2025/08/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエマさんが現れました。
エマ > 暑い時期は、早い時間か夕刻遅くに買い物に行くのが過ごしやすくて良い。
とはいえ、掃除など体を動かす家事も出来るだけ早い時間にこなしておきたいのもまた事実。

そのため、大体早くても市場にやってくるのはこの時間になることが多い。
でも、この時間は食堂やレストランをしている店主の買い物が一段落し、まだまだそれなりに良い食材が残っている、一般家庭ではお宝探しが出来る時間帯でもある。

そんな市場の八百屋の前で、青果を物色している女が1人。
圧倒的な存在感の胸や、安産型の最上級とも言えそうな尻に待ちゆく人の目がちらちらと送られることも少なくない。

「……今日は葉物が結構のこってるのね。根菜の方が出ちゃってる感じ?」

そして、店主と会話をしながら、今日買って帰るものを考えているようだった

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にポリアンさんが現れました。
ポリアン > 昼には少し早い時間、ふらりと店にに立ち寄る影ひとつ
入口の辺りから、籠に乗った桃を一つ手にとっては
なるべく大きい物を選んで、値段を確認する。

腰元の硬貨袋から、釣りが出ない様に金を出しては
先んじて喋っていた女へと、軽く会釈を向けてから、店主へと声をかけ。

「どもー、これ一個御願い。 うん、一個で良いよ。」

挨拶めいて、掌振れば。 女と話していた店主が『またそれで朝飯済ますのか?』
なんて呆れた様な声を返すだろう。
のんびりとした笑顔で其れを肯定すれば、買い取った桃の皮をナイフで軽く剝き
軒先で齧り始めるのだ。

――服装や、腰に下がる鞭の存在を見れば、冒険者の類だとは判るだろう
或いは、この時間に買い物に来る事が多いなら、顔位は知って居るかも知れない
結構な頻度で、この時間に果物を買いに来ては、齧っている姿を見る、と

エマ > 葉物野菜を多めに、根菜を少し。
果実をどうしようか、と考えていた所で、すぐ隣にやってくる人影。
市場ではよくある光景ではある。

その人物が桃を買って店頭で口にする様を見れば、苦笑めいた吐息を一つついて口を開く。

「この時間なら、それで朝食を済ませるより、朝昼を一緒に取ってしまえば良いのに。
朝を少なく食べるのは健康を考えるのならあまり良くはないし、朝と昼の時間が短いのもあまりよくないでしょう?」

知らぬ間柄ではないのだが、さて、どれくらいの知己だったか。

片や、目にするだけで印象に残る肉感的な姿。
片や、笑顔を絶やさぬ冒険者にして、緩いパーティという不思議な集まりのリーダー。

平民地区ではお互いに、なかなか忘れられない個性持ちだろうから。

朝の市場で会った時には大体お約束めいた声かけ。
ある意味二人の間では、単なる挨拶にも似たお節介と言った所か。

ポリアン > 「やぁ、其れが如何しても朝御飯は作るのが億劫でさ…。
ほら、他の筋骨隆々、な人らと比べて、僕はそんなに食べないしね。」

――まぁ、食べない、と言ってもあくまで人並みと言う位
冒険者である以上、本当の意味で小食では体力が続きはしない
実際に、こうして店の前で果物を齧りに来ない日が在るとしたら
其れは依頼の日であり、そういう時はある程度確り食べていると言う事も
何となくは察せるかも知れない、が

兎も角、今は無精で、桃ひとつで済ませようとしている
いつもと変わらぬ、のんびりとした笑顔を相手へと向ければ
片目を瞑って、桃ひとつと、目の前の相手とを両方視界に入れて

「この後は、特に予定もないし。 昼は少し遅くに摂れば良いしね。
其れに、エマさんを一目見られたら、結構お腹一杯に為れるから?」

からかうように、そんな言葉を掛けるのも、きっと毎度の事だ
顔を合わせている内に、名前くらいは名乗って居る相手
付き合いが深い訳じゃなくても、この店先では、こうして言葉を交わす関係
相手から向けられる御節介も、心配してくれていると思えば、悪い物ではない

エマ > 丁度目の前で食べる彼。なので、桃については状態が分かる。
個体差はあるだろうが、そんなに悪くない。
ならば、買っていくのもいいだろう。
ただ、桃は足が速い果物でもあるから、ちょうど一山と言った所。
足りなくなったらまた買いに来ればよいのだ。

「この時間だったら、屋台村も始まってるでしょうに。
作るのが面倒なら、作ってくれるところで食べればいいのよ。
言いたいことは分かるけど、食事はなるべく前に詰めた方がおススメよ。
もう何度言ったか覚えてないけど。」

