2025/08/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアシュラスさんが現れました。
アシュラス > ――甘くて冷えっ冷えだ。
よく晴れた真夏の昼下がり。
昼食を済ませぶらぶらと街を散策中。差し掛かった広場へ向かう南の辻で出会った魅惑の甘味。冷気の魔法で冷たく凍らせたアイスクリーム。
コーンに乗せられたそれを呑気に。

「やっぱり、暑い日はこれやんな」

そぞろ歩きのお供に舐めながら、眼鏡奥にある双眸をゆったりと細める――いい年して休日に暇を持て余す、薄ら寂しい27歳独男の姿が一人。脳天気に広場へと差し掛かっていた。

「旨~…」

ご満悦気味に吐息する男の脇を、己と同年代ほどの父親と手をつなぐ幼い娘の親子連れが楽しげに通り過ぎ――

「………。」

一瞬遠い目になり、『僕はいい年して独りでヒガな一日何しとんかな…』とうっかり欝りそうになり。

「あかんあかん、人は人自分は自分……ええやん、女の影すらない救いようのない独男でも…周りに合わせる事ないやん。暑いけど天気はええし、アイス旨いし。…別に構へんやん。」

ぶつくさと言い訳じみた虚しい独語を零す男。なんだかんだほざきつつ、賑わう広場へやって来た、その背中へ不意に。どん、とぶつかる衝撃。

「なんっ? 」

アシュラス > 刹那、瞠目して振り返れば「ごめんよっ!」と高い声を投げてそのまま一直線に人ごみをかき分けて走っていく子供――そして、落としかけたアイスクリームに気を取られ。

「お、っと…!」

焦って持ち直した頃――

「って、あ!?」

まさか、と懐を探ってみればあるはずの膨らみがない。

「――っ、」

やられた、と咄嗟に少年の逃げて行った方向へ人並みを掻き分けて駆け出し、

「ちょ、すんません…! のいて、そこ、すんません、そこの子供…!」

大柄な男に強引に割り入られた通行人が迷惑そうに舌打ちし、何だ、と顔をしかめる中。

「――掏児! 掏児や、その子供…!!」

上がる声に一様に色を成す広場。「掏児?」「どこ?」「掏児って?」「どの子?」「そいつだ!」

何故か食べかけのアイスを放り出さずにしっかりと握ったまま、混んだ通りを掏児を追い駆けて迷走する男。
全神経が向くのは前方ばかり。財布をつかんで走る茶髪の酷くすばしっこいその少年に集中し、必死にご通行中の皆様をかき分けながら。

「誰か、ちょ…、そこの子、捕まえて!」

叫ぶ声に反応するものもあったが、風のように疾駆するはしっこい子供を誰も捕まえられず、距離ばかりがどんどん開き。

アシュラス > 「~~~~ッッ……あー! 見失ったぁ……ほんまもうこれ……最悪や……」

多分本業掏摸なストリートキッズ。すばしっこく手練れたそれに追っつくのはそもそもが至難の業であって……。
すっかり撒かれてしまい、ぜいぜいと屈した膝に両手を当てて流れる汗を眼鏡を取って拭うと。

「もー……なんなんほんま……油断も隙もない……」

ぼやき気味に嘆きながら肩落として。気づけば握っていたままコーンから滑り落ちていたアイスを見てさらに深く嘆息し。

「厄日やわあ……」

天を仰ぎ見る、バッドエンドな休暇であった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアシュラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/痴漢馬車内」に赤丸さんが現れました。
赤丸 > 今日は不思議な依頼を受けた。
『指定された日付に指定された馬車に乗れ。』というものだった。
怪しいと思ったものの、背に腹は代えられないと思って受けてしまったが。
馬車に乗ったとたんに、不思議な匂いの香が焚かれていることがわかった。
詳しいわけじゃないからどんな効果があるかは分からなかったが…。

「……?…なんか…熱…。」

パタパタとTシャツの襟元を無防備に扇ぐ。
催淫効果のある香の匂いに身体を火照らせている少女が一人。
まさに鴨が葱を背負って来るという表現がぴったり過ぎるほどだ。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/痴漢馬車内」から赤丸さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にさんが現れました。
> 空を赤く燃やし、西日が建物の向こうへと消えていく。
差し込む光は命が見せる最後の輝きに似た、眩く強いものだった――。

逢魔が時の平民地区。
仕事を終えた人々が、帰路へ着くか、夜遊びに出かけるか。人通りは多く、雑踏が響いている。
少女はその流れに逆らうように、繁華街を抜け、時計塔の方へと歩みを進めた。
ゆっくりとした歩みは何処か頼りなく、迷子のように止まりかけては、また動き出す。

そうして辿り着いた時計塔の下にある広間では、露店が次々と店じまいを始めていた。
子供たちは互いに手を振り、家族の待つ家へと帰って行く。
ありふれた光景だ。ありふれた、幸せの光景。

「…………」

それをぼんやりと眺めながら、少女は幾つか並んだベンチへと腰を下ろす。
徐々に人が消え静まり行く広間の中、一人ポツンと座っていると、世界から取り残されたように感じた。

