2025/10/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にネーラさんが現れました。
ネーラ > にわとこ商店。
ネーラの店である雑貨屋、その一階のカウンターで店番しながら町内会のパンフレットを読んでいる。
寒風を防ぐため店のドアは閉めてあるが、店の前の立て看板には「営業中」と書かれている。お菓子あり〼、とも。

「10/31。ふーむ」
今年も地区の子供にお菓子を配るべきか。
「10/29まではできるが、10/30は無理じゃな…」
31日の未明深夜には儀式を行うので。
ことに死者の霊魂が蘇るとされているこの日は、魔女にとって別格の意味がある。曰く一年が終わり新たな年が開くのだと。
魔女は正教にとっては異教に等しく、諸派あるがもっと土着の信仰に根ざすものどももいる。

紙巻きタバコをカウンターの裏の引き出しから取り出し、先端に片手の人差し指を当てる。極薄の火の力を指先に形成し、着火した。

思案気に紫煙を吹く……

「まあどっちかに決めればいいのじゃが…」

ネーラ > 200年を生きる魔女として、独立した脅威すなわち魔人として世を乱し縦にすることもできたが、熟慮の結果普通に生きることを今は選んでいる。

例えば労働し、近所付き合いをする。
納税をして商工会なり魔術師ギルドと関係を持ち、社会との接点を作る。
そう言った枠の中で適度に人の役に立つ。

かかる方法で折り合いをつけるのは、結局平和な生活の秘訣である。

彼女が仮に力を極め世の決まりを蹂躙したとする。
すると別の決まりも破壊したくなる。
何者にも従わない自由を追求することは無限の拡大を意味し、これを以って混沌に至る。
混沌が極まり、不定無尽の力そのものまで成り果てた時は。人界すなわち生きとし生けるものの無意識の総意として勇者が選ばれ、征伐されるは必定。

「……美味しく食事ができなくなる、どこにも行けなくなる。どこにもいられなくなる。孤高を気取り新秩序だ新しい世界だと言ったところで、誰もいない世界では何も生まれぬしな…」

つまり、日常を満たす愉快など一つもない世界ができる。
手間がかかる割に何も面白くない。

「面倒じゃの…」

だのにそんな面倒をやりたいという魔道の輩が時々いるが、かかる嘴の黄色いひよっこ、ケツの青い小童どもは本当にメテオストライクで強めに叩いてやりたい。先達としての勤めである。

ネーラは童貞を殺すセータースタイルのミニワンピースを着、肌色のタイツを履いている。
足フェチが拝跪したがるような美脚を組んでタバコ吹かしているが、カウンターの裏側の脚など外からは見えない。

ネーラ > このようにいても、人が来ない日も普通にある。

自営業であるから、売上は立たない。

だがそれはそういうものである。200年も生きていれば大抵の物事は循環するということがわかってくる。

例えば40年前の着こなしが今、再解釈されて流行するように。

故にできることをする。
あとは天に任せる。


このネーラは世に、魔女としての別の名で賢者と言われているが、そう面白いことや大発見などはない。
均衡を保つ方法はただ一つ、時流を読みバランスをとる、この一点だけ。

たとえ冨貴を極めたところで、今の世相を見よ。書物にあるように、貴顕の没落、富豪の零落、常にある。なぜそうなったか?度を越したから。

「まあ、月の売り上げさえ立てば、あとはどーとでも、な…」

ガラスの灰皿にジリジリとタバコを押し付けて消す。

外は通り雨。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からネーラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――パラパラと降り出した雨がすぐにサァ――と勢いを増して街を濡らしていく。慌てて閉店している店の軒先に走り込んで、雨空を見上げ。両肩を抱くようにして小さく身震いし、

「――やみそうにないなぁ……」

 嘆息混じりに呟いた。
 そこは賑わう大通りのひとつ、悪天候ではあるが人通りもそこそこあり、行き交う人々はきちんと傘を準備して差して歩いていたり、ひとつの傘に仲良く二人だったり、なんなら三人でぎゅうぎゅうに入っていたり、諦めてダッシュしていたり、濡れて行こうと決め込んでびしょ濡れになりながら悠然と行き過ぎていたり……それぞれだ。
 そのどれでもなく、雨宿りコースを選んだけれど、このまま雨がやまないのなら、ダッシュか歩くか、雨に濡れるのを覚悟しなくてはならないだろう。

「……あーぁ……誰か親切で暇な人が……そっと傘を差し掛けてくれたりしないかしらぁー……」

 試しに独り言の素振りで、聞えよがしにアピールしてみる。
 物好き……もとい心ある通行人がいる可能性も……限りなくゼロに近いがゼロでではない……と信じたい。

「………かしらぁぁ~?」

 目を皿のようにして周囲をうかがいながらやたらはっきりとのたまうものだから……むしろヒかれている気がする。見事なまでに目が合わない。目が合ったら最後だとでも思われているような。逆効果のお手本か。

ティアフェル > 「………………」

 往生際悪く浅ましいアピールをして、期待した眼差しできょろきょろと通りをガン見しながら、しばし待つ。

「………………」

 待つ。

「…………………………」

 待ちくたびれ。

「……かしらなかった……」

 かしる訳がなかった。分かり切っていたことだが。そんな自分に都合の良い展開など端から望むものではない。
 ふう……と青息吐息で頬を掻き。せめて自分がしっとりと雨の似合う目の覚めるような美女であれば……事情は変わっていたかも知れない。
 そんな僻みっぽいことを考え、ちぇー。と足元の小石を蹴って勝手にやさぐれていたけれど。

「―――ん……?」

 その時、同じ軒先に走り込んでくる影に気づき、目を瞬いてそちらを向いた。

ティアフェル >  冷たい雨に降られて同じく軒下へ逃げ込んできた同じく雨宿りにすすっと避けて場所を譲り。

 そうして静かにまだやみそうもない雨模様を見上げて小さく溜息をつく。
 やがて少しは小降りになってきた頃合いを見はからって駆け出して――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティアフェルさんが去りました。