2025/06/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 廃神社」にキタさんが現れました。
キタ > 街外れの朽ちた石畳。その参道の先にある廃屋然とした神社。
鬱蒼と茂る木々と玉砂利を押し退け踝辺りまで伸びる草々のおかげか
木陰に入れば涼を得る事も出来るだろう。

そんな神社の手水舎より流れる水路の横。これまた古びた草刈用の長い棒を手にまるで箒で掃き掃除をするよう水路の脇の草を刈り取ってゆく。
誰かが足を踏み外す事の無いように。草木が水路を塞いでしまう事の無いように。

「──皆が良い水にありつけますように。」

昨晩自ら湧水を汲み上げた甘く清涼なもの。水路の水でもいいから飲まなければという困窮者か手水舎に来なければきっと味わう事のないだろう物。

朝日に照らされる緋袴は緑茂るその中ではひと際目立っていただろう。
参道の入り口、表通りから覗けばもしかしたら見えるかもしれない、
そんなところで足を止める。水路の清掃はこれで終わり、と。

キタ > 木々の隙間から降り注ぐ陽が、もう随分と高くなった。手で額の上を隠しながら見上げる空は抜けるように青い。

草刈用の長い棒を手にしたまま、また社殿へと戻ってゆく。
毎日の決まり事。掃除や手水舎の整備に勤しむ午前──

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 廃神社」からキタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」に憂炎さんが現れました。
憂炎 > 目抜き通りのそばにある大広場。
日中は、主婦の井戸端会議やらご近所さんの散歩やら買物帰りのひと休憩やら、等、等、
色んな人たちが色んな目的で賑わっており時には蚤の市などの催し物もされているが……
日も落ちてくると賑わいはどんどん少なくなって日が沈んでから暫く経てば閑散としたもの。

「よっ、こい、しょ」

かつ、こつ、かつ、こつ。

そこに硬い靴の音色を立てながらやってくるのは夜中でも黒眼鏡の男が一人。
茹だるような暑さも鳴りを潜めて夜風が気持ちよく且つ耳が痛くない時間を選んでやってきた、無職の盲。
日課の散歩。
噴水が水飛沫を上げる涼やかな音が大きすぎず小さすぎずの位置にある長椅子に、
見目は若いが掛け声といい仕草といいはどうにも年寄りくさい具合に腰掛ける。

「あら、しまったな」

腰に下げた小物入れを漁って水筒を探したが、探っても探っても見つからない。
どうにも逗留先に忘れてきたようで迂闊に愚痴を一つ零してから、
『まあそんな長居する訳でなし』と諦めて肩を竦めた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」に枢樹雨さんが現れました。
枢樹雨 > 降り注ぐ陽光に熱された地面が、やっと温度を下げた頃。
空を揺蕩うことに飽いた妖怪は、涼を探しに王都の喧騒に紛れ現れる。
少し前に見つけた涼は、両手の中。
ガラス製のボトルにたっぷりと注がれたレモネード。
添えてもらったストローに口をつけ、少しずつ味わい乍らに大広場を歩く。

から、ころ、から、ころ。

舗装された地面に、白木の下駄が当たる音。
それに重なる水音があれば、自然と歩みが止まり、目線誘われる。
見つけたのは広間のシンボルたる噴水。
淀みなく水を噴き上げ受け止めを繰り返すそれに近づけば、跳ねる飛沫が心地良い。

多少濡れても構わぬと、噴水に背を向け、そのふちに腰掛けようとしたその瞬間。
視界に入り込んだ男性ひとり。
長椅子に腰掛ける様子をじぃ…と見つめること数秒。
再び下駄を鳴らし歩き出せば、貴方の前まで真っ直ぐと。

「…………あんみつ。」

貴方が場所を変えることなければ、正面で立ち止まり呟きひとつ。
長い前髪の下から視線注ぐまま、ずいぶんと前にご馳走してもらった甘味の名を。
第三者が其処に居るのなら、その甘味の名が貴方の名前かのように。

憂炎 > からころ。
軽やかに奏でられる、王都ではあんまり聞かない下駄の音。

(おや、これは珍しい……)

そう思って耳を傾けると……
響き方と歩幅からして、女性、風と噴水の音に交じるのは、着物のはためき。

(ああ)

物覚えがあった。彼女はしばらく噴水にて涼を取っていた様子だが此方に気付いた頃合いで、ひらり。
手指を開いて肘を持ち上げればのんびりとした仕草で『やあ』といった具合に挨拶をばひらりひらり。
からころ。
ともすれば、夜風の一つでも浮いてしまいそうなぐらいに軽い調子でやってきた相手にそこで漸く、

「ひさ、んっふ」

久しぶりと声を上げそうになったところで『あんみつ』などと呼ばれてしまえば笑気で挨拶が途切れた。

「枢ちゃん。それだと、俺の名前が『あんみつ』さんだよ」

くつくつと喉も肩も鳴らしながらそれを指摘して、黒眼鏡と、面白そうに撓んだ綴じた瞳が隠れた瞳に真っ直ぐに向く。

枢樹雨 > 視線注げば応えるように持ち上げられた手。
此方の両手はレモネードによって塞がれている為―――否、塞がれておらずとも持ち上がる手はなかったか。
魔導灯によって明るさ保たれた広場を危なげなく歩けば、貴方のもとへはすぐ。
心地良い夜風が鬼角隠す白絹を揺らし、衣擦れの音を奏で。

「だって、名前…」

腰掛ける貴方を前髪越しに見下ろす己と、黒のグラス越しに此方を見上げる貴方と。
視線交わせているかも怪しいが、其処に疑問と不安を抱かぬ妖怪。
それは貴方が盲目と知っているが故。
しかし名を訪ねた覚えはなかった。…はず。
貴方が己の名を呼ぶから、そういえばあんみつをご馳走してもらうとなり名を名乗り合ったのだったかと少し首を傾ぐ。

遡る記憶。あれは初めての夏だった。
肉体を得て1年と少しの短い期間。その中に納まる記憶。
そのはずであるのに、不意に別の光景が頭を過る。

王都ではない場所。死臭と乾いた砂埃の匂い。
其処で聞いた、『憂炎』と名乗る声。

「憂炎…」

無意識に、反芻し。