昼を遅くするなら、朝昼を一緒に食べて、夜を少し前倒しにする。
その代わり、そのタイミングで食べた医療だけ食べればよいと言う言。

この辺りは、生活サイクルもあるし好みもあるからまさにいうだけ。
一般的にはそういうものだ、と告げていく。

一般的には正しいのだが、そこまで細かい栄養学を街中の一主婦が知る者でもないため、なんらかの背景があることは既に察せられていることだろう。

場合によっては夫が冒険者であることから、冒険者の彼なら多少の背景は知っていてもおかしくないかもしれない。

「あら、お上手。それにしても、こんなおばさんに言っても何も出ないわよ?
それとも、肉肉しさからなるって言うならひっぱたくけど。」

これまた軽口。
店主にしてみれば、またか、と言った表情をしていることだろう。
言葉だけを文字にして読み上げれば、喧嘩でもしているのか?と取られるやもしれないが、
当事者2人の声色は落ち着いていて柔らかく、時として笑っているようなそれ故に、冗談のやり取り範囲だと知れること。

外界との接触が少なくなりがちの主婦としては、体の良い息抜きでもある。

ポリアン > 「屋台の食べ物は、お昼より後に食べるのは良いんだけどね…
朝に食べるには、味が濃い事が多くてさ。
そしたら、桃とか林檎当たり齧れば丁度良いなって。 ……えー、ダメ?」

相手の心配する理屈自体は判って居るのだ。 判ってはいるが、如何しても億劫。
健康に気を使うと言う意味では相手の方が正しいので、忠告自体は聞くのだが
じゃあ、聞き入れた上で実行するかと言えば――この店に来てる以上、多分、否
可也詳しい相手だとは思って居るが、王都の冒険者を逐一把握している訳では無いから
何か理由が在るのだろう、くらいには思って居る程度。

だから、気軽に軽口も言い合えるし、変に相手の事を詮索し過ぎないのも
ひとつのマナー、と言う奴では在ろう。

「おばさんて呼んだ事一度もない筈だけどなァ…?
おばさんって言うと違和感ある位若いし、綺麗でしょ、エマさん。
まぁ、桃みたいだなって思った事は一杯あるけどね。」

御互いに御互いが軽口を交わし始めると、其の間に店主は手元の作業に戻って行く
名前で呼ぶ事は在れど、おばさん、と呼称した事は無いし
何なら、初めて出会った時の呼び方は、多分、お姉さん、だった筈だ
当たり前のように、女性としての相手を褒める言葉を向けては
また、桃へと嚙り付く。

――桃のようだと呼称した相手の前で、美味しそうに桃を齧るのは
少しばかり、意地悪だろうか。

エマ > 「だったらせめて、このあとミルクスタンドによって、牛乳か、ミルクベースの飲み物くらいまでは追加しておきなさいな。
流石に果物一個じゃ足らなすぎるわよ?」

いつもなら先ほどまでで終わる所だろうけれど、今日はもう少し踏み込んだ。
そういう日もある、という程度の事だろう。

そもそもお節介というものは、気に掛ける対象じゃなければ出てこないもの。
そういう意味では、深く知らずに軽口を言い合えるちょうど良い距離感なのは、お互いに認識している所か。

「私が自分に言うならいいけど、ポリアンに言われたら流石に手が出るかもねぇ。
だから、年上捕まえてそんなこと言ってるんじゃないわよ。
……桃?」

褒める言葉自体は嬉しいものだ。
だが、もういい年でもあるし、小娘めいて恥ずかしがるようなタマでもない。

ただ、桃、という呼称には目を瞬かせ、その意図を理解すれば苦笑を浮かべつつも、悪戯めいた視線で自分の胸と尻を右手で軽く触れてから

「……そんな可愛いものなんてどこにもなさそうだけど?」

彼の言葉の別の意図も、まぁ分かった上で、敢えて大きさだけにフォーカスして、どこが桃ですか、と笑い飛ばす。
もう1つの意図を拾いに行くのは火中の栗を拾うようなものだから。

確かに、大きさだけでみるならば、どちらも桃では可愛すぎて、比較対象にならない程の重量感だろうが。

ポリアン > 「ミルクねぇ……――――今セクハラしか思い浮かばなかったからナシ。
大丈夫だよ、夜は食べるし。 それに、食べ過ぎるよりは良いでしょ?」

何方も過ぎれば良い事は無いのだが、食べ過ぎてぶくぶくにはならない様にして居る
元々余り太る体質では無いのだが、其の辺りは相手ならば
細身ながらも鍛えられて居ると、体格から見て取れるだろう

