2025/09/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 酒場」にカグヤさんが現れました。
カグヤ > 普段ならば、自宅で寝具に包まれていてもおかしく無い時間。
ただ、何か胸騒ぎか、或いはただの衝動か、入浴後だというのに身を包んだのは外出着。
幾分過ごしやすくなった夜風を浴びながら辿り着いたのは適当に目についた酒場。
既に飲みの席の盛り上がりは終盤を迎えていて、賑やかと呼ぶには少し寂しい雰囲気の中、真っ直ぐにカウンターへと向かってスツールへ腰を下ろす。

「何か、眠る前にいいお酒、無いかしら?」

何時もは結い上げる長い髪を今日は下ろしたまま、指を掛けて後へと流し、マスターのお勧めに任せる事にした。
程なくして目の前に置かれたものは、グラスではなく、マグカップ。

香ばしいスパイスの香りがふんわり優しく立ち上るホットカルーアミルクのそれに、両手を添えれば心地よさそうに双眸が細く、マスターへと向けられた。

頂きます。と言葉にして口元に運ぶそれは、身体を程よく温めて、甘く身体の内を満たすような重さも相俟う、満足感の高い逸品だった。

一口啜ってはカウンターに置き、暫く余韻に浸ってはまた啜る。
背後で盛り上がる声も少し遠くに聞こえる程に、その姿は無防備に甘い酒を楽しんでいた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 酒場」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 「カグヤさん?」

背後から問いかけるような声がする。
顔を向けたならば、見覚えのある銀髪の男が微笑むのが見えるだろう。

左肩に鞄をかけ、右手に紙束とペンを持っている。男の背後、壁際のテーブル席にはジョッキと空になった皿。
どうやら、奥で何やら作業をしていたようだ。
この酒場にはそれなりの時間滞在しているようだが、酔っている様子はなさそうだ。

「隣、いいかな? ――私服姿は初めて見るな。
マスター、ジンジャエールを」

そう言いながらスツールに腰掛け、肩口から足元までを眺めた。
髪を下し、普段のスーツ姿とは違ったことで後ろ姿に確信が持てなかったのだろう。
一方、男は普段通りのはずだが、どこか元気がなさそうだ。よく見れば目元にくまがうっすらと出来ている。
酒以外を頼んだのも、意外に思われるかもしれない。

カグヤ > ゆったりと過ごす時間。幸い周囲の盛り上がりのお陰で酔って声を掛けてくる客も居ない中、残りも半分を過ぎようかという頃合い。
聞きなれた声、そして名を呼ぶそれに気づけば振り返った。
そこに見えたのはおそらく長い事この場で何かをしていた様子の彼、その姿が此方へと近づけば、彼の座ろうとするスツールを引いて隣へと促す。

「ええ、勿論。 改めてそう、言われると恥ずかしいわ……。寝る前の格好だし……。」

着飾るというよりは、頭からすっぽり被れるラフなものだから、と少し恥ずかしむよう表情を困らせて、彼が酒以外を頼む様子に首を傾がせた。

少し疲れたように見える、目元もくまを刻んだその様子に、少しだけ身体を彼の方へ向けると、
カップで温められた両手を、伸ばし彼が避ける事がなければその頬に触れようとする。
触れられたならその指先は心配そうに肌をなぞり、頬を包んで……。

「大丈夫……? なんだかとても──、疲れているように見えるのだけれど?」

紙の束とペンと、それなりの量に見えるそれと彼の顔を何度か交互に見やり、再度、大丈夫かと問うてみよう。

ヴァン > 寝る前と言われてみれば、髪が少ししっとりとしているように見えた。
彼女の家はここからそう遠くはない。
無防備にも思えたが、家の近所ならばどこが安全な道かくらいはわかるか、と納得した。

注文を終えてから目頭を押さえ、軽く息をついた。
隣で動く気配がすると顔を向けて、されるがままに頬を包まれる。
掌の温かさに頬が緩んだような気がした。

「先週まではなんともなかったんだけどね。
神殿図書館で休職者が出たからその代替と出勤スケジュール組み、
知人友人からの頼まれ事いくつかと家の仕事がいくつか。立て続けに押し寄せてきてね」

右手をひらひらとさせてみるが、いわゆる繫忙期というやつだろう。
男の笑顔からは、ある程度目途がついている様子が伺えるが、疲労の色が滲むくらいにはハードなようだ。
ぱちぱちと炭酸が弾ける音がするグラスを受け取ると、何かを思いついたように話す。

