2025/09/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 古書店」からラリーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区・冒険者ギルド」にクローネさんが現れました。
■クローネ >
「ちょっと、なんか報酬少なくない?」
冒険者ギルドのカウンター。
受付印に眉を顰め食って掛かる細身の女が一名。
『クローネさんの魔法での被害が大きくてですね。
修繕費などを差し引いた額面になっています』
ニコニコと応対する受付嬢。
正直ハァ?と言った感じである。
「あのねー。こっちは命の危険も顧みずに…」
『何か文句がおありでしょうか』
ニコニコしている。
ニコニコしているが、その笑顔の奥から『マイナスじゃないだけありがたく思え』という圧を感じる。
「……まぁ、そういうことなら仕方ないかぁ~」
こういう時に食い下がるとロクなことがない。
なんとなく察した女はヒクついた愛想笑いを浮かべ、被害分の差し引かれた報酬袋を引っ手繰るように手にとって併設された酒場へと踵を返した。
■クローネ >
「あーあ。損こいた。
ゴメンねー?ホントならこの仕事でツケ払える予定だったんだけどさぁ~♡」
どんなもんだか。
そんな仏頂面で酒を出すマスター。
「やっぱああいう繊細なのは向いてないかもねぇ。
テキトーに魔法ぶっ放して終われるぐらいのが楽でいいわ。
魔物の討伐とか、そういうの」
とはいえ、最近はゴブリン退治やオーク退治なんかでも冒険者側に被害があるとちらほら聞く。
そんな情報をマスターは苦々しくも提供する。
「さすが冒険者ギルドの酒場主。事情通じゃん?
ふーん……なんだろ。やばいヤツでも生まれたのかしらね?」
そうなら、近い内に討伐隊が募集されるか…あるいは高額の依頼としてベテランを募るか。
そこらが儲け時かもね、と出された冷えたエールを豪快に呷る。貞淑さのかけらもない飲み方である。
ご案内:「王都マグメール 平民地区・冒険者ギルド」にレグルス・ダンタリオさんが現れました。
■レグルス・ダンタリオ > 酒場に、年若い外見の青年が入って来る。
その顔つきだけ見れば、むしろ少年とすら言っていいほどであるが。
マスターは知り合いのようで青年と軽くあいさつを交わす。
「マスター。これで果物ジュースと適当に腹に溜まるものを」
そういくらか金が入った小袋を出してマスターに適当に頼む。
何らかの依頼が終わった後なのだろう。その青年は軽くタオルで汗を拭き取る。
そして隣のほうから聞こえた情報。マスターと、ドレスを着た女。
以前、ギルドの中で見かけた覚えがある。その時はいかにもな乱暴者な冒険者と喧嘩していた時だったか。
もっとも、遠目から見ていただけで人となりは全く知らないのだが。
「以前から個体の強さが以前より上がった、あるいは見ない個体も出るようになったという話もある。
それのせいでより大変になっているのかもしれないな」
一人で酒もなしに飲むのもあれだ。せっかくだから、とその女の話を聞いて、混ざることにした。
彼女がそれにたいして相手してくれるかまでは……予想がつかない。
その豪快な飲み方で動く彼女の喉を見ながら、青年もジュースを口にする。
■クローネ >
「ん…」
隣についた客。
パッと見た目、幼さがまだ感じられる顔つき。
顔つきの割に良い体格と左右で違う色の瞳が目に付く。
他人に然程興味を示さない女でも、多少なり目を引く容貌だった、
「お疲れぇ~。仕事上がり?」
空になったタンブラーをマスターにお代わり、と言いつつ返す。
ツケで呑む気は満々だが、遠慮は全く見られない。物怖じなどとは程遠い性格のようだ。
さて、彼の口にする話題はちょうどマスターから情報提供のあった内容についてのこと。
「へぇ~、物知りじゃん。
それじゃーゴブリン退治ってもルーキーじゃ失敗することもあるかもね…」
そういった減らない魔物の討伐は冒険者の登竜門とも言える仕事である、が。
「…つーか見ない個体? 変な血でも混ざったのかしら…。
アイツら人の形してれば何とでもヤって増えるキモい連中だったっけね」
その個体のレベル次第ではあるが、高額報酬の依頼に化ける可能性も…。と思案する。
危険度とかそういうものはさておき、女としては依頼の報酬が上がるかどうかが視野である。
「で、アンタも冒険者? 酒場に来てお酒飲まないの?それとも飲まないクチ?」
