2025/08/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド併設酒場」にケストレルさんが現れました。
ケストレル > 夜の冒険者ギルドに併設された酒場
日中の殺人的な暑さが和らぎ、いつもの賑わいに溢れている
思い思いに飲み、食べて、語らう中で一際騒がしい一角があった

「だから、落ち着けってお前ら 酔い過ぎだ!」

冒険者の男二人が今にも一触即発の状態で睨み合い、互いに罵倒し合っていた
その間に立って二人を宥めるのはケストレル たまたま居合わせた不幸人である
覚えている限り切っ掛けは些細な事だったと思うが、酔っていたのもあり両者とも引っ込みがつかなくなったのもあって、今やしっかり喧嘩腰だ
それをどうにか落ち着かせられないものか、と自分の酒もほったらかして、仲裁を試みるケストレルである

「こんなとこで殴り合いなんて始めてみろ、いい迷惑だろ!」

近くに居なければ勝手にやってくれと思うのだが、偶々近くに居合わせてしまったのが運の尽き
せめて流血沙汰にはならなきゃ良いが、と若干の諦めムード

ケストレル > 懸命に宥めようとしているケストレルを尻目に、睨み合う二人はヒートアップ
更には周囲の冒険者たちも煽る様に野次を飛ばし始め、互いの服を掴み合って拳を握って殴り合いは秒読み
それでも何とかその場を収めようとするケストレルへ、周囲から諦めろ、との声が掛かる
その中でひとつ、聞き捨てならないものがあった

『魔物一匹討伐出来ないお前が止められる訳ないだろ』

ケストレルが魔物を斃せないのは事実である
白兵武器を振るえば見当違いの方へ振り下ろす、攻撃魔法を放てば明後日の方へ飛んで行く
致命傷を与える、という事がどうしても出来ない その自覚はケストレルにもある
だがその図星を突かれたことで、散々宥めようとしても聞く耳を持たない二人へのストレスを募らせていたケストレルは
プツン、と自分の中で何かが切れるのを感じた

「っとに……いい加減にしろやテメェらァ!!」

互いの服を掴み合う冒険者二人の胴に腕を回すと、二人纏めて担ぎ上げる
確かに、一人では碌に魔物も殺せず、討伐依頼をまともに行えないケストレルである
けれどそれは、相手の命を左右しないとなると話は変わってくる
日頃鍛錬を重ねている体幹は騎士としての水準は満たしており、腕力に至れば水準以上

大の大人二人抱えてそのまま――ケストレルから見て背後へと上体の撓りのみで投げた
大味にも程があるスープレックスだが、互いしか見えていない酔っ払い二人は見事に不意を突かれて天地入れ替わった状態で酒場の床に叩きつけられる

ケストレル > 「ったく、騒ぎ過ぎてんじゃねえよ、みっともねえ……!」

仲良く床に伸びた二人を一瞥し鼻を鳴らすともと居た席へと戻る
すっかり気の抜けてしまった麦酒を呷ると、おかわり!と給仕へと声を掛けた

周囲で野次を飛ばしていた面々は呆気にとられ、しばし無言でケストレルの挙動を見つめる
酒のおかわりを彼が求めた辺りで、周囲の意見は『トリーだけはガチで怒らせんとこ……』で一致した

殺すことは出来ないけれど、殺すこと以外ならば何でも出来る
それがケストレルという冒険者だということは、彼と付き合いの長い者であれば知っている事ではあったが
普段の彼の人柄もあってか、いつしか噂にも満たない程度にまで薄れていたのだろう

「……なァに見てやがんだ、見世物じゃねーぞ!」

自身への視線に気づいたケストレルが周囲へと声を掛ける
たちまち酒場内の他の一団と同じように、各々が気儘な馬鹿騒ぎへと戻って行った