2025/09/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイグナスさんが現れました。
イグナス > 「ぐあっ……。」

最初に響いたのは、悲鳴じみた声だった。あと、ゴツンとぶつかる男。
普通の人間用に作っているわけだから、屈まなければ雑貨屋の扉上部に頭をぶつけるのは道理っちゃあ道理だった。
もう何度ぶつけたかもわからない額をさすりながら、店内を見回す。
どうやら物が落ちたりはしてないらしい。良かった、また弁償するハメになるとこだった。

「……ンむ、いや、落としてねェよ、だいじょうぶ。今回はだいじょうぶ。」

胡乱げな視線を向けてくる店主に手を振って合図。
もう何度かこの店で落としてるから、いい加減にしろよって感じだった。
…やれやれ、もう少し大きめサイズの店であればよかったんだが。
とはいえそれでも、それなりのサイズ感のものが置いてあるからここに来る。

店内はすごく狭いってわけじゃあないけど、商品がたくさん。
おっかなびっくり、大きな身体で動きにくそうにしてた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にリーリアさんが現れました。
リーリア > 「あ、あの……っ、大丈夫ですか……?」

大きな身体で動きにくそうな男がふと視線を下げると、
男とは対照的と言える小柄な少女が心配そうな瞳で見上げている。
青のローブを開いて纏い、白のニットワンピースに身を包んだ魔術師風の装い。
これもまた店の展示物にぶつけてしまいそうな長杖を持ち、その体型も色んな所にぶつかりそうな。

「良かったら、お探し物を一緒に都合しましょうか……?
 私、この雑貨屋の品揃えには詳しいのでお手伝い出来ると思うんです、けど……」

少女に対してあまりにも大柄な男を首が痛くなりそうな角度で見上げながら、
眉尻下げ労わるような表情を向けながらぎゅっと両手で杖を握りつつ少女は続けた。
男のあまりにも大きな体躯を前に少し震えすら感じるが、少女は困って居る人を放っておけない性分だった。

「……あっ。ぁ、怪しい者ではありませんっ。ラジエル学院に通う学生で……はっ。
 冒険者ギルドにもちゃんと登録してる……えぇと、身分証、身分証……あったっ」
 リーリア・アーティノイって言います。よ、良かったら、お手伝いさせて下さい」

懐から取り出したのは学生証とギルド登録証。少女はその二つを男へ掲げ見せて身分を明らかにしつつ
努めて笑顔を浮かべながらそう言うが、焦りや男への少しの恐怖からか、その笑顔はほんのり引き攣っていた。

イグナス > 声。聞こえてきた声に振り返る――のだって一苦労だった。
でもなんとか視線だけでもやれば、対照的に小柄な少女の姿。
おお、と軽く目を見開いて、驚いたような様子。
まさか、というべきか。己のような偉丈夫にこんな少女が声を掛けるとは。

「おォ、いや、なんだ、悪ィなあ。気ィ使わせちまって。」

狭苦しい室内でよく響く大きな声、からと楽し気に屈託ない、どこか子供めいた笑顔。
ありがとうと表現するために軽く振った腕だけで、周囲に吊るしてある布類が軽く揺れた。

「いやいや、別に怪しいなンて思いやしねェが――そうだな。
おれも冒険者だ、イグナス。まあ……、怪しい風体だとは思うが、冒険者なんてそんなモンだしな。
……ンじゃあ、折角だし、ちと手伝ってもらうか。」

実際困ってるのも事実だった。
そうして男が指定して取ってもらうのは、なんてことない雑貨類。
アレやコレや。日常生活に必要な…でも普通に使うにはオーバーサイズな品々。
彼女が手伝ってくれるならば、買い物だってスムーズに進むだろう。

リーリア > 「わ……」

少女の声に気付いた男が屈託のない笑顔を見せると、
その笑顔に思わず小さく声を漏らしてしまい、自然に笑顔を返しながら

「い、いえ……っ。その、とても……えっと、逞しいお身体なので……
 この雑貨屋さんは品揃えが多い代わりに、一般客にも狭く感じるくらいで
 えっと……あっ、イグナス、さん。イグナスさんの様な方には、少し利用し辛いかもしれませんね……」

改めて店内を見渡せば、小柄な少女でも少し杖に気を付けなければ、
小柄に反して大きなお尻や胸に気を遣わなければ、品物に触れてしまいそうな状態だった。
男が己の身分に怪しさはないと伝えてくれ、『手伝ってもらうか』と返せば
ぱぁっと笑顔を明るくしながら少女はブンブンと大きく二度頷いて、

「……は、はいっ。お任せ下さいっ。
 えっと……ご入用のものをお伝え頂ければ私が会計まで持って行きますから
 イグナスさんはお金のご用意だけして頂いて、会計所前でお待ち下さいっ」

男が入用なものを伝えるなら、少女は意気揚々と店内を練り歩いて
ほんの数刻の間に物品を揃え、まるでフリスビーを投げられた子犬が
主の下へ戻るかの様なとても明るい笑顔を浮かべながら戻り、買い物を済ませてしまう事だろう。

「……イグナスさんも、冒険者なんですね。
 私はまだ駆け出しで、つい先日登録したばかりなんです。
 ぁ、あのっ、もしお時間良かったら、先輩として冒険のお話とか、
 アドバイスを頂けたりしたら……なんて、その……思うんです、けど……ご迷惑ですか……?」

燃える様な男の外見と正反対な、静流の様な外見の少女は
男への手伝いを終えた後でそんなお願いを申し出るが、男の返答は――

イグナス > 「呼び捨てでも構いやしねェが。まあ、そうだな。
だがまァ、この身体じゃァな、どこいったって似たようなモンだ。」

からとまた笑って肩を竦める。それだけでなにかにあたりそう。
やっぱりちょっと冷や冷やもするけれど、ま、それはそれでよしともう半分気にしてない。
店主の勘弁してくれよって視線も気にしないように。
――しかしそれはそれとして手伝ってもらうのは大変ありがたく。
ほんのわずかな時間に品物がそろっていく。
…なんだか可愛いペットみたいだ。

「犬。…っく。」

手伝ってもらって失礼だからあんまり笑いはしないけど、ぱたぱたと狭い店内を動く様子は中々可愛らしい。
改めて会計をさっと済ませたならば。

「お、ゥ?いや、――なんだ、それこそ礼をしなけりゃと考えたンだが。
…もちろん、おれでよけりゃ喜んで。
――そうそう、それならちょうどいい場所もある、もうちょっと落ち着いた…せめて広い場所でも行くか。」

のしりと動いて店の扉を開ける。今度は頭をぶつけないよう、慎重に。
彼女も良しとするならば、その場から連れ出してしまおう

リーリア > 「ょ、呼び捨て……っ? だ、だめです、目上の方は敬うべきと母からの教訓がありますからっ。
 イグナスせんぱいと、呼ばせて頂けると……ぅ、で、でも、相手の望みも聴くのも大事だって……どうしよぅ」

笑いながら肩を竦める男を前に、慌てた様子でブンブンと手と杖を振って応える。
そんな動作で返すから、少女まで店主からの視線を貰ってしまっているが本人は気付かぬ様子で。

「犬……? イグナスせんぱい、ワンちゃんがお好きなんですか?
 可愛いですよねっ。あの、私も昔犬を飼ってて……えへへ」

男が呟いた言葉の意味がわからぬまま、やっぱり子犬の様に首を傾げると
勘違いしたまま喜ぶような様子を見せながら、頭の上で可愛い子犬の姿を思い浮かべた。

「ぃ、いえいえっ。このくらいの事でお礼だなんて……ぅ、で、でも……折角の申し出を断るのも……。
 本当ですかっ? やったぁっ。是非移動致しましょう。何処へなりともっ。
 そちらで是非お話お聞かせ下さいっ。ぁ……っ。それをお礼として頂くという事にします。うん。それが良いと思いますっ」

男が好意的な返答を返してくれると、少女は身を乗り出して瞳を輝かせた。
男の脇をするりと抜けると先に退店し、
頭を下げてぶつからぬ様店から出て来る様子を笑顔で見守ると、
『さぁ、参りましょうっ。……えっと、どこかよい場所を御存じですか?』と
意気込んだ後、はて、と再び小首を傾げながら。
男が歩みを進めるなら小脇について、宣言通り、何処へなりとも着いていく事だろう。

イグナス > いつの間にか先輩になってた。
呼び方は自由にしろって笑いかけて、――どうもしかし、この少女騙されやすそうだという感想。

じっと見下ろしてから…まァいいか。そう思考を放棄してから、彼女を連れ立って歩き始める。
さて、この騙されやすい少女、どこに連れ込んでしまおうか――。

リーリア > 【移動致します】
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からリーリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイグナスさんが去りました。