「――そうだ。知人から寄稿を頼まれてる案件があるんだ。
温泉旅館にある宿泊者専用の浴室が改装したらしくて、そこの宿泊レビュー。もしよければ、『先生』に手伝ってもらえないかな、って。
謝礼は無料宿泊券しかないんだけど、俺も何度か使っている場所だから簡単な案内はできるよ。どう?」

鞄をがさごそして取り出したのは、『九頭龍の水浴び場』のペアチケット。
反応を伺うように小首を傾げる。

カグヤ > 明らかに疲れている様子の彼の頬を包み、撫でて、そのくまを縁取るように指先を滑らせてから、届いた彼の注文の品。その邪魔にならぬようにと引いた手は、再びカップを手にしてそれを軽く啜り。

「休職は仕方のない事だけれど、それを支えたヴァンまで倒れてしまっては大変だから、無理はしないでね?」

結局仕事場も違えば、言葉しか送る事が出来ない。無理をするなといったとてせねばなり立たない事もあろうから。
出来るのはあくまで労う事と無事を祈る事。
それでも、多少明るい兆しはあるのだろう、心配そうな視線はそのままに、一度頷くだけにとどめた。

「……疲れている、のよね?」

先生、なんて告げて来るものだから、包んでいたカップがカタリと音を立ててカウンターに揺れた音を立てる。
どういう意味で捕らえていいのかと、しかし首を緩く一度振り長い髪を揺らしてから……。

「頑張っているヴァンにも、ご褒美が必要よね。 レビューに託けて、ゆっくり休むのが良いと思うわ。」

カップの温もりも消えかけたその手を、チケットを掴む彼の手に添えて、
今から?と小首を傾げたのは、彼が落ち着いてからでも構わないというそれ。

ヴァン > 指先の流れに従うように目を閉じて、開く。小さく、ありがとうと呟いた。

「締め切りといつ何をするかのスケジュール調整で四苦八苦してた。予定がずれこんだ時のために空き時間も作らないといけないし……。
中間管理職の辛い所だ。学院生のバイトをまた募集しないと……そうすると君の職場が困るか」

目下の疲れていた原因は解消されたようだ。これからはスケジュール通りに働くという疲れが待っている。
冒険者に興味がない、学業熱心な学院生は学内でバイトをする者もいる。
高名な学者の助手、食堂やラウンジの調理係、そして図書館の司書手伝い。

「多少はね。カグヤさんに会って話をしたから、少し元気が出てきたところ。――助かるよ。
そうだな……カグヤさん、次のお休みはいつ? その前日に宿泊することにしよう。レビューの締め切りはまだ余裕があるから」

紙束から1枚のスケジュール帳を取り出す。真っ白なのは、これまでは本当に予定がなかったのだろう。
おそらく、これから他の紙束に書かれたものを転記する作業が入るはずで。
それでも目の前の彼女の予定を聞いて、スケジュールに最初に書き込むだろう様子から、その日を愉しみにしていることが伝わるだろう。
添えられた手の感触を味わうように、微かに指先が動く。ふっと冗談っぽく笑う。

「知人には誰が書いたかもしっかり伝えるよ。ゴーストライターはよくないから」

カグヤ > 「私達の事を気にする事は無いわ。 それに、稼ぎを求める子を安心して預けられるというものだし。」

学院内ともなるとどうしても上限や、安く見られがちになる。
それであればまだ知人の下で働く方が有意義で安全といものだろうから、
それに選ぶのは学生本人ともなると口もはさめないと笑い。

「そうね……今週末は両方空いているけれど、後でゆっくり、日程を詰めましょうか。
せっかくだから、色々と歩き回らない? それとも……本当に、ゆっくりする?」

彼を労うという意味であれば、日がなダラダラと二人宿で過ごすのも悪くない。
それを終えた後街歩きだって出来るのだからと、出かける日取りが決まればその行程の段取りもまた楽しいものとなるだろうと。

彼へ触れた指先に返す様彼がまた触れる。チケットを落とさぬように、傷つけぬように、彼の手首やその先を軽く撫でては、そっと離すと。

「確認なのだけれど……、宿、としてのレビューよね?
それとも……そういう視点で、書いた方が良いのかしら?」

冗談っぽく笑う彼へと、首を傾がせ意地悪く問いかける。自らもその宿を利用した事が無いではないから、
読者の需要を把握しておきたい、なんてのは建前、引き出したいのは彼の、需要なのだろう。
そんな遠回しな言葉の応酬を、楽しそうに笑いながら。

「この後は、まだ休めないのかしら?」

そう、問い掛けたのは既に夜も良い時間である事から、彼を帰すにしても、そうでなくても……少しくらい安眠に寄与する抱き枕位いは提供出来ようから、そんな言葉を。