2025/08/25 のログ
ケストレル > 「まあ、日銭を稼ぐなら簡単な討伐依頼とか――
 採集もあるけど、今の時期はとにかく暑いからおススメは出来ねえなあ……
 はは、機会がありゃ良いんだけど」

後で幾つか推奨する依頼でも実際に掲示板を見つつ紹介しようかと考える
彼女の剣の腕は知る由も無いが、初心者向けの魔物討伐であれば達成は難しく無いだろうと見定める
そのまま互いの衣服についての話を交え、例の冗談に至れば
微かに空気の変わったのを感じ、ケストレルの表情が強張る

「ああいや、その、何と言うか―――」

失言だった、と過ぎてから思っても後の祭り
しかし目に見えて気分を害したという様子を見せない女に、謝罪すら切り出せずに狼狽えるしかなく

「へっ?……そ、そりゃあ是非確かめさせて―――じゃなくて!」

身を乗り出し、挑発的な言葉を投げる女に狼狽えたまま口が滑る
酔いの回った頭では、見るもの聞こえるものがやたらと扇情的に思えてしまい、視線は紫紺と襟元とを行き来する
――が、しかしすぐに失言を重ねたと我に返り、手にしていたジョッキで自分の側頭を打ち据えた
鈍い音とともに、ジョッキの中の麦酒が僅かに飛び散る

「―――~っ、すまない、酔ってるとは言え初対面相手に性質の悪い冗談を言っちまった
 気を悪くしたなら、今日の飲み代は俺が持つよ」

それでチャラになるとは思えないけど、と締めて、ジョッキを置くと思ったよりも強く打ち過ぎた頭を押さえた

夜宵 > 「……ほら、風が抜けるでしょ。
 こういう着物って、下に何もないとね――動くたび、すぐ分かっちゃうんだ

 でも、君は見ようともしなかった。えらいね……それとも、ただ妄想で足りてるだけ?」

彼女はそう言って、膝のあたりに手を滑らせた。
布地がさらりと衣擦れの音を漂わせた。
様子を愉しむかと言うよりかは、心の奥底を伺うような。
そんな素振りがあった。

「うん、いい目だね。それ、気に入ったよ」

ぽつりと、そう言った男の眼差しに、女は眼差しを絡めた。
ただそこに、わずかな欲と戸惑いと、何処となく衝動が滲んでいた風に思えた。
ふためく様子に、麦酒が飛び散って――彼の、狼狽える所を見て、
夜宵は、ふっと目を細めた。まるで、可愛いね。と艶やかな唇が語るようだった。

「…君の視線が、あまりに素直だったから。
 何かを我慢してるんだろうなって思ったの。
 だから、少しだけ……揺らしてみたくなったんだ」

少年のように無邪気な声音で、
それでも、吐く息の端々に大人の甘さと温さを混ぜながら、
夜宵は男にまっすぐ視線を返した。

「――其れよりも。そんなに頭を打ち付けなくてもいいのに。」

飲み代の件については、きょとんとした様子で返すのだった。
大丈夫?なんて気遣わしげに、手指をケストレルの頭に伸ばそうとした。

ケストレル > 「妄想で足りてたらそもそも聞かねえってんですよー……」

何が偉いものか、と頭の痛みとは別に頭を抱えたくなったケストレルである
そもそも声を掛けた時点で下心が介在していた事は否定しようがない
けれど、それを上回る新参に対する好奇心と親切心があっただけだ
何だかそれらを見透かされていた気がして、どうしようもなく気恥ずかしくなる
……勿論、それが自業自得であることも承知済みなので、顔には出さないけれど

「お気に召されたようで何より……」

基本的に冒険者として在る時は、恥なんてかき捨て上等、とは思っているものの
こう言う場での恥は自分の小ささを突き付けられたようで居た堪れなくなる
しかし、気に入った、という言葉に僅かばかり救われたような気がしてしまった
……余計に恥ずかしい

「そりゃあ、夜宵さんみたいな美人が独りで居たら男としてスケベ心持って声掛けちまうってもんですよ
 まさかこんな風に返されるとは思ってなかったんだけどもね!」

もう恥ずかしいのはどうしようもないので、いっそ開き直ってしまえと腹を括る
掴み処が無く、しかし鋭さのある月明かりの様な女を相手に、
ケストレルはその紫紺の瞳を見て自棄気味に笑みを浮かべた