ミルク、と一言聞いて、ミルクスタンドよりも目の前の相手の胸元辺りに
一瞬、先んじて視線が寄ったのは、不可避だと思う。
何を考えたかは――凡そ、想像通りの筈だ。

「だよねぇ…判ってて言う勇気はないし、思ってないから大丈夫。
―――――エマさん、自覚ないかもだけど、それ普通に可愛いからね?」

――別に自分だけではない。 周囲の人間の視線が集まるのだって、同じ理由だろう。
大きさ、だけに焦点を合わせれば、そりゃあ可愛いでは済まない凶悪な。
けれど、其の仕草や振る舞いは、間違いなく可愛らしい、と呼称出来る物なのだから
分かってないなぁ、なんて、微笑浮かべながらも、もう大分食べ進んだ桃の皮を、大きく剝く
残りを、かぶりつく様にして食べれば、伸ばされる、長い舌の赤みも相手に見える筈だ

「―――――――。」

そうして、ふと、店主が呆れた様に一度奥へと戻って行くのを見て
彼女の傍に少し歩み寄っては、其の耳元に顔を寄せるのだ。
他の誰にも聞こえない声で、秘め事の様に。 囁く声音で。

「―――――………それとも、証明してあげよっか?
……エマさんが、可愛いって事。」

――それは、戯言と一蹴されるべき言葉、の筈だ。
視線を向ければ、何時もと変わらない微笑みが、きっと其の瞳を覗き込んで居るだろう。
いつもの。 あくまで、いつもの。

けれど、もし、返すべき言葉を間違えて仕舞えば。
その、いつも、が。 容易く形を変えて仕舞うかも知れぬ程、危うさを孕んで。

エマ > 「……あー、うん。何思い浮かんだかはよーくわかったわよ。
悪い中の最善を選ぶのは、全然最善じゃないんだけどねぇ。」

セクハラと自ら言い切られたから、ミルクの話はそこで終わり。
まぁ、そのような目で見られるのは慣れているのでそこまでどうということもない。

悪い中からの最善を取るというのは、最悪を取らないだけで合って、結局最善は取っていないのだ。
とはいえ、あまりここを掘っても口うるさいだけになるから、一旦ここまで。

「まぁ、ポリアンの事だから、その辺キッチリしてるってわかってるし……はぁっ?」

火中の栗を回避したからこれで問題なし、と思っていた所で、予想外、想像外から反撃が飛んできた。
可愛い、という言葉は自分の埒外という認識だったがゆえに、『可愛いものなんてない』と返したのだ。
だが、そこを切り返されることで虚を突かれた状態。
すこしぽかんとしていた所に、耳元まで近づかせてしまった。

そして、耳を擽る声は、言葉は……

「……まったく、ポリアン、何度も言うけどおばさんをからかうんじゃないわよ。」

いつもと大して変わらない言葉。
でも、言葉の調子はいつもほどの快活さがやや控え。
空いている右手で彼の胸を遠ざけるように押すけれど、まるで迷いがあるかのように腕の力が中途半端。

そして……ポリアンは『偶然』を認識するかもしれない。
店主が戻るまであと数分。そして、なぜか今、数秒だけこの人込みの中から視線が切れた、と不思議と『偶然』を確信したのだ。

ポリアン > 「世の中ってのは、何時でも最善を選べる訳じゃあないからね。
普段から贅沢し過ぎてると、いざという時にしんどくなるかも知れないでしょ?」

冒険者なのだから、場合によっては依頼中に、食糧問題が発生する可能性だってある
いざとなったら木の根だって、判別しながら腹に入れなければならないかも知れないのだ
そう考えれば、桃ひとつだって十分に贅沢、と考える事も出来る筈。

結局、メリットデメリットは存在するのだ、何を選ぶかと言うだけ
だからこそ、彼女の御節介は有り難いと思うし、選択肢の一つとして頭に入れて居るのだ、一応は

くす、と、彼女の耳元に笑った声が微かに届く。
己を遠ざけようとする腕は、けれど、遠ざける程の力はない
店主が居なくなり、其の瞬間――確かに、偶然、は訪れた。
そして、冒険者として、集団の頭として、即座の判断を求められてきた己は

その偶然を、逃す筈もないのだ。

「――――――じゃ、証明したげる。」

一言、そうして。片腕が彼女の腰元を抱き、顔が寄せられ

――触れる唇が、一瞬。 彼女の呼吸すらも奪って、重なって、深い、口付けを齎す。
慣れた触れ方。 舌先が微かに伸ばされ、誘う様に彼女の唇を舐めては
はたして、舌同士を触れ合わせる程の猶予は、与えられただろうか。
もう片方の掌が、其の胸元へと触れて、緩やかに心臓の鼓動を捉えれば
するり、と、静かに滑り落ちて、最後に。 其の下胎を、柔らかく撫ぜる。

