話に頷いて

「ええもちろん。どちらも大丈夫ですよ。」

そう返事を返した後で、他の悩みの部分を話してくれる青年。その言葉をひとしきり耳にすれば

「武器を良く壊してしまう、ですか……。
普通そこまで良く壊れることはないはずなのですが、運悪く粗悪品ばかりを掴んでしまうとか、
何か別の要因があれば別ですけど……。

ええ、靴の影響もあるかもしれません。あとは、服や防具の影響とか。
バランスが通常と異なって、武器を壊しやすい角度で当ててしまうとか。
想像だけならいくらでも言えますが、お悩みも深そうですし、しっかり見てみましょう。

あ、私の方こそ失礼しました。私はココと言います。よろしくお願いしますね。」

返事と自分も名乗っていなかったと苦笑交じりに自分の名を告げてから、
まずは装備の方を確認する。
触れて、鞘を払って刀身を見たり、軽く叩いて確認したり。
それ以外の装備も一通り、チェックしていくが、穏やかな笑顔が段々と変化していく。
まずは、不思議そうな表情に。その後で、少し考えこむような真剣な表情に。
そして、ひとしきり装備を確認した後で、顎先に手を当てて少し考えこむように。

「……装備には、なにも問題ありません。寧ろ、しっかり作られた良品です。
市販のよくあるものですが、粗悪品という事はない……。
レグルスさん、『良く壊れる』と仰いましたね?
そうすると、まさにフィッティングの領域か、もしくは何か別の理由があるのか……」

考え込むような表情のままそう告げるけれど、考えるだけではわからないと判断したか顔を上げ、
傍らにあるココ自身の大きなカバンを手にすれば立ち上がり。

「もっと詳しく見せていただきたいものが出てきました。
一度、ギルドの訓練場で、レグルスさんの『本気の素振り』を見せていただけませんか?」

その表情は真剣そのものなものに変わっていた。
恐らくは、職人として本気になったのだろうと知れるかもしれない。

レグルス・ダンタリオ > 快く受けてくれるというその返事に、青年の表情に隠し切れない喜びが見えた。
いい職人、というのの紹介はいくらかは今までもあったが。
……他人より、家族からのそういう紹介がなんとなく受け取りづらかった。
それが自分のちっぽけなプライドだというのは気づいていたが。
それでもやはり、自分でそういう人を見つけたかった。

「ココさん。どうかよろしくお願いします」

そう彼女に深く頭を下げて、自分の装備を見てもらう。
彼女の表情の変化を見つつ、緊張した面持ちでレグルスはその様子を見る。
原因が自分にあるのは明白だった。だからこそ、武器をいろいろ使い、買い込んではいる。
壊してしまっても直ぐに予備を使えるようにという意識もあって。
もしかしたら最近はぞんざいに扱っていたかもしれない。
無論、無意識に武器を大事に扱おうという気持ちは備わっていたのでそういうことはないと職人としてはわかるのだが。

「えぇ、はい……自慢するつもりではないのですが。
家柄はいいので、そういうのは用意してきましたから……。
それでも、起きてしまうものなので……それがずっと悩みでして」

浮かない顔をしながら、真剣な表情の彼女を見つめる。
少し伏し目がちであるのは、その原因がわかってはいるからでありつつ。
しかし、どうしようもない事実なのがレグルスの心に不安を落としていた。

「は、はい!大丈夫です!」

彼女のその頼みを聞き、強く頷いて立ち上がる。
……若干、自分より背の高い彼女の目線に微かに驚きつつも。
軽々と多数の装備を持ち上げて彼女と共に訓練場に向かうのだった。

ココ > 自分の提案を受け入れてもらえれば、連れ立って訓練場へとやってくる。
その後で、鞄を置いて、広めのエリアを確保してから、まずレグルスに近づいて

「先にちょっとだけ、失礼しますね。」

そう告げた後で、レグルスの体をひとしきり服の上から触っていく。
軽く押したり、両手で軽く握ったり。
筋肉の付き方や、体のバランス、まるで採寸するかのように撫でてみたりと肩から背中、腕から胸、
腰から尻、太ももから脛と全てを触れ回る。

その後で、少し驚いたような表情をし、しばし自分の右手を見つめてから
今一度顔を上げて、少し距離を取る。

「ありがとうございます。それでは、素振り、と言いましたが、
目の前に、レグルスさんが手ごわいと思う相手をイメージして、
戦っているイメージで振ってみてください。
どこまでお力になれるか、という部分はありますが、少なくとも今よりは楽にはなるようにしてみます。」

そう告げてから、どうぞ、と促した。
少し奥歯にものが挟まったような口ぶりになっていることから、
レグルス自身に原因があることをそれとなく察しているやもしれないけれど、
それでも今よりはマシにする、と口にして、しばしレグルスの動作を見つめていく。

