2025/08/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にイヴさんが現れました。
イヴ > 夏季、長く空を明るくしていた陽が暮れる頃合い。
西に追いやられる夕焼けと東の空から染まる藍、あと一時間もすれば月と星が満天に輝くだろうよく晴れた日に、平民地区の路地を歩く少女が一人。
誰と連れそうでもなく、大通りの道を歩く足取りは少し遅く、手には職業斡旋所が配布している求人広告。

「……はぁ……」

選ばなければ稼げる職はいくらでもあるとは言うものの、それに見合うだけの地力があるかと言えばそうでもなく。
力はない。足が速いわけでもない。知識がずば抜けているどころか記憶がない。
魔力はあっても操作に長けるわけでも、魔法に覚えがあるわけでも、辛うじて使える癒しの術もささやかなもの。
肉体労働も難しく、事務作業が出来るほどでもなく、深い医療の心得があるでもなし。
結果として、稼ぐなら文字通り"体"で、となってしまい、いくつかの娼館を紹介されたところ。ため息も出る。

「……役立たずだなぁ、わたし」

ネガティブに偏ってしまう思考を払うように、首を横に振る。
完全に暗くなる前に、世話になっている宿へと帰らなくては。
足取りは一向に軽くはならないが、こんな自分にもよくしてくれている人に心配をかけるわけにはいかないと、宿場通りまでの道を歩く。
近道をするなら路地裏を通ると早いけれど、入り組んだ路地裏には決して入ってはいけないとも言われていて、少し遠回りになるものの細い足を動かしながら帰路を急ぐ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアシュベールさんが現れました。
アシュベール > それは自分の店で使う魔具の材料を仕入れ――平民地区の路を歩く。
魔物起因の素材は自前で用意できても、平民地区で取り扱っているような質の良い加工品は自前では用意できない。
大きな紙袋には、そういった「冒険者」であれば何に使うのかが分かりそうな素材が沢山。
それらを持ち、自分の根城かつ、店がある貧民地区に向っている最中だった。

人通りの多い時間。
何せ、その少年は子供のような体格であり、幾ら魔王と呼ばれる存在だったとしても、誰かにぶつかれば身体が揺れる。

「おっとっと……うへ。あー、ごめんなさい。」

しかも、その両腕に大きな荷物を持っていれば、尚の事普段よりも歩みは危なっかしい。
結果的に、歩んでいる最中にちょっとしたアクシデントのひとつやふたつ、発生してしまう。

――ころん。

身体を傾けた瞬間、小さな音を立てて舗装された路に落ちたのは、
すりつぶしてポーション通り混ぜる事で、その効果を底上げする果実。
しかし、その形状から、ころころと。まるで童話のようにまっすぐ――ころころと斜面がちな路を転がっていってしまう。
其処に誰かがいなければ、大きな荷物を持った少年では追いつくのは難しく。

「あー……すみませーん……。ちょっと、取ってもらっていい、かなー……?」

丁度、真正面にいる一人の影。そう、少女に声書ける。
気づいてもらえるかは、はたして。

イヴ > これからどうしたものかと考えて歩いていると、誰かの助けを求める若い少年の声が聞こえてきて顔を上げる。
ころころと地面を転がってくる果実のようなもの。丸みのあるそれを屈んで拾い上げれば、その向こうには大きな紙袋を両手に抱えた小柄な人物が視界に入り。
眼鏡の奥の青い眼を瞬かせた後、小走りに彼の元へと歩み寄っていけば、拾ったばかりのその果実を向けて。

「えっと、これは君のものであってるかな…?」

差し出した果実と似たような果実も紙袋の中に見て取れば、きっと彼のもので間違いはないと思うが、念のため確認をして。
一体こんな大荷物を持っている彼は何者だろう。買い出し、にしては見たこともないものばかり入っているように思えて、不思議そうな表情を浮かべながら目を瞬かせる。