■レグルス・ダンタリオ > 「あぁ、野生動物の間引きだ。狼や熊による小動物や魚の被害が多かったらしい」
そう言いながら、同じようにタンブラーを受け取りながら会話を続ける。
緑がかった黒髪は外での活動で少し汚れている。
左右のオッドアイを隠すわけでもなく、容貌を見られてこちらも彼女の姿を改めて見る。
「そうでなくても、ゴブリンは場所によってはナメてかかれるものではないしな。
ルーキーは装備の類も経験も万全じゃない。出来るならベテランのお目付け役が欲しいところだが」
そんなことをするほど、この国に余裕などない、というか。
わざわざルーキーを導く真似をするようなベテランは、金のあるパーティに呼ばれる。
金のないパーティが、ベテランを雇う余裕などあるはずもないのだ。
「オークやゴブリンにも美醜感覚はあるらしい。
俺は見たことがないが、聞いたところによると美人の魔族や人族相手だと喜ぶという話だ。
同族の女の存在はあまり見られないというのもあるかもしれんがな」
そう会話を重ねながら、ドライフルーツを口にする。
マスターが時々、隣にいる彼女に視線を投げつけるが彼女はどこ吹く風。
知る人が知っていれば面の皮が厚いとしか言いようがないのだが。
青年はそんな事情など知らないため、何も感じることはなかった。
「レグルスだ。冒険者は本業じゃないが、時々余っている依頼や興味がある依頼をこなしている。
酒は飲めなくはないが飲み仲間がいない時はあまり飲むことはないな。
付き合ってくれる人がいれば飲むぐらいだ」
■クローネ >
「ベテランの目付け役ねえ…
大した額面でもないし、功績になるでもなし。
余っ程に面倒見がいい変わり者でもないと受けないかもねぇ」
世知辛くはある。
しかし冒険者稼業など儲けてなんぼである。
本業にしている者なら割に合わない仕事は避けるのが当然であるからして。
「へぇー、あんな連中にも、ねえ」
連中にも美醜感覚あるなどと聞けば感嘆する。
知恵はあるだろうが所詮低俗なものだろうと思っていただけに意外そうな反応を示す。そして同時に。
「あんなのにモテても嬉しかないでしょうけど…」
ゴブリンやオークにモテる女…。大変不名誉ではなかろうか。
「クローネよ。好きな仕事は割が良くてサボれるヤツ。いい感じのがあったら教えてよね♡
え、何、飲めんの? だったら飲んどきなさいよ勿体ない」
今日の仕事終わったんでしょ?なんて言いながら、自身は冷えたエールを呷る。
「ところでキミ、左右の目の色が違うのね」
自分の眼を指差すような仕草で、そう問いかける。珍しい~、と。
■レグルス・ダンタリオ > 「まぁまずやれたとしてもやりがたる奴はいないだろう。
道楽か、あるいは相応に金でも積まれないとな。
逆に言うと、ベテランに金を積んでまで教えを乞う奴は相応に努力家なんだろうがな」
彼女のいう通り、まずそんなことするものはもの好きな奴しかいないだろうと頷く。
「ま、基本は女であればなんでも犯す下劣な連中だがな。
言ってはなんだが顔がいいと呼ばれる女や普通と呼ばれる女はいても。
醜いと呼ばれる女はあまりいないように思える」
彼女の口から出たその感想には、頷かざるを得なかった。
実際、そんなのにモテるとしたら、いったいどんな女なのだろう。
普通に考えれば、美しいのだからこの国でもモテそうなものだ。
「いい感じの依頼か。割がいいかはわからないが、いくらかは知ってる。
楽で安い奴か、そこそこ働いて高い奴。
楽で高い奴はさっさと取られるか、優先的にギルドが贔屓したいパーティに回されるだろ。
……じゃあ、飲むか」
彼女と同じようにエールを頼み、空いたタンブラーに注いでもらうと。
少しずつ口にして飲み始めて。
「あぁ、生まれつきな。病気と疑われたが生まれてこの方大病にかかったことはない。
身体にも異常はないし、自分の特徴として受け入れている。
クローネは……まぁ聞かなくてもわかるが、自分の容姿に自信があるようだな」
■クローネ >
「なんだかなー。それでカワイソーな目にあったり戻ってこなかったり。
痛い目見た、で済めばいいんでしょうけど」
結果的に討伐失敗、全滅。若い冒険者が命を落とす。珍しい話でもない。
ギルドとしてもそういった痛ましい話はないほうがいいのだろうが、報酬まわりはリアルな話である。
そういった道楽者やもの好きが増えることに期待するか、注意喚起を徹底するかくらいだろうな~、などと女も思う。
少なくともベテランであれ女のような性格の人間はそういった仕事はまず受けない。
「あら、じゃあこの辺りにいる女は大体可愛い?