――思い出させる様に。 意識させる様に。
其の身体が、幾ら年を経ても尚、女である事を。 ……雌で在る事を。
其処に灯る火種に触れるのだ。 一度灯れば――在る、事に気付いて仕舞えば。
押し止め難い、純粋な、欲を。

エマ > そりゃぁ、そうだけど、と軽口をたたくのがいつものエマのやり方だっただろう。
だが、一瞬の虚を突かれ、無意識が『最善を取ることを拒否』して、
数秒だけ訪れた偶然が、堅牢に作られた防壁に蟻の一穴を開けてしまった。

「んぅ……っ……!?」

抱き寄せる腰元が、2人の距離をさらに詰める。
暴力的なほどの質量が、彼の胸板に押しつぶされる。
次の瞬間、触れ合う唇。が、彼はそこで攻撃をやめない。
舐めまわされる唇、そして、その隙間から差し入れられた彼の舌が己の舌に軽く触れ合う感触を伝える。
そう、上に意識が向いていた所で胸元への手が下に流れれば

「……っ、ふ……っ!?」

ほんの少しだけ熱がこもった吐息が、彼の唇を、顔を擽る。

数秒の偶然故に、この後は自然と元の位置まで二人の距離は、離れるだろう。
そして、店主が戻るまでの数分間、2人の視線が絡み合い、店主の言葉で驚いたようにびくっと身を震わせて

「あ、あぁ、ごめんなさいね。
これと、それと……」

取り繕うように、店主に向けた言葉は、今日の買い物の内容。
手際よく注文の品をエマの藤籠に収納すれば、エマは財布から代金を払う。

そして、そのままポリアンの横をすり抜けて、家の方へと足を向け、ポリアンに背を向けて数歩とお座った所で足が止まる。
肩越しに振り返れば

「……来るんじゃなかったの?朝食作るの面倒なんでしょ?
昼と一緒って私が言ったんだから、『結構肉肉しく』なっちゃうけど。」

まるで、そんな会話が店主の知らない所であったかのような、何の気ない会話。
防壁に空いた微かな穴が、壁をきしませる音はきっとポリアンの耳にしか聞こえまい。

ポリアン > 距離が離れる。 離れても尚、彼女の眼前に在るのは
穏やかな微笑を浮かべる、青年の姿で在ったろう。
店主の声にも焦る様子は見せずに、手に着いた桃の果汁を、ぺろりと舐める仕草をするのだ
先刻まで、其の胸元に触れていた指先、を。

彼女の買い物が終わる其の間、新しく入った季節の果物でも物色する様に
買うでも無く視線を落として、珍し気にあれやこれやと見回って
そうして、其の内に、買い物を終えた彼女が先に進んで仕舞うなら
其の背を視線が追いかけ、暫し、様子を伺い。

「―――――……、…ふふ…エマさんの料理ってだけで、『御馳走』なんだから大丈夫。
それじゃ、折角だからお邪魔しまーす。」

―――其れは、彼女にとっての日常が崩れて行く気配。
穿たれた微かな穴が、徐々にヒビを大きく変えて行く、そんな音。
されど、他の誰もが気付かないのだろう。 其れに気付いて居るのは、多くとも二人だけ。
彼女の背を追いかけるように歩みを進め、付いて行けば。
道中、きっと、傍目には他愛無い会話を交わして居るのだろう。

其の言葉の端々に、けれど、確かに。 ……言葉遊びめいて、其れ迄とは違う意味を、忍ばせながら。
そして、その会話の一つ一つが。 彼女のヒビを、穴を、少しずつ、確かに変えて行く。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエマさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からポリアンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にロフィさんが現れました。
ロフィ > くあああ、と欠伸をする冒険者
今日も今日とて、冒険者ギルドの騒がしい様子を見やりながら
併設された酒場でちびちび酒を飲んでいる

冒険者という職にそれほど憧れがあるわけでもなく
ただただ、冒険者には強くて綺麗な女性だとかそういう女性が多いし
疲れて帰ってきたところを娼館で癒すというのもまたおつなものだ

というわけでナンパ相手探しである
だが歩き回って探すことはせず、酒場で飲んだくれている

傍から見れば、昼間から潰れている変な奴だ

ご案内:「」にロフィさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にロフィさんが現れました。
ロフィ > 「平和だねえ…あ、ヴルスト1つ」

酒を飲みつつツマミの注文も忘れない
酒場に貢献している以上追い出すこともできないという少し厄介な客となっていた…

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からロフィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「――どー…しよう……」