「重そうだけれど、大丈夫? もしよければ、運ぶのを手伝うけれど」

自分よりも小さくて小柄な少年が、重い荷物を持っていることを心配してもしよければと運ぶ手伝いを申し出て。

アシュベール > 声掛けに、向かいに居た彼女は気付いてくれたらしい。
転がったそれは丁度つま先に当たっただろうか。
それならば、拾いやすい。それを屈んで手に取ってくれた少女の元に駆け寄り――。

「あー、ありがとう、ありがとー。うん、ぼくのだよー……。
 いやー、大事な材料だから、無くしたくなかったから助かるよー。」

ふにゃり。と人の良さそうな笑みを浮かべ、確認してきた彼女の顔を見上げて見せる。
メガネ越しの青色の瞳を見詰め返しながら、不思議そうに視線を送る彼女の提案には――。

「……あはは。うん、確かにちょっと重たいかなー。
 最近、本業を少しだけ怠ってたから素材がなくなっちゃってー。
 ……んー。その申し出は嬉しいけどー。ぼくの店は、あっちなんだけど。お姉さんは大丈夫ー?」

小首を傾げ、視線を送る。
其処には先程まで、彼女が向かうことを阻んでいた路地裏につながる路。
そして、この王都で過ごしていたのなら、そちらに何があるかはわかるだろう。
――貧民地区。ある意味、路地裏よりも色々と危うい存在が跋扈する場所。
少なくとも、平民地区を根城にする冒険者にはまったく無縁なところであるが。

イヴ > 間違いなく彼のものとなれば、迷うことはなく紙袋の中へとそれを返そう。
落ちないようにはなっているものの、誰かにぶつかったりすれば衝撃で中身が転がってしまいそうな様子。
本業、という言葉には、こんな小さい子ですら働いて仕事をしているのだと思うと、仕事が見つからない自分の不甲斐なさにまた胸が苦しくなり。
しかし今はそれを気にしている場合でもなくて、気を取り直す。
手伝えることがあれば手伝おう、と意気込んだものの、続けざまに少年が向けた視線の先は、宿屋の店主や冒険者たちから「絶対に一人で近づいては行けない場所」として懇々と教え込まれた場所だ。

「あ……。……えっと」

手伝いを申し出たものの、まさかの貧民地区につながる路地裏の方を示されて驚きで目を瞠る。
こんな小さな少年が、貧民地区のお店で働いていて、しかもこんな重そうな荷物まで。
どんな雇い主なのかと憤慨する気持ちも芽生えるのは、完全に勘違いをしている証拠で。

「大丈夫ではないんだけど……君を一人にする方が、放っておけないから」

危険な場所とは言われているが、実際どんなところなのかはわからない。危険であるという認識があるからこそ、真面目な少女は一人で彼を行かせられないと思い。
それでも、小柄な少年と非力な少女の組み合わせで安全になるわけでもないので、諫められれば大人しく忠告に従うだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアシュベールさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアシュベールさんが現れました。
アシュベール > かさり。と音を立てて紙袋の中に戻される果実。
其処から覗き込めば、果実だけではない。小麦粉等の日用品から、何に使うか分からない密閉容器に入った液体等。
まさか、眼の前の彼女が仕事を探している。なんて事実を知る由もない少年は、無害そうに自分の実情を語った。
更に、何処に向かおうとしているのかを告げれば、流石に相手は狼狽の様子を見せる。

「――――。」

彼女がそんな反応をするのは当然だ。
何せ、其処には浮浪者だけじゃない。冒険者として堕落した荒くれ者。
他にも、非合法なものを取り扱う闇商人。色々な意味で危ない存在がいるのだから。

勿論、其処を根城にする少年からしてみれば、それらはお得意様であり、なんとでも出来る存在なのだが。
自分のことを心配している。ということは分かる。
分かるからこそ、特に訂正はしない。寧ろこのまま、厚意に甘えるつもりであり。

「……んー。そっかー。
 それなら、お言葉に甘えようかなー。……ああ、大丈夫大丈夫ー。
 こう見えて、色々と対応する道具とかも持っているしー。
 それに、重たいのは事実だからねー……。――ん、お姉さん。これ、どうぞー?」