そういうコト言ってるとちょろい男と思われるかもしんないわよ~?」
少年が口にするのは素直な感想なのだろうが、捉え方によっては誑しの常套句にも聞こえる。
そんなところを少し愉しげに突っついたりもしながら、酒も進んで。
「ふーん…アタシは見るのは初めてかも、レアよねーそういうの。
なんだっけ、どこぞの宗教の聖女様とかそういうのしか聞いたことないなー」
まじまじとその顔を見つめていると、自分の容貌に自信がありそうだなどと言われ。
「そう見える?」
くすりと笑みを深めて、年下であろう少年ににまにまと。
「レグルスくんはぁ、控えめで貞淑な感じの子のほうが好み、とか?」
■レグルス・ダンタリオ >
「なかなか難しい話だ。
ギルドとしても、使える人間が多い方が助かるが。
だからといってそういう人材がいてくれるとは限らない」
冒険者たちからの評判やモチベーションにも響くからあまりそう言う話は出て欲しくはないのだろうが。
事実として今この国が大変な時期なのは間違いはないのだ。
どうにかできたらいいな。という希望観測しかせいぜい出来ないのが普通というものである。
「あぁ、まぁ可愛いんじゃないかと思う。
……そういうものなのか?」
突っつかれて、鳩が豆鉄砲を食ったような間抜けな顔を晒す。
そんな風に言われたことが今までなかったらしい。
彼女の言葉を真に受けて、「ううむ」と唸ってしまう。
「あぁ、噂に聞くヤルダバオトにある大聖堂の、だったか。
俺は会った事はないが、彼女も同じらしいな」
そう言うと、どこか蠱惑的な笑みを彼女は浮かべて。
「あぁ、そう見える」
「好みの女性で言うと……まぁ、そうかもしれないが。
あまり”これ”といった好みはパッとは思いつかないな。
何分、女との付き合いは多くはないんだ」
■クローネ >
「ま、そのへんの小難しい話はギルドのお偉いさん達が変わりに考えてくれるでしょ。
ただそうなるといい加減討伐隊なんかの募集は組まれそうね」
大規模な討伐隊が組まれれば、サボるチャンスでもある。
打算的な女としてはそういった依頼は逃す手はない。
マスターからの情報提供、横に座る少年の情報を複合すれば儲け話の一端が垣間見えた…というところである。
「そりゃあ、それだけ目が甘いっていうか?
可愛いなんて言われたら勘違いしちゃう女も多いんじゃない?
