2025/10/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  道の途中には衣服をはぎ取られた女が横たわっていた。
 みぞおちに強い一撃を食らい昏倒させられた後、衣服を破り捨てられたその女のぼろぼろに裂けた布切れが周囲に散らばっている。
 けれど、それ以上のことをされた形跡がないのが奇妙と云えば奇妙。
 暴力を受け全裸に剥かれてしまってはいるが、その後凌辱に及ばれた痕跡もぼこぼこに殴られた傷もない。
 
 ――何故衣服を剥がれただけの状態で女が路地に放置されているのか。ことは一刻程前に遡る。
 数人がかりで一人の女を犯そうと街を物色していた男たちに眼をつけられ路地裏に引きずりこまれたのだが、その後が一筋縄ではいかないタイプの女だった。
 ヒーラーたる女は暴漢対策にとある技を習得していたのだ。
 それは、強制的に対象を不能にしてしまうというもの。湧き上がった性欲を根こそぎ消去してしまうかのように萎えさせてしまう。
 今夜もそんな技を駆使して襲い掛かって来た暴漢たちを一人残らず、まるで無垢な稚児のごとく不能にしてしてやったまでは、良かった。
 しかし、暴漢たちはことには及べなくなってしまったがせめてもの腹癒せに生意気な女を辱しめてやることにし、気絶させて衣服を破り取ったのだ。
 破った衣服は捨て置き、はぎ取った下着は戯れに持ち去り、剥き上げた女を路上に放置して立ち去って行ったという経緯。
 
 今、そんな一連のできごとに依る結果が転がっていた。
 
 「…………………」
 
 呻き声も立てず、浅い呼吸の繰り返される胸を上下させる以外は一切の動きもなくうつ伏せに力ない腕をだらりと伸ばした、ちょうどI字型に近い姿勢で昏倒している女が一人。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にレグルス・ダンタリオさんが現れました。
レグルス・ダンタリオ > 夜更けに歩く道の傍ら、この時代に電気もなく、明かりと言えば月明かり程度。
腰に下げている携帯ランタンが微かに周囲をともしており、青年は歩いていた。
そして、たまたま青年自身の目もよかったおかげで破り捨てられた衣類の痕を見つけて。

「……ん?」

その衣類に先があるのに気づき、それを辿っていく。
おそらく、あまり見るべきではないと思うが、しかし。
いちおう見回りがてらに歩いていたのだ。この先を見ないという選択肢は青年の中にはなかった。

「…………これは」

そして見つけたのは、一糸まとわぬあられもない姿の少女。
……だがその……控えめに言って死体のように横たわっている全裸の少女は。
どうにも思っていた最悪とはまた違っていたようであった。
いちおう周囲に警戒をしながら少女に近づくと、浅く動く肺の動き。
そしてただ裸にひん剝かれて横にさせられているだけという状況。

「…………??????」

意味が分からなかった。あまりにも不可思議だ。
この国じゃ、こんな状況になったら、もっと、こう……。
いや、そこまで考えてからかぶりをふると。
少女の頭の横にランタンを置いて、抱き起しながら揺さぶる。

「おい、大丈夫か?目を覚ませ」

軽く頬をぺちぺちもしながら、上半身を揺さぶる。
……そこに揺れるものがあるなら、一瞬そっちに目を向かわせる程度には青年は少年だった。

ティアフェル >  秋風はまだそんなに冷たくはない。
 しかし何も身に着けていない肌には少し堪えた。
 無意識のうちに寒さを感じていたものの、それで覚醒するというまでにはならず。
 近づいて来る足音にもそのまま昏倒していたが。

「…………ん……」

 うつ伏せに転がっていたのを抱き起す手。
 身体がぐいと反転すれば眉根が寄り、閉じていた瞼が微かに震える。
 さらに声をかけられながら頬を叩かれ揺さぶられれば、一層眉間に皺を寄せて苦悶するような表情を浮かべ。

「ん゛ぅ……んん……?」

 睫毛が震えて瞼がゆっくりと開く。
 ぼんやりと霞んだ視界。まだ何が起きているのか理解出来ておらず。
 茫洋としたような顔が覚醒を促すなんだか見覚えのあるような少年の顔を見上げ。

「………な、に――っくしゅ!」

 事態がつかめないままだったが、さすがに吹きぬけた夜風に冷えて身体を震わせくしゃみが出て反射的に顔を覆い。

レグルス・ダンタリオ > 「おき……っと」

そのくしゃみを催した顔に、咄嗟に顔を背ける。
女の柔肌を見るのを遠慮するより、女のくしゃみを受ける方が嫌らしい。
凡そ紳士的ではない振る舞いをしている少年だが。
まぁ今やっていることは事情さえ分かれば間違いなく人助け。

