2026/02/04 のログ
> 真黒で大きな毛玉をそーっと撫でて見るが、人慣れしている猫はその程度では何でも無さそうな顔をして、我が物顔で陣取ったままだった。
なので、少し強引にわしゃわしゃと背中を撫でて、隠された腹側も指を差し込み撫でてやる。
すると、猫は迷惑そうな顔で此方をチラリと見上げ、一鳴きしてまた丸まって。擽り、耳を撫でても平気なようすで、時々余裕ぶって欠伸をして見せる。
午後は特に予定も無いし、この極上の湯たんぽをもう少し堪能するのも悪くない……かもしれない。

「……んなぁー……暖かい……。ふかふか、やわらか……」

もこもこ冬毛の暖かさときたら、極上、至高の触り心地。毛皮の下についた皮下脂肪もたぷたぷと柔らかくて、きっと普段から美味しいご飯を沢山食べているのだろう。
魅惑の黒い毛並みに指を埋め、乱してしまった毛並みを綺麗に整えていると、またどこかから『にゃあ』と声が聞こえた。

「……?」

右を見ると、いつの間にそこに居たのか、茶虎の猫が隣の席に座っていた。
また、『にゃあーん』と声がして、反対側を見ると、キジトラの子猫がピンと尻尾を立てて此方に駆けてくるのが見えた。

「???」

一匹加われば、また一匹、今度は二匹、その次は……。
と、何故なのか。気付けば少女の周りには猫が寄り添い、ベンチの上は定員いっぱいまで猫がひしめき合う密集地と化していた。

> 冬空の下、日向ぼっこの地を探し寄り添い合う小さな毛玉たち。その一匹としてカウントされてしまったらしい少女は、猫の群れに埋もれながら微睡み目を細める。
熱と寒さ、両方に強い特別製のケープは猫たちの間でも人気らしい。もぞもぞとケープの下に潜り込んで隠れんぼをする子猫と、そんな子猫に頭を踏まれて、灰色の成猫は少し迷惑そうな顔をするが移動するつもりも無いようで。
皆心地よさそうに昼寝を楽しんでいる。

あと三十分……いや、半刻だけこのままで居よう。
時間が来たら、一匹ずつ猫を下ろして、ギルドに寄って、買い物をして……。

「ふぁぁー……ん、く……」

膝の上を陣取る黒猫の大きな欠伸につられ、ついつい少女も欠伸を漏らし、うとうとと瞼を閉じつつ。
手近な猫の頭を撫でながら、暫しのんびりとした冬の日を過ごそう。
慌ただしい日常の中、こういう何でもない時間が大切なのだと、人は言う。
今はまだよくわからないけれど、きっといつか、わかる日が来るのだろう。……多分。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」に影時さんが現れました。
影時 > 寒い日も、雲間から太陽が顔を覗かせれば少しは温かくなる。
温かいというのは、動きを始める実に良いきっかけだ。
閉じこもったままでは腹が減る。金も稼げない。であれば出かけられる時に出かけて、仕事の当てを探す。
頑張れる冒険者なら、寒かろうが雨だろうが、兎に角早い時間から出て、仕事を探すことだろうが。
さて、そんなピークタイムを過ぎた頃合いの平民地区にある冒険者ギルドを訪れるのは。

「……嗚呼、すまんね。先日完了報告を挙げた依頼、どうなってるか知りたいんだが」

冒険者ギルドの受付に立つ受付嬢。見知った風情の姿に片手を挙げつつ、先日完了させた依頼について問う。
人探しだ。家出人、行方不明者の探索ではない。貴族のご令嬢に呪いをかけたという如何わしい呪い師の探索。
星辰が整ったと地下水道の隠れ家から這い出てきた処を待ち受け、捕縛し、依頼者の遣いの者に引き渡した。
最終的な結果は兎も角として、報酬はその際直ぐに支払われるわけではない。ギルド経由での支払いだ。
『確認しますね』と奥に引っ込む姿を見つつ、カウンターに寄り掛かれば、ぴょこぴょこと小さな何かが飛び降りる。

声をかけた者と似た白い服、そして同じ意匠を背負った二匹の齧歯類だ。
花瓶や小物が飾られたカウンターを躍り、走り回る姿を横目にしつつ、気長に待つ。

そうしながら、横目を遣る。別のカウンターで話す男女、何か訴えるようなご老人等々。
このカウンターで応対する者は様々。依頼を受ける者。託す者。思いのままにならぬことを訴える者等々。

影時 > 時間帯のせいか。今日は怒声が響かなくて良い。大声罵詈雑言の類は色々と宜しくない。
飼い主が見守る中とは言え、走り回ったり毛繕いする二匹もそういうものは嫌いだ。匂いからして嫌いである。