レグルス・ダンタリオ > 共に連れたってやってきた訓練場。
レグルスにとってはもう見慣れた場所である。

「はい、大丈夫です」

彼女に自分の体を探られる。勿論、そこに悪い意味はない。
全身を調べる彼女の顔が少し変わったのに気づくが、何も言わない。
それを告げる、あるいは教えたところで大きな意味はここにはない。
そもそも、それを話すのが主目的ではないのだから、話す必要はない。

ひとしきり調べた後、彼女が距離を取ったのを見て姿勢を楽にする。

「ありがとうございます。では少しお待ちください」

彼女の要望を聞いて、ひとまずはここ最近で一番新しく勝った量産品の剣を持つ。
少し、呼吸を置いた後、自分にとって最も手ごわい敵をイメージすると。
────ダンッ!!という、非常に強い踏み込みとともに前へと剣を振るう。
ギシリ、という微かな軋みを剣の柄から響かせながら、剣を振る。
イメージする相手が何かはわからない。
だが、その瞳や表情の真剣さ、そしてイメージする相手の攻撃を受ける動作。
それら一つ一つから、よく見知った相手かつ、自分が勝てないと思っている相手だと察せるかもしれない。
ピシッ、という何か致命的な音を響かせつつさらに剣を振る。

体幹の乱れは少ない。訓練通りの動きと言えばそれまでであるが。
力み方に呼応して、その武器や靴の擦れが激しいのがわかるか。
剣の場合、その刃の部分ではなく柄の部分への負担が特に強い。
そして踏み込んだ際の足裏の摩擦が、靴の許容範囲を大きくオーバーして。
となると、それに連動して衣類もまた……という具合に。
……しばらく、して、その時が来た。

「あっ」

間抜けな、真剣にやっていたが故に集中しきってしまったから思わず、という声が漏れて。
メキリ、とグリップが握力に耐え切れずに曲がり、そして指が強くめり込んで半ば握りつぶしてしまった。
そこで、呼吸を整えながら改めてココへと向き直る。

「……どう、でしょう?」

ココ > レグルスが『誰か』をイメージして戦っている。
その所作をただただ見つめていく。
ココの視線は、レグルスの体全体に向けられていて、武器だけ、防具だけ、手だけ、足だけのような見方はしていなかった。
傍から見ていると、ぼんやりと全身を見ているようにすら感じられたかもしれない。

けれど、全体を見渡すことで何をどうすればよいかが見えてくる。
同時に、何をどうすればの中で、使用すべき素材もどんどん見えてくる。
普通のフィッティングとは違う次元の、まさにセミオーダーとも言えそうな大がかりな変化。
でも、その変化をさせなければ、青年の要望を満たすことはできないだろう。

「……ぁ。」

そして、程なく剣を振る中で耳に届く致命的な音。
まだ折れていないのに、折れる未来を予測したようにもれる声。
そして、全ての装備が許容範囲をオーバーした時、剣のグリップを握りつぶし、破壊するレグルス。

「……ふふっ、これはやりがいがありますねぇ。」

視線は真剣ながら、口元は楽し気に綻んで。
鞄の中身を頭の中で考えてから、小さく頷き。

「対策は、見えました。結構時間、かかりますけどこの後時間とっていただいても大丈夫ですか?
大丈夫なら、出来れば私の工房で作業をしたいのですが。

……レグルスさんは、久しぶりの素敵な素材です。本気で、かからせてください。」

時分も丁度昼時故に、ここから長時間かかっても大丈夫か?という問いかけを。

レグルス・ダンタリオ > 少し申し訳ないような顔を浮かべるが、それはココに対してではなく武器に対して。
せっかく、新しい武器であったのに、こんな直ぐに壊してしまった事への武器への罪悪感。
自分自身の武器へと、軽く黙とうをささげた後、彼女に向き直る。

「……これで大丈夫でしたか?」

不安そうに聞いた後、笑みを浮かべる彼女の顔を少し見上げる。
お互いに立てば、背丈としてはそこまで大きな差はない。
しかし彼女のほうが大きく、視線が少しばかり上のほうに向いて。

「は、はい。時間のほうは今日は問題ないです。
是非とも、ココさんに見てもらえるなら是非、よろしくお願いします。

…………もちろん。こちらも…そちらの要求をすべて満たすぐらいのいきおいでやらせていただきます」

その問いかけに、真剣な視線と表情で迎え撃ち。
強く頷いて装備を戻して、彼女と共に歩きだす。
ギルドを離れ……彼女の”職場”へと。

ココ > 彼の言葉に笑み深め、頷いて見せれば

「それはありがとうございます。
それでは、向かいがてらに少し昼食をご一緒したあとで、
その後でじっくりと。では、参りましょうか。」

そう言葉を向けて、連れ立って訓練場を出ていく。
その後で、ギルド職員に、今日はこれで切り上げること、
本来の時間を満たしていないので、ギルドからの報酬はいらないこと。
時間が短くなった分は別日で補填することを伝えてから、
二人連れ立ってギルドの外へ。

この後はまた、工房での話となるだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 冒険者ギルド」からココさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 冒険者ギルド」からレグルス・ダンタリオさんが去りました。