しかも相手はヘテロクロミアなミステリアスな少年ってワケ」
女のようにスレた性格ならともかく、純朴なのは案外引っかかりそう、なんて。
酒が入っているとは言えやや下世話な話。年下相手だからいいかと思っているフシさえありそうである。
「まぁこの国でこの街で女が生きてく上ではねぇ。多少なりそういうのに自信はないと。
…ふぅーん。腕も立ちそうだし、若いし。モテそうに見えるけど」
どちらかといえば女が搾取されがちな国ではある。
女…クローネのように男を喰い物にしようとする女のほうが珍しいのかもしれないが。
続く言葉には少し意外そうに。こういうタイプは女には苦労しそうにないが───。
「ああ…あれかな」
「然程、女にがっついたりしないタイプ?」
酒!女!っていうタイプには確かに見えない。
欲望の滾りを隠さない男も多い中、若いのもあるだろうが、やっぱり珍しいなと。
■レグルス・ダンタリオ > 「討伐隊か。ギルド側、あるいはそれを頼みたい側で支払える資金があれば。
実際、出そうなものだな。事実として脅威がそこにある以上は」
いつになるかはわからない。本当に起きるかはわからない。
だがあり得る。もうその段階には入っているということだった。
故に、彼女の予感はおそらく当たるだろう。
「ふむ。そもそも女とあまり関わり合いになることが多くはないからな。
冒険者をしているときも、大半はもうその組んでいるパーティ内で関係が出来ているパターンが多い。
少なくとも、俺の向かうパーティはそうだった」
若干ナメられて話されているような気配があるが、別に気にしていない。
少々この少年は意地っ張りなところがあるが、彼女同様に酒が入っているおかげか少し鈍感になっていた。
「モテるか……クローネの言葉を信じるなら、俺が知らないところでモテていたりするかもな」
そう言うと、マスターにエールのお替りを頼もうとして。
「俺とクローネにワインを一杯ずつ」と別の注文をすると。
グラスで一杯、赤ワインが2つ用意され、1つを彼女の近くに置く。
「あぁ……そう、かもしれないな。
そういうことをしたいのなら、娼館に向かうことが多い。
それにほら。普段から仕事をしたり、顔を合わせる知り合いだと。
噂が出回りやすいし、失敗談をよく聞くからな」
もう一度ドライフルーツを口にして自身のワイングラスを彼女に向ける。
「そういうのを聞いていると、あまり女に対して必死にならないほうがお互いのため何じゃないかと思った。それだけだ。
…………俺のおごりだが、受け取るか?」
■クローネ >
実際にゴブリンや魔物の平均討伐レベルが上がっているのなら、早い内に手を打つのが良。
金まわりの問題はあろうが、冒険者の数が減ってもそれはそれで上が困ることには変わりがない。
一儲けのチャンスとあらば、それに乗るベテラン冒険者の数もそ…目の前の女を含めれなりにいるのは間違いない。
「あっはは。そういうコトはまぁあるわよねぇ?
ふーん、でもそういうトコはちゃんとしてるんだ。
アタシそういうの気にせず手ぇ出しちゃうからなぁ~♡」
少年の言う通り、男女の関係を持ちながら同じパーティを組んでいる輩は多い。
そしてそんなこと気にせず男を誘ったりしているのだ。
おかげで結構トラブったり、同業者の女に恨まれたりもしているのだが。
そんなことはどこ吹く風、こうしてギルドの酒場で堂々と飲んでいる。
厚顔無恥のレベルはとっくにカンストしてそうである。
「ふふ、今度ちょっとトシの近い子なんかにコナかけてみたら?
普段そんなにがっついてないなら、案外パクっと食いついてくれるかもよ~?」
なんて冗談混じりにいいつつも、娼館通いを口にされれば口程には純朴でもないのだということも理解る。
「はー…リスクヘッジしっかりしてるというか…。
アンタくらい若いヤツだとそこまでしっかり考えるヤツ珍しそう~。
あ、マジ?奢り?ラッキー♡」
どこか達観したようにも見える少年。
感じる雰囲気や年齢的にはこの国では駆け出しと見ても良い年齢だろうが、随分しっかりしている。
「もしかして結構いいトコの出だったりする?
その立ち回り方というか思慮深さってさぁ、キミくらいの年齢じゃそうそう身につくモンじゃないのよねえ?」
向けられたワイングラスに、自分のグラスを近づけ小気味よい音を奏でる。
こんな上品な乾杯、滅多にしないんだけど。なんて苦笑しつつも、年下に促されれば流石に応じる女である。
■レグルス・ダンタリオ > ここ最近での被害を考えれば、実際対策を立てなければならないだろう。
その方法が討伐たいだけで済むのなら、その方がいい。その後の処理を考えなくていいからだ。
「クローネは性に奔放なのだな。自由なのは悪いことだとは思わないが……。
まぁ、面倒事はついて回るだろうが楽しいのならそれでいいか。
俺は考え続けないといけない面倒事はあまり背負いこみたくはないからな」
彼女の様子、そして言葉の内容を聞けば、まぁそういうことなのだろう。
それでいてこうして常連のままでいるとは、いづれ刺されそうなものだが。
彼女は気にしている様子はなく、自分もわざわざ踏み込んだりはしない。
初対面なのもあるし。
「いやぁ……そうやって食いついたところで、長続きしてくれるかはわからないし。
なにより、それが俺の足枷にもなりたくはない。
だからそういうことは遠慮しておくよ」
少し真面目くさった口調が、酒が進んだせいか柔らかくなっていく。
「冒険者家業をやってるなら、その時その時を生きるしかないからな。
しっかりとした未来のプランを立てるような奴などそうそうはいない。
いつ死ぬかわからないのだから、そこまで考えたくないのが大半だろうしな」
カチン、と音を立てて、そのワインの香りを堪能してから一口。
安い酒場のワインだが、エールよりはずっといい味を感じられる。
「まぁ、家柄の話をすると位は低くはない。おっと、他人に話しまわる真似はよしてくれよ?