 そこは平民地区にある賑わう繁華街の外れたブロック。当然人気も少なく、これといった店もなく遠くの喧噪がじんわりと響くばかりで比較的落ち着いていた。
 店舗よりも家屋が多く、空き家もいくつか混ざっていて。
 そんな空き家の 屋 根 の 上 で茫然と呟く女と、その真下で吠えている野良犬――

 大の苦手とする犬に追い掛けられて、無我夢中で走り回り気が付いたら平屋建ての空き家の屋根にまで上っていた。
 一体どうやって上ったのか必死過ぎてまったく思い出せない。
 我に返るとそんなところに突っ立っていた。
 犬も到底上れやしないだろうが、まだしつこく真下でワンワン吠えていて。
 屋根の上、腰を屈めて蹲るような体勢でそれを見下ろして、顔を全力でしかめ。

「……ちょっとー……あんたどうしてくれるのよぅ……。
 降りられないじゃないよー……」

 吠えられるとちょっと怖くてびくびくするが、ここは絶対に奴の手の届かない距離。
 情けなく力ない声音でぼそぼそと文句を投げ落とした。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にパニアさんが現れました。
パニア > 「くぉらぁぁぁああっ! なぁにやってるッスか、このバカ犬ぅぅう!!」

そこに果敢に吠え掛かったのは新たな駄犬――――ではなく、胸下で裾を結んだ体操着のヘソ出しも健康的な日焼けチビ。
厳つい赤鋼のガントレットをぶん回し、乙女を襲う(?)野良犬を威嚇するも、いかんせん上背が足りてない。
足りているのはぴょんぴょんする動きに合わせてばるんばるんと迫力たっぷりに揺れたわむ双丘だの、ブルマ食い込む大きな尻のボリュームだので

「―――――おぅわっ!? えっ? マッ!? ちょ、こ、この犬むっちゃアグレッシブなんすけどっ! あっ、ちょ、やめっ、やめろッス! マジぶん殴るッスよ! お、脅しじゃねぇッスよ! おいちょっと話聞けッス! やめっ、ほ、ホントやめろッスぅぅうッ!?」

当の野良はチビの肉付きに食欲を刺激されたか、その獰猛そうな見てくれに反して存外人好きワンコなのか、ばうばう吠えつつチビに飛び掛かっていく。
あっさりと腰の引けたチビは救いを求めるヒロインの眼下でしばらく野良と追いかけっこを楽しんだ後

「た、たしゅ…っ! たしゅけてっ! 引っ張って うちの手を引っ張ってッスぅぅうっ!!」

じたばたじたばた。
三角飛びの要領でジャンプ一番、屋根のへりに手を掛けた辺りは卓越した運動能力の高さを感じさせるも、一匹の野良に返り討ちにあってひぃひぃ言いつつ屋根上に逃げて来る風情はヒーローには程遠い何かであった。

ティアフェル > 「えっ!? え……おー……びっくった……いやあ……勇ましいー。
 きゃーそのこ女の子ぉーがんばってぇ!」

 屋根に登り上がってからは、目前で吠え立てている野良犬を見下ろしてびくびくと途方に暮れていたのだが。
 不意にそこに闖入者。ちっちゃいのに威勢の良い女の子が現れた。
 まあ、あの子いい子だわ、犬と戦ってくれている。
 と、見下ろしながら一瞬一条の希望を抱いたのだが。

「………ぉ。……えぇー……だ、だめじゃん……ってか、噛まれちゃうよ、無理しないで、危ないからお逃げよ~? なんせ犬だもの、野良犬だもの、人類はみんなみんな勝てないよ~…、逃げるんだお嬢ちゃん!」

 期待が裏切られるのは割と一瞬で。
 むしろお犬さま優勢である。あーこりゃあかんわ。危ないわ。
 退避してーと右往左往追い立てられている様子に上から懸命に勧めるが。

「ぅ、あっ! びっくった! こっちに逃げちゃう? あらら、ちょ、ちょい待ち。
 ほら、しっかりつかんで! それで足は壁につけてね、落ちないようにゆっくり……がんばって!」

 今度は犬から逃がれて屋根の上に登り上がのを応援することになった。
 手を伸ばして屋根の縁つかまるその手首を両手でつかんで、息を合わせて、わっしょーいっと引っ張りあげようとぐぐぐっと力を込め。
 彼女が上がってくるのを手助けする――見た目以上にゴリラ握力な当方。

パニア > 「任せとけッスお姫様! 今ウチが救い出してあげるッスよ!」とか勇ましい事を言ってたのは本当に最初のうちだけ。
狙いを変えた大型犬(多分ピレネーとかそっち系のクッソ重そうな奴)に飛び掛かられた後はもう頼りがいなんぞ欠片も感じられない有様を晒すばかりで