「大丈夫じゃないが大丈夫そうだな。俺がわかるか?」

意識を取り戻して、混乱をしていないか確認しつつ。
彼女が特に問題がない様子なら上着を脱いで彼女にかぶせよう。
背丈に差があるが故、その服は羽織るものとしては十分な仕事を果たせるか。
もっとも、そのまま往来を歩けるような姿を少女はしていないのだが。

「ランタンを持っていろ。心だけでも温かいものがあった方がいいだろう」

と、置いていたランタンを彼女のそばに。
実際はこの風の中じゃランタンの火の囲いを開くわけにもいかないのであまり変わらないのだが。
心持だけでもという心遣いだった。

ティアフェル > 「……ぁ……ごめん……」

 まだ何事か把握していなかったが――くしゃみが出てしまったので、顔を覆いつつ、ずびと洟を啜り。取りあえず顔をを向けた様子に謝り。
 そして、今何が起こっているのだろうか……と思考を巡らせていれば。

「ぁー……えと……遺跡で会ったっけ……その節は……って……わ!?
 なにこれ……服、服は……!? わたしの服ー!」

 上着をかけられて、ようやく惨状に気付く。何も身に着けてないことをやっと理解すると、慌てて起き上がると上着に袖を通して前を掻き合わせ。

「え!? なっ……?! なんで、え……!?」

 混乱している間にランタンを置いてもらって。一瞬寒さも忘れていたが、へくしゅっともう一回肩を震わせ。

「ぁ、あり、がと……っ、いたた……」

 腹が痛い。気絶するほどみぞおちに強烈に食らった一発が効いて痛い。
 ヒールゥ……と力ない声で赤くなったみぞおちに回復魔法を施し。

レグルス・ダンタリオ > 「気にするな。その姿で野ざらしだったんだ」

すする様子を見ないようにしつつ、彼女もおそらくまだ混乱しているんだろうと感じて。
何かのいたずらと言われた方がずっとマシなこの惨状。

「あぁ。……あぁ?……そうか、ティアフェルだったか。
暗かったのと裸だったことのショックで気付かなかった」

気の毒に……という視線を向けながら、上着に手を通す彼女を見つつ。
寒そうにする彼女に近づいていく。

「…………礼はいい。……というやり取りも思えば二度目か」

場を和ませるつもりでそう言いつつ、彼女が痛みを訴えるのを見て心配そうに。
前回は冒険者稼業としての出会いだったため、そういうこともあると流せたが。
今回はそれよりもずっと危険……というか、犯罪に巻き込まれたことを考えると気の毒に思わざるを得なかった。

「…………そのままでは帰るのもキツいだろう。家まで送ろう。
近場の宿は……その姿を見られたくはあるまい?」

ティアフェル > 「真冬だったら凍死だったわ……!」

 くしゃみぐらいで済んでいる気候。風邪をひく前に目を覚ましたのはまだマシだったかも知れない。
 それにしたって、これはあんまりでは。
 着ていた服はと探せばそこら辺に破り捨てられてただの端切れと化していた。
 おおぅ……と頭を抱えて絶望。

「……ぁーもう、最悪……年頃の乙女にここまでするかね、野郎今度会ったらタダじゃおかねえ……」

 ぶつくさと呪詛めいて唸っていたが、少なくとも彼はその現場に通りかかって助けてくれた訳で。
 ついでに助けてもらうのは二度目で。

「あ、そうそ。ティアフェル……覚えてた? 確か……レグルス…君、だっけ…?
 上着ありがと……悪いけどちょい借りるね」

 もし返せと云われても断固拒否する。そうは云い出さないだろうが。
 みぞおちに食らった一撃を回復させると、はふう、と息を吐いて本当にもう散々だなあ、と頭を掻いて。
 心配そうな様子に、だいじょーぶよ~とカラ元気のごとく力なく笑って。

「ぁー。そうしてくれると助かる……悪いね重ね重ね……。
 ていうか変なところでばっかり会うね」

レグルス・ダンタリオ > 「全くだな……」

その言葉に頷きながら、彼女の惨状に心を痛ませる。
遺跡の時はいかにもな朴念仁というか、自己中心的というか。
助けたのは義務感だ。みたいな感じだったが。
今の彼はその時とは違って大分ティアフェルの姿に心を痛めている様子だった。

「年頃の乙女か……そうだな……。レモン水飲むか?」

気遣いが下手くそなことに、とりあえずと水筒を差しだす。
さすがに温かくはなく冷たいが、まぁなにも出さないよりはマシだろうと思って。

「あ、あぁ。レグルスで合っている。……服については構わん。
今はティアフェルのほうが圧倒的薄着っぷりだからな」

力なく笑う彼女に両手を伸ばす。

「場面がいちいち巡り合わせが悪いのはまぁ、そう言うこともある。
今度はせめて冒険者としてパーティ探ししているところとかで会いたいものだな」

そう言いながら、全く悪意も、下心もなく自然な動きで。
彼女をお姫様抱っこしようとする。勿論、それに気づいて抵抗してもいい。
ともかく、この少年はそういうことをするのを無意識に、当たり前のようにやろうとしている。