だからまぁ、教養が身についたおかげで固定パーティがなくてもどうにかやっていけてるよ」
■クローネ >
「器広っ…。…これが育ちの良さか……。
すぐにヒトのことビッチだのクソ女だの言う粗野な連中とは違うわー。
あ、別に触れまわったりはしないから安心してよね~♡」
女の生き方を否定もせず、それでも良いだろうと口にする少年。
口酸っぱく物申すいいトシした大人がいるなかでなかなかの精神性ではなかろうか。
ワイングラスを傾ければエールおてゃ比べ物にならない香りと味。
普段あまりお上品なお酒を飲まないのもあってやや新鮮な気分になる。
そんな話を交わしながら、
「足枷ねえ」
あまり、聞き慣れない言い回しである。
要するに男女関係を引き摺るのは…ということなのだろうけど。
そういうのは往々にして高い目標がある人間に言う言葉である。
寄り道をしている暇のない、険しい道を歩むものの言葉。
「じゃ、確かに娼館とかで済ますのが合ってんでしょうね?
家柄も低くないってことだし。何か目指してるもんでもあるとか?」
冒険者の仕事も副業のようなものと言っていたし。
正直この国のこんな場所では出会うには珍しいタイプの人間に思える。
その日暮らしの冒険者のほうが数としては圧倒的に多いだろうからして。
手元でくるくるとグラスの中の雫を揺らしながら、そんな話もまた酒の肴。
■レグルス・ダンタリオ > 「育ちの良さが関係するなら、もっと器の広い貴族が増えてもいいと思うのだがな」
そう苦笑しながら、彼女がワインを飲む姿を眺める。
表情がわずかに変わり、雰囲気が違うように見えて、微かに微笑む。
どうやら気に入ってくれてはいるらしい。
「ん…………」
何か引っかかる物言いをしたのだろうか。
反応を見せた彼女に、視線を向けて。
「あぁ、簡単な話だ。
別に俺は家を追い出されたわけじゃない。むしろ期待されているようでな。
言ってしまうと、騎士を目指している」
ワイングラスを置いて、自分が何を目指しているのかを話し始める。
言葉を長くはしないように、頭の中で言葉を組み立てて。
「冒険者の仕事をしているのは武者修行の一種だ。
国の為に、王の為に、騎士として剣を振るうその時まで実力を重ねる。
そういう野戦や魔物、魔族との戦いを重ねるために冒険者をしている。
経験は豊富な方がいい。それぐらいの気概で鍛えろとな」
そこまで話してから、またグラスを傾けて。
「とまぁ、青臭い子供が語る青臭い理由と理想だ。
さすがにクサすぎたかな? 話が退屈しないように、短くまとめたつもりだったが」
そう苦笑して、いつの間にかグラスを空にしてしまって。
もぅ一杯頼もうか悩むが……
「ふむ。話していたら女が欲しくなってきた。酒はこの辺にして娼館に行くか」
■クローネ >
「だから、育ちが悪いってコトなんでしょ」
気品などを語るべくもない女ではあるが、歪んだ育ち方をした貴族男にはそれなりに縁がある。
そういった連中と違って、ちゃんと良い育ち方をした…そういう少年が目の前にいる。
騎士を目指している。と聞けばどこか納得したような表情を浮かべる。
「確かに、腕を上げるにはここいらの討伐依頼はうってつけかもねぇ…」
国のために、王のために…といったお題目については、少年自身が口にするように青臭いものも感じたが。
ああいった組織にも腐れた噂が止まない中でそれをまっすぐ目指している少年…いや男がいるというのは妙にこう…心強さを感じてしまう。
「実力が必要なのは勿論でしょうけど、随分泥臭く上を目指すのね。そういった家訓?