「はひぃ…っ、はひぃぃ……っ、ふぅぅう~~……。た、助かったッス。お姉さんは命の恩人ッス………あれ? このセリフはうちが言われる予定だったはずッスよね??」

現状はこんなだ。
幸いこのお姉さん、へっぽこ王子(♀)を罵倒するでもなく、救いを求めた役立たずを甲斐甲斐しく助ける聖女の様な精神性を持っていた。
その際、やたらとすんなり引き上げられたことに若干の違和感を覚えないではなかったが。
すっかり立場が逆転してしまった事に小首を傾げるのは、脅威となるデカ犬は流石にここまでよじ登ってはこれなさそうだから。喉元すぎればなんとやら!

「ま、まあそれはともかく、うちはパニアって言うッス。こうして出会ったのも何かの縁ッス。名前聞かせろッス」

よっこいせと彼女の隣にブルマの尻を降ろす役立たずチビ。
この安全地帯に居座る気まんまんである。
幸いチビの被害と言えば日焼けの頬をがっつり舐め回された唾液跡と、じゃれつかれた際、太腿にうっすら赤い爪痕が残された事くらい。あの犬、本当にただの人懐っこいだけの無害なペットなのでは……?

ティアフェル > 「まあステキっ」って一瞬きらきら目に星を浮かべて期待は寄せたのだが。
 すぐさま打ち砕いてくる現実が眼下に広がっていて、ちょっと絶句した。
 あと、こっそり失望した。やっぱあかんかぁ、って。

「うんうん、怖かったねぇ~。もう大丈夫だよ。君はよくがんばった……がんばりだけじゃ世の中どうにもならないこともひとつ学んだね。現実はこんなもんよ。……もううるっさいなあ!いい加減どっか行ってよ、乙女二人虐めたらもう満足でしょあんた!発情期か!バカバカバカ!」

 うえーいっ、と引き上げてからは、屋根の上に一緒に登り上がって来た彼女の背中をぽんぽんぽん、と軽く叩いて声をかけては。
 まだ下でわんわんやかましい野良犬を罵倒するが、相手には一向に通じておらず。むしろ構ってくれるのかと一層吠え立てて来るので、ほんとキライ!と屋根下に舌を出した。

「あぁ、そーね……うん、その前に……ちょっと拭き拭きしとこうね……じっとして」

 普通に隣座ったわ。まあそうなるか。と諦観にも似た思いで目を向けながら、唾液で塗れている頬にぽっけからハンカチを取り出して拭い、他には大丈夫かと夜光に目を凝らすと赤く走った爪痕に、ヒール、と小さく唱えて掌から生み出した淡い橙の光で傷を塞ごうか。特に問題なく効くのであれば、だが。
 顔を拭いたり施術をしたりのながらで手短に名乗っておき。

「――えーと、ティアフェル。ヒーラー」

パニア > 「うぅぅ……お姉さん、むっちゃ優しい……好き。ホントそうッスよ! 恥ずかしくないッスか! こんないたいけな美少女二人に襲い掛かるとか、オスの風上にも置けねぇッスよ! ――――え、発情期…!? こわっ、お前もレイプ魔だったッスか!!?」

優しいお姉さんが罵倒の中でぽろりした一言のせいで、人懐っこいだけのワンコからレイプ犬の汚名を着せられた野良が、眼下でばうばう不満を表明した。
どう足掻いても届かぬ高みから、一方的に犬に罵声を投げる二人の娘。
見ようによってはこちらがいじめっ子にも見えそうな絵面であったが、そこは見て見ぬふりを貫こう。

「ほわっ? わっ、い、いや、いいッス、綺麗なハンカチが汚れちゃうッスよぉ………って、うぉおッ!? えっ? にゃッ? い、今の回復魔法ッスか!? すげぇぇええ! 初めて見たッス! 初めてみたッス!!」

このお姉さん、マジ優しい!♥
取り出したハンカチで唾液まみれの頬をふきふきしてくれる様子に、最初は遠慮を見せていたが、結局は日向の猫みたいに心地よさげに目を細め、小麦色の頬をふにふに歪ませながらされるに任せた。
そこからさらに太腿の、唾つけとけば治りそうなひっかき傷に翳した手がぽわわと光れば、うるさいチビはますますの大騒ぎ。
大きく開いた黒瞳は憧れの星できらっきらである。

「ティアフェル……妖精っぽい名前がめっちゃ素敵、しかもヒーラー……! ………ん? あれ? もしかしてお姉さん、冒険者……?」

改めて見る彼女は艶やかな茶色髪といい、緑を基調としたエプロンドレスといい、お転婆属性の爆乳チビが成長の途上で失った女らしさを優しさと共にすくすく育んで来たかのたおやかな外観。
まさかそんなお姉さんが冒険者であるなどと、ヒーラーの名乗りを受けても若干信じられない。
そんなお姉さんが実は自分以上のとんでも膂力を持つ女ゴリラであるなどとは夢にも思っていない。

