2026/03/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に篝さんが現れました。
■篝 > 真昼の空は雲一つない良い天気で、今日も平民地区の大通りは賑やかに行き交う人々の雑踏が響いている。
露店の客引きの声に、楽し気におしゃべりをして歩く若者たち、路地裏の方からは喧嘩でもしているのか呻き声や悲鳴もが聞こえた気がしたが、いつも通りの事なので気には留めなかった。
体調を崩し寝込んだのは一週間以上前の事。
思いの外長引き床に伏せって体力が落ちた気がするのは否めない。
数日ぶりの外出は、少し街中を歩いて回る程度に抑え、夕方までには富裕地区へ帰るように言いつけられて。
お供として付き添ってくれる小さな毛玉……もとい、執事服を着たシマリスは、深く被ったフードの首元で襟巻のようにくるりと巻き付いている。
こほんっ、と小さく咳き込むと、シマリスが顔を上げて見上げて来る。
それを宥めるように顎の下を擽ってやりながら少女は呟いた。
「……少し、咽ただけ。もう元気。問題ない」
じぃっと見つめるつぶらな瞳はなかなか逸れず、心配そうにしていた。
ペットは飼い主に似ると言うが、使い魔の場合もそうなのだろうか。
少女はそんな事を考えながら、通りかかった雑貨屋の前で足を止めた。
■篝 > 店先に置かれたワゴンの中に、置物やコースターなどの小物類が並ぶ。
陶器の置物は色んな種類があって、猫が伸びをした形のものや、リスが胡桃を抱えて眠っているもの、犬がお行儀よく座っているもの等々。子供や女性が喜びそうな愛らしいデザインが多い。
「…………リスはいるけど、モモンガは……いない。残念」
モモンガの置物もあれば買っても良かったが、流石にニッチな動物は無いらしい。
片方にだけお土産を買えば、きっと拗ねてしまう。残念だと小さく息を吐いて首元のリスを見やる。
つぶらな瞳は自分よりも一回り小さいリスの置物を見下ろして何を考えているのだろうか。
屋敷で留守番をしている先輩のことを思い出していたりするのか、それとも胡桃が食べたくなったのか。
ひくひくと動く鼻に合わせて髭が揺れるのがくすぐったい。
「んー……。ん」
花より団子。玩具よりもおやつ。二匹へのお土産はやはり、木の実か果物にしよう。
そう思い直し、少し道を引き返して果物屋へ足を向け。
林檎の他に丁度出回り始めた苺をじっくりと吟味して選ぶ。
こういう時は野生の鼻がよく利くらしく、したたっ、と台の上に降り立った執事姿のシマリスが、小さな両手で苺を一つ抱え上げ、じーっと見つめたり、匂いを嗅いだり。
実にモノクルが似合いそうな真剣な顔で、まるでソムリエのように一つずつ選んで篭の中に入れていく。
そうして厳選に厳選を重ね、選び出された赤い苺は少々値段が張ったが悪くない買い物だった。と、思う。
「……ありがとうございます。クロジロウ、行くよ」
言われた値段を店主に支払い、小さな包みと交換して。
少女は大切そうに右手で抱え込み、一仕事終えてやり切った感を漂わせるリスを左手に招き、腕を伝って駆け上がった毛玉は慣れた様子で元の通り少女の首に尻尾を回して巻き付いた。