2025/10/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/冒険者ギルド」に影時さんが現れました。
影時 > 日暮れ時を迎えつつある平民地区の冒険者ギルド――。

人の出入りはピーク時を過ぎていても、割合混みあい易い時間帯かもしれない。
朝早く出かけて、夕方遅くに帰ってくる。そういった冒険者達がこぞって戻り、報告を済ませがちな頃合いだ。
だが、冒険者ギルドは冒険者と依頼者の仲介を行っているだけではない。
冒険者の質の向上のため、腕の立つ冒険者に依頼しての訓練、講習と無料、ないし格安で行うこともある。

教導の技能に長けたものによっては、朝に講義を受け持ち、昼に訓練を監督し、夕方に試験を行うようなことすらあるが。

「――へいへいお疲れさん。気をつけて帰るンだぞー」

変則的だが、その例になりそうな者が居る。
午前中は王立コクマー・ラジエル学院で講師を行い、午後の空き時間を冒険者ギルドでの講師役に臨時徴用された者が。
ギルドの建物の奥、教室として宛がわれた場所から三々五々と出てくる若者たちを見送り、最後に出てくる姿が声を放つ。
この辺りに見かける姿ではない。裾長の白い羽織に袖を通し、腰に刀を差した男。
肩上に乗せた小さな齧歯類二匹ともども手を振り、最後の一人まで見送り終えれば、息と共にごきごきと首を鳴らす。

「……しかし、あの教え方で良かったんだろうかねェ。
 依頼されたようにここ最近の獣の動向やら、対処やらを教えたつもりだが」
 
ふぅむと唸りつつ、手元に持った講義用の資料を一瞥する。季節柄的な周知も兼ねた山野に出る猛獣に関するあれこれ。
軽視は出来ない。採取を主にする若手がこの時期、遭遇しかねない動く脅威。
その恐ろしさは自分よりも、肩上の二匹の毛玉がよく知ってるらしい。しなしなとへたる尻尾はあまり考えたくなーい、と云うことか。

「資料と鍵、返しに来たぞ。報酬は……一端溜めといてくれるかね?」

部屋の鍵を閉め、鍵を弄びつつ人語が分かる不可思議な獣と語らう男が、ギルドの受付の列に並ぶ。
暫し待つ、までもない。受付越しに依頼を廻してきた事務員に手にしたものを渡し、今日の報酬の扱いについて声を通す。

影時 > 何も無ければだらだらと――という生活は嫌いではないが、昨今の情勢、状況を考えると難しい。
気に掛かることも幾つかあるけれども、喫緊の課題、問題が浮上している。
一言で云うならば金策だ。何を莫迦なという意見は否定しないが、安く見ていられることでもない。
まとまった金はどれだけあっても困ることではない。新たな生活が始まる時は、近い。そう思えば尚の事。

「早めに受け取って欲しい? そりゃ御尤も。心に留めとくとも。
 あとついでに、なンか稼げそうな仕事でもありゃ良いんだが。……朝に並べって?ははは、無茶を云う」
 
とは言え、事務員としては金銭の動きは出来る限り安定させたい、のかもしれない。
顔馴染みとはいえ、そんな気配を言葉から察しつつ肩を竦め、ついでとばかりに仕事の有無を尋ねてみよう。
中級以上、上級ランクに踏み込める実力者、能力者でなければ斡旋できないものが――、そうそう転がっているものか。
それこそ毎回尋ねられる側とすれば、耳に胼胝ができる位のことに恐らくは他ならない。
有れば、その時居合わせたものに、真っ先にお呼びがかかるであろう。前日遅くに受け取ったものを朝に回す、みたいに。

今や純粋な冒険者ではなく、色々と掛け持っている身には耳が痛い話である。
単純な話、確実に溜めたい、稼ぎたいならば、別の表向きの本業の方が確実に稼げるのだから。

とはいえ、だ。冒険したいオトシゴロには変わりない。変わりない筈である。