2025/10/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアレハンドラ・アルディオーラさんが現れました。
■アレハンドラ・アルディオーラ > 金の鉱脈が見つかった時、儲かるのは採掘者より寧ろツルハシを売る者だとか。
そういう言説に従うなら、冒険者が溢れるこの時代に利益が大きいのは、冒険者用の装備一式を扱う店──なのやも知れない。
「刃物の大小、一式で揃えてくださいな。針金も一束、後は……」
手慣れた様子で店員に注文内容を伝えるのは、赤い髪の少女。
それなりの年数を冒険者稼業で食いつないでいるこの少女は、店員にも顔が知れているようで、常連客へ向ける態度に付きものの気安さを向けられている。
卓上に貨幣が置かれ、品が置かれを何往復か。痩せていた背嚢が膨れ上がる。
「──あ、あと、そろそろ剣の方も新しくしたいのよね。
良い具合のないかしら。使い潰して惜しくないくらいのお値段か……
潰れないくらいしっかりしたものでもいいのよ。お手頃価格なら」
仮にも貴族の身分ではある筈なのだが、金額のことばかり口にする。
懐具合は決して豊かとは言えない客のようだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にグスタフさんが現れました。
■グスタフ > 「よお、ちょっと武器見てくれないか。できれば急ぎで」
店に入るなり声を出したのは、大荷物を抱えた男だった。
見れば武器をどっさり担いで、それをよいせと降ろしているところだった。
「うちの屋敷が水害にあって、ちょっと現金が入用なんだ。
ちと数が多くて悪いが、いくらか買い取ってくれ――」
まくしたてるように言って、店員がバタバタと客対応しているのに気付いた。
「あぁ……忙しそうだな。はぁ、ちょっと店の隅に置かしてもらうぜ」
よっこいせ、と荷物をもう一度抱え直すと店の隅にどさりと置いた。
「ふぅー……ちょっと持ってき過ぎたかな」
■アレハンドラ・アルディオーラ > 「え? ああ、いえ。別に折れたとかじゃないのよ。ただちょっと剣が痩せてきたというか……。
使って研いでで磨り減っちゃって。数打ちの安物の割には持った方だと思うけど」
担当の店員に自分の直剣を見せながら、会話に耽る。
どうにも品質というよりは実用性、耐久性を求めている客層であるようだ。
店員がいくつか商品見本を持ってきた際にも、見ているのは刃筋よりも刀身の厚み。
それから刀身を指の節で叩いて、音の響き具合を聞いてもみたり──
「──あら、他のお客さん。こちらはいいわ、お先にあちらにご対応なさいな。
大丈夫よ。こっちはこっちで勝手に見てるから」
その途中、大荷物を持ち込んだ客を見れば、店員にそちらへ向かうよう促した。
■グスタフ > 「ああ、悪いね。お嬢さん。あんたにイイことがあることを願うぜ」
片手をあげて笑顔を向けながら、調子のいいことを言って、来た店員と話をしはじめる。
――だが、すぐに声を荒げる。
「さすがに安すぎるだろ。ちょっと汚れてるが、こんなん綺麗にすれば――」
ぺこぺこと謝る店員にバツが悪くなり、頭を掻きながらため息を吐く。
確かに男が持ってきた品物は泥や汚れだらけで、そのままでは見れたようなものでもなかった。
綺麗にすれば、というが綺麗にするまで見分けるのは手間だろう。
店員としてはタダ同然で引き取る程度しかできないようだった。
「いや、謝ってほしいわけじゃないんだ。しかたねぇなぁ……。
やっぱり綺麗に一本ずつ洗わんとだめかぁ……はぁ……」
深いため息を絞り出すように吐いて、うずくまり顔を上げる。
ちょうど、その時に譲ってくれた彼女と目が合った。
姿勢を正して立ち直り、正式に辞儀をする。
「あー……お嬢さん。さっきは挨拶もせずに悪かったな。
俺はグスタフ。聖都付きの騎士なんだが――。
武器探してるなら、どうだ。お安くするぜ?」
挨拶から、すかさず売り込みは店員のお株を奪う勢いだった。
並べた武器を見せながら、少し困った顔で続ける。
「ちょっと見てくれは悪いが、綺麗にすれば新品同様よ。
保護魔法かかってるのもあるし、そこらの武器よりは使えるぜ」
洗わないといけないがな、という台詞は飲み込んだ。
■アレハンドラ・アルディオーラ > 少女の方は、店員の対応が一通り終わってから続きの話をすれば良い、とのんびり構えていた。
その間は商品の剣を見比べたり、手に持って重さや握り具合を確かめたりとしている。
勝手知ったる馴染みの店。気楽なものである──
「……いえ、ごきげんよう。急ぎの用もございませんから。
けれどもここは、このお店の看板の内、屋根の下。店を挟まず取引をしては、大事なお顔を潰しましょう?
客同士の直接の取引は、あまり見栄えが良くないかと思うのですけれど」
直接の取引の打診については、まずはやはり警戒から。
美味しい話には裏があるというのが、この国の常。見知らぬ異性からの甘い話にはご用心。
とは言え、安価で上等な武器はいつだろうと需要がある冒険者稼業。
店員に話しを通せとは言いつつも、並ぶ武器に視線は向いている。
■グスタフ > 「確かに。無礼だったな。失礼した――それで」
少女に謝辞を返して、店員に話を振ると首を振られた。
よそでやってくれということらしい。流石に店内で広げることはできないか。
「さすがに商売の邪魔をしちゃ悪かったな。
ということで、お嬢さんよかったらここに来てくれ。
数日はそこにいる予定だから――」
小さな紙のメモにさらさらと案内図と、店の名前を書く。
近場の酒場兼宿屋の名前と場所が記してあった、それを彼女の前に伏せて置く。
それから広げた荷物をまとめながら、担ぎなおす。
「……この後時間あるんなら、店の外で待たせてもらうが」
それくらいは構わんだろうと告げて。
■アレハンドラ・アルディオーラ > カウンターに置かれたメモを手に取る。……眉間にうっすら皺が寄る。
個別の商談をするのに宿へ誘い込まれるのは──と、あからさまな警戒心である。
馴染みの店でもあることだし、あまり店員に睨まれたくもない。
だから本来なら、適当にあしらいつつメモは捨ててしまうのが手堅い選択であろうが……。
「……屋根と壁の外での商談でよろしいのでしたら」
しかし、良い武器は惜しい。物欲は何にも勝るくさびである。
冒険者の金の使い道などというものは、生活費と酒色の分を除いてしまえば、大概は装備か次の冒険への準備費用だ。
金の為に危険を冒しながら、そうして稼いだ金で次の危険に踏み込むのが冒険者という人種である。
「それならば謹んでご案内も受けましょう。……と言いましても、裕福な身の上ではございませんけれど」
どうせこの店の品は逃げない事だし──と。一度、店の外へ足を運ぶ事にした。