いいんじゃない?こんな国でも上を目指すなら理想は必要でしょ。
アタシみたいに底辺で楽しい毎日送ってりゃいいやーみたいな女が纏わりついていい男じゃなさそう」
普段ならばガキの戯言と馬鹿にするシーンだったかもしれないが。
彼の言葉の中に虚栄や虚飾の類を感じ取れなかったからこそか、女には珍しく、カウンターに頬杖をつきながら視線を流しそんなことを宣っていた。
そして娼館に行くかと口にする彼。
清廉潔白では生きづらい場所、その程度の清濁は飲み込む器。
なかなかどうして、いい男に成長するんじゃないの?なんてことを思ったりもして。
「青臭いし泥臭いけど、アンタみたいなのがこういう場にいると何かと刺激にはなるかもね?
気高い目標なんて持ちようもない連中も多いし。
なぁんか、アタシのカラダ目当てに近づいてきた感じだったら罵ってやろうかと思ったのに、フツーに気に入っちゃったじゃん」
くるりとグラスを手元で遊び、自身もまたそれを飲み干して。
「娼婦に遊び飽きたらまた来な~♡ アタシが遊んであげる♪」
くすりと笑みを深めた女は妖艶さを纏い、そう告げる。
娼婦に負けず劣らずの自信のある女であるが、今日のところは自らがっつくこともなく。
珍しく気持ちの良い少年とのやりとりが気に入ったのだろう。
クズみたいな男ばかりと斜に見ていた女の世界観に一つ楔を打ち込まれてしまったらしい。
「アタシはもう少し飲んでこっかなぁ、またね、レグルス」
行きずりで抱いた、抱かれた男の名前など覚えることもしない女であったが。
その容貌と名前は恐らく今後忘れることはない。
酒場を去りゆく少年の背にひらりと手を振り別れを告げてから。
「ちょっとマスター。ああいう有望株がいるならちゃんと教えてくれないとダメじゃない!?」
などと食いつく女。
しかし、お前みたいな女に教えるわけねえだろ。というごもっともな言葉を返されるのであった。
■レグルス・ダンタリオ > 「あぁ、そういうことか」
彼女の言いたいことをようやく理解して頷く。
それと比べれば、自分はいい環境で育ったのだろうなとも思う。
「家訓もそうだが、近道などないからな。
力や技術、知識はいくらでも近道はあるかもしれないが。
経験ばかりはひたすら積むしかない。…………そうか、理想か。
別に、そこまでクローネは自分を卑下しなくてもいいと思う。
それに冒険者であるうちはお互い立場は平等だ。気にするな。
少なくとも俺は気にしないし、周囲にも気にはさせない」
ついつい、しっかり聞いてくれる彼女が嬉しくて言葉を返す。
ほんのりと頬に朱が差して、酔いを自覚すると水を一杯、口にして。
「カラダが目当ての男もいるか。まぁ俺も男だ、そういう下心はあったのかもしれないが。
まぁ正直、今回はソロだったから話し相手が欲しかったのが大半の理由だと思う。
それに、話すのなら多少なりとも誠実さはなければすぐに居場所がなくなるしな」
そう苦笑しながら、飲み干していく彼女を見つめて。
「遊び飽きたら、か。わかった、覚えておくよクローネ」
そう言うと荷物を持ち、席を立つ。
ワインを頼んだ分と、彼女の分の金を出してマスターに支払い。
「あぁ、またなクローネ。いつか仕事を共にできたらいいなと思う」
そう笑って言いながら、少年は酒場を後にする。
その背中は、この中に入ってきた時より、去っていく時のほうが少しばかり大きくなった。かもしれない。
ご案内:「王都マグメール 平民地区・冒険者ギルド」からレグルス・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区・冒険者ギルド」からクローネさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアンジーさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアンジーさんが去りました。
ご案内:「冒険者ギルド」にアンジーさんが現れました。
■アンジー > 「ほうほう?今日もまあまあの混み具合ですなあ。日曜だというのに」
黒いミリタリージャケット、黒い軍帽。カジュアルワンピース。
帽子を目深に被り、歓楽街からやってきたのはアンジー。
ギルドの片隅にある自由記載掲示の黒板にある、風俗情報の書き込みを覗きにきた。
「…これが射精と第二次性徴期を迎えた人間の言葉かあ?嘆かわしいなあまったくう」
ひひ、と歪に口元を歪めて。ざーっと見ている。
実年齢を疑う、身の程知らずの言葉が色々と。
「んー、どれどれ?サービスが悪い?はあ、デブ?ほう、パネマジやめろ?」
かちゃり、とチョークを手に取る
”お前ここは初めてか?力抜けよ。”
”センスねえなお前。”
趣味、掲示板でのレスバ、である。
■アンジー > 書き書き。
「しかし、語彙力と品位が両方ないなおまいさんたちは」
書き書き。
背中を丸めながら、まあまあ綺麗な横顔にすごい湿度の笑みを浮かべながらレスバしていく。
「臭くないぞ。」
”風呂キャンセル界隈か?”