ティアフェル > 「惚れっぽいね。多分、吊り橋効果みたいなことだろうな。――そーよそーよほんと黙んなさいよバカ犬ー………っうわ、やっぱ怖い~……嘘よ、バカなんて嘘だから……はよ帰れ」

 バカにされているのが察したのか勢いよく吠えられて、絶対登って来れないとは分かっていつつも、ひぃ、と怯えて屋根の縁から覗き込む姿勢をずさっと奥へと退避させ。
 あいつほんと元気だわ…と肩を落としているとレイプに反応して犬に犯られる可能性にびびってる少女に。……面白いからほっとこ!とフォローはノーセンキュウ。

「いやいや、どっちかと云えばわたしが気になるだけだから……よし、きれいんなった。うん、かわいい。――あ、ほんと? そんな珍しくもないでしょ?ヒールくらい……てか、足むき出しにしてたら傷だらけんなっちゃうっしょ。気をつけなね?」
 
 特に皮膚が厚い訳でもなさそうだし、女の子なんだから傷が残ったりしたら大変だ。と気にしたように軽く眉を寄せ。
 大人しく顔を拭かれるなんだか人懐っこそうな顔にくすくすと小さく笑い。
 目とかキラキラさせて、あどけないなあ…なんてほっこりしていたら。
 冒険者かと聞かれ、ん?と首を傾げて。

「あー。マジでぇ、ありがとー。ティアでいーよ。パニちゃん。
 そー。いちお冒険者……もしかして同業?」

 誉められてでへへとあからさまに嬉しげににやけ。マジええ子じゃわと思ったら。
 ヒーラーと返答してすぐに冒険者かと訊かれて肯き。それからすぐにそういう発想が直結する辺り同業者かと問い返して。
 だとすると、自分が云うのもなんだが、野良犬に大敗を喫した戦闘力は……前衛としたらまあないなと結論する。自分は犬が弱点なだけだ。……致命的だが。

パニア > 「てへへへへ♥ ――――んえ? 王都ってそんな回復職多いッスか? だ、だったらうちもヒーラーの仲間とかそのうち見つけられそうッスね! むふふふふ…」

かわいいと褒められて他愛なくはにかみ笑う田舎者。
そんなチビは生まれて初めて受けたヒールが珍しくないと聞かされて、再び両目をまん丸に。
かと思えば何かしらの野望の滲む夢想の笑みで童顔を綻ばせたりも。
ころころと変わりまくる表情は、内心をそのまま顔に出しているかの様で、さぞ長閑な場所で育っただろう事も窺い知れよう。

「いやいやお姉さん、そんな簡単に綽名を許しちゃ駄目ッスよ。うちの友達が聞いたら即心友認定ッスよ。………でもティア姉って呼んじゃうッス。 これで友達ッス! てか、マジで冒険者だったッスか……。とてもそうは見えねぇんスけど……あ、そうッス! うちは見ての通り冒険者ッスよ!」

ヘソ出し体操着にむちむちブルマで見ての通りとか言われても困るだろうが、ぽむんとたわわを叩く赤籠手の無骨さや、膝小僧を守るパッドはギリ、それっぽいと言えなくもないかも知れない。
そこでしつこく吠えたてる大型犬に改めて屋根縁から視線を向けて

「―――――冒険者が二人いて、魔獣ですらないワンコ一匹に負けてるとか……いやいや、駄目ッス! こんな結末は認められねぇッスよ!」

何とも情けなくへにょんと眉尻を垂らしたチビは、次の瞬間猫背をしゃきんと伸ばし、小さな拳をぐーに握って決意表明。それに合わせてたわわもばるんっ!

ティアフェル > 「まー…自分がそうだから周りにもよく見るってのもあるかもだけど、まあまあいるし。募集かければ見つけるのはそんな難しくないとは思うよ」

 回復専門で回復魔法しか使えないバカのひとつ覚えは自分くらいだろうが。魔法職や神職で他にも会得していつつも回復も使える、とかそんなに珍しくはないと。人差し指を立てて語り。

「そんなもん? 友達じゃなくってもふつーに呼ばれるよ。ティアフェルって微妙に長いしさ。ほんとはティアフェルって呼ばれんのがいっとう好きだけど。悪いじゃん、呼びづらくて。
 あは、ティア姉ね。いーじゃん。ん、よろしくね。
 マジで冒険者っすよ。いや、云われてみれば見えるでしょ。後衛だと非戦闘員も多いし結構いんじゃん?こういう感じの。
 見ての通り……学生さんっぽいんだけどなぁ……」