なので、彼女が自分の気持ちを鼓舞し、貧民地区に向かうのと手伝ってくれるのなら。
お礼。というわけではないが、抱えた紙袋の中から――ひとつ、飲み物を取り出す。
本来は、ポーションと混ぜて飲料としての完成度を高める、甘い炭酸水。
そのままでも飲める液体を報酬とし――彼女と共に自分の店に向かおうと考えて。

イヴ > 記憶もなく、話に聞いた程度の貧民地区。実際少女よりも、少年の方がその区域をよく知っているのだろう。
だが、小柄な彼の容姿が勘違いに勘違いを呼んで、少女は年下の幼い少年にしか見えない彼の手助けをしようと、そう思った次第。
その危険な区域に店を構える店主のが少年自身だとも、少年がただの人間ではないことも、少女の思考は至らない。
手助けを必要とする人がいるのであれば手を差し伸べる。
その厚意を受け取って貰えれば、ほっと安堵の息を吐いた。

「そう、なの? すごいね…そっか、自衛の手段は大事だもんね。
 えっ……あ、ありがとう」

紙袋の中から取り出された瓶詰の液体。どうやら飲み物らしい。
瓶の中に気泡がたつ様子に炭酸なのだとわかり、手伝いに対する彼からの対価、あるいはお礼なのだと思い、数度瞬きをしたあと笑みを浮かべて礼を告げる。

「それじゃあ、少し荷物を持つの、手伝うね?」

肩から掛けたポシェットから、買い物袋を取り出す。それにすこしだけ分けて貰えば、彼も楽になるだろうと考えて。
果実や他の日用品を少しばかり移し、何に使うのかはわからないものは触らないように心がけて。
そうして改めて息を吸うと、彼と共に路地裏に入り、貧民地区にあるという彼のお店へと向かって。

道中緊張気味ではあるものの、訥々と会話を交えながら進んだかもしれない。
自分の名前がイヴであることとか、彼の名前を聞いたりだとか、冒険者の宿で働いていること、他にも仕事を探していること。
店につく間に、少年のことも聞ける範囲で訊ねただろうか。

アシュベール > 「――あー、ぼくの店はそういった道具も取り扱っているからねー。
 試作品を、文字通り試したり。そういった意味でも、自衛の手段は設けているってわけー。」

そう告げ、そっと厚手のローブから見せるのは、指につけられたここのつの指輪。
少しでも魔力の素養があれば、かなり高純度な魔石を埋め込まれ、指輪自体も魔力伝導率の高い素材で出来ているのが分かるもの。
流石に、この道端でどんな自衛の手段を持つのかを実演することはないが。
それだけの道具を持っていれば、ある程度は対応出来るのだろう。と、彼女に理解させる筈。
とはいえ。
彼女からしてみれば、子供に分不相応な道具を持たせた店主がいるのでは?なんてさらなる誤解を与えるかも知れないが。

「んー? どういたしましてー。
 ……お店をやってるからねー。然るべき対価ってやつだよー?」

厚意には甘えるが、それはそれとして自分は商人。
甘えてばかりではない。というように差し出した飲み物を受け取ってもらえたなら、何処か満足げ。
荷物を持つ。という彼女の言葉には、頷いて。
少しだけ路地を横にずれ、その荷物分け作業を手伝うことになる。
小瓶などのこぼれたりしたら危ないものはこちらに。果物や雑貨などに関しては、彼女の買い物袋に。
数キロ分軽くなった袋を、少しだけ折りたたんで視界を確保し、
そのまま彼女とともに貧民地区に向かうことになる。

こちらも、自分の名前はアシュベールであること。友人からはアシュやアッシュなどと呼ばれていること。
貧民地区で過ごしていることと……。彼女の"仕事を探している。"その言葉に、きょとんとして。
此処で思いついた言葉は貧民地区に到着してから告げることになるだろうか。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアシュベールさんが現れました。
イヴ > 【次回継続】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からイヴさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアシュベールさんが去りました。