2025/10/06 のログ
レグルス・ダンタリオ > 水筒を受け取って懐に戻しつつ。

「いや、俺は俺で欲しいマントがある。……その、騎士用のマントが欲しくてな」

ちょっとだけ、気恥ずかしそうに頬を搔いて視線を横に逸らしながら。

「まぁこの状況と無難なのじゃあこっちのほうがずっとひどいからな」

女扱いしていないのはそうだが、あまり話題にするのは彼女に悪いという配慮もあった。
もっとも、その配慮はそれはそれで彼女の自尊心をゴリゴリ削っているのは。
少年は気づくことはなく。

「わかった。よっと……」

彼女の体を軽々と持ち上げると、なんだか不機嫌な様子の彼女に気づく。
一体どうしたのだろうか、と思っていたら……首に手を回して姿勢を安定して。

「……………………」

まじまじとその瞬間、彼女の顔を見つめてしまうと。
……ティアフェルは感じるだろうか。首の体温がだんだんとものすごく高くなってくる。
風邪でもひいているのかと思うぐらい体温が高くなり、首から感じる脈拍がものすごい勢いで早くなっていくのが指から感じるだろう。
この寒さの中ではむしろちょうどいいぐらいの温度なのだが。
顔を先ほどより明らかに赤くして、目を彼女から背けながら歩く。

「み、道案内を……たにょむ……」

上ずった声で、嚙みながら。まっすぐ前を見ながら歩きだす。

ティアフェル > 「あー。なるほど。それなら支給してもらわなきゃだもんね。早く授かるといいね」

 納得、と肯いて。珍しく気恥ずかしそうにする様子は年相応に見えて、ちょっとかわいいじゃない、なんて思い。

「そういうこと……碌な再会じゃなさすぎでしょー。せめて着ていたかったわ」

 知らない人でも知っている人でも意図せず肌を見せるのは勘弁だ。異性なら尚のこと。
 まあ、意識してないらしいから別にいいですけど。それにしたってわたしの色気はそんなに地に落ちたか、と内心やや不貞腐れる。乙女の矜持台無し。

「だいじょぶ?」

 ひょい、と抱え上げてもらう腕は安定していて年の割りに体格はいいけど、人ひとりだ。重いぞ!なんて云われたら喧嘩になる。
 だから先に無理なら云ってくれ、と彼の顔を覗き込んだが。

「…………だいじょぶ?」

 もう一回訊いた。
 重さを気にするのとは違う意味で。
 首裏に手を組み合わせる様にしてつかまり密着する姿勢。その方が抱えている彼も少しは楽な筈だが……。
 しかし、急に上昇する体温……その上脈も速い。さっきまで素だったのに……いきなりどうした?と虚を突かれたような気になる。
 しかし、最終的に顔を反らして発語さえも噛んだので……。

「うん……とりま。真っ直ぐね」

 にへらぁ、と満悦気味に笑って前を見ながら進む彼に自宅までの道を指示しつつ。
 おねえさんは上機嫌になった。
 ようやくちったあどきまぎしたかぁ、よしよしよーし。
 大分地に落ちていた矜持が浮上してきた。わたしはちゃんとした乙女である。

レグルス・ダンタリオ > 「あぁ、まぁ……もうしばらく修行はいるがな」

そう浮かない顔をしながらも、応援してくれて嬉しいのかはにかみ。

「それはもう、今となっては仕方ない。次はどこかで会おう」

軽く口約束をしつつ、彼女を運び出す。
不思議そうに覗き込む彼女の瞳を見ないように歩いて。
……今その瞳と目があったら、心臓がどうにかなってしまいそうだった。

「大丈夫だ。……大丈夫だ」

うわごとのようにそう告げて、彼女の案内通りに脚を進める。
今はひたすら、感じ始めた彼女の香りと、その体温と。
そして意識してしまったゴリラと呼ばれる彼女の顔とで。
どぎまぎさせながら足を進める……そうしなきゃ、何もできなくなりそうだったから……。

「…………帰ったら、ちゃんと早く寝るんだぞ」

そう告げて、早足でその場を去っていく。
……ちょっとだけ少年は、青年への階段を上ったのかもしれない。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からレグルス・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティアフェルさんが去りました。