ティアフェル > 「まあ、真冬でも真夏でも女の子ひん剥いて路上に放り出していいかと云えば悪いに決まってんだけどね!」

 憤慨中。凍死しなけりゃいいってもんでもない。
 脱がすだけじゃなくて服を引き裂いていく入念ぶりにドン引きだよ、死ねよ、とぎりぎり歯噛みして苛立っていた。
 見つけ出して同じくひん剥いて真昼間の広場にでも晒してやろうか、と決心していたところに……差し出された水筒。

「……え、あ……痛み入ります!」

 落ち着けと促されているような気になって、レモン水を受け取るとこっこっこ…と喉を鳴らして飲んで。
 ぷはあっ……と息を吐きだすと少し落ち着いた。

「また会うこともあるかと思ってたけど……とんだところで会っちゃったわねえ……できれば今日見たことは全力で速やかに忘れてくれ……。
 ……今は君の上着だけが頼りだよ……できればマントとか着てて欲しかったよぅ」

 上着だけでも充分助かるのだが、冗談交じりに告げては。
 ていうか見られたよな……見られたぁぁ~…と見悶えたくなる。
 さすがに恥ずかしい。さっさと忘れて欲しい、なかったことに。
 全裸って一周回ってエロくないことにならないかな。

「もう変なところで会うのは打ち止めにしたいわあ。
 ほんとーに。せめて街角で服着て『よっ』って爽やかに挨拶するくらいがいいわ……」

 暴漢に剥かれて転がされているところなんて一番勘弁してほしい……。
 けどもっと変な奴が通りかかるよりは大分ありがたいけれども。
 しかし、不意に抱き上げようとする動きに、えっ?ちょ…、と慌てて。

「な、なんで……っ?」

 普通に抱え上げようとしている行動が謎過ぎる。なんでだ?と目を丸くして。

レグルス・ダンタリオ > 執念深いんだなぁ、と思いつつもまぁそりゃここまで怒るか、んと納得しつつ。
ここまでバイタリティがあるならまぁ大丈夫だろう、と。
いや、大丈夫じゃないからこんな目にもあっているのか?
そう思考をぐるぐる回しながら、水筒を飲んで喉を動かす彼女を見つつ。

「まぁむしろ出会ったのが俺だったから良かったと思った方が今はいいかもしれないな。
マントは、すまないがまだ許されていないんだ。上着で勘弁してくれ。
あと裸でマントは逆にマズイかもしれない」

彼女の思考なんてわからないが、もしマントオンリーの全裸の彼女を想像したら。
ある意味今よりもやばいんじゃないか?と思考がよぎって口に出る。

「そうだな……まぁ俺は多分その場合そのまま挨拶して素通りしてしまうが……ん?」

目を丸くする彼女に首をかしげながら

「寒いなら肌を寄せあった方がいいだろう?
おんぶや抱っこだと、言い方は悪いが下が見えやすいと思って。
横抱きなら服を上にかけてればほぼ見えないから、配慮にもなると思ったが。
ダメか?」

心底それじゃダメなのか?という純粋な目で疑問を返す。

ティアフェル >  ごちそうさま、とレモン水をいただいて水筒の口を拭ってお返しする。
 中身は冷たかったが頭を冷やすにはちょうど良かったかも知れない。
 何だか悩んでいるような相手の空気に首を傾げつつ。

「あーねえ……そりゃあ速やかに上着を貸してくれるし、助かったけど……
 ? マントって許可制?
 前を開かなければ問題ないでしょ、アウトなのはわざわざ見せにいく変質者よ」

 おかしなこと考えてんじゃないの、と突っ込み気味に告げて。
 まあ、ともかく上着を借りておけてよかった。少し寒いけど。

「そのくらい無難な方が良かったって話よ。
 ……いや、『ん?』じゃなくてさ……」

 裸まで見られたというのに、とことん女扱いしてないらしい……ってことは良く判ったし、なんならそのくらい無頓着なら明日には今日のことを忘れてくれるかも知れない。
 しかしなんだろう、妙に脱力感を覚える……。

「………そんならお願いしますぅ……」

 純粋なまなこが『おまえにいろけはねえんだからあんしんしろ』と云ってきているようにすら思えたが。
 がっくり肩を落としてやや唇を尖らせつつ、色違いの目を見やって、抱え上げて運んでもらうことにしながら。
 姿勢が安定するように彼の首に手を回して掴まり。少し密着して。おねえさまにちったぁどきまぎしやがれ、と内心で八つ当たり気味な悪態をついていた。ゴリラの分際で。