「ガバガバ?ふん」
”まず自分から定規を出して測れ”
まあ、プリプリの160ゴルド/1時間というのは、高くはないかもしれない。しかし安くもない。
”おまいらよく読めよ読めよ〜?
「与えよ!さらば与えられん。
出した金のことを思い煩うな。
今日の射精は今日のプレイで足れり。
健全な精神は健全な肉体に宿る、といいな?
その気になったら来るがいい。風呂には入れ。爪は切れ。
A。」”
…と、学院生が学ぶ古代語で、しかももじっていちいち言葉で刺していく。
■アンジー > なんのために割と取っているのか?
出した金に見合う最低のサービスを保証するためでもある。
掲示板に背を向け、ギルドのホール壁際で手帳を広げ、脳内の文章をバーっと書き付けている。
特に自ら営業することもなければ、冒険者を誘惑することもない。
紙面に目を凝らして言葉を連ねていく顔つきは、それだけを見れば春を売るものの顔には見えない。
レスを書きつけておいた掲示板の前で、背中の空気が変わる、いい歳の冒険者を見た。
(ほう。おまいさんかあ…誰も刺してこないと思ってるんだろうなあ…世の中そんな甘くないんだぞ。いい勉強したなあ?)
と、掲示板を上目づかいでちらっと見た彼女は思っている。
「おう。そうだ。お使いがあった。」
無骨なショルダーバッグのフラップを開けると、白い分厚い封筒が一つ。中身はお札ではない。
ギルドの受付の前に立つと
「あ、どうも。ギルドの地区の副部長いらっしゃいますか。私、こーいうものなんですけど。」
ジャケットのポケットから、娼婦の登録証を取り出す。
「当店から、先日の依頼の感謝の気持ちとして、ですが」
カウンターの向こうに副部長の姿を認めると、脱帽して、三白眼を細めてお辞儀した。
中身は割引券10枚。ぜひ接待にお使いくださいとの店側のお気持ち。
■アンジー > 副部長とバチっと視線が合う。
(副部長どの先日は結構なオタク語り馳走になり申した!)
目に見えない火花がばちばちと
(次の予約はいつだいつなんだ。雑語りだけでもいいぞ!アンジーさんが聞いてやるからな!)
視線をスッと、落とす副部長。
カッと目を見開くアンジー。
(…ただでストーリーは先に進まないんだよ?課金しよっか?…あ、もしかしてプレイしないとダメか?しょうがないにゃあ〜〜〜)
副部長。視線から何かを読み取り。うなづく。
(OK。わかった。次は雑語りで終わるのはやめよう。こっちからも促すので忘れんなよ、と)
なんらかの珍妙なジェスチャーで会話している。
ぱぱぱぱぱ。←自分で擬音言ってる彼女
しゅばばばば。←自分で擬音言ってる彼
サムズアップ(しゃきーん)
サムズアップ(しゃきーん)
うなづくアンジーさん。
うなづく副部長。
ダメなオタク同士に言葉はいらない。
ご案内:「冒険者ギルド」からアンジーさんが去りました。