 体操着なところが特に。運動部のバリバリ体育会系女子に見えるんだけどなぁと首をかくーんと大きく横に倒して、じっくり眺めてもそんな冒険者っぽくはない。
 犬に意識を戻して、そして現状を憂う…嘆く?声に、20度程倒していた首を45度くらいの傾斜でやっぱり倒し続けながら。

「………そのトシで命を棄てる気か? 若いみそらで自ら特攻なんて……罰当たりなことを考えるんじゃない。さすがに蘇生はできないぞ、わたしゃ」

 気合を入れて背筋を伸ばす彼女の正面から覗き込んで、両肩に手をおいて重々しく語り目にはこう書いてあった『死ぬぞ?』って。
 微塵も冗談の類ではない……犬恐怖症の心底からの警告である。

パニア > 「いい名前ッスもんね、ティアフェル……。妖精のお姫様……♥ 確かに神官服? みたいの着てる人とかはギルドでもたまぁに見かけたッスけど、お姉さんみたいな女の人は始めてみたッス! い、いや、学生なのも間違いじゃねーッスけど、冒険者ッス! ……冒険者ッス!!」

改めて彼女の名前の素敵さと、花畑とか似合いそうな彼女の雰囲気におバカな妄想を垂れ流しているのだろうだらしない表情を覗かせた。
小首傾げてじっと見つめる翠瞳の疑わしさは、力強い冒険者宣言を轟かせて迎撃だ。

「そ、蘇生……ッ!? い、いやいやいやいや、いくらなんでも……い、いや、大丈夫ッス! だいじょうぶ、……ッス、よね?」

勇ましく眉尻を持ち上げた黒瞳が、犬恐怖の凄い彼女の言葉に若干揺れた。
もう一度首を伸ばして下方を見る。
うん、むっちゃでかい……。
あいつ絶対、うちより重いぞ……。
とはいえ

「――――ティア姉! だ、大丈夫ッス! うち一人なら……い、いや、一人でもまあ、ギリ……いやいや、け、結構普通に勝てるとは思うッスけど、そこにティア姉の回復魔法が飛んでこればもう間違いねッス! 絶対いけるッス!!」

双肩に乗せられた手にガントレットの両手を重ね、改めて決意の滲む双眸でじっと翠瞳を見つめた。やったろうゼ! という顔。
彼女がここで芋引くなら、パニアも一緒に腰を下ろして、他の誰かが来てくれるまで長期戦で雑談でも楽しもうってとこまで計画済の表情だ!

ティアフェル > 「うわ、なにそれちょう嬉しい!めちゃくちゃいい子だな!わたしは君を高く評価する!
 そうそ、後は魔法使いで回復もできるってのもいるしさ。余り希少価値はないんよねえ、回復って……あれ? 割と女子も多いと思ってたんだけどなー。そっか。
 あいあい、冒険者ッスよねえ、分かった分かった。がんばってるんだもんねぇ」

 飽くまで名前を誉めてもらっているんだから、偉いのは当人じゃなくってつけた親の方ではあるが……まあ、せっかく親のつけてくれた名だ。誉めてもらえると非常に嬉しい。彼女の株は今のところ高値を更新している。
 冒険者とことさら強く主張する声にうんうん肯いて、頭でもよしよししたくなる。けど、怒られそうな剣幕だなとガチな空気に遠慮しておく。

「頸動脈一撃されたら即死じゃん? 大型犬舐めたらいかんよ?」

 立てた親指を首を掻っ切るようにスライドさせて。真摯な眼差しで語る。
 脅しじゃないぞ、って本気である。だって犬だよ。怖いのよ。ゴブリンなんて奴らの前じゃかわいいと思えるくらいなのよ?
 そういう末期の犬恐怖症だからして……ラスボスに挑んで儚い命を散らそうとしているように見える彼女に力説するのである。
 肩に乗せた手にガントレのお手々を重ねられると手を返し一度それをぎゅっと握ってから。
 ほんま死ぬで?
 顔に大書しておく。

「死ぬ気なら止めんよ……あ、でもほら、お菓子あるよ。飴食べる? 知り合いにもらったの一個残ってたんだ。好きかな? あげるー。はい、あーん?」

 レモン味の飴玉の包み。知人にもらったのをたまたま持っていてウェストバッグから取り出すと口に放り込んで誤魔化そうと画策する。
 死にまでしなくっても眼の前で血まみれとかになられたら、うわー…わたしのせいだよなーとさすがに罪悪感が大変なことになりそうだったし。