「おお。そんな時期だったか。どうするか……と?」

気侭に暇を潰す二匹の齧歯類、シマリスとモモンガたちが何か気付いたように、足を止めて首を傾げる。
何やら季節感ありありな小物が飾られたり、置かれていたのが気になったらしい。
毎年見遣るその形状と、時期からして、おぉと気づく、気づける位にはこの街で暮らすのも長くなったか。
道理で道行く人の有様や、教師として出入りする学院の生徒達もそれとなく浮ついてるわけだ。

――何か作るか、拵えるか。

菓子でも作ろうと思うならば、昔よりやり易くなったのは昨今の環境変化の大きなところだ。
実習の準備等と銘打って、学院の調理実習室を陣取ったりするよりは、より気軽で良い。
家庭科までは受け持ちではないが、料理の実習も需要があるのか否か。それは考えたい処だが、そう思っていたところに。

「――漸くか。いんや、そっちを急かしたわけじゃあないんだが。向こうから減算とかは無いか?それは重畳」

奥に引っ込んでいた受付嬢が戻ってくる。抱えてくるのは書類入れと報酬と思しい革袋と。
そのうち、書類入れから引っ張り出される数枚の書面を提示され、ざっと眼を通す。
仰々しい文句は――さておくとして、依頼通りの完遂結果である旨と、無事にご令嬢にかけられていた呪いは解かれた旨と。
呪い師の処遇に関する一文は流し読みし、報酬に関する条項を見る。都合よい加算はないが、依頼通りの報酬を支払う、と。
予め書類を読み込んでいたと思しい受付の、大丈夫ですよ、という言葉に忝い、と頷き、差し出されたペンを執る。

「此れで良し、と。ついでに何だが、何か俺の等級で受けられるシゴトはあるかね?」

書類に報酬を受け取った旨を記名(サイン)し、請けられそうな仕事の有無を問う。
この時間だ。真っ先にいい仕事は当然ながら捌けている。問うのはそうではない、或いは駆け出しには流し難い仕事。

影時 > そうですねー……と、思案げに受付嬢が台帳を取り出し、ぺらぺらと依頼書の束を捲る。
希望通りのものが必ずある、とは限らないが、仕事の有無、ありなしはこうやって聞く手もある。
勿論、時間帯やタイミングは気をつけないといけない。
早朝から、というのは宜しくない。掲示板に貼られた依頼書を奪い合い、勝ち得たものが我先にと押し掛ける時間帯は駄目だ。
其れなら今位の時間が丁度良い。朝早くから出かけ、夕方に戻るものとかち合わない時間帯が恐らくは角が立たない。

「宛所不明、不詳の届け物、ねェ……」

これなんてどうでしょう?と。開かれた台帳を受付嬢が見せてくる。それを一人と二匹でにゅっと覗き込む。
記された概要、要約に目を瞬かせる。今どこにいるか分からない友人に荷物を届けてほしい、と。
成る程、此れは確かに下手に掲示板に出し難い。流れと段取り次第では、配達完了を偽ってくる場合もあり得る類だ。
ギルド的にもそうだが、冒険者としての質、在り方を問われかねない内容は、ギルドも受諾可能者を選ぶことだろう。
さて、己はどうか。――現状のランクは一朝一夕のものではない。
少なくとも認定するに足る信用と実績の蓄積あってのもの。時偶或る貴族から指名され、ギルド経由で依頼を請けるのもその証。

「……悪くない。即決じゃあないだろう? 候補として頭数に入れておいてくれ。
 注文が多くて悪いが、未完了の依頼も数枚貰っていいか? 直ぐに取り掛かれそうなものがあるなら受諾する」
 
何か感じたのか。台帳を覗き込む毛玉たちが話し込むように顔を見合わせ、ぴこんと尻尾を立ててくる。
珍しいと瞼を瞬かせ、軽い気持ちでエントリーをしておこう。最終決定はギルドと依頼者によるが、こういうのも悪くない。
誰が何処にいるかは分からないにしても、天地が続く限りであるならば何処にでも行き、帰る。それが冒険者というもの。
声に頷き、戻される台帳を受け取って記す受付嬢に頼めば、はい♡とにっこり顔で数枚と言わずに束で依頼書を貰える。
未決、未完了のものはこの時期多い。移動するにも困る悪天候が続くような頃だと猶更。

(……まずったかね……)

うえ、と呻き出すのは堪えつつ、どーもと会釈し、肩に跳んでくる二匹と一緒にカウンターから離れよう。
先刻置かれた報酬の革袋を腰裏の雑嚢に収めつつ、掲示板も見に行こう。もう少し気楽な仕事でもあれば、探したい。