「いいのいいの、酔い覚ましも兼ねて煩悩退散ってね……」

このところ仕事漬けで娼館に行く事も無かった所為もあるだろう
いつもそればかりだな、と内心自分の言い訳に呆れていたところで、気遣うような言葉とともに伸ばされた手指が頭に触れる
はぇ?ときょとんとした顔で夜宵を見やり

夜宵 > 目をぱちくりとさせて、無邪気なほどにきょとんとする夜宵。
その様子は、あのやり取りで男を煩悩渦へ突き落とした張本人とは思えないほど、
澄んでいて、白く、無垢だった。どちらかと言えば――知りたかったという方が正しいか。

「うぅん……やっぱり、ちょっと揺らしすぎちゃったかな
 ごめんね。君を揶揄う心算は、無かったんだよ。」

夜宵はぽつりと呟きながら、再び頬杖をついた。
そんなケストレルの姿に、くすりと小さく微笑んだ。
そして、そっと囁いた――男に届く声で。
とろりと甘いのに、触れれば切れるような、
刃の上に蜜を垂らしたような瞳で。

「――でも、そう言われるのは悪い気はしないな。
 私とすれば、何も言わないでいるよりかは、ずっといい
 でも……ふふ、可愛いな。真っ直ぐで」

夜宵は立ち上がり、
軽やかな動きで自分の座っていたスツールをもう少し近くへ引き寄せて隣に腰を落とした。
どことなく恥ずかし気な彼がどうしようもなくかわいらしいものに映ったのか、
よしよし、と手櫛でもするように夜宵は撫ぜつけた。

「ほら、今の痛そうだったし。……瘤、出来てない?大丈夫?」

恐らくは、失言と失態と、慰める気も合ったのだろう。
女は色を潜めて、にこにこと微笑んで、きょとんとする彼の顔を覗き込んだ。

ケストレル > 悶々とする自身と対照的に、無垢な呆け顔をする女
一体何が本当なのか、全てが本当なのだろうけれど、
深く考えれば考えた分だけ深みに嵌りそうで末恐ろしさを感じるケストレルだった

「別に良いんすよ、初対面で莫迦な事言った俺の自業自得
 夜宵さんが謝る必要なんて無いっす、もう……」

謝られればそれはそれで、自分に対し情けない気持ちになる
こんな事なら最初から下心全開で声掛けりゃ良かったな、と考える程には
如何にも、こう言った駆け引きは不得手であることを再認識して今後に活かそうと思うケストレルだった
……どう活かすのか、そもそも活かせるのかは知らないが

「――またそういう事言う……
 どんな顔すりゃ良いのか分かんなくなるじゃないっすか」

物理的な距離が縮まり、夜宵の気配が強まれば否応にも意識は向けざるを得ない
頭を撫ぜられ、上背の差から僅かに撫でやすいよう身を屈めれば、自然と視線は襟元へと向く
さっきの今なのにそこを見てしまう自分に流石に苦笑が漏れるケストレルだった
酔いはまだ醒め切っていないのだ、とみみっちく自身に言い訳をして

「っ、大丈夫っすよ……見ての通り頑丈なんで」

が、夜宵の顔がひょいと覗けば、バツが悪くなり顔ごと目を逸らす
自分という男の情けなさを散々自覚させられたケストレルだった

夜宵 > くすくすと笑いながら、夜宵はもう一度、男の頭を撫でる。
手つきはやさしく、けれど何かを弄ぶような緩やかさがある。
嘘も偽りもなく。夜宵は、本当の事しか伝えてはいない。
何かを隠すわけでもなく、揶揄することもなく。

「…ふふ。吃驚させたみたいだ。…どうする?一杯奢ろうか?」

女は――とっくに酒の熱以外の感情を醸し出すケストレルへはいたわる様な色を醸し出していた。
最初の時の勢いはなんとやら、傍から見れば、
新参者から慰めているような雰囲気にも見られようか。
奢るといったのちの、奢り返し。聊か悪戯めいていたか。

「――どんな顔したらいいか分からないなら、今の顔、見せて?
 多分それが、答えかな?」

言葉は、風のよう。強く吹きすぎず、けれど確かに心の表面をなぞるように。
手つきもその通り、優しく触れるように行われた。
視線に気が付いても、女はきっと気づかない振りをした。

「……それに、そう応えるってことは――
 君がそれだけ真剣になってくれるってこと、なんだよね?
 もっと、冗談で流されるかと思ってたから…なんだか嬉しいんだよ
 私は君の、そういうところが好きだな。」

恐らくは、多分、ひとたらしの言う言葉。

ケストレル > 頭を撫でる女の手付きに、経験の差を感じ取った
きっとこの国に辿り着くまでの間、似たようなやり取りもあったのだろう
みっともない様な、それも無理もない様な、そんな気持ちでケストレルはただただ大人しく撫でられていた

「別に良いっすよ、今回は俺が奢る
 詫びとかそういうの一切なく、夜宵さんの冒険者としての第一歩を祝してね」

どちらが新参者か傍目には分からないけれど
それでもこの国の冒険者の先達として歓迎の気持ちは表したい
その前に随分と格好悪いところも見せてしまったけれど、酒の席という事で流して貰いたい気持ちも無きにしも非ず

「今の顔って……こんな顔っすよ
 見たとこで面白いもんでもないっしょ……」

女へと向ける表情は、情けなさ照れや気恥ずかしさや情欲や嬉しさが入り混じって強張っていた
日頃の飄々とした彼や、険のある凛々しさを知る同業が見れば笑いそうな、青年になりたての子供じみた表情
それがどんな答えに繋がるのか、ケストレル自身にはさっぱりで

「美人の言う冗談は冗談に聞こえないっすからね! 今のも!
 はー、もー……いっそ前後不覚まで酔ってから声掛けりゃ良かった
 ……けどま、これまでの痴態に加えて酔い潰れた姿まで見せらんねえな……」

時々投げ捨てられるとは言え、プライドは人並みに持ち合わせている
異性の前でこれ以上格好悪いところは見せられない、とジョッキに残っていた麦酒を飲み干して
その後は一度吹っ切れて、酒を楽しみつつ、夜宵に冒険者としての初動を教えたことだろう
ついでに宿も定まっていない様なら、今居るギルドに併設された宿屋を勧めたりもしたのだった―――

夜宵 > その一連の言葉を聞いて、心の機微をなぞるような眼差しで、
静かに彼を見つめていた。照れ隠しに笑い、冗談めかしてはぐらかし、
それでも隠しきれず垣間見えてくる、真っ直ぐな好意と――ほんの少しの、弱さ。

「今の顔、ちゃんと見たよ。……ふふ、ありがとうね。隠さず、見せてくれて。」

柔らかく低い声。少年のような口調でありながら――その響きには
芯の強さと、女の包容が微かに混じっていた。
そして少しだけ、言葉を区切る。手のひらが彼の髪に沈む。今度は明確に――撫でた。

「……ぜんぶ、君だったんでしょう。
 それなら、いいと思うよ。私、嘘よりそっちの方が好きだな」

夜宵はそう言って、目を細めた。
してしまった失態をなぞる様に触れながら、
それをなぞる指先が彼を心地よくなるように。

「じゃあ……奢ってくれるって言うなら、遠慮なくいただこうかな。
 お仕事前の一杯、大事だから」

一呼吸おいて、指を口元に中ててほほ笑んだ。
どことなく親密で、隣に座る冒険者の先輩への甘え。
それは礼なのか、情のようなものか。ただ、真っすぐに瞳は笑っていた。

「……そういう時はね。
 真っすぐに、真剣そうな目をしてさ……"見たい"って言えば良かったんだよ。」

それだけ言って、微笑んだ。
気取らず、気負わず。それでも、言葉のどこかにはちゃんと覚悟があった。
宿の話には、軽く頷いて答えた。そう言って、女はスツールから立ち上がる。
そして、ケストレルに向かって片手を差し出した。

「さ、案内して。……この国のやり方、教えてね?」

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からケストレルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」から夜宵さんが去りました。