> 修行は順調に進んでいる。
新しい術も覚えて、色々な事を学び、ずっと望んでいた強さに少しだけ手が届いた。
暗殺者として、火守として、ようやっとスタート地点に立てたと言う喜びはあった。つい、先ほどまでは。
先日の怪我は治療しなくても良いほどに回復していたが、後で響くと周りにバレる。それ故、念のため医者にかかった帰り道。
平民地区から富裕地区へ、大通りを走り去る一台の黒い馬車が少女を追い越して行った。
なんてことは無い、ただ追い越されただけ。けれど、その車体の後ろに刻まれた紋章を見た瞬間、少女は足を止めた。

三又の蛇。
少女にとっては見慣れた、元飼い主の家紋。
それを見てから、少女は抜け殻のようになり、この有様である。

元主は未だ少女の生死を知らず、生きているならば処分をと暗殺依頼まで出して情報を探っている。
もしも、本気で主が動いていたなら、きっと己の居場所などすぐに知られていただろう。
そう考えれば、まだ手を抜いているとも言える。この隙に、遠くへと逃れ隠れ住むと言う選択もあるのだろう。
だが、少女はそれを選ばなかった。

傍にいろと命じる師に従い、そこで忍の術を学び、人間らしい感性と生活を知ることに努め二月を過ごした。
その時間は、今までに感じたことが無いほどに温かく、穏やかな時間だった。
……楽しかった、のだと思う。

師の物になり、傍にいると約束した。
元主よりも、師の言葉、命令を優先するとも約束を交わした。
その約束を違えるつもりはない。
だが、元主を前にして、命じられてしまえば、己は従ってしまうのだろうとも予感する。
少女は人間である前に暗殺者であり、ヴァリエール家の駒だった。今も、その価値観の半分はそのままである。
暗殺者として生きられる道を望み、そうあるための選択をする。暗殺者ギルドへも、入ろうとする。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にオズワルドさんが現れました。
オズワルド > 本日は、医者の命によりお仕事禁止である。
そう言われて、しょうがないので一時家である学生寮に帰ったのだけれども、一眠りして気づいたらすでに夕暮れ時。
ただし、飯の準備は無し。
仕方ないから、何処かで外食でもしようかと足を運んだ先での事。
売れ残りだからと1割引きで売られていた魚の酢漬けのバケットサンドに目がついた。

…美味そう!

結果、バケットサンドを買って帰ることになる道中のことだった、その子を見つけたのは。

時計塔下の広間の隅っこに置かれたベンチに一人、腰かけた黒いベレーをかぶった…たぶん女の子。
人気のどんどんと減っていく中、取り残されているように見えるその姿が、ひどく寂しく見えたから。

とと。
足音はわざと消さないで、近づいているのに気付けるなら気づけるようにしつつ近づいて。

「ねえ、君。どうしたの? 迷子か何か?」

ひょこん。
少女の前方方向にて、体育座りのようにかがみこんで、顔を覗き込むようにして声をかけた。
わざと不自由な姿勢を取ったのは、まあ、目の前の子が逃げるなら逃げるで、動きにくい姿勢の奴は追ってこれるまいと安心して逃げれるだろうしという見当違いな気遣いである。

> 殺人が犯罪だと言うことは十分に理解している。暗殺家業など、真っ当な人間のすることではない。
だが、それしか己にはない。
亡き父の後を継ぎ、同じ道を望んで進む。それがたとえ、人の道から外れていようとも、火守の名を、血を、絶やさずに暗殺者として生きて死ぬ。
それだけが未熟な少女の望みであり、生きる理由だった。

知り合いが暗殺の対象だろうと、誰が死のうと、生きようと、些末なことだと割り切れなくなったのはいつからだろう。
師と元主が事を構えようかと言う段階になって、少女は迷い俯いている。
叶うなら、争って欲しくない。主にも、師にも、無事であってほしいと願ってしまう。

不意に、此方へと駆け寄る足音が響く。俯いたままでいれば、視界の中に座り込んだ青年が此方を見上げて来る。
人懐っこい雰囲気のする赤い目を、無表情で見下ろして数秒の沈黙を挟み。

「……迷子、じゃない……です。でも、迷子かも……?」

考えがまとまらないから、思考が迷子。
ぽつ、ぽつと。はっきりとしない曖昧な答えを呟いて、コテンと首を傾げる。
青年から香る少し酸っぱそうな不思議な匂いにつられ、視線は其方へと向く。

オズワルド > 此方に目線を向けてくれたけれども、表情には感情の色がうかがえず。
これはもしややべー事態の可能性?誘拐されてきた?とか脳裏に浮かんで、こちらの目元はちょっと寄ったり困惑したようにうろついたりと、目元ばっかり表情豊か。

とはいえ、きちんと言葉として帰ってきた声があれば、ほ、と一息ついた。

「迷子じゃないのに、迷子かも。
 不思議な話だね?」

こて、とこちらも小首を傾げて。不思議そうにぱちぱちと瞬きながら、君の瞳を覗き込んだ。
あ、同じ赤色。

赤が向いた視線の先。手に持つバケットサンドを見る様子に、ぱち、また一つ瞬いて。

「…食べる?」

ちょっと考えてからの、そんな提案をしたのち。
バケットサンドを両手で持って。ちょいと呟いた言葉が生み出すのは風の魔法の刃。すぱり、とバケットサンドを半分に切り分けて。

「良ければどうぞ。オレの奢りだ。
 酢漬けのお魚使ってる奴だから、きっと美味いぞ。」

半分にしたバケットサンドを、其方の手の